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第三章 闘技大会 後編

第六十話 ファナがさらわれた理由

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 まわりに誰もいないところまで行くと、様子を伺い師匠が話始める。

「実はあのおさげの嬢ちゃんの事なんだが、だいぶ厄介な奴に
狙われたみたいでな」
「何かわかったんですか?」
「あぁ、お前はシーブルー大陸って知ってるか? ここミッドランド島の北に
位置する大陸なんだが」
「名前だけは以前ライラロさんに教わりました」

 ライラロときいて師匠がちょっとびくっとなる。ですよね……すみません師匠! 

「……そこに幻魔神殿の本地があるんだが、昔から
珍しいジョブを持っているやつが行きつく土地と
言われている。
当然ジョブカードも豊富にあるんだが」

 確かに幻魔神殿に行けばジョブコンバートもできるし
戦力を大幅に向上できる。
 
 俺はまだ三夜の町の幻魔神殿しかよく知らない。
 神殿によって得られるものが違うのか。

「その影響もあってあそこには悪い奴が集まりやすい。
力で支配しようと目論む輩がな。
だから奴隷商なんかも集まるわけだが」
「そこに連れて行かれそうになっていたと? 誰が何の目的で?」

「恐らくは常闇とこやみのカイナだろう」

 ハーヴァルが呟く。常闇のカイナ? 人の名前だろうか。

「常闇のカイナは世界中にアジトを持つ組織の名前だ。
やつらは売れそうなジョブの奴
や売れそうな女、珍しい物なんかを一度シーブルー大陸に集めて売りさばく。
さらってきた段階で呪いと奴隷印をつけるのが奴らのやり口だ」
「そういえばセフィアさんが治療しにきたときに呪いがあるって言われました」
「あぁ、それに奴隷印も刻まれていたらしい。可哀そうだがよ。
あのおさげの嬢ちゃんは変身術が使えるんだろ? 
それに容姿もいい上、大会でかなり目立った。
目をつけられてもおかしくはねえがそれよりもだ、ここで奴らが動いたってのが疑問だ」
「というと? どこでも襲うわけじゃないんですか?」
「ここミッドランドは警戒が厳重な上、法も厳しい。
今まで人さらいなんざ聞いたことねえくれぇだ。
今回の事件に関して上にそれとなく話したがどうもきな臭ぇ」
「俺たちも用心し始めたところだ。
あの可愛いお嬢さんとヘンテコなぬいぐるみ? は、ライラロと
呼び出したライデンがベッツェンまで連れてってくれる手筈だ。安心しな。ライデン隊長は強い」
「そこまで手配してくれていたなんて知りませんでした。
ありがとうございます」
「おっと勿論そこまでするには理由がある。
俺たちの事はベルディスから聞いているか?」
「いえ、旧友ってことくらいしか」

 ハーヴァルは一息つき話を続ける。

「俺ことハーヴァルと、ベルディス、セフィア、ライラロ、メディル
バルドス、そしてライデンは死流七支って呼ばれる。
各大陸出身の集まりで、ライデンに見初められて行動するようになった。あちこちの大陸で名を挙げた。
今でこそバラバラに散ってるが元は一つの傭兵だったのさ。
俺たちは様々な国で活動しつつ、見込みのありそうな
奴を探している。メンバーは死流七支以外大勢いるがな」

少し考える表情を浮かべてハーヴァルは話を続ける。

「それで本題だが、俺たちの傭兵団におまえさんらを加えたいんだ。
バルドスの子供ベルド、それからベルディアもだな。後はシュウっていう
お前さんと戦った奴にも声をかけるか思案しているところだ。
俺たち傭兵団に入ればお前さんの実力も相当あがるだろう、悪い話じゃないぜ?」

「……その傭兵団の目的は何なんですか?」
「……だよな。それを聞かないと入るかは判断できないか」
「いえ、それよりも俺自身はメルザのものです。
だから俺じゃなくメルザに聞かないと答えられません」
「それはどういうことだ? あの嬢ちゃんの事は何も聞いてないが」

 俺は二人に事情を説明した。

「へぇ、ますます気に入ったぜ、その忠義力。
俺もセフィアには絶対な忠義を尽くす身だから共感できる。ひとまずお前さんの主に話にいくか」

 俺と師匠とハーヴァルさんは部屋に戻っていった。
 戻るとメルザもセフィアも半裸状態だった……。

「助けてルイン!」
「まっれぇー、逃がさないわよぉ。お姉さんと一緒に水浴びしましょぅれぇー」

 はぁー、とハーヴァルはため息をつき、幻術を詠唱する。
 水がセフィアに向けて飛び放ち、メルザもセフィアもびしょびしょになった。

 散々だな……メルザ。
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