ゴーストライター

ジャメヴ

文字の大きさ
上 下
20 / 51

暴君の末路 4

しおりを挟む
  王の部屋に入ると、私とジャンは王を前にして片膝をついて待つ。王は椅子に腰掛け、リラックスして雑談から話し出した。
  私は、とにかく横目でジャンを注視していた。ジャンに隙が出来た時、王を襲うつもりだ。
  緊張で身体が震えるのを何とか抑える。鼓動が2人に聞こえてしまうのではないかと思うぐらい高まっている。

「ジャン、ニコラよ。明日の戦いは、これまでに無い死闘になるだろう。どんな汚い手を使ってでも勝たなければならない。神を欺いてでも勝ちに徹しようと思う。お前達もそのつもりで戦え」
「はっ!」「はい」
「勝つのは当然として、我が軍の被害を最小限に抑えなければならない。何か良い案はあるか?」
「はい、ございます」
ジャンは凛々しい顔で王に返事した。
「何?!  ジャン、言ってみろ」

  今だ!!

  王はジャンに耳を傾け、ジャンは作戦を伝えようと、そちらに集中している。こんなチャンスは無いと私は素早くダガーを抜くと、左足を強く蹴り、一気に王との距離を詰める。私は王の右首元を狙い、右手を振り抜いた。

バシュッ

  ダガーは王に突き刺さった……が、狙いの頸動脈を外し、肩に突き刺さってしまった。
「ニコラ……貴様!」
王が私の不審な動きに気付いて動いた為に、狙いがズレてしまったのだ。私の作戦は失敗した。だが、まだ諦める訳にはいかない。私は構わずダガーに力を込める。だが、王の必死の抵抗で膠着状態になってしまった。
「ジャン!」
王がジャンを呼んだので私はジャンを見る。ジャンは既に自分のダガーを手に取り私に向かい突っ込んできた。

  終わった……。フランツ王子申し訳ありません……。

  ジャンの振り下ろしたダガーは頸動脈に深く突き刺さり、床に鮮血が滴った。
  そして、ゆっくりとが床に倒れ込んだ。王は、あまりにも急な出来事に一言も発する事無く動かなくなった。

「ジャン?  どうして……」
「ニコラさん、王を殺して自分も死ぬつもりでしたね。そうは、させません。王を殺したのは私です」
ジャンが何を言っているのか、意図がよく分からない。
「我々は主君を討つという、最も忠義に反する事を犯したのだぞ?」
「いえ、我々は王の指示に従っただけです」
「何をバカな……」
「先程、王は言いました。被害を最小限に抑えよと。神を欺いてでもと。私は神と同等の王を欺いて戦争を無くし、被害を最小限に抑えました。」
「……」
「ニコラさんは死んではいけません。もちろん、私も死にません。王の命令に背く事になります。被害は最小限に抑えないといけませんから」
「……」
「直ぐにガルブ国へブオナパルテ王の死と、2度と戦争をしない旨を伝えましょう。そして、フランツ王子の即位式の準備をしなければいけません」
「皆には我々が王を殺したと伝えるのか?」
「それも正直で良いと思いますが、皆には、ブオナパルテ王は自殺したと伝えましょう。民の命と平和を優先したいが、プライドが邪魔をしてバラク王と仲良くやっていけそうになかったからだと。王の株も上がるでしょう。不審に思う部下が殆どでしょうけど、私達2人が王を討つとは考えられないですし、戦争も無くなって平和になるのであれば深く調べたりしないと思います」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

処理中です...