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第二章 闘技大会編 前編

第四十四話 急襲 船上での共闘集団戦

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「うわぁあああああああああああ!助けてくれっ!」
 突如甲板に悲鳴が鳴り響く。
 雨が降ってきたため俺たちは甲板から船室に戻っていた。

 その悲鳴を聞き、急ぎ俺とメルザ、ファナは武器を確認して甲板に向かう。

 甲板はまだ結構な雨が降っている。

そしてそこにはせっちゃ……スケルトンが武器を携えてこちらを見ている。
かなりの数だ! おいおい冗談じゃないぞ。この雨の中骨の急襲? 

「おいお前さん方。戦えるか?」
「ああ、一応。あんたらは?」
「いけるぜ。こっちは三人。そっちも三人……か?大会参加予定のものか?」
「一応そうだ」
「ならある程度実力が認められてるってことだな。
俺はシュウ、あっちはカイ、小さいのはヨナだ」
「……よろしく頼む……」
「よろしゅうに」
「俺はルイン、軽装がファナ、杖持ちがメルザだ」

 簡潔にわかりやすいよう説明した。

「スケルトンは全部で三十体。十体は他の奴らが戦ってる。
俺らで半分ずつ相手にするぞ」
「わかった。右側の骨は俺たちに任せてくれ」

 そう伝えると、メドレスから剣を引き抜く。
 本当は大会まで見せたくはなかったんだがな。

「随分と珍しい得物だな。あぁすまん、詮索する気はない」
「あぁ、気にしていない……こっちに気づいたようだ。いくぞ!」

 船上だと投擲物はあまり使えない。
 しかし対スケルトンならかなり相性のいい獲物だ。

 打撃を想定した相手がいたからこそ片方を格闘にしている。
 フラタニティを握りしめ、一気に間合いを詰めた。
 
 疾風の靴で地を蹴り正面から突っ込む。ここは他に道がない。 
 ファナは俺が突撃してから一呼吸置いて動き出す。練習通りだ。
 
 右手を左側に大きく逸らし、その間からファナの投擲ナイフが骨に炸裂する。
 アンビラルの投げナイフは投擲しても紐で手繰り寄せて再度放てる。
 実に理に適った武器だ。骨相手で若干効きづらいが、ナイフを
くらったスケルトン一体は吹っ飛んでいった。

 俺は振りかざした右手のカットラスを正面の骨に叩き込む。
 スケルトンは一撃のもと粉砕された。
 後続のスケルトンが所持した剣で攻撃しようとしてくるが、メルザの
土斗により出来上がった防壁で防がれる。
 
俺はくるりと防壁を回ってスケルトンに蹴りをいれる。
スケルトンをさらに一体バラバラにした。
 
 舞踏剣士になってから、回転蹴りの威力が半端じゃないほど上がった。
 舞踏する攻撃全般の威力があがるのか。

 次にフラタニティによる連続攻撃を入れる。
 殴りと蹴りと肘のガントレットによる三コンボを決めた。
 二体のスケルトンを仕留めて、ファナの吹き飛ばしたのを合わせて残りは六体。

 メルザの指はじきの合図により俺は一旦後ろに引く。燃斗の合図だ。

 この雨だとメルザの燃斗は少し威力が落ちるが、それでも
十分な業火を放つ。三体がバラバラになっていた。

「あとは私がやっていいかしら? ちょっと実践なまりしてるから」
「あぁ、無茶はするなよ」

 そう言うとファナは変身した。

 おいおい、アレは以前メルザを吹き飛ばしたでかい
イノシシじゃないか……? 
 巨大イノシシに変身したファナは一気に残り三体をばらばらに粉砕した。
 さすがだな。

 さてシュウ達は……おお、シュウは二刀流だな。
 カイは棍使いか。ヨナは……あれはなんだ? スケルトンを操作しているのか? 
 ちょっと武器の相性が悪そうだな。手伝うとしよう。

 ファナとメルザに指示してシュウ達の救援に向かう。

「悪い、ちょっと手間取った」
「気にするな。半分貰うよ」

 六匹のうち三匹を引き付ける。船の揺れがだいぶひどいな。
 速いとこ片付けよう……と思っていたら突然声が響く。

「不浄なる浄化の嵐 聖なる審判」

 えっ……骨が全部溶けるようにいなくなった。

「もう、何やってるのよ。沈んだらどうするわけ? 
早く呼びなさいよね」

 …俺たちの戦闘で船が相当揺れてたらしい。

「あの人は! 前々回のキング……いやクイーンライラロ!」

 シュウが驚いていた。確かに大会優勝者なら有名か……? 

 怪我した人を甲板から中に運び入れて、俺たちは船室に戻る。
 シュウ達も一緒だ

「先ほどは世話になった。改めて自己紹介をさせてくれ。
俺はシュウ。カッツェルの町からきた。
カイもヨナも一緒だ。闘技大会に向かう途中だったんだが
まさかこんなところで
ライラロさんにお目にかかれるとは」
「あら、カッツェルとは随分と遠くから来たのね。
大会で実力試しかしら?」
「いや、俺たちの町は貧しくて。賞金が目当てだ」
「そういえば今回の賞金は最大金貨三千枚らしいわね。
随分と奮発したわね」
「できる限り人を集めたいらしいです。過去で一番大きな大会に
なりそうですね」
「あらぁ、それじゃあなた達も気合をいれていかないとね」
「あぁ、俺たちも負ける気はない」
「両チームとも、さっきの船上戦を見る限りでは、まだまだ
不慣れな地形が多いわね。様々な地形になれる特訓もしておきなさい。
……それにしてもあのスケルトン、どこから出てきたのかしら」

 さすが戦闘スペシャリストだな。一見してそれがわかるとは。
 しかしライラロさんが言う通りあれってどこから出てきたんだ? 
 考えてもわからないか。

「全くだ。情けない所をお見せした」
「…精進いたす」
「うちもあの手の類を操るのは苦手でしてねぇ……」

 デイスペルに着くまで俺たちは、シュウさんと色々話をして過ごした。
 いよいよデイスペル国へ到着である。
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