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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編

第七十四 四大妖魔の縮図

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 どのくらいの時が経ったかわからないが、俺は再び目を覚ました。

 さっきよりかなり調子は良くなっているが、まだ辛い。

「リル、いるか?」
「起きたかい。水を持ってきたけど飲めるかい」
「ありがたく頂こう。俺はどれくらい寝ていた?」
「さあ。僕も外に出ていないからわからないな」
「やはりさっきの念通で頼む」
「いいよ。その方が体力を消耗しないで済むだろうしね」

 さっきの続きだが、四大妖魔について詳しく聞いてもいいか? 

「いいよ。四大妖魔とは我が主邪剣フェルドナージュ様、兄君の邪眼フェルドナーガ様、そして冥暗のタルタロス、残虐のベルータス。妖魔の国はこの四大勢力が均衡を一応保っているんだ」

 四つの勢力は戦争中なのか?

「いや、直接的に争ってはいないよ。ただ均衡が崩れれば
そうなる可能性もあるね。均衡を崩さないためにも
君の持っていた神話級アーティファクトが必要なんだ。
あれ一つで我が主は相当力をつける事ができる。
争いごとは好まない方だけどね」

 すぐには信じられないが、今は疑っても仕方がないな。
 話は変わるがこの妖魔の国はどの大陸にあるんだ? 
 俺も大陸の詳しい位置はわからないが、名前だけ知ってるんだ。

「難しい質問をするね。ここがどこの大陸なのか……少なくとも大陸上ではないよ。妖魔の国は地底にあるから」

ここが地底? つまりここを出ると地底にでるのか? 

「そういうこと。広大な地底妖魔皇国、フェルス妖魔皇国に君はいる」

 フェルス妖魔皇国? 質問だがここから手紙などで俺の生存を知らせたい人がいるんだ。頼む。

「それは今すぐには難しいね。ここを知ってしまえば
ここに住まわせるしかない。まぁ外界には出れるけど
あちら側で住むことはできなくなる」

 ……じゃあそもそも地上に住んでいなかったら? 

「それはどこかの領域に住んでいるってことかい? 
それならば或いは可能かもしれないね。
どういった領域なんだい?」

 俺もそこまで詳しくはわからないんだが、ある蛇が吐き出した実を持って泉に飛び込んだら、その領域が
できたらしい。俺が実際自分でつくった領域は
洞窟だったが。

「……それは幻魔の領域だね。その子は幻魔で間違いない」

幻魔? メルザは人のはずだ。村に住んでいたんだぞ? 

「幻魔は地上で生活している奴らもいる。地底にもいるけど。
その蛇はきっとその子が出した幻獣だろうね」

自分で出した幻魔で自分の領域を? 

「状況を見ていないからわからないけど、自らの危機を逃れようと
無意識で出したり、自らの望みを叶えようとして出したり
したのだろうね。考えるだけで相当危険な幻魔獣使いだ」

 ……メルザに手を出したらただじゃおかない。

「怖いな。安心してよ。聞く限り地上の幻魔獣使いの生き残りかな。さっき連絡は難しいと言ったけど条件付きで連絡を取ってあげよう。その子らも一緒に引き抜こうかな。すぐにじゃないけど」

 メルザに会えるなら何でもいい。俺にはメルザしかいない。

「そういうことなら僕の方の話を進めるよ。君はフェルドナージュ様に面会させないといけない。
献上品を持ってきた君を取り立ててもらう必要があるからね。きっとお喜びになる。
君だけの領域をもらえるかもしれないね」

 俺にばっかり都合がいい気がするが、リルにとっての褒美はなんだ?

「おや、するどいところをついてくるね。僕にとってのご褒美は
あの方に尽くせる事だけど、もちろん褒美も与えられるだろうね。
神話級ではないアーティファクトとか」

 利害が一致しているならいい。

「そう、それで君、敬語は使えるかい?地上の人間は無礼な奴が多くてね」

 ああ、前世で一応な。皇帝に挨拶する感じでいいのか? 

「ちょっと試しにやってみせてよ」

 ……皇帝陛下、お会いできて恐悦至極に存じます。わたくし、ルイン・ラインバウト
と申します。以後お見知りおきを。

「へぇ、十分だね。我が主は寛大だけど、無礼なやつは
殺されるから気を付けてね」

 そうならないよう気を付ける。

「そうだ、アルカーンも紹介しておくよ」
「弟よ、わたしは半妖半幻などに興味はない。
もう治ったなら領域は閉じるが」
「まだだめだよ。半分も癒えてない」
「ちゃんと終わったらテトラシルフィードは頂くぞ。
私はあれの調整に戻る」
「うん。わかってるよ。でも早く出て行って欲しいなら
薬をくれてもいいと思うんだけど」
「仕方ない。一つやろう」
「ありがとう。よかったね君。もう少し早く治るよ」

 ……俺を呼ぶときもルインでいい。ありがとうリル。
 お前がいなければ希望はなかったな。

「いやこれは、互いに利益になることだから。
貸し借りはなしでいいよ。この薬はすぐ効くから。
動けるようになったらまずはここから出してあげる」

 そう言うとリルはふわりと舞い上がり、俺の身体に
薬をかけていった。
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