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episode.11
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あの後「寝やすいからこのジャージもらう」とサイズは違うが、学校指定の同じジャージを持っているはずの梓杏にジャージを取られた。理久は腑に落ちなかったが口答えも出来ず言うことに従った。
そのせいで理久は新しいジャージを購入する羽目になったのだが、母親に上手い言い訳を思いつくことが出来ず「学校で無くした」と言うと、いじめられてるのではないかと心配された。
◇
理久がいつものように昇降口で梓杏を待っていると二年のロッカーで両脇に女の子に挟まれながら靴を履き替える梓杏が見えた。
「ねー、梓杏ー、とうちのパーティ来てよ」
左は柔らかいカラーのピンクのメッシュの入った髪型のかわいい感じの女の子。
「ハピバスデー歌ってよ」
右は黒髪ロングのきつめの美女で二人とも二年生だ。
梓杏は二人の誘いを遠回しに断わる。
「新堂もくんだろ?あいつでいいじゃん。歌上手いし」
「梓杏最近ぜんぜん遊んでくんないじゃん!」
「梓杏の歌聴きたい!」
「大勢のほうがとうちも喜ぶし!」
「新堂と梓杏で歌ってくれれば最高なんだけど!」
「まるみ達が先に行ってもう飾り付けしてるから!」
などと話す二人の女の子を引き連れて、理久のほうに梓杏がやってくる。ビジュアル的に美少女アイドルや、美少女を主人公にしたゲームのパッケージのような絵面の三人だ。そしてなかでも梓杏はセンターを飾るにふさわしい美少女ぶりだ。彼女たちも梓杏を同性の友達のように扱っているフシがある。
理久が三人にぺこりと頭を下げると黒髪ロングの美女が理久のそばに寄って来た。
「ねえねえ、駒井くん?だよね。今日さあ、とうちって子の誕生日のサプライズパーティ、カラオケですんの。駒井くんからも言ってよ。たまにはこっちにも来てって」
はっきり言って超絶タイプだ。目が彼女に釘付けになる。さらさらの流れるような黒髪、キツネっぽいすこしつり上がり気味の目、高くてスッと通った鼻と薄いくちびるのちょっと冷たそうな印象。
梓杏は女の子に目を奪われている理久を見てむっとする。
「江曽近、そいつに構わなくていいから」
江曽近と呼ばれた彼女は梓杏の言葉は無視して、理久のダッフルコートの袖をつんつんと優しく引っ張る。
「ね?」
江曽近は理久に少しだけ微笑みかけ同意を促す。理久は顔を真っ赤にしながら江曽近を見て何度もうなずいた。
「‥あ、はい。あの、俺、帰るんで、皆さんでパーティ、行ってください」
「‥‥行こうぜ。江曽近、ニカ」
二人に明るい笑みを向けると理久とは目も合わさずに梓杏は歩いて行ってしまう。江曽近とニカ(ちなみにニカの苗字は二階堂で江曽近は江曽近子が本名だ)は理久にバイバイと手を振ると、楽しそうに梓杏に話しながら去っていった。
舌打ちとか腹パンチとか来ると思ったがあっさりというより理久を無視して梓杏は友達と遊びに行ってしまった。理久は自分が行くように勧めたくせに、なんとなくさみしい気持ちになる。
理久の両親は共働きのため家に帰っても一人だ。中学生のころから鍵っ子で一人に慣れている理久だったが、近頃はもっぱら梓杏と過ごす時間が長く、そのせいか誰もいない家に帰る気持ちがなぜだか湧かなかった。
学校と家の間の駅で降りると目的もなくぶらぶらとする。家に帰れば梓杏に邪魔されることなく溜まったアニメや関連の動画などを満喫できるはずなのに、その気にならないのは逆に梓杏がいないと実感してしまうからなのだろうか。理久はそんなことを考えながらとぼとぼ歩く。
ずいぶんと歩いてしまい、このまえ梓杏と遊んだ商店街にまで来てしまった。もう少し歩けばこの前二人で寄ったファストフードの店がある。そういえば腹も減った。
他の選択肢を考えるのも面倒くさかった理久はその店に入り、トマトのソースがたっぷり入ったハンバーガーのセットを頼む。梓杏がパーティに行ってしまった時のそっけない態度がずっと心の隅で引っかかっている。今までだって梓杏はたまに友達と遊びに行く日があったし、そういう時は「行って来んな」とか「じゃあな」とか何とか言って軽く肩にパンチとかキックとかしてきてたのに。
行ってくださいって言ったのは自分だけど、そのあと幽霊みたく無視しなくてもいいと思う。それに友達の誕生日パーティだったみたいだし、自分が遠慮するのは当たり前の気もする。それとも何か梓杏の気に食わないことでもしたのだろうか?
梓杏のことを考えたく無くて家に帰らなかったはずなのに、梓杏のことばっかり考えてしまう自分にため息をつくとポケットの中のスマホが鳴った。すぐ分かるよう音が鳴る設定にしてあるのは一人だけだ。理久は急いでポケットに手を突っ込むとスマホを取り出し画面を開いた。
そのせいで理久は新しいジャージを購入する羽目になったのだが、母親に上手い言い訳を思いつくことが出来ず「学校で無くした」と言うと、いじめられてるのではないかと心配された。
◇
理久がいつものように昇降口で梓杏を待っていると二年のロッカーで両脇に女の子に挟まれながら靴を履き替える梓杏が見えた。
「ねー、梓杏ー、とうちのパーティ来てよ」
左は柔らかいカラーのピンクのメッシュの入った髪型のかわいい感じの女の子。
「ハピバスデー歌ってよ」
右は黒髪ロングのきつめの美女で二人とも二年生だ。
梓杏は二人の誘いを遠回しに断わる。
「新堂もくんだろ?あいつでいいじゃん。歌上手いし」
「梓杏最近ぜんぜん遊んでくんないじゃん!」
「梓杏の歌聴きたい!」
「大勢のほうがとうちも喜ぶし!」
「新堂と梓杏で歌ってくれれば最高なんだけど!」
「まるみ達が先に行ってもう飾り付けしてるから!」
などと話す二人の女の子を引き連れて、理久のほうに梓杏がやってくる。ビジュアル的に美少女アイドルや、美少女を主人公にしたゲームのパッケージのような絵面の三人だ。そしてなかでも梓杏はセンターを飾るにふさわしい美少女ぶりだ。彼女たちも梓杏を同性の友達のように扱っているフシがある。
理久が三人にぺこりと頭を下げると黒髪ロングの美女が理久のそばに寄って来た。
「ねえねえ、駒井くん?だよね。今日さあ、とうちって子の誕生日のサプライズパーティ、カラオケですんの。駒井くんからも言ってよ。たまにはこっちにも来てって」
はっきり言って超絶タイプだ。目が彼女に釘付けになる。さらさらの流れるような黒髪、キツネっぽいすこしつり上がり気味の目、高くてスッと通った鼻と薄いくちびるのちょっと冷たそうな印象。
梓杏は女の子に目を奪われている理久を見てむっとする。
「江曽近、そいつに構わなくていいから」
江曽近と呼ばれた彼女は梓杏の言葉は無視して、理久のダッフルコートの袖をつんつんと優しく引っ張る。
「ね?」
江曽近は理久に少しだけ微笑みかけ同意を促す。理久は顔を真っ赤にしながら江曽近を見て何度もうなずいた。
「‥あ、はい。あの、俺、帰るんで、皆さんでパーティ、行ってください」
「‥‥行こうぜ。江曽近、ニカ」
二人に明るい笑みを向けると理久とは目も合わさずに梓杏は歩いて行ってしまう。江曽近とニカ(ちなみにニカの苗字は二階堂で江曽近は江曽近子が本名だ)は理久にバイバイと手を振ると、楽しそうに梓杏に話しながら去っていった。
舌打ちとか腹パンチとか来ると思ったがあっさりというより理久を無視して梓杏は友達と遊びに行ってしまった。理久は自分が行くように勧めたくせに、なんとなくさみしい気持ちになる。
理久の両親は共働きのため家に帰っても一人だ。中学生のころから鍵っ子で一人に慣れている理久だったが、近頃はもっぱら梓杏と過ごす時間が長く、そのせいか誰もいない家に帰る気持ちがなぜだか湧かなかった。
学校と家の間の駅で降りると目的もなくぶらぶらとする。家に帰れば梓杏に邪魔されることなく溜まったアニメや関連の動画などを満喫できるはずなのに、その気にならないのは逆に梓杏がいないと実感してしまうからなのだろうか。理久はそんなことを考えながらとぼとぼ歩く。
ずいぶんと歩いてしまい、このまえ梓杏と遊んだ商店街にまで来てしまった。もう少し歩けばこの前二人で寄ったファストフードの店がある。そういえば腹も減った。
他の選択肢を考えるのも面倒くさかった理久はその店に入り、トマトのソースがたっぷり入ったハンバーガーのセットを頼む。梓杏がパーティに行ってしまった時のそっけない態度がずっと心の隅で引っかかっている。今までだって梓杏はたまに友達と遊びに行く日があったし、そういう時は「行って来んな」とか「じゃあな」とか何とか言って軽く肩にパンチとかキックとかしてきてたのに。
行ってくださいって言ったのは自分だけど、そのあと幽霊みたく無視しなくてもいいと思う。それに友達の誕生日パーティだったみたいだし、自分が遠慮するのは当たり前の気もする。それとも何か梓杏の気に食わないことでもしたのだろうか?
梓杏のことを考えたく無くて家に帰らなかったはずなのに、梓杏のことばっかり考えてしまう自分にため息をつくとポケットの中のスマホが鳴った。すぐ分かるよう音が鳴る設定にしてあるのは一人だけだ。理久は急いでポケットに手を突っ込むとスマホを取り出し画面を開いた。
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