ゴーストライター

ジャメヴ

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ゴミ屋敷のコラおっさん 5

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  自分の部屋に戻ると、僕は自分の部屋でゴミ箱を漁る。自分の身元が分かるようなモンは入ってないみたい。でも、ちょっと少な過ぎる。僕はお菓子の大袋を2つ開け、大袋だけをゴミ箱に入れた。

  まだ少ないな……。そうや、新聞紙とか広告をぐちゃぐちゃにしたら嵩増しできるやん。

  僕はリビングに行き、大きいポリ袋と古い新聞紙とチラシ広告を持って部屋に戻り、1枚1枚をぐちゃぐちゃに丸めてポリ袋に入れ、その後にゴミ箱を引っくり返して、中のゴミをポリ袋に入れ、口を結んだ。

  良し、これでオッケーや。

  
  10時50分、僕はポリ袋を1つ持ち、両親に黙ってそっと家を出た。
  11時5分前に集合場所に着いたけど、まだ椿さんは来とらんようや。すると、直ぐに両手に2つポリ袋を持った椿さんが現れた。
「こんばんは」
「おう、ほな行こか」
僕達は小声で話した後、椿さんがコラおっさんのゴミ屋敷へ近付いて行くんで僕も後に続く。
ビチャ、ビチャ、ビチャ、ビチャ……

  コラおっさんが水を撒き過ぎやから地面はベチャベチャや。ゴミ屋敷の玄関前は想像以上にゴミが散らばっとった。真っ暗でよ~見えんけど、ゴミ屋敷って家主にとっては大事なモンやけど他の人から見たらゴミに見えるモンを置いてんのが普通やのに、これは誰から見てもゴミや。新聞紙とか段ボール、雑誌類が多いんかな?

「よっしゃ、ゴミばら撒け」
「あ、はい」
椿さんはポリ袋の口を開け、中身をばら撒いた。僕はポリ袋のまま捨てると思っとったから反応が遅れ、椿さんが2袋ばら撒いた後、漸くばら撒いた。
「よし、逃げるぞ」
「は、はい」
バシャバシャバシャバシャ……
僕達は足下の泥濘を気にする事無く走って逃げた。
「スッキリしたやろ?」
「は、はい」
別に、仕返しをしてスッキリしたって感情は微塵も無かってんけど、椿さんと悪事を共有出来て、何か武勇伝を1つ作ったような感覚で嬉しかった。

  100メートルぐらい逃げたところで、椿さんはこっちを見て「じゃあな」と告げて僕から離れていった。僕は、何か分からんけど経験した事の無い高揚感に浸った。
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