ゴーストライター

ジャメヴ

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クライオニクス 2

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翌朝元旦

  私は朝御飯に缶詰めのフルーツを開けて食べた。私の趣味は缶詰め集め。全国の缶詰めを食べ比べて、どれが美味しいかというのを楽しみながら、その評価をネットにアップしていた。そんな趣味が幸いしたのか『牛ウイルス』に感染せずに生き長らえている。

『明けましておめでとう……う~ん……おめでとうで良いのかな?  今年も宜しく、って言っても私にとって、今年は今日1日だけなんだけどね。今から向かうわ。お仕事頑張ってね』
『分かった。静香も気をつけて』

  私は、年始だというのに仕事で大忙しの彼氏にSNSで連絡した。彼氏の哲彦てつひこは5歳上の26歳。恋人同士で生き残っているなんて凄い確率だし幸せだと思うけど、世界の状況を考えると素直には喜べない。

  哲彦は人体冷凍保存クライオニクス施設で働いている。人体冷凍保存施設とは、現在の医療技術で治せないような病気の人を冷凍保存して、未来で進歩した医療を受けさせる為の場所だ。
  動物を冷凍保存した後、自然解凍させると生体組織に損傷が出て死んでしまう。だけど、約5年前、技術の進歩により、人体に殆ど損傷無く冷凍保存と解凍を行う事が出来るようになった。基本的には今の医療技術で回復が見込めない重症の患者を冷凍保存するんだけど、クライオニクスの安全度が認知され始め、ちょっと半年間旅行にでも行ってくる、みたいな軽い気持ちで冷凍保存する人物まで現れてきた。
  そんな中、2年程前、私の住むアパートから3キロメートル程離れた場所に、1万人を冷凍保存出来るという大規模なクライオニクス施設が完成した。
  その施設に出張で来ていた哲彦は友人の紹介で私と出会い、交際が始まったという訳。

  先日、政府は『牛ウイルス』対策として、クライオニクスを推奨する見解を発表した。クライオニクスには何百万円という額が必要だけど、全額負担してくれるという。
  私は直ぐに申し込み、抽選で当たったのか、単に申し込む早さの問題か分からないけど、今日、1月1日にクライオニクスの使用が無料で出来るみたい。だから、私の2121年は元日の1日だけ。
  出来れば哲彦と一緒に冷凍保存されて、解凍される日を待ちたかったけど、そうはいかないよね。だって、施設の作業者が減ったら意味が無いもの。
  クライオニクス施設で働く人々や、ウイルス研究に携わる人達には、『牛ウイルス』が感染していないであろう缶詰め製品や古い保存食、穀物や野菜類が優先的に配られる為、今後の生存確率は比較的高い。
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