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第4部 アマランタイン
第4章 語られる事もなき叙事詩 5
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何もかも失った。
自分たちをここまで追い詰めたすべての元凶はなくなったかもしれない。けれど、失った心の平穏は、その代償は計り知れない。
深い闇がトリニティの足もとに広がって、彼女を飲み込もうとしていた。
そのとき。
「──これでおしまい?」
場にそぐわぬその声は、つまらなさそうにそう言った。
「ずいぶんあっさりと終わっちゃったのねぇ。──あら! やぁねぇ! そんな風に睨まないでくれるかしら。あたしはあなたと違って、その二人に何の未練も憐憫もないんだから」
マダム・ペリペが迷惑そうに両手をあげた。その言葉を聞いたトリニティは湧き上がるような激しい怒りを感じて、マダム・ぺリぺを睨みあげた。
マダムはトリニティの怒りをさらに煽ると知っていて尚、はぐらかすように上げたその掌をひらひらと動かした。
その信じられないような無神経ぶりに、トリニティは頭が真っ白になった。
悪魔はそういう生き物なのだと分かってはいても、怒りで理性が溶けてしまいそうだ。
そんなトリニティの気持をおそらく知っていて尚、マダムは美しい唇をつまらなさそうに尖らせた──まるでトリニティの気持ちをいたぶるかのように。
「──これがあなたの見せてくれた事? あたし達があなたについてここへ来たのは、確か、あなたが作り出す未来を見せて貰う為だったはず。だけどこれじゃあ……ちょっとお粗末だったわねぇ。とてもじゃないけど、合格点はあげられないわ」
嫌みたっぷりなその言葉に、天使アブリエルが思わず口を開いた。
「──マダム!」
「あら、なによぅ。あんた、下級天使のくせに、あたしに意見しようっていうの?」
マダム・ペリペに冷たく睨みつけられても、アブリエルは怯んだ様子を見せなかった。
「だって、事実じゃない──。これじゃ、何の解決にもなっていないわ。確かに、悪の黒幕は死んだ。最低の偽王も死んだ。……でも、それはあなたが何かをした結果じゃあないわ」
トリニティはきつく唇を噛んだ。
──その通りだ。
何とかしたかった。
こんな自分に何が出来るとも分からなかったが、それでもどうにかしたかった。
誰かを助けたかった。──妹を。勇者を。自分を信じてくれた人々を。
何もかもすべてが、一気に視界が開けるかのように解決する事なんてあり得ないことは、充分に承知していたが、それでも何かをせずにはいられなかった。
行動することで、何かが少しでも変わるかもしれないなら。少しでも良い方策が見つかるかもしれないなら。そう思うと、体を動かさずにはいられなかったのだ。
だから、何かに突き動かされるようにここまで走り続けてきた。
──でも──。
トリニティの胸の内に、ひどく苦いものが広がった。心が押しつぶされそうだ。体がとても重かった。
……結局また、自分は何もできなかった。
いつもそうだ。
現実はいつもひどく手厳しく自分を襲う。……いや……襲ったりなどしない……運命はいつもあざ笑うかのようにトリニティの周囲に吹き荒れ、自分の周りをことごとく破壊し、奪い去っていく。ひどく荒々しく、容赦のない方法で。
トリニティはただ、吹き荒れる嵐の中心で無力に抗うだけだ。自分が膝をつき倒れ込んでしまわないように抗うのが精いっぱいだ。嵐の中に奪い去られていく人を誰か一人でも助けられたことなどない。
ただの一度も、なかった。
胸が押しつぶされそうになりながら、トリニティは折り重なるようにして倒れ込む妹と勇者の姿に目をやった。涙が滲んできた。最後の家族をこんな形で失ったことが悲しいのか、それとも自分のあまりの無力さが悲しいのか。どちらかわからなかった。
「そりゃあ、結果としては、これで事は解決したわけだわよね?」マダムが言った。「国を最悪の状態に導いて、国民が反乱まで起こした王は死んだんだもの。国民の立場としては、これでオッケーって言うことだわ」
まるでマダムの言葉を待っていたかのように、主塔の方から歓声がわきあがった。城の奥まった中庭にまでその声が聞こえた。
「──人々の声が……」
弾かれるようにそちらを振り仰ぎ、アブリエルガ呟いた。
「主塔が……陥落したのですね……」
トリニティはのろのろと顔をあげて主塔のある方向を振り仰いだ。
ついに民衆が、玉座を奪った──。
「あれが」荒い呼吸を繰り返しながら息を整えていたアレクシスが口を開いた。「あれが答えだ」
マダム・ペリペが美しい柳眉を跳ね上げた。
「グラディス。おまえはトリニティに『見せてみろ』と言ったな。……あれが、その答えだ」
「どういうこと──? 民衆が玉座を奪ったのが答えですって?」
マダムの答えに、アレクシスが僅かに唇の端で笑った。苦笑しているようにも、嘲笑っているようにも見えた。それを見てとったのだろう、マダム・ペリペが怒ったように腰に手をあてた。アレクシスがそっと呟いた。
「……あんたには分からないか……」
「何よ! あたしを馬鹿にしようっていうの!?」
荒々しく怒りだしたマダムに、アレクシスは首を振った。
「分からないなら説明してやる」
「聞いてやろうじゃないのよ!」
「──開国以来、ただの一度の内乱もなかったこの国の民が、内乱を起こし玉座を王の手から奪ったんだ。それがどういうことか分かるか?」
「もちろん分かるわよ!」
腰に手を当て、怒りもあらわに胸をそらすマダムに、アレクシスは小さく吐息をついた。
「あんたたちの悪いところは、事実をありのままにしか見ないし、受け取らないところだな……」
アレクシスはトリニティの肩を押すと、足を引きずるように歩みを進めた。
「他国では王が民衆の手によって追い出され、その首がすげ替えられることはそれ程珍しいことじゃない。小国で政治が不安定な国ほどその傾向は強く、特に天の争いごとによって地上が荒れている現在は、地上のどの国もそんな状態なのは、あんたも知ってるな」
「ええ……! もちろん……!!」
「ところがこの国は違っていた。イシリの盟約によって生まれたこの国は、イシリの意志のある間だけ存続する。だから、内乱など起きた事がなかった」
「ああ……」悪魔ディーバが意味ありげに呟いた。「成程。そういうことか」
「そういうことって……どういうことですか?」
胡乱な問いを口にのぼらせたアブリエルをディーバはせせら笑った。
「馬鹿な人間どもにしちゃ、ひどく利口だ。正しい選択だって事さ」
「だから──どういう……」
「分からないか? この国の国民は、馬鹿じゃなかったって事だ……いや……イシリの事を『女神』だなんだと崇め奉ってても、実はちゃんと相手が『悪魔』なんだって事を理解して立って事だな」
アレクシスは頷いた。
「そうだ。この国が『在る』ことができるのは魔王イシリの気分が許している間だけ──この国の民は、ちゃんとそれを知っていた」
「理解してた上で、利用してたってこったろ? イシリの意思に逆らわない限りは、この国は無くならない。興亡を繰り返す他国のように滅びることもない。平たく言えば……制限つきだが、うまく扱えば国の永続は保障されてるってことだ」
「だから内乱など起きなかったというのですね……? その為には、この国の王は初代王の血脈でなければならなかったという事……。だからその玉座を奪った執政王家も旧王家の血脈を継ごうとしたと……」
アブリエルが言葉を継ぐと、アレクシスが頷いた。
「そうだ。だがそれも……」
「──それも、もうおしまいよ!」マダムが高らかに言った。そして、辺りを睥睨しながら睨みつけた。
「所詮この国の人間も他の国と同じ、愚かだったという事だわ! その引き金を引いたのは」人差し指をトリニティにつきつける。「あなただということね!」
魔王の暗黒の瞳に正面から睨みつけられてトリニティは息を飲んだ。
「──おめでとう! あなたのおかげでこの国は滅ぶんだわ!」
その瞳の闇があまりにも真っ暗で、塗り込めたように底が見えなくて、トリニティは思わず心の中で言い訳を呟いていた。
──でも、この国にはアレクがいるわ。初代王の血を引いた……。
「それがなんだっていうのっ!?」
心を呼んでいるかのようにマダムが声を張り上げた。
「あたしにとって大切なのはあの男だけよ! アレクなんてどうでもいい事だわ!」
──それに、この国の民はもう限界だったわ。反乱が起きなければ、あのままではこの国から人間が一人もいなくなってしまうと思うほどだった……。
「どのみち滅ぶんだったら、『自ら滅ぶ』よりも『滅ぼされる』方がましだったんじゃないの?」
──そんなことはないわ。あのままだったら滅ぼされるだけだったかもしれないけど、自分たちから行動したら、何か違う別の道が見つかるかもしれないもの。
「でも見つからないかもしれない。あのままの方がよかったんじゃないの? どのみち、本当に国民一人残らず皆殺しにされることなんでありえないんだもの!」
そうだ。
本当にそうだ。──マダムの言う通りだ。
「あ……」
耐えきれなくなって、トリニティは苦しげな声を漏らした。どれも自分が考えたことがある事だけに、その言葉に余計に胸が貫かれた。反論したがったが反論できなかった。
「ほら御覧なさい! 事実でしょ? だから何も言えない! 事実をありのままにしか見ないし受け取らないところが悪いって、何よ、それ!」
マダムの声がヒステリックに響いた。トリニティの心を粉々に砕こうとするかのように激しく責め立てる声が続く。
その声をこれ以上聞いていたくなかった。身体が焼けるようだ。
「──それが事実じゃない! それだけが、真実じゃないの! この国の行く末に止めを刺したのが、この娘だってことが事実なんでしょ!」
「この連中も同じよ!!」マダムの矛先はトリニティだけでなく地面に横たわる二つの遺体にも及んだ。
「本っ当に、馬鹿としか言いようがないわよね! だってそうでしょ? ミイラ取りがミイラになって、挙句の果てに二人ともこんな惨めで無様な死に方をするなんて! この国の人間をそれこそ山のように殺しておきながら、その理由がこんな単純な──」
「──やめてっ!!」
トリニティは叫んだ。
「やめて頂戴っ!! そんな言い方をするなんて!!」
マダム・ペリペが冷めた目で言い放った。
「だって事実じゃない」
その言葉にトリニティは激しくかぶりを振った。
「違う! 違うわ!!」
「──違わないでしょ」
「違うわっ!!」
トリニティは両手で顔を覆った。本当は、耳も塞いでしまいたかった。
マダム・ペリペの言葉は事実だ。それは純然たる事実で、一欠けらの言い訳を挟む余地もないことはトリニティにだってわかっていた。
でも──違うのだ。
そんな風に言って欲しくなかった。自分の事はまだいい。だが、あの二人の事をそんな風に言われたくなかった。
彼らは生きたのだ。
自分の信じる道に従って。与えられた、限られた人生の中を。
選択肢は僅かしかなかったかもしれないけれど、その中から自分自身が選んだ道を貫き通したのだ。
そうして……生きて……死んでいった彼らを……赤の他人が、そんな風に言うのはあまりにも辛い。許せないとさえ思った。
──だが何故だろう。
ヒステリックに責め立てるマダムの声が泣いているようにも聞こえるのは。
……そしてなぜ、自分はそんな風に思うのだろうか。
なぜマダムの声は泣いているように聞こえるのだろうか。
自分が──泣きたいからなのだろうか。
「そいつは違うな」
トリニティが、もうこれ以上は耐えきれないと思ったとき。低く響く声でアレクシスが言った。
マダムは息を飲んで押し黙った。握りしめた掌がひるんだように震えた。
「な……何よ? 何が違うっていうのよ?」
「あんたは本当に人間ってものを分かっちゃいない」
アレクシスの大きな手が励ますようにトリニティの肩に置かれた。
「おかしなもんだ。あんたはもう随分長いこと地上で暮らしているはずなのにな」
アレクシスの言葉に、マダムがむっとしたのがトリニティにもわかった。いつも豪奢で妖艶な笑みを浮かべて、自分達とは違う高みから嘲笑うような目線でこちらを眺めていた彼女が、初めて、自分達と同じ高さにまで降りてきたような感覚を感じた。
「あんたの大事な男は、国を残してこの世を去るときに何て言った? グラディス? ──国を頼む、か? それとも、これから先も見守っていてくれ……か?」
アレクシスの言葉に、マダム・ペリペの眉間に深い皺が刻まれた。
「──何かを言われたんだろう? だからあんたは地上に残った。天に帰る事を選ぶ事だって出来たはずなのに」
「……そうよ」マダムが固く緊張した声を絞りだした。「確かに言われたわ」
「あんた達の世界じゃどうかは知らないが」アレクシスは言いながら目線をアブリエルの方へと移した。「俺達の世界じゃ、そんなシチュエーションのとき『見守っていてくれ』と言われ場合は、言葉通りの意味じゃぁない。ただ単に『見ている』だけじゃないんだ。『守る』のウェイトの方が大きい」
少し離れた場所から成長を見守り、困ったときは自分達で解決できないで途方にくれているときは後ろからそっと手を差し伸べる。……そんな視線で。
「私達もそれは同じです」
アブリエルが頷いた。
「……だからあんたは、過去に何度かあったこの国の危機にも助けの手を差し伸べた。違うか?」
「そうよ」マダム・ペリペが息を吸い込んで、胸をそらせた。
「でも、今度は違う。──今までとは一緒じゃないわ。だってこの国の『王』はもう、あいつの子孫じゃないもの! あたしに、そんな連中を助けなきゃならないような義理はないっ!!」
「そうだな……」アレクシスが静かに口を開いた。「……だが、そんなに答えを急ぐ必要なんてないはずだ……。あんたは『見せてみろ』と言った。だから……この国の行く末を、ちゃんと最後まで見てから決めたっていいんじゃないのか」
深く、沈みこむように。静かに響くその声に、トリニティは胸が熱くなるのを感じた。アレクシスのその言葉は、女神イシリに『トリニティを信じてやれ』と言っているのだと感じたからだ。どこまで出来るものか信じて最後まで見てやれと。
隣にいてそれまで押し黙ったままだった魔王ブラックファイアが後ろを振り返った。
「新しい客が来たようだ」
その視線の先には、走ってこちらへ向かってくるルイスの姿があった。それを見たアレクシスが唇の端でかすかに笑んだ。
「『答え』が来たな」
「──え?」
振り仰いだトリニティの肩に、もう一度しっかりとアレクシスの手が置かれる。
「行け。──行って、この国の未来を開いて来い」
(続く)
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| 「語バラ(裏)」
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『裏』 3分間クッキング
デ:「今日も『3分間クッキング』の時間がやってきたぞ」
(台本をめくりながら)
デ:「……『も』ってなんだ、? いつもやってるのか? こんなもん……」
デ:「ええと……何々? 今日のレシピは……」
デ:「『夏にぴったり! 夏野菜のパエリア』だ」
(棒読み。しかも嫌そう)
デ:「鉄板で焼くのか。……くそ。何が夏にピッタリだ。クソ熱いじゃないか。まてよっ……熱いところが『夏』なのかっ!?」
デ:「くそ。何で俺がこんなことしなけりゃならないんだっ? ……それもこれもみんなあいつのせいだ。あの野郎……あのクズ天使め……」
デ:「あいつに料理の才能がないのが何もかも悪いんだ」
デ:「しょうがない。こんなことはさっさと終わらせて……と。何々……火を入れて、材料を炒めるのか。あとは炊き込め、と」
(材料を全て鍋に入れて、擦ったマッチごと火を投入!)
デ:「……ん……? なんだ? マッチ一本くらいじゃ、火なんてつかないじゃないか。たく、めんどくせぇ」
(箱の中のマッチを全部握り締めて、擦った。一斉に火勢があがり、短い軸があっという間に燃え尽きる)
デ:「あちちっ……!」
(慌てて手を離すと、火のついたマッチの束は鍋の中に落下。それをじっと見つめる)
デ:「…………ぜんぜん駄目じゃん。火なんてつかないぜ?」
(そりゃ、まぁねぇ)
デ:「大体、こんだけ湿気た材料に火なんてつくわけないか。考えりゃ分かるよな。…………じゃ、人間どもはいつもどうやって火をつけてるんだ?」
(火をつけるのは、そこじゃないからね)
デ:「くそっ……! イライラしてきた……!!」
(どうしても鍋の中の材料に火をつけたいんだね)
デ:「……! よし……! 要するに、火がついて、焚きあがったらいいんだろっ……!!」
(『焚きあがる』じゃなくって、『炊き上がる』だってば)
デ:「『嘆きの炎』っ!!!」
(鍋、鍋ごと焦げてますっ…………!!!)
(!!!!!!!!)
(!!!!!!!!)
(!!!!!!!!)
デ:「………………………………」
(……………………)
デ:「………………………………」
(……………………)
デ:「……ああ……。どうせ、俺は人間の食いもんなんて食わねぇし。……味見するまでもないか……」
デ:「しかしなんだな。人間てのは変わったモンを食うんだな。なんていうか、前に宿屋で出された料理はもうちょっと違う感じだったけどな」
デ:「…………………………しかし…………………………」
デ:「出来上がった料理があのクソ天使のと大差ないように見えるのだけは癪にさわるか……な」
自分たちをここまで追い詰めたすべての元凶はなくなったかもしれない。けれど、失った心の平穏は、その代償は計り知れない。
深い闇がトリニティの足もとに広がって、彼女を飲み込もうとしていた。
そのとき。
「──これでおしまい?」
場にそぐわぬその声は、つまらなさそうにそう言った。
「ずいぶんあっさりと終わっちゃったのねぇ。──あら! やぁねぇ! そんな風に睨まないでくれるかしら。あたしはあなたと違って、その二人に何の未練も憐憫もないんだから」
マダム・ペリペが迷惑そうに両手をあげた。その言葉を聞いたトリニティは湧き上がるような激しい怒りを感じて、マダム・ぺリぺを睨みあげた。
マダムはトリニティの怒りをさらに煽ると知っていて尚、はぐらかすように上げたその掌をひらひらと動かした。
その信じられないような無神経ぶりに、トリニティは頭が真っ白になった。
悪魔はそういう生き物なのだと分かってはいても、怒りで理性が溶けてしまいそうだ。
そんなトリニティの気持をおそらく知っていて尚、マダムは美しい唇をつまらなさそうに尖らせた──まるでトリニティの気持ちをいたぶるかのように。
「──これがあなたの見せてくれた事? あたし達があなたについてここへ来たのは、確か、あなたが作り出す未来を見せて貰う為だったはず。だけどこれじゃあ……ちょっとお粗末だったわねぇ。とてもじゃないけど、合格点はあげられないわ」
嫌みたっぷりなその言葉に、天使アブリエルが思わず口を開いた。
「──マダム!」
「あら、なによぅ。あんた、下級天使のくせに、あたしに意見しようっていうの?」
マダム・ペリペに冷たく睨みつけられても、アブリエルは怯んだ様子を見せなかった。
「だって、事実じゃない──。これじゃ、何の解決にもなっていないわ。確かに、悪の黒幕は死んだ。最低の偽王も死んだ。……でも、それはあなたが何かをした結果じゃあないわ」
トリニティはきつく唇を噛んだ。
──その通りだ。
何とかしたかった。
こんな自分に何が出来るとも分からなかったが、それでもどうにかしたかった。
誰かを助けたかった。──妹を。勇者を。自分を信じてくれた人々を。
何もかもすべてが、一気に視界が開けるかのように解決する事なんてあり得ないことは、充分に承知していたが、それでも何かをせずにはいられなかった。
行動することで、何かが少しでも変わるかもしれないなら。少しでも良い方策が見つかるかもしれないなら。そう思うと、体を動かさずにはいられなかったのだ。
だから、何かに突き動かされるようにここまで走り続けてきた。
──でも──。
トリニティの胸の内に、ひどく苦いものが広がった。心が押しつぶされそうだ。体がとても重かった。
……結局また、自分は何もできなかった。
いつもそうだ。
現実はいつもひどく手厳しく自分を襲う。……いや……襲ったりなどしない……運命はいつもあざ笑うかのようにトリニティの周囲に吹き荒れ、自分の周りをことごとく破壊し、奪い去っていく。ひどく荒々しく、容赦のない方法で。
トリニティはただ、吹き荒れる嵐の中心で無力に抗うだけだ。自分が膝をつき倒れ込んでしまわないように抗うのが精いっぱいだ。嵐の中に奪い去られていく人を誰か一人でも助けられたことなどない。
ただの一度も、なかった。
胸が押しつぶされそうになりながら、トリニティは折り重なるようにして倒れ込む妹と勇者の姿に目をやった。涙が滲んできた。最後の家族をこんな形で失ったことが悲しいのか、それとも自分のあまりの無力さが悲しいのか。どちらかわからなかった。
「そりゃあ、結果としては、これで事は解決したわけだわよね?」マダムが言った。「国を最悪の状態に導いて、国民が反乱まで起こした王は死んだんだもの。国民の立場としては、これでオッケーって言うことだわ」
まるでマダムの言葉を待っていたかのように、主塔の方から歓声がわきあがった。城の奥まった中庭にまでその声が聞こえた。
「──人々の声が……」
弾かれるようにそちらを振り仰ぎ、アブリエルガ呟いた。
「主塔が……陥落したのですね……」
トリニティはのろのろと顔をあげて主塔のある方向を振り仰いだ。
ついに民衆が、玉座を奪った──。
「あれが」荒い呼吸を繰り返しながら息を整えていたアレクシスが口を開いた。「あれが答えだ」
マダム・ペリペが美しい柳眉を跳ね上げた。
「グラディス。おまえはトリニティに『見せてみろ』と言ったな。……あれが、その答えだ」
「どういうこと──? 民衆が玉座を奪ったのが答えですって?」
マダムの答えに、アレクシスが僅かに唇の端で笑った。苦笑しているようにも、嘲笑っているようにも見えた。それを見てとったのだろう、マダム・ペリペが怒ったように腰に手をあてた。アレクシスがそっと呟いた。
「……あんたには分からないか……」
「何よ! あたしを馬鹿にしようっていうの!?」
荒々しく怒りだしたマダムに、アレクシスは首を振った。
「分からないなら説明してやる」
「聞いてやろうじゃないのよ!」
「──開国以来、ただの一度の内乱もなかったこの国の民が、内乱を起こし玉座を王の手から奪ったんだ。それがどういうことか分かるか?」
「もちろん分かるわよ!」
腰に手を当て、怒りもあらわに胸をそらすマダムに、アレクシスは小さく吐息をついた。
「あんたたちの悪いところは、事実をありのままにしか見ないし、受け取らないところだな……」
アレクシスはトリニティの肩を押すと、足を引きずるように歩みを進めた。
「他国では王が民衆の手によって追い出され、その首がすげ替えられることはそれ程珍しいことじゃない。小国で政治が不安定な国ほどその傾向は強く、特に天の争いごとによって地上が荒れている現在は、地上のどの国もそんな状態なのは、あんたも知ってるな」
「ええ……! もちろん……!!」
「ところがこの国は違っていた。イシリの盟約によって生まれたこの国は、イシリの意志のある間だけ存続する。だから、内乱など起きた事がなかった」
「ああ……」悪魔ディーバが意味ありげに呟いた。「成程。そういうことか」
「そういうことって……どういうことですか?」
胡乱な問いを口にのぼらせたアブリエルをディーバはせせら笑った。
「馬鹿な人間どもにしちゃ、ひどく利口だ。正しい選択だって事さ」
「だから──どういう……」
「分からないか? この国の国民は、馬鹿じゃなかったって事だ……いや……イシリの事を『女神』だなんだと崇め奉ってても、実はちゃんと相手が『悪魔』なんだって事を理解して立って事だな」
アレクシスは頷いた。
「そうだ。この国が『在る』ことができるのは魔王イシリの気分が許している間だけ──この国の民は、ちゃんとそれを知っていた」
「理解してた上で、利用してたってこったろ? イシリの意思に逆らわない限りは、この国は無くならない。興亡を繰り返す他国のように滅びることもない。平たく言えば……制限つきだが、うまく扱えば国の永続は保障されてるってことだ」
「だから内乱など起きなかったというのですね……? その為には、この国の王は初代王の血脈でなければならなかったという事……。だからその玉座を奪った執政王家も旧王家の血脈を継ごうとしたと……」
アブリエルが言葉を継ぐと、アレクシスが頷いた。
「そうだ。だがそれも……」
「──それも、もうおしまいよ!」マダムが高らかに言った。そして、辺りを睥睨しながら睨みつけた。
「所詮この国の人間も他の国と同じ、愚かだったという事だわ! その引き金を引いたのは」人差し指をトリニティにつきつける。「あなただということね!」
魔王の暗黒の瞳に正面から睨みつけられてトリニティは息を飲んだ。
「──おめでとう! あなたのおかげでこの国は滅ぶんだわ!」
その瞳の闇があまりにも真っ暗で、塗り込めたように底が見えなくて、トリニティは思わず心の中で言い訳を呟いていた。
──でも、この国にはアレクがいるわ。初代王の血を引いた……。
「それがなんだっていうのっ!?」
心を呼んでいるかのようにマダムが声を張り上げた。
「あたしにとって大切なのはあの男だけよ! アレクなんてどうでもいい事だわ!」
──それに、この国の民はもう限界だったわ。反乱が起きなければ、あのままではこの国から人間が一人もいなくなってしまうと思うほどだった……。
「どのみち滅ぶんだったら、『自ら滅ぶ』よりも『滅ぼされる』方がましだったんじゃないの?」
──そんなことはないわ。あのままだったら滅ぼされるだけだったかもしれないけど、自分たちから行動したら、何か違う別の道が見つかるかもしれないもの。
「でも見つからないかもしれない。あのままの方がよかったんじゃないの? どのみち、本当に国民一人残らず皆殺しにされることなんでありえないんだもの!」
そうだ。
本当にそうだ。──マダムの言う通りだ。
「あ……」
耐えきれなくなって、トリニティは苦しげな声を漏らした。どれも自分が考えたことがある事だけに、その言葉に余計に胸が貫かれた。反論したがったが反論できなかった。
「ほら御覧なさい! 事実でしょ? だから何も言えない! 事実をありのままにしか見ないし受け取らないところが悪いって、何よ、それ!」
マダムの声がヒステリックに響いた。トリニティの心を粉々に砕こうとするかのように激しく責め立てる声が続く。
その声をこれ以上聞いていたくなかった。身体が焼けるようだ。
「──それが事実じゃない! それだけが、真実じゃないの! この国の行く末に止めを刺したのが、この娘だってことが事実なんでしょ!」
「この連中も同じよ!!」マダムの矛先はトリニティだけでなく地面に横たわる二つの遺体にも及んだ。
「本っ当に、馬鹿としか言いようがないわよね! だってそうでしょ? ミイラ取りがミイラになって、挙句の果てに二人ともこんな惨めで無様な死に方をするなんて! この国の人間をそれこそ山のように殺しておきながら、その理由がこんな単純な──」
「──やめてっ!!」
トリニティは叫んだ。
「やめて頂戴っ!! そんな言い方をするなんて!!」
マダム・ペリペが冷めた目で言い放った。
「だって事実じゃない」
その言葉にトリニティは激しくかぶりを振った。
「違う! 違うわ!!」
「──違わないでしょ」
「違うわっ!!」
トリニティは両手で顔を覆った。本当は、耳も塞いでしまいたかった。
マダム・ペリペの言葉は事実だ。それは純然たる事実で、一欠けらの言い訳を挟む余地もないことはトリニティにだってわかっていた。
でも──違うのだ。
そんな風に言って欲しくなかった。自分の事はまだいい。だが、あの二人の事をそんな風に言われたくなかった。
彼らは生きたのだ。
自分の信じる道に従って。与えられた、限られた人生の中を。
選択肢は僅かしかなかったかもしれないけれど、その中から自分自身が選んだ道を貫き通したのだ。
そうして……生きて……死んでいった彼らを……赤の他人が、そんな風に言うのはあまりにも辛い。許せないとさえ思った。
──だが何故だろう。
ヒステリックに責め立てるマダムの声が泣いているようにも聞こえるのは。
……そしてなぜ、自分はそんな風に思うのだろうか。
なぜマダムの声は泣いているように聞こえるのだろうか。
自分が──泣きたいからなのだろうか。
「そいつは違うな」
トリニティが、もうこれ以上は耐えきれないと思ったとき。低く響く声でアレクシスが言った。
マダムは息を飲んで押し黙った。握りしめた掌がひるんだように震えた。
「な……何よ? 何が違うっていうのよ?」
「あんたは本当に人間ってものを分かっちゃいない」
アレクシスの大きな手が励ますようにトリニティの肩に置かれた。
「おかしなもんだ。あんたはもう随分長いこと地上で暮らしているはずなのにな」
アレクシスの言葉に、マダムがむっとしたのがトリニティにもわかった。いつも豪奢で妖艶な笑みを浮かべて、自分達とは違う高みから嘲笑うような目線でこちらを眺めていた彼女が、初めて、自分達と同じ高さにまで降りてきたような感覚を感じた。
「あんたの大事な男は、国を残してこの世を去るときに何て言った? グラディス? ──国を頼む、か? それとも、これから先も見守っていてくれ……か?」
アレクシスの言葉に、マダム・ペリペの眉間に深い皺が刻まれた。
「──何かを言われたんだろう? だからあんたは地上に残った。天に帰る事を選ぶ事だって出来たはずなのに」
「……そうよ」マダムが固く緊張した声を絞りだした。「確かに言われたわ」
「あんた達の世界じゃどうかは知らないが」アレクシスは言いながら目線をアブリエルの方へと移した。「俺達の世界じゃ、そんなシチュエーションのとき『見守っていてくれ』と言われ場合は、言葉通りの意味じゃぁない。ただ単に『見ている』だけじゃないんだ。『守る』のウェイトの方が大きい」
少し離れた場所から成長を見守り、困ったときは自分達で解決できないで途方にくれているときは後ろからそっと手を差し伸べる。……そんな視線で。
「私達もそれは同じです」
アブリエルが頷いた。
「……だからあんたは、過去に何度かあったこの国の危機にも助けの手を差し伸べた。違うか?」
「そうよ」マダム・ペリペが息を吸い込んで、胸をそらせた。
「でも、今度は違う。──今までとは一緒じゃないわ。だってこの国の『王』はもう、あいつの子孫じゃないもの! あたしに、そんな連中を助けなきゃならないような義理はないっ!!」
「そうだな……」アレクシスが静かに口を開いた。「……だが、そんなに答えを急ぐ必要なんてないはずだ……。あんたは『見せてみろ』と言った。だから……この国の行く末を、ちゃんと最後まで見てから決めたっていいんじゃないのか」
深く、沈みこむように。静かに響くその声に、トリニティは胸が熱くなるのを感じた。アレクシスのその言葉は、女神イシリに『トリニティを信じてやれ』と言っているのだと感じたからだ。どこまで出来るものか信じて最後まで見てやれと。
隣にいてそれまで押し黙ったままだった魔王ブラックファイアが後ろを振り返った。
「新しい客が来たようだ」
その視線の先には、走ってこちらへ向かってくるルイスの姿があった。それを見たアレクシスが唇の端でかすかに笑んだ。
「『答え』が来たな」
「──え?」
振り仰いだトリニティの肩に、もう一度しっかりとアレクシスの手が置かれる。
「行け。──行って、この国の未来を開いて来い」
(続く)
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| 「語バラ(裏)」
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『裏』 3分間クッキング
デ:「今日も『3分間クッキング』の時間がやってきたぞ」
(台本をめくりながら)
デ:「……『も』ってなんだ、? いつもやってるのか? こんなもん……」
デ:「ええと……何々? 今日のレシピは……」
デ:「『夏にぴったり! 夏野菜のパエリア』だ」
(棒読み。しかも嫌そう)
デ:「鉄板で焼くのか。……くそ。何が夏にピッタリだ。クソ熱いじゃないか。まてよっ……熱いところが『夏』なのかっ!?」
デ:「くそ。何で俺がこんなことしなけりゃならないんだっ? ……それもこれもみんなあいつのせいだ。あの野郎……あのクズ天使め……」
デ:「あいつに料理の才能がないのが何もかも悪いんだ」
デ:「しょうがない。こんなことはさっさと終わらせて……と。何々……火を入れて、材料を炒めるのか。あとは炊き込め、と」
(材料を全て鍋に入れて、擦ったマッチごと火を投入!)
デ:「……ん……? なんだ? マッチ一本くらいじゃ、火なんてつかないじゃないか。たく、めんどくせぇ」
(箱の中のマッチを全部握り締めて、擦った。一斉に火勢があがり、短い軸があっという間に燃え尽きる)
デ:「あちちっ……!」
(慌てて手を離すと、火のついたマッチの束は鍋の中に落下。それをじっと見つめる)
デ:「…………ぜんぜん駄目じゃん。火なんてつかないぜ?」
(そりゃ、まぁねぇ)
デ:「大体、こんだけ湿気た材料に火なんてつくわけないか。考えりゃ分かるよな。…………じゃ、人間どもはいつもどうやって火をつけてるんだ?」
(火をつけるのは、そこじゃないからね)
デ:「くそっ……! イライラしてきた……!!」
(どうしても鍋の中の材料に火をつけたいんだね)
デ:「……! よし……! 要するに、火がついて、焚きあがったらいいんだろっ……!!」
(『焚きあがる』じゃなくって、『炊き上がる』だってば)
デ:「『嘆きの炎』っ!!!」
(鍋、鍋ごと焦げてますっ…………!!!)
(!!!!!!!!)
(!!!!!!!!)
(!!!!!!!!)
デ:「………………………………」
(……………………)
デ:「………………………………」
(……………………)
デ:「……ああ……。どうせ、俺は人間の食いもんなんて食わねぇし。……味見するまでもないか……」
デ:「しかしなんだな。人間てのは変わったモンを食うんだな。なんていうか、前に宿屋で出された料理はもうちょっと違う感じだったけどな」
デ:「…………………………しかし…………………………」
デ:「出来上がった料理があのクソ天使のと大差ないように見えるのだけは癪にさわるか……な」
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