ゴーストライター

ジャメヴ

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悪魔の殺し方 9

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「えっ?!  こ、殺す?!  一般人の僕が悪魔達を?!  どうやって?!  どう考えても返り討ちにあうよね?」
急に『殺す』というパワーワードが出た為、僕は慌てながら確認した。
「彼らは今、人間の身体を借りています。だから、そんなに強くは無いです」
「いやいや、強く無くったって、6対1はちょっと無理じゃない?  それより神様が倒してくれれば良いじゃないか!」
「もちろん、神なら悪魔を簡単に殺す事が出来ます。でも、神は君に殺して欲しいと思っているんです。そもそも、彼らをこの島に送り込んだのも神だからね」
「神が悪魔を送り込んだ?!  何の為に?!」
「面白くする為です。さっきも言いましたけど、神様は人間ですからね。面白いシーンが見たいんです」
「僕が悪魔を殺すのが面白いのかい?」
「君が悪魔と対峙した時や殺した時の心理状態や言動と行動を見たいんだと思います」
「神様って悪趣味過ぎない?」
「まあ、十人十色……十神十色って事じゃないかな」
「……」
「そんな事より悪魔を殺す決心はついたかい?」
「いや、つかないよ!」
「どうして?」
「どうしても何も人殺しになるじゃないか」
「彼らは悪魔です。人じゃない」
「いやいや、我部君の話を100%信用した訳じゃないし、もし、彼らが悪魔だったとしても、まだ何もしていないじゃないか。もしかしたら改心しているかも知れないし……」
「悪魔が改心……面白い事を言いますね。君が決断を延ばせば被害が大きくなりますよ。君は銃口を突き付けられているのに、まだ撃たれていないから大丈夫って悠長な事を言うのですか?」
「……。そうだ!  我部君は悪魔を殺せないの?」
「私は悪魔に殺される事も無ければ、殺す事も出来ません」
「そうか……。とにかく、お昼前に教室へ戻ってから判断させて。その結果次第で君の言う事を信用するよ。アイツらが何か悪さをしているって言うんだね?」
「いえ、彼らは基本、何もしません」
「えっ?!  何もしないの?  じゃあ、良いじゃないか!」
「君は欲望って聞くと何を思い付くかな?」
我部君が急に話を変えたので、僕は違和感を覚えながら質問に答える。
「欲望?  欲望って、睡眠欲、食欲、性欲の事?」
「それは、欲求だね」
「じゃあ、金銭欲とか独占欲とか?」
「そうそう。彼らと一緒にいると、人間の欲望を満たす為に、やり過ぎてしまう行動を増幅されてしまうんです」
「と言う事は、アイツらが悪さをする訳じゃなくて、アイツらと一緒に過ごした人間が悪くなっちゃうって事?」
「そういう事です。欲望ってのは、少しぐらいあった方が活力となって生き甲斐を感じられるんですが、求め過ぎると争いが起こってしまうんです。分かりやすいのが竜波と名乗った男。彼は怒りの悪魔です。本来、悪魔本人は怒りを表現しないんですが、人間の身体を乗っ取っている為、不機嫌な感じが表面化されていました」
「なるほど……」
「他にも、獅子は傲慢、熊田は怠惰、蛇沼は嫉妬、狐井は強欲、虎林は暴食に対応した悪魔なんです。人間というのは、多少、欲望はあって当然なので、ちょっと一緒に居たぐらいなら問題無いんですが、長時間彼らと過ごすと大変な事になります」
「そうか。だから、俺は仮病で早退したのに、倦怠感とイライラがあったって訳だな」
「とにかく、お昼休み終わりぐらいに教室へ戻ってみましょう。彼らの悪の力が分かると思います」
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