5 / 9
高額当選
しおりを挟む
「宝くじ売り場では10万円は換金出来ないんだよ」
「えっ?!」
「10万円は高額当選扱いになるから、銀行じゃないと換金してもらえないんだ。その事を知らないという事は新井君は宝くじを当てていない」
ナキリ君の言う通り、僕は嘘をついていた。ナキリ君に……皆に驚いてもらおうと思って……。
3時間目の予鈴が鳴った。ナキリ君は「教室に戻ろうか」と言って歩き出した。僕は肩を落としながらナキリ君についていく。僕はこれからどうすれば良いんだろう……。
教室に戻り席に着く。ナキリ君と話しづらい空気のまま、机をくっ付けたままの席に座る。
キーンコーンカーンコーン……
おかしい……。先生は、いつもチャイムが鳴って30秒以内に教室に入ってくるのに、もう1分以上経った気がする。皆も異変に気付いたのか、ザワザワしだした。
ガラガラガラ……
ドアを開けたのは隣のクラスの先生だ。どうも、話を聞くと、担任の先生は家庭の事情で早退したらしい。隣のクラスの先生は取り敢えず自習をしておくようにと告げ、時々見に来るからと教室を出た。僕は気まずいながらもナキリ君に話し掛ける。
「教科書どれでも取って良いよ」
僕は全ての教科書を机の上に出しながら言った。ナキリ君は「じゃあ」と一言だけで、国語の教科書を手に取った。
皆、最初こそ静かに勉強をしていたけど、徐々に小声で話をしだした。10分が経った頃には、自分の席を離れて友達と話をしている人もチラホラ見え始める。教室全体がザワザワしてきた。その時……。
「新井君」
ナキリ君が小声で僕に話し掛けてきた。
「何?」
「どうして嘘をつくの? 何か理由があるんでしょ?」
「……僕、皆を驚かすのが好きなんだ。最初は分からないような嘘だったんだけど、それじゃあ、リアクションも小さいし、段々大きな嘘をつくようになったんだ」
「勉強やスポーツを頑張って1番になれば、みんな驚いてくれるよ」
「そうだね。でも、勉強もスポーツも得意じゃ無いから……」
「何でも努力が大事だよ?」
「うん。分かってるけど、努力って大変だし……。嘘をつくと直ぐに結果が出るからね」
「嘘じゃなくても、ちょっと工夫すれば驚いてもらえると思うよ」
「どうやって?」
「そうだなあ……」
「えっ?!」
「10万円は高額当選扱いになるから、銀行じゃないと換金してもらえないんだ。その事を知らないという事は新井君は宝くじを当てていない」
ナキリ君の言う通り、僕は嘘をついていた。ナキリ君に……皆に驚いてもらおうと思って……。
3時間目の予鈴が鳴った。ナキリ君は「教室に戻ろうか」と言って歩き出した。僕は肩を落としながらナキリ君についていく。僕はこれからどうすれば良いんだろう……。
教室に戻り席に着く。ナキリ君と話しづらい空気のまま、机をくっ付けたままの席に座る。
キーンコーンカーンコーン……
おかしい……。先生は、いつもチャイムが鳴って30秒以内に教室に入ってくるのに、もう1分以上経った気がする。皆も異変に気付いたのか、ザワザワしだした。
ガラガラガラ……
ドアを開けたのは隣のクラスの先生だ。どうも、話を聞くと、担任の先生は家庭の事情で早退したらしい。隣のクラスの先生は取り敢えず自習をしておくようにと告げ、時々見に来るからと教室を出た。僕は気まずいながらもナキリ君に話し掛ける。
「教科書どれでも取って良いよ」
僕は全ての教科書を机の上に出しながら言った。ナキリ君は「じゃあ」と一言だけで、国語の教科書を手に取った。
皆、最初こそ静かに勉強をしていたけど、徐々に小声で話をしだした。10分が経った頃には、自分の席を離れて友達と話をしている人もチラホラ見え始める。教室全体がザワザワしてきた。その時……。
「新井君」
ナキリ君が小声で僕に話し掛けてきた。
「何?」
「どうして嘘をつくの? 何か理由があるんでしょ?」
「……僕、皆を驚かすのが好きなんだ。最初は分からないような嘘だったんだけど、それじゃあ、リアクションも小さいし、段々大きな嘘をつくようになったんだ」
「勉強やスポーツを頑張って1番になれば、みんな驚いてくれるよ」
「そうだね。でも、勉強もスポーツも得意じゃ無いから……」
「何でも努力が大事だよ?」
「うん。分かってるけど、努力って大変だし……。嘘をつくと直ぐに結果が出るからね」
「嘘じゃなくても、ちょっと工夫すれば驚いてもらえると思うよ」
「どうやって?」
「そうだなあ……」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ことみとライ
雨宮大智
児童書・童話
十才の少女「ことみ」はある日、夢の中で「ライ」というペガサスに会う。ライはことみを「天空の城」へと、連れて行く。天空の城には「創造の泉」があり、ことみのような物語の書き手を待っていたのだった。夢と現実を行き来する「ことみ」の前に、天空の城の女王「エビナス」が現れた⎯⎯。ペガサスのライに導かれて、ことみの冒険が、いま始まる。
【旧筆名:多梨枝伸時代の作品】
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
初恋の王子様
中小路かほ
児童書・童話
あたし、朝倉ほのかの好きな人――。
それは、優しくて王子様のような
学校一の人気者、渡優馬くん。
優馬くんは、あたしの初恋の王子様。
そんなとき、あたしの前に現れたのは、
いつもとは雰囲気の違う
無愛想で強引な……優馬くん!?
その正体とは、
優馬くんとは正反対の性格の双子の弟、
燈馬くん。
あたしは優馬くんのことが好きなのに、
なぜか燈馬くんが邪魔をしてくる。
――あたしの小指に結ばれた赤い糸。
それをたどった先にいる運命の人は、
優馬くん?…それとも燈馬くん?
既存の『お前、俺に惚れてんだろ?』をジュニア向けに改稿しました。
ストーリーもコンパクトになり、内容もマイルドになっています。
第2回きずな児童書大賞にて、
奨励賞を受賞しました♡!!
子猫マムの冒険
杉 孝子
児童書・童話
ある小さな町に住む元気な子猫、マムは、家族や友達と幸せに暮らしていました。
しかしある日、偶然見つけた不思議な地図がマムの冒険心をかきたてます。地図には「星の谷」と呼ばれる場所が描かれており、そこには願いをかなえる「星のしずく」があると言われていました。
マムは友達のフクロウのグリムと一緒に、星の谷を目指す旅に出ることを決意します。
【完結】豆狸の宿
砂月ちゃん
児童書・童話
皆さんは【豆狸】という狸の妖怪を知っていますか?
これはある地方に伝わる、ちょっと変わった【豆狸】の昔話を元にしたものです。
一応、完結しました。
偶に【おまけの話】を入れる予定です。
本当は【豆狸】と書いて、【まめだ】と読みます。
姉妹作【ウチで雇ってるバイトがタヌキって、誰か信じる?】の連載始めました。
宜しくお願いします❗️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる