嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

文字の大きさ
上 下
9 / 15

迷探偵永遠

しおりを挟む
ガチャ……バタン
  俺はドアを開けて廊下へ出た。階段の上から下を見ると折り畳みの机の上に弁当とペットボトルのお茶が置いてあり、食べながら監視をしているようだ。

  丸刈りの男も高級寿司じゃない。やっぱり、スパイダーマンにボコボコにされたのか?  部屋にいる大学生2人も当然弁当だろうな。俺はラッキーだったのかも知れない。丸刈りの男と茶髪の男は話をしていないようだ。多分、他人なのだろう。

  俺は一応トイレに行くと隣に洗面台と風呂がある。風呂もあるじゃないか!  と驚いた。もちろん、王の部屋に風呂があるのは分かっているけど、俺は風呂無しと聞いていたので、来客用の風呂が無いと思っていたのだけど、あった。覗いてみると、かなりデカい。

  マジかよ~。何で入れないんだ?  いっそのこと、皆で裸の付き合いをすれば仲良くなれるのに。あっ、それは駄目だな。監視役が居なくなっちゃうからな。でも、交代で監視するんだから休憩の人が順番に入れるじゃないか。いや、それも駄目か……。顔を見られちゃうからな。良い風呂あるのに入れないのはショックだな~。

  俺は無類の風呂好きだ。風呂好きと言っても、家の風呂ではなく、温泉や銭湯などの大きな湯船で身体全体を伸ばして浸かるのが好きだった。この別荘にはかなり大きな湯船が有るようだ。
  俺が少し肩を落としながら部屋へ戻ろうとした時、ふとショーケースを見ると何か違和感があったので、2度見をする。

  フォークが無い!  先程まであった筈の純金製であろうフォークが無くなっている。明らかに取った奴がいる。誰だ?  ロマンスグレーの髪の執事が外出した時が怪しい。

  俺は階段を上がり、監視役の二人を見る。

  監視役の2人が1番怪しいとなるのか?  絶対に見ているだろうからな。ただ丸刈りの男は関係無い筈だから共犯では無く、ノータッチという感じなんだろうか?

  俺は一先ず自分の部屋へ戻る。 
ガチャ……バタン
  スマホを見ると山田さんから返信が入っていた。
『それはおかしいな。お前は西大空手部の坂井直樹って伝えてるからな。達人は見ただけで実力が分かるって言うからそれじゃないか?  (笑)』
俺は返信を送る。
『褒め言葉ととっておきますよ。それより、皆西大なんですか?  頭良いんですね』

  西大生のようなエリートなら、盗みを働いたりしないか……。となると丸刈りの男が本命になったな。彼だけ素性が分からない。茶髪の男にそれとなく聞いてみるか?  ただ、西大仲間の犯行だった場合、ややこしくなってしまう。どうしたものか……。

ガチャ……バタン
  俺は部屋を出た。
ガチャ……バタン
  すると直ぐに背の低い男も部屋を出て来て、手には食べ終わった空の弁当を持っている。しかも、純金製のフォークを持っている!  訳が分からないので、本人に聞いてみようと背の低い男に尋ねる。
「すみません」
「うん?」
背の低い男は無愛想に振り返る。
「そのフォークって……」
「ああ、俺、箸が使えないんだわ。だから、ちょうど良いフォークがあったんで借りたんだわ」
「……」
「これ、多分純金だわ。重さが違う。食べ難かったけど、普通の弁当でも高級感が味わえて旨かったわ」
背の低い男は俺にそう告げると洗面台にフォークを洗いに行った。

  な、何て図々しい奴なんだ。人の家の、しかも、超高級な食器を勝手に使うとは……。

  背の低い男は純金製のフォークをショーケースに返した。こうして、俺の勘違い探偵は幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...