21 / 51
暴君の末路 5
しおりを挟む
ピッ! ピッ! ピッ!
雲1つ無い快晴の空の下、私の吹く笛の音は天高く響き渡った。
「よし! 休憩に入る!」
「はい!」
私は兵士達を休憩させ、ふ~っと溜め息をつく。
王が亡くなってから1年が過ぎた。毎日、あの日の事を思い出す。一体、ジャンはどこまで想定していたのだろうか。国民の命を考え、最初から王を殺そうとしていたのか……。それとも、王から言質を取った後に殺そうと思ったのか……。はたまた、私が王を刺した後、賛同したのか……。全ては謎のままだ。
私達は正しい事をしたのだろうか? 王には王の考えがあって、もしかすると、島を統一した暁には、フランツ王子やマリア王妃とも仲良く暮らす予定だったのかも知れない……。
私のような凡人には正解を突き詰める事は出来そうにないが、結果、平和になったのだから良しとするしかない。
ジャンは今どうしているかと言うと、医者として各地を回っている。元々、賢かった事に加え、親族に医者がいるとの事で、半年程修行をし、人々の為にと働いていると風の噂で聞いた。
私はありがたい事にフランツ新国王から自衛団の団長に任命されている。小さい頃から剣術しか取り柄が無かったのだ。平和になっても私が役に立つ場所はこれぐらいしか無い。
「ニコラさん、ソロソロ再開しましょう」
「分かった」
副団長に声を掛けられ立ち上がると、心地よい風が吹き抜ける。もう少し休みたいと思う気持ちを振り払い、再び気合いを入れ直し歩きだす。
私も戦闘で傷付いた兵士の止血ぐらいは出来るし、ジャンと共に医療関係で働こうかと思ったが、その必要は無いだろう。
何故なら、これからは戦争で傷を負う者などいないのだから……。
了
雲1つ無い快晴の空の下、私の吹く笛の音は天高く響き渡った。
「よし! 休憩に入る!」
「はい!」
私は兵士達を休憩させ、ふ~っと溜め息をつく。
王が亡くなってから1年が過ぎた。毎日、あの日の事を思い出す。一体、ジャンはどこまで想定していたのだろうか。国民の命を考え、最初から王を殺そうとしていたのか……。それとも、王から言質を取った後に殺そうと思ったのか……。はたまた、私が王を刺した後、賛同したのか……。全ては謎のままだ。
私達は正しい事をしたのだろうか? 王には王の考えがあって、もしかすると、島を統一した暁には、フランツ王子やマリア王妃とも仲良く暮らす予定だったのかも知れない……。
私のような凡人には正解を突き詰める事は出来そうにないが、結果、平和になったのだから良しとするしかない。
ジャンは今どうしているかと言うと、医者として各地を回っている。元々、賢かった事に加え、親族に医者がいるとの事で、半年程修行をし、人々の為にと働いていると風の噂で聞いた。
私はありがたい事にフランツ新国王から自衛団の団長に任命されている。小さい頃から剣術しか取り柄が無かったのだ。平和になっても私が役に立つ場所はこれぐらいしか無い。
「ニコラさん、ソロソロ再開しましょう」
「分かった」
副団長に声を掛けられ立ち上がると、心地よい風が吹き抜ける。もう少し休みたいと思う気持ちを振り払い、再び気合いを入れ直し歩きだす。
私も戦闘で傷付いた兵士の止血ぐらいは出来るし、ジャンと共に医療関係で働こうかと思ったが、その必要は無いだろう。
何故なら、これからは戦争で傷を負う者などいないのだから……。
了
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】記憶を失くした旦那さま
山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。
目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。
彼は愛しているのはリターナだと言った。
そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる