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「瀬っ乃生くーん」
週明けの月曜日、瀧の勤めるショッピングモールの従業員用のエレベーター前で先輩社員が元気よく声を掛けてくる。まだ七月の頭だというのに朝からうだるような暑さで参っていた瀧も明るい彼を見て笑顔を返す。
「おはようございます」
「いやー、瀬乃生くん今日もイケメンだねえ。あー、さわやか。暑さぶっ飛ぶわあ。しっかしこの暑さどうにかならん?」
やってきたエレベーターに乗り込み階数ボタンを押すと先輩社員はすかさず閉めるのボタンを連打する。
「このくそあちいのに狭いとこに、これ以上人入れたくないわ」
「ですね」
「そーいや、瀬乃生くん夏休みどうすんの?何連休?」
「土日入れて五連休です」
「どっか行くの?俺?俺はハワイ。なんかもー暑くって。どっか涼しいとこにすりゃよかったよー。で、瀬乃生くんは?」
「カルフォルニアに」
「いいねー!何?ディズニー?ハリウッド?サンタモニカ?グーグル?」
「いえ、ちょっと婚姻届を出しに」
あっさりした返事と合ってない内容に先輩社員は驚きの声を上げた。
「‥‥‥え?ちょお、待って!!聞いてないよ!!瀬乃生くん!!えっ、何?結婚のお相手外国人なの?国際結婚?!あれ?年上だったよね?いや、待ってそうじゃなくて、ん?何でわざわざ外国行くの?外国人と結婚しても向こうで届けって出す必要あった?あれ?ん?あれ?」
「はい、年上で今年30です。日本だと結婚できないので向こうで」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。瀬乃生くんってさ、え?え?!」
そのときエレベーターの扉が開き、驚いて動けない先輩社員のために瀧は開くボタンを押し続ける。
呆然としながらものろのろとエレベーターを降りた先輩社員は瀧の方へ振り向いた。
すこし聞きづらそうにぽりぽりと頭を掻く。
「あー‥、瀬乃生くんはあれ?夫を二つ書いて夫夫ってやつ?」
その言葉に瀧はヒューの顔を思い浮かべる。
今日は暑いから二人とも早く帰れたら一緒に冷やし中華を作ろうか。ヒューの好きな醤油味。辛子をたっぷり乗せたやつ。錦糸卵はちょっと自信がないからヒューに任せよう。
でもその前に部屋の掃除を軽くしとかないとな。土日は暑いからって外に出ずに家の中に居たのにほとんどベッドから出なかったから。
まあ、やり過ぎて埃だらけの部屋になったって別に構わない。ヒューがいればそれでいい。どこだって天国だよ。
大きく口を開き瀧は最高の笑顔で答えた。
「はい。外国人男性と結婚して夫夫になります!」
⌘おわり⌘
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