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高額当選

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「宝くじ売り場では10万円は換金出来ないんだよ」
「えっ?!」
「10万円は高額当選扱いになるから、銀行じゃないと換金してもらえないんだ。その事を知らないという事は新井君は宝くじを当てていない」

  ナキリ君の言う通り、僕は嘘をついていた。ナキリ君に……皆に驚いてもらおうと思って……。
  3時間目の予鈴が鳴った。ナキリ君は「教室に戻ろうか」と言って歩き出した。僕は肩を落としながらナキリ君についていく。僕はこれからどうすれば良いんだろう……。
  教室に戻り席に着く。ナキリ君と話しづらい空気のまま、机をくっ付けたままの席に座る。
キーンコーンカーンコーン……
  おかしい……。先生は、いつもチャイムが鳴って30秒以内に教室に入ってくるのに、もう1分以上経った気がする。皆も異変に気付いたのか、ザワザワしだした。
ガラガラガラ……
  ドアを開けたのは隣のクラスの先生だ。どうも、話を聞くと、担任の先生は家庭の事情で早退したらしい。隣のクラスの先生は取り敢えず自習をしておくようにと告げ、時々見に来るからと教室を出た。僕は気まずいながらもナキリ君に話し掛ける。
「教科書どれでも取って良いよ」
僕は全ての教科書を机の上に出しながら言った。ナキリ君は「じゃあ」と一言だけで、国語の教科書を手に取った。
  皆、最初こそ静かに勉強をしていたけど、徐々に小声で話をしだした。10分が経った頃には、自分の席を離れて友達と話をしている人もチラホラ見え始める。教室全体がザワザワしてきた。その時……。
「新井君」
ナキリ君が小声で僕に話し掛けてきた。
「何?」
「どうして嘘をつくの?  何か理由があるんでしょ?」
「……僕、皆を驚かすのが好きなんだ。最初は分からないような嘘だったんだけど、それじゃあ、リアクションも小さいし、段々大きな嘘をつくようになったんだ」
「勉強やスポーツを頑張って1番になれば、みんな驚いてくれるよ」
「そうだね。でも、勉強もスポーツも得意じゃ無いから……」
「何でも努力が大事だよ?」
「うん。分かってるけど、努力って大変だし……。嘘をつくと直ぐに結果が出るからね」
「嘘じゃなくても、ちょっと工夫すれば驚いてもらえると思うよ」
「どうやって?」
「そうだなあ……」
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