ゴーストライター

ジャメヴ

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ゴミ屋敷のコラおっさん 6

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  家に着き、玄関のドアを静かに開けて中に入ると、母さんが少し怒り気味に「どこ行っとったん?」と聞くので、「ちょっと友達に呼び出されてん」と返し、汗だくなので今日2度目の風呂に入ろうかと思った時だった。
ウー!  カンカンカン!
「あれ?  火事?」
サイレンの音と同時に母さんが言った。母さんは玄関のドアを開けて外を見た。
りょう!  火事よ!」
僕も玄関のドアから外へ出ると、暗闇の中、真っ赤な明かりが目に飛び込んできた。結構近い……目と鼻の先だ。100メートル以上は離れているけど、炎がこの家まで届くような感覚がした。

  あれ?  もしかして、ゴミ屋敷の近く?

  僕は急に怖くなった。母さんから逃げるように家の中に入り、風呂場へ向かう。
  別にゴミを撒いただけやけど、火事を見た事によって、もの凄い罪悪感に襲われた。

  やっぱり悪い事はしたら駄目なんや。特に僕のような小心者は……。

  温かい湯船に浸かっているにもかかわらず、僕はブルブルと震えていた。


♪♪♪~
目覚ましのアラームで僕は目を覚ました。昨日の夜、僕は後悔から中々寝付けず寝不足気味や。
「おはよ~」
「良、おはよ~。昨日の火事、ゴミ屋敷らしいわよ」
「えっ?!」
母さんは僕に新聞を見せた。昨日の火事のニュースが載っている。

  ゴミ屋敷が火事?  このタイミングで?  コラおっさんは?  ……無事なんだ……良かった……。

  僕は自分が放火したかのような感覚になり、罪悪感で押し潰されそうになった。別に僕のせいやないと思い込んで、その感情をかき消そうとしたけど、罪悪感が消える事は無かった。

  出火元は……えっ?!  玄関近くのゴミの中にあった乾燥剤が水に濡れて出火か、やって?!
  
  僕は脳をフル回転させて記憶を蘇らせる。

  ゴミの中に、お菓子の乾燥剤が入っとったかも知れん……。椿さんのゴミの方かも知れんけど……。バレへんかな?  いや、バレへんから黙っといたらエエって考え方は人としてアカン。信念を貫いて生きるって決めたんや。正しいと思った事をせなアカン。警察へ行って、コラおっさんに水掛けられたから、仕返しにゴミ撒いたって言おう。椿さんの事は……言う必要無いな。助けられたお返しになるか分からんけど、僕1人でやった事にしよう。
  オカン……悪い子に育ってもてゴメン。

  僕は流れそうになった涙をグッと堪え、悪人の仲間入りをしてしまったという後悔の念に苛まれながらも、正直に生きようとしている自分を少しだけ誇らしげに感じながら警察へ向かった。
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