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第三章 闘技大会 後編

第六十二話 傭兵団 ガーランド

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 俺たちは宿屋インフィニティに戻り、マリーンに挨拶する。

「お客さんが来てるわよ? 三名」

 誰だろう? 俺への面会なのか? 
 少し警戒しながら扉を開けると見知った顔がいた。

「シュウさん。それにカイさんにヨナさんでしたね」
「やぁルインさん。治療が終わり出て行ったと聞いたので
こちらで待たせてもらっていたよ。優勝おめでとう!」

 三人に祝われたのでお辞儀をする。

「シュウさんも、何でもあり戦の本選はもうすぐでしょう? 
がんばってください」
「ああ、そのことなんだが私の師であるシン・シーファンが
倒れたと聞いてね。これから急いで戻らなければいけないんだ。
だから大会は辞退する予定だ。その前に挨拶をと思って。君にこれを。
これがあればまたきっと会えるだろう。本当は女将さんに渡してもよかったのだが
どうしても一目会ってから旅立ちたくて」

 シュウさんから、小さなお守りのようなものを受け取った。
 互いに手を差し出し、固く握手を交わす。

「シン・シーファンだと? てめぇはあいつの弟子だったのか?」

 師匠はその人物を知っているようだ。

「師をご存知なんですか?」
「ああ、昔ちょっとな。じじいにあったらこいつを渡してくれ。
俺から言伝も頼む。くたばるんじゃねえぞ、じじい! ……ってな。
そういえばわかる」
「わかりました。お預かりします」

 シュウたちは一礼して、部屋を後にした。



 部屋を改めて見渡すと……シーンと静まりかえっている。

 ファナもニーメもぬいぐるみの真奈美も、ライラロさんたちが安全なところまで
連れて行ってくれているだろう。
 
 そういえば! すっかりココットの事を忘れていた! 荷物の中に入れておいたが……いた!  

「ココット! ここっこここっ! ここここーーっ!」

 やば、むっちゃ怒ってる。数日閉じ込めていたからな。
 ニーメがちょくちょく話していたか。

「すまん、そう怒るな」
「ここっとー!」

 これでも生物というより兵器らしい……が、今はよくわからない。

「不思議な生き物だな、それ。玩具じゃないのか?」
「ココット!」

 ココットは両方のアームをブンブンしている。
 違うと言っているようです。

「おほん! どうにも話を始めようとすると邪魔が入るな。
そろそろ本題に入りたいんだがいいか?」
「よろしくお願いします」

「傭兵団ガーランドについて説明する。
本拠は先ほど伝えた通り三夜の町の幻魔神殿地下だ。
構成員はそれなりの数がいるし、世界中に拠点もある。
主な活動はダンジョンや塔の探索、遺失物捜索、武器生成や国からの
密偵依頼それから兵士となることもある。
凶悪なモンスターが襲来したときに呼ばれて集団で討伐に赴くこともあるが
行くかどうか決めるのは団長であるライデンだ。
大将は表の顔はトリノポート、ベッツェンの隊長だが
裏の顔はガーランドのリーダーだ。ここまではいいか?」

 物騒なものも入っているがおおよそ理解した。俺もメルザも頷く。

「次に団員は年に二回だけ支部に顔出しする必要がある。
ずっといないんじゃ生きてるかもわからないからな。
もし複数の団員で構成されたままガーランドに所属する
場合は、俺たちみたいに肩書がいる。俺らなら死流七支だ。団長も含んでいるがな」

 組織の中のグループ活動みたいなものか。それならば動き安い。

「そしてこいつが一番の役目なんだが」

 やっぱり活動としての最大目標があるのか。

「トリノポート、ベッツェンの王の捜索だ。いないんだよ、国の王様はずっとな。
政治は大臣のジムロが取り仕切っている。
他の大陸国にばれればでかい戦争が起きちまう。
ばれないように動いてるのさ、俺らは」

 ハーヴァルは険しい顔をして頭をかく。

「別に国に所属しているわけじゃないからそこは安心してくれ。
だが戦力的に不足しているのも事実。
バルドスがいる大陸の友好国ならいいが別の大陸国はそうはいかないんだ」

「いいぞ、俺様もあそこがなくなったりあらされたりしたら困るしな」

 ……確かにメルザの領域への入り口はジャンカの森だ。
 俺たちが出会ったのもあの森。なら絶対失うわけにはいかないな。

「そうか! だが特訓してもらったとはいえまだまだ実力は足りない。
ルインはだいぶいい線いってるが、強くなる特訓は続けてもらう」」
「幻魔の宝玉を使って生きてたんだってな。どういう身体してんだてめぇは。じっくり調べさせろ」

 そう言うとセフィアが後ろから両手で俺の身体を触ろうとする。

 メルザが大慌てで止めに入った。

「三夜の町の幻魔神殿でお前たちの登録と団体名を決めてもらう。
いいな? 向かうのは大会が終わってからだ。
念のためそれまでは俺たちもお前さんらと一緒に行動するが
構わないか?」

「わかりました。俺たちも常闇のカイナに狙われる可能性が
あるんですよね……」
「あぁ、間違いなくある。だが安心しな。
これから増える団員を失うわけにはいかない。
俺たちが守る」

「よろしくお願いします。今の俺じゃまだ
メルザを守り切れない」

 下唇を強くかみしめながら、ハーヴァルに頭を下げた。
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