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春
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オメガとわかってから地獄だ。
中二のバース検査でそれがわかった時は吐くかと思った。
同い年で幼稚舎から一緒のあの二人とは出来が違うとわかっていたから自分はベータなのだと腹を括ってた。これでも十分、俺からしたら惨めだ。
俺は丸越 鼓太郎。老舗百貨店丸越の次男。両親、兄、弟、全員アルファ。
幼い頃から兄や弟と比べて軟弱だった俺を危惧して、両親は英才教育や習い事を詰め込んだ。俺も努力はした。それでも生まれ持った能力は覆らない。俺はアルファにはなれない。そう気づくのは遅くなかった。
それでも俺がオメガとわかるまで神楽も法正も仲良くしてくれていた。
「水」
俺が言うと神楽は自分の鞄から飲みかけのペットボトルを出す。
法正が薬を出す。
法正がいつも持ち歩いているウエットティッシュで綺麗に体を拭く。
「中はこのままで帰ってくださいね。お漏らししないよう、気をつけて」
「コタ、立てるか?」
五鐘堂 神楽。アルファのなかのアルファ。遡っても遡っても彼の直系はアルファしかいない。
中学から始めたラグビーはスタンドオフ。日頃は恵まれたその体躯で芝を走り回っている。
勿論、アルファの神楽はそんなことで成績を落としたりはしない。トップクラスにはいつも神楽の名がある。
巨大企業の役員には彼らの家系が多く従事し、五鐘堂の名を持つということはステイタスのそのものだ。
頭ひとつ俺より背の高い神楽に荷物を持ってもらい教室を出た。
今日は神楽が送ると言うので俺は送迎の車に乗り込む。
「鼓太郎、気をつけて帰ってくださいね」
獅子鳳山 法正。細い黒縁の眼鏡に目元まで切り揃えられた艶のある黒髪が揺れる。全国模試では一位を取るほどの実力の持ち主。身長も神楽と変わらず彼ほどでは無いが逞しい体は無駄な贅肉がない。
父親から学んだ狩猟が趣味で都内の一等地の広い敷地で何匹も猟犬を飼っている。
法正の家は旧華族の爵位を持ち、父親は軍事産業に従事している。
神楽の車に乗り込むと制服のベルトを緩めファスナーを下げられた。
「コタ、声聞かせて。もう一回」
中二のバース検査でそれがわかった時は吐くかと思った。
同い年で幼稚舎から一緒のあの二人とは出来が違うとわかっていたから自分はベータなのだと腹を括ってた。これでも十分、俺からしたら惨めだ。
俺は丸越 鼓太郎。老舗百貨店丸越の次男。両親、兄、弟、全員アルファ。
幼い頃から兄や弟と比べて軟弱だった俺を危惧して、両親は英才教育や習い事を詰め込んだ。俺も努力はした。それでも生まれ持った能力は覆らない。俺はアルファにはなれない。そう気づくのは遅くなかった。
それでも俺がオメガとわかるまで神楽も法正も仲良くしてくれていた。
「水」
俺が言うと神楽は自分の鞄から飲みかけのペットボトルを出す。
法正が薬を出す。
法正がいつも持ち歩いているウエットティッシュで綺麗に体を拭く。
「中はこのままで帰ってくださいね。お漏らししないよう、気をつけて」
「コタ、立てるか?」
五鐘堂 神楽。アルファのなかのアルファ。遡っても遡っても彼の直系はアルファしかいない。
中学から始めたラグビーはスタンドオフ。日頃は恵まれたその体躯で芝を走り回っている。
勿論、アルファの神楽はそんなことで成績を落としたりはしない。トップクラスにはいつも神楽の名がある。
巨大企業の役員には彼らの家系が多く従事し、五鐘堂の名を持つということはステイタスのそのものだ。
頭ひとつ俺より背の高い神楽に荷物を持ってもらい教室を出た。
今日は神楽が送ると言うので俺は送迎の車に乗り込む。
「鼓太郎、気をつけて帰ってくださいね」
獅子鳳山 法正。細い黒縁の眼鏡に目元まで切り揃えられた艶のある黒髪が揺れる。全国模試では一位を取るほどの実力の持ち主。身長も神楽と変わらず彼ほどでは無いが逞しい体は無駄な贅肉がない。
父親から学んだ狩猟が趣味で都内の一等地の広い敷地で何匹も猟犬を飼っている。
法正の家は旧華族の爵位を持ち、父親は軍事産業に従事している。
神楽の車に乗り込むと制服のベルトを緩めファスナーを下げられた。
「コタ、声聞かせて。もう一回」
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