18 / 1,085
第一部 主と紡ぐ道 第一章 出会い編
第十七話 静かなる裂け目にて
しおりを挟む
「この子、女の子……だな」
倒れた少女はおさげの髪に緑色の服を着ている。
「こいつ連れてとりあえずゴサクを助けようぜ!」
俺はメルザにそう言われて少女を担ぐが
ところどころ衣服が破れている……しまった。前が思い切りはだけている。
「バカ!」と言われて突き飛ばされる俺。不可抗力だ! 冤罪だ!
メルザは少女を片手で担ぐと少し引きずりながら歩き出した。
「見えてしまいました」
冷静に分析するなよセシル!
俺は後ろからメルザに続き裂け目に入る。
「おぬしらも大変だったんじゃのう。それでここに移り住んで
どのくらいになるんじゃ?」
「二年位だよ。じーちゃんはどこに住んでるの?」
「わしは主に拾われたばかりでのう。これから何処に行くかは
主次第じゃな。どうだ、お主も来るか? 頼んでみるぞい?」
「えー、いいのー! 姉ちゃんと一緒でいい?」
おかしいな。裂け目の中から爺さまと孫の和気あいあいな会話が聞こえるぞ。
「あ、姉ちゃんどうしたの!? ひどい傷じゃんか! 敵がきたから
ほふってくるって言ってたのに」
少年はこちらを睨むように見る。
奥にはカカシもいるようだ。やれやれ無事か。
「おめぇがゴサクをさらった犯人か! 覚悟しやがれ!」
「ひっ……怖いよぅ、爺ちゃん」
「主よ。子供を泣かせてはいかんぞ。よしよし……」
「ゴサクを助けに来たんだろ! 心配させやがって」
「そういえばわし、さらわれたんじゃったな。ふぇっふぇっふぇ」
カカシよ。メルザが燃斗を打ち込む前に謝るんだ。
「いやーすまんかった。じゃがわしなら大丈夫じゃ。
この子らも悪気はあったんじゃが悪い奴ではないかもしれん
とも言い難いが、大丈夫じゃ」
どとらかというと悪いで終わってる気がする。
「んで、こいつらはとりあえず何処かに突き出せばいいのかい?」
「そんな……謝るしちゃんと返すよ。僕たち生活が苦しくて。
町にいたときに門番と話してるのを聞いてさ。
意思のある生き物なんて思わなかったんだよ」
「わしが呆けている間に攫われそうになってのう。
地図に印だけ残したんじゃ。じゃが退屈だったんでそこの小僧と
話してたらついつい……な」
……この流れだとカカシは普通に連れていかれなかった可能性があるな。
この件はもしかしてカカシのせいか?
まぁひと様の部屋に勝手に入って物を持っていったらいけないな。
「んじゃよ、おめぇたちは今日から俺様の子分だ。
俺様の子分であり弟分でもあるルインに負けたんだ。
この女は俺様の所有物。おめえは盗んだ代わりとして
俺様の所有物だ。にはは!」
えーっと暴君かな? どのみちここに放っておくわけにもいかないか。
メルザのことだ。気に入った奴らの面倒は見たいんだろう。
「わしも主にそう提案しようと思っていたんじゃ。よかったな」
「本当に許してくれるの? 突き出されるかと思ってた。僕はニーメ。お姉ちゃんは
ファーフナー。よろしくね!」
そういうとニーメは一生懸命丁寧に挨拶しようとする。
「あ、お姉ちゃん服がびりびりだ。これお兄ちゃんがやったの……?」
違う、誤解だ! これは命を守るための代償だったんだ!
メルザとパモがジト目で見てくる。いやお前らだってやっただろ!
ニーメは奥から替えの服を取りに行き、姉に着せてやった。
お姉ちゃん思いのいい弟のようだ。
それから姉が迷惑をかけたと言い、俺に奥へ来るよう呼び掛けている。
「これ、ちょっと呪われてるけどあげるよ。呪いをどうにかしてからなら
使えると思うんだ。僕には呪いを解くお金も知識もないから」
お礼に呪いのアイテムをプレゼントって、やばい展開の時だよな。
俺はアナライズしてみることにした。落人の籠手の影響? か、以前より
詳しく調べられる気がする。
アンドヴァリの神聖腕輪(死呪XX不幸XX)【アーティファクト】
バッドステータス 幸運-99999 3歩事死25%
かつて神々がドワーフより奪ったとされる腕輪
極めて強い呪いがかかっており身に着けるものを
不幸のどん底に陥れる
その効力は神ですら危惧するとされる
アーティファクトは壊れる事がない
……とんでもない腕輪のようだ。見た目こそ美しいが
禍々しさがある。
メルザに身に着けないよう釘を刺しておこう。
俺は腕輪を受け取るとニーメにも説明をしておいた。
「そろそろ帰りました」
セシルにそう催促され、俺たちは宿に戻る道を急ぐことにした。
倒れた少女はおさげの髪に緑色の服を着ている。
「こいつ連れてとりあえずゴサクを助けようぜ!」
俺はメルザにそう言われて少女を担ぐが
ところどころ衣服が破れている……しまった。前が思い切りはだけている。
「バカ!」と言われて突き飛ばされる俺。不可抗力だ! 冤罪だ!
メルザは少女を片手で担ぐと少し引きずりながら歩き出した。
「見えてしまいました」
冷静に分析するなよセシル!
俺は後ろからメルザに続き裂け目に入る。
「おぬしらも大変だったんじゃのう。それでここに移り住んで
どのくらいになるんじゃ?」
「二年位だよ。じーちゃんはどこに住んでるの?」
「わしは主に拾われたばかりでのう。これから何処に行くかは
主次第じゃな。どうだ、お主も来るか? 頼んでみるぞい?」
「えー、いいのー! 姉ちゃんと一緒でいい?」
おかしいな。裂け目の中から爺さまと孫の和気あいあいな会話が聞こえるぞ。
「あ、姉ちゃんどうしたの!? ひどい傷じゃんか! 敵がきたから
ほふってくるって言ってたのに」
少年はこちらを睨むように見る。
奥にはカカシもいるようだ。やれやれ無事か。
「おめぇがゴサクをさらった犯人か! 覚悟しやがれ!」
「ひっ……怖いよぅ、爺ちゃん」
「主よ。子供を泣かせてはいかんぞ。よしよし……」
「ゴサクを助けに来たんだろ! 心配させやがって」
「そういえばわし、さらわれたんじゃったな。ふぇっふぇっふぇ」
カカシよ。メルザが燃斗を打ち込む前に謝るんだ。
「いやーすまんかった。じゃがわしなら大丈夫じゃ。
この子らも悪気はあったんじゃが悪い奴ではないかもしれん
とも言い難いが、大丈夫じゃ」
どとらかというと悪いで終わってる気がする。
「んで、こいつらはとりあえず何処かに突き出せばいいのかい?」
「そんな……謝るしちゃんと返すよ。僕たち生活が苦しくて。
町にいたときに門番と話してるのを聞いてさ。
意思のある生き物なんて思わなかったんだよ」
「わしが呆けている間に攫われそうになってのう。
地図に印だけ残したんじゃ。じゃが退屈だったんでそこの小僧と
話してたらついつい……な」
……この流れだとカカシは普通に連れていかれなかった可能性があるな。
この件はもしかしてカカシのせいか?
まぁひと様の部屋に勝手に入って物を持っていったらいけないな。
「んじゃよ、おめぇたちは今日から俺様の子分だ。
俺様の子分であり弟分でもあるルインに負けたんだ。
この女は俺様の所有物。おめえは盗んだ代わりとして
俺様の所有物だ。にはは!」
えーっと暴君かな? どのみちここに放っておくわけにもいかないか。
メルザのことだ。気に入った奴らの面倒は見たいんだろう。
「わしも主にそう提案しようと思っていたんじゃ。よかったな」
「本当に許してくれるの? 突き出されるかと思ってた。僕はニーメ。お姉ちゃんは
ファーフナー。よろしくね!」
そういうとニーメは一生懸命丁寧に挨拶しようとする。
「あ、お姉ちゃん服がびりびりだ。これお兄ちゃんがやったの……?」
違う、誤解だ! これは命を守るための代償だったんだ!
メルザとパモがジト目で見てくる。いやお前らだってやっただろ!
ニーメは奥から替えの服を取りに行き、姉に着せてやった。
お姉ちゃん思いのいい弟のようだ。
それから姉が迷惑をかけたと言い、俺に奥へ来るよう呼び掛けている。
「これ、ちょっと呪われてるけどあげるよ。呪いをどうにかしてからなら
使えると思うんだ。僕には呪いを解くお金も知識もないから」
お礼に呪いのアイテムをプレゼントって、やばい展開の時だよな。
俺はアナライズしてみることにした。落人の籠手の影響? か、以前より
詳しく調べられる気がする。
アンドヴァリの神聖腕輪(死呪XX不幸XX)【アーティファクト】
バッドステータス 幸運-99999 3歩事死25%
かつて神々がドワーフより奪ったとされる腕輪
極めて強い呪いがかかっており身に着けるものを
不幸のどん底に陥れる
その効力は神ですら危惧するとされる
アーティファクトは壊れる事がない
……とんでもない腕輪のようだ。見た目こそ美しいが
禍々しさがある。
メルザに身に着けないよう釘を刺しておこう。
俺は腕輪を受け取るとニーメにも説明をしておいた。
「そろそろ帰りました」
セシルにそう催促され、俺たちは宿に戻る道を急ぐことにした。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる