ゴーストライター

ゴミ屋敷のコラおっさん 2

  4時間目の授業が終わり、今から昼休憩や。弁当を持ってきとる人や、学校の売店でパンやおにぎりを買う人など様々やけど、皆この時間になるとソワソワしだす。お腹が空いてるからとかいう理由や無くて、1人居なくなるんや。

  うちの中学校では、いつの時代からか知らんけど、カツアゲ風の事が毎日行われとる。帰る時、下駄箱の中に手紙が入っとるらしい。明日の12時に屋上へ来い、みたいな内容らしい。らしいって言うんは、僕には未だ手紙が入っていた事が無いからやねん。多分、殆どの1年生男子がカツアゲされとる筈。でも、それを誰かに言うたらあかんらしい。先生や親はもちろんの事、友達にも言う事は許されへん。あくまでも噂やけど、過去、先生へ言うた生徒は自殺寸前まで追い込まれたとか……。相当ヤバい学校やけど、中学校ってどこもこんな感じなんやろか？  とにかく、皆怖いから学校では話題にもせ～へん。
  よ～分からんけど、今日は何となく、うちのクラスの生徒は対象や無かったみたいやわ。
  
  
  授業も終わり、皆教室を出ていく。部活へ行く人と家へ帰る人。普通、帰宅部やったら、この時間が1番嬉しい筈なんやけど、多分、皆憂鬱やと思う。だって下駄箱に先輩から召集の紙が入れられとるかも知れんから。

  僕は下駄箱に着き、「はぁ～」っと溜め息をついた。今まで運良く避けてきたけど、さすがにそろそろ僕の番や。お願いしますと心の中で祈ってから下駄箱を開けると、まるで誰かに驚かされたかのように、ビクッと驚いてしまった。
  僕は中にあった手紙を素早く半分に折り、鞄に入れて校門へ向かう。
  白っぽい紙が2つ折りで入っとった。ラブレターやったら良いのに、そんな筈もない。僕はガッカリした感じを出さんと家路につく。

「ただいま」
家にオカンが居る筈やけど、聞こえへんかったんか返事は無い。僕は玄関に鞄を置くと台所に向かい、もう1度「ただいま」と言うた。オカンは料理中やから、こっちを見んと「おかえり」と返した。
  玄関で鞄を持って2階の自分の部屋に入り、鞄から手紙を取り出し、4つ折りの紙を広げる。

『明日の12時、屋上に来い。誰にも言うなよ』 

  やっぱりかと僕は「ふぅ～っ」と大きく溜め息をついた。おこづかいが減るのが嫌な訳やない。お金だけで済まへん可能性があるから憂鬱なんや。噂では1,000円渡せば何もせずに帰してくれるって話やけど、どこまでホンマなんか、よ～分からんしな。
  僕はその日、学校へ行きた無いなと思った後、アカンアカン、行かへんかったら殺される、という自問自答を2,3回繰り返した。