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第三章 闘技大会 後編
第五十話 二日目の遠距離戦とミリルとの出会い
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予選の組み合わせメンバーが一通り終わり、個人戦近接戦の
本選メンバーが出そろう。
四日後の本選チケットがそれぞれに渡された。
明日は遠距離戦の試合が行われるので
メルザの試合を見に行く予定だ。
宿に戻るとメルザがぷーっと顔を膨らませて待っていた。
「ど、どうしたメルザ」
「ふーんだ、あのアイドルとかいうのに握手されて嬉しかったんだろーよ!」
「いや、全然嬉しくないというか試合の邪魔だったというか
握手はしてないぞ」
「ふーんだ」
あれ、機嫌を直してもらえないな……そうだ。
「それよりメルザ、絶解呪の書は後五百ポイントで取れるみたいだぞ」
「ほんとか! じゃあもうちょっとじゃねーかよ。よかったー……あっ」
直ぐ普通に戻るあたり怒ってはいないな。構って欲しかったのか。
我が主ながら可愛いやつめ。
メルザはぷいっと横を向くと「もうじき飯だぞ」と走っていった。
翌朝、同様に司会が挨拶をする。
第一回線のDブロックでメルザの一回戦が始まる……が、相手が強いのかかなり苦戦しているようだ。
どうにかエレメンタルまで展開して相手を場外に落としたが、ギリギリの戦いにみえた。
初戦でそこまでの戦いだと、次の二回戦目が心配だ。
ライラロさんが隣にいつの間にかいたので聞いてみる。
「あれは相手が悪いわね。メディルの次男でビスタよ。
むしろビスタによく勝てたわねあの子。満身創痍だけど。
今大会遠距離部門での優勝候補だったのよ、彼」
そんな相手に一回戦目からあたるとは、メルザも俺に負けず劣らず運がない。
俺たちは不運同士が引き合わさってる気もするしな。
後で頭をじっくり撫でてやろう。
昼が回り次のメルザの戦う番になった。
明らかに疲労を残している動きだ。
「ねぇあの子、呪いか何かにかかってるのかしら?」
「いや、そんなことはないと思うけど」
「次の相手、またメディルの子よ?
ブルネイ。ビスタとブルネイはどっちも優勝候補よ。
あれじゃ幾ら何でも勝てないわ……」
メルザは必死に応戦したが、最後は膝をついて降参した。
俺は控室に戻ったメルザのとこにいく。
「メルザ、大丈夫か?」
「あら、あなたはこの子のお友達でしょうか?」
そこには知らない美しい女性が一人いた。
カチューシャのようなものを頭につけていて
長い槍をたずさえている。
「おう、ルイン。聞いてくれよ。こいつは前に話してた
俺様を助けてくれた竜騎士団のミリルっていうんだ」
誰だったかを思い返す。
確かメルザを巨大なサイクロプスから逃がしてくれた竜騎士団の人だったか?
「メルザがお世話になったようで、ありがとうございます」
「いえ、二回戦目でしたがあなたの試合拝見いたしました。
お強いですわね。わたくしではかなわないでしょう」
「そんなことは。やってみなければわかりませんよ」
「その……恥を忍んでお願いがあるのですが聞いてもらえませんか?」
「なんでしょう? 我が主の恩人の頼みでしたら出来る限り聞いてあげたいんですが」
そういうと腰を下ろして話を聞く。
「今大会、上位の景品に竜の卵があるのです。わたくしはそれを手に入れるために大会に参加しました。
ですが皆さん強すぎて到底わたくしでは勝ちあがれません。
どうか協力していただけないでしょうか……?」
「そういうことなら俺はもちろん。メルザもいいよな?」
「あぁ。俺様、今負けちまったけどな。団体戦できっと勝つ!」
「そういえば団体戦はメンバー不祥事に代わりがきくとのことです。もしお怪我
などした場合はわたくしが出ますので! 宿はどちらにお泊りでしょうか?」
「インフィニティって宿ですよ。この闘技場の近くの」
「まぁ、それでは同じ宿だったのですね。後ほどお伺いしますわ。それでは」
ふわりと挨拶をしてミリルは去っていった。
メルザがじとーっとした目で見ている。
メルザの頭を撫でてやった。
「メルザ、相手強かっただろ。しかも二回連続で」
「あぁ、一回戦の奴がやばくてよ。負けるかと思ったが
あいつも俺様に、まさか
こんな奴がいるとは……とかいいながら倒れてった。
二回戦目のやつの実力はよくわからなかったからよ」
「ライラロさんに聞いたらどっちも優勝候補だそうだ。
心配してたぞ」
「師匠が……へへっそれならお仕置きは軽くですみそうだ」
少しほっとした表情でにははと笑うメルザ。無理してんな。
「ほら、おぶってやるから宿に帰るぞ」
「うん……なぁルイン。ポイント足りるとこまでいけなくてごめん」
「絶対言うと思ったよ。全く気にすることない。
俺は負けないからな。相手がサイクロプスだとしてもだ」
そう言うと軽いメルザを背負い上げて、宿に戻っていった。
本選メンバーが出そろう。
四日後の本選チケットがそれぞれに渡された。
明日は遠距離戦の試合が行われるので
メルザの試合を見に行く予定だ。
宿に戻るとメルザがぷーっと顔を膨らませて待っていた。
「ど、どうしたメルザ」
「ふーんだ、あのアイドルとかいうのに握手されて嬉しかったんだろーよ!」
「いや、全然嬉しくないというか試合の邪魔だったというか
握手はしてないぞ」
「ふーんだ」
あれ、機嫌を直してもらえないな……そうだ。
「それよりメルザ、絶解呪の書は後五百ポイントで取れるみたいだぞ」
「ほんとか! じゃあもうちょっとじゃねーかよ。よかったー……あっ」
直ぐ普通に戻るあたり怒ってはいないな。構って欲しかったのか。
我が主ながら可愛いやつめ。
メルザはぷいっと横を向くと「もうじき飯だぞ」と走っていった。
翌朝、同様に司会が挨拶をする。
第一回線のDブロックでメルザの一回戦が始まる……が、相手が強いのかかなり苦戦しているようだ。
どうにかエレメンタルまで展開して相手を場外に落としたが、ギリギリの戦いにみえた。
初戦でそこまでの戦いだと、次の二回戦目が心配だ。
ライラロさんが隣にいつの間にかいたので聞いてみる。
「あれは相手が悪いわね。メディルの次男でビスタよ。
むしろビスタによく勝てたわねあの子。満身創痍だけど。
今大会遠距離部門での優勝候補だったのよ、彼」
そんな相手に一回戦目からあたるとは、メルザも俺に負けず劣らず運がない。
俺たちは不運同士が引き合わさってる気もするしな。
後で頭をじっくり撫でてやろう。
昼が回り次のメルザの戦う番になった。
明らかに疲労を残している動きだ。
「ねぇあの子、呪いか何かにかかってるのかしら?」
「いや、そんなことはないと思うけど」
「次の相手、またメディルの子よ?
ブルネイ。ビスタとブルネイはどっちも優勝候補よ。
あれじゃ幾ら何でも勝てないわ……」
メルザは必死に応戦したが、最後は膝をついて降参した。
俺は控室に戻ったメルザのとこにいく。
「メルザ、大丈夫か?」
「あら、あなたはこの子のお友達でしょうか?」
そこには知らない美しい女性が一人いた。
カチューシャのようなものを頭につけていて
長い槍をたずさえている。
「おう、ルイン。聞いてくれよ。こいつは前に話してた
俺様を助けてくれた竜騎士団のミリルっていうんだ」
誰だったかを思い返す。
確かメルザを巨大なサイクロプスから逃がしてくれた竜騎士団の人だったか?
「メルザがお世話になったようで、ありがとうございます」
「いえ、二回戦目でしたがあなたの試合拝見いたしました。
お強いですわね。わたくしではかなわないでしょう」
「そんなことは。やってみなければわかりませんよ」
「その……恥を忍んでお願いがあるのですが聞いてもらえませんか?」
「なんでしょう? 我が主の恩人の頼みでしたら出来る限り聞いてあげたいんですが」
そういうと腰を下ろして話を聞く。
「今大会、上位の景品に竜の卵があるのです。わたくしはそれを手に入れるために大会に参加しました。
ですが皆さん強すぎて到底わたくしでは勝ちあがれません。
どうか協力していただけないでしょうか……?」
「そういうことなら俺はもちろん。メルザもいいよな?」
「あぁ。俺様、今負けちまったけどな。団体戦できっと勝つ!」
「そういえば団体戦はメンバー不祥事に代わりがきくとのことです。もしお怪我
などした場合はわたくしが出ますので! 宿はどちらにお泊りでしょうか?」
「インフィニティって宿ですよ。この闘技場の近くの」
「まぁ、それでは同じ宿だったのですね。後ほどお伺いしますわ。それでは」
ふわりと挨拶をしてミリルは去っていった。
メルザがじとーっとした目で見ている。
メルザの頭を撫でてやった。
「メルザ、相手強かっただろ。しかも二回連続で」
「あぁ、一回戦の奴がやばくてよ。負けるかと思ったが
あいつも俺様に、まさか
こんな奴がいるとは……とかいいながら倒れてった。
二回戦目のやつの実力はよくわからなかったからよ」
「ライラロさんに聞いたらどっちも優勝候補だそうだ。
心配してたぞ」
「師匠が……へへっそれならお仕置きは軽くですみそうだ」
少しほっとした表情でにははと笑うメルザ。無理してんな。
「ほら、おぶってやるから宿に帰るぞ」
「うん……なぁルイン。ポイント足りるとこまでいけなくてごめん」
「絶対言うと思ったよ。全く気にすることない。
俺は負けないからな。相手がサイクロプスだとしてもだ」
そう言うと軽いメルザを背負い上げて、宿に戻っていった。
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