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ファミレスにて
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「よっしゃー! 逆転!」「くそー!」
俺が本命にしていた馬が1着になり大逆転した。今日は、俺が勝って根本が負けた為、晩御飯は根本の奢りだ。根本の部屋からファミレスまでは徒歩五分ぐらい。その間も、今日の競馬の反省だ。それが終わると、血統についての話に移行した。今、話題の世界最強馬、エネイブルについてだ。エネイブルは祖父と曽祖父が同じ馬という無茶苦茶な近親なのだ。2×3 のクロスとか37.5%同血とか言われる。祖父25%と曽祖父12.5%が同じ血なので、足して37.5%同血という訳だ。2×3 の様な濃い配合で強い馬が産まれる事は極めて稀だ。
2人が血統について話し出すと終わらない。ファミレスに着き、注文を済ませても、まだ同じ話題だ。最初の頃は、俺も苦痛だったけど、今は結構知識も増えてきて、分かるようになったので、楽しめるようになった。とは言え、今日はもう良いだろう。
「結局、1番旨いおかずはハンバーグだよな」
俺は頃合いを見て、無理やり話を変えた。
「昔は寿司だったけど、最近は100円で食えるから、高級感が失くなったせいか、少しランキングは下がったな。確かにコストパフォーマンスを考えるとハンバーグだな」
根本が食い付いてきた。おかずの話だけに・・・。
「いや、焼き肉が1番だろ」
盛田は焼き肉派のようだ。根本が返す。
「でも、良い肉は高いからなぁ。安い肉は固いし。ハンバーグは安くても旨い」
「よし、バイトでもして高い肉食いに行くか! 根本と速水は明日空いてるよな?」
盛田はやる気満々だ。だけど、俺は明日、予定が入っている。
「悪い。俺、明日から2泊3日で無人島なんだ」
「無人島? 速水ってお坊っちゃんだったのか?」
「いや、俺んち所有の無人島じゃないぞ」
「じゃあ、誰のだよ」
「その辺は詳しく聞いてない」
「普通聞くだろ! どういう状況よ?」
「何か、親が言うには行けば10万円貰えるって」
「はぁ? 大丈夫かそれ?」
「知り合いだから安心して行って来いだとさ。ゲームで勝てば、さらに、賞金貰えるって話だから」
「何それ? 金持ちの知り合いがいるとラッキーだな」
「まあ、帰ってきたらお前らにも焼き肉奢ってやるよ」
「そのゲームとか言うやつも勝って来いよ」
「オッケー、高級店でも探しといてくれ」
俺は調子にのって、そう答えたけど、そんな上手くいく筈も無い。まあ、リップサービスというやつだ。
食事も終わりに近付いた頃、盛田が小声で話し掛ける。
「速水、4人組の美女がいるぞ。お前イケメンなんだから声掛けて来いよ」
「いや、ムリムリ」
そう言いながらも俺は周りを見渡した。確かに、左斜め後ろの席に同年代か少し歳上に見える美女4人組が居た。少し遊んでいる風のギャルに見える。
盛田がこういう話をするのは3度目だ。1度目や2度目は「どうしようかなぁ」などと悩むふりをしていたけど、3度目ともなるとサラッと断るだけになった。だいたい、こんなファミレスでナンパなんかせずとも、大学生なんだから、大学生同士で飲み会をした方が早いし、俺はイケメンの部類に入るかもしれないけど、アイドルや俳優に比べると格段に落ちる。公共の場で自信満々にナンパする度胸も無い。そもそも、盛田もイケメンなんだから自分で行けば良いし、本気で言っている訳でもないだろう。俺をからかっているだけだと思う。ただ、いずれは俺も動いてやろうと思っていた。盛田は女性が居ない場所なら大きい態度をとっているけど、多分、いざ美女を前にすると話せなくなるタイプだと睨んでいる。いつか、プチドッキリを実行したいと考えていたけど、今のタイミングではない。
ファミレスでの食事を終え、二人と別れると、俺は電車で帰宅した。大学へは実家から電車で通っている。
「ただいま」
「お兄ちゃんお帰り」「おお、双六お帰り」
「お帰り、今日は早めね。明日朝早いもんね」
俺は家族全員に挨拶をして自分の部屋に入った。俺は四人家族、実は、父さんとは血が繋がっていない。俺の本当の父さんは、俺が産まれて直ぐに家を出ていったらしい。その辺りは母さんも詳しく言わないし、俺も詳しく聞いたりしない。写真1つ残ってないし、名前も知らない。母さんとは結婚をしていないので離婚にもならないし、バツイチとも言われないけど、母さんは長い間シングルマザーだったので、不幸と言われていたかもしれない。それでも今の父さんと結婚出来たのがマイナスを全て補える程、幸運だったと思う。今の父さんは非の打ち所が無いぐらい素晴らしい人だ。まあ、顔はあまり良くないけど、性格が凄く良い。俺には10歳下に双葉って妹がいて、もちろん、今の父さんと母さんの子なんだけど、普通、血の繋がっていない小学生の男の子と、実の娘で赤ちゃんの女の子なら、後者の方が可愛いと思うのが普通だろう。でも、父さんは差別せず、俺にも変わらぬ愛情を注いでくれた。本当に出来た人だと尊敬する。
そういえば、去年の今頃だったと思うけど、母さんから無人島旅行の話を聞いたんだ。昔の友人から連絡があったと言っていた。二十歳前後の人を集めて、ちょっとしたゲームをしたいからと、俺を無料で招待してくれるって訳。無人島と言っても日本の島で、本州の最寄り駅からボートで10分程度という距離らしい。家からはかなり遠いけど、新幹線を使えば2時間強。しかも、往復の交通費は出してくれるという。それが明日からの2泊3日なのだ。同年代の知らない人達が5人ぐらい来ると聞いている。そんなメンバーと真夏の2泊3日無人島旅行なんてテンションが上がる。実は、明日の為に1年前から筋トレを始めた。美少女が来るかもしれないので、海に入るなら身体を鍛えるのは必須だろう。自分で言うのもなんだけど、俺はソコソコハンサムだと思っている。全くモテなかったという訳でも無いけど、彼女は出来た事が無い。1番の原因はガリガリの体型じゃないかと思う。ただ、1年間の筋トレのおかげで、標準以上の身体に仕上がった。自分に自信が持てるようになったせいか、良い出会いがありそうな気がする。
俺は明日に備えて、珍しく早く寝る事にした。
俺が本命にしていた馬が1着になり大逆転した。今日は、俺が勝って根本が負けた為、晩御飯は根本の奢りだ。根本の部屋からファミレスまでは徒歩五分ぐらい。その間も、今日の競馬の反省だ。それが終わると、血統についての話に移行した。今、話題の世界最強馬、エネイブルについてだ。エネイブルは祖父と曽祖父が同じ馬という無茶苦茶な近親なのだ。2×3 のクロスとか37.5%同血とか言われる。祖父25%と曽祖父12.5%が同じ血なので、足して37.5%同血という訳だ。2×3 の様な濃い配合で強い馬が産まれる事は極めて稀だ。
2人が血統について話し出すと終わらない。ファミレスに着き、注文を済ませても、まだ同じ話題だ。最初の頃は、俺も苦痛だったけど、今は結構知識も増えてきて、分かるようになったので、楽しめるようになった。とは言え、今日はもう良いだろう。
「結局、1番旨いおかずはハンバーグだよな」
俺は頃合いを見て、無理やり話を変えた。
「昔は寿司だったけど、最近は100円で食えるから、高級感が失くなったせいか、少しランキングは下がったな。確かにコストパフォーマンスを考えるとハンバーグだな」
根本が食い付いてきた。おかずの話だけに・・・。
「いや、焼き肉が1番だろ」
盛田は焼き肉派のようだ。根本が返す。
「でも、良い肉は高いからなぁ。安い肉は固いし。ハンバーグは安くても旨い」
「よし、バイトでもして高い肉食いに行くか! 根本と速水は明日空いてるよな?」
盛田はやる気満々だ。だけど、俺は明日、予定が入っている。
「悪い。俺、明日から2泊3日で無人島なんだ」
「無人島? 速水ってお坊っちゃんだったのか?」
「いや、俺んち所有の無人島じゃないぞ」
「じゃあ、誰のだよ」
「その辺は詳しく聞いてない」
「普通聞くだろ! どういう状況よ?」
「何か、親が言うには行けば10万円貰えるって」
「はぁ? 大丈夫かそれ?」
「知り合いだから安心して行って来いだとさ。ゲームで勝てば、さらに、賞金貰えるって話だから」
「何それ? 金持ちの知り合いがいるとラッキーだな」
「まあ、帰ってきたらお前らにも焼き肉奢ってやるよ」
「そのゲームとか言うやつも勝って来いよ」
「オッケー、高級店でも探しといてくれ」
俺は調子にのって、そう答えたけど、そんな上手くいく筈も無い。まあ、リップサービスというやつだ。
食事も終わりに近付いた頃、盛田が小声で話し掛ける。
「速水、4人組の美女がいるぞ。お前イケメンなんだから声掛けて来いよ」
「いや、ムリムリ」
そう言いながらも俺は周りを見渡した。確かに、左斜め後ろの席に同年代か少し歳上に見える美女4人組が居た。少し遊んでいる風のギャルに見える。
盛田がこういう話をするのは3度目だ。1度目や2度目は「どうしようかなぁ」などと悩むふりをしていたけど、3度目ともなるとサラッと断るだけになった。だいたい、こんなファミレスでナンパなんかせずとも、大学生なんだから、大学生同士で飲み会をした方が早いし、俺はイケメンの部類に入るかもしれないけど、アイドルや俳優に比べると格段に落ちる。公共の場で自信満々にナンパする度胸も無い。そもそも、盛田もイケメンなんだから自分で行けば良いし、本気で言っている訳でもないだろう。俺をからかっているだけだと思う。ただ、いずれは俺も動いてやろうと思っていた。盛田は女性が居ない場所なら大きい態度をとっているけど、多分、いざ美女を前にすると話せなくなるタイプだと睨んでいる。いつか、プチドッキリを実行したいと考えていたけど、今のタイミングではない。
ファミレスでの食事を終え、二人と別れると、俺は電車で帰宅した。大学へは実家から電車で通っている。
「ただいま」
「お兄ちゃんお帰り」「おお、双六お帰り」
「お帰り、今日は早めね。明日朝早いもんね」
俺は家族全員に挨拶をして自分の部屋に入った。俺は四人家族、実は、父さんとは血が繋がっていない。俺の本当の父さんは、俺が産まれて直ぐに家を出ていったらしい。その辺りは母さんも詳しく言わないし、俺も詳しく聞いたりしない。写真1つ残ってないし、名前も知らない。母さんとは結婚をしていないので離婚にもならないし、バツイチとも言われないけど、母さんは長い間シングルマザーだったので、不幸と言われていたかもしれない。それでも今の父さんと結婚出来たのがマイナスを全て補える程、幸運だったと思う。今の父さんは非の打ち所が無いぐらい素晴らしい人だ。まあ、顔はあまり良くないけど、性格が凄く良い。俺には10歳下に双葉って妹がいて、もちろん、今の父さんと母さんの子なんだけど、普通、血の繋がっていない小学生の男の子と、実の娘で赤ちゃんの女の子なら、後者の方が可愛いと思うのが普通だろう。でも、父さんは差別せず、俺にも変わらぬ愛情を注いでくれた。本当に出来た人だと尊敬する。
そういえば、去年の今頃だったと思うけど、母さんから無人島旅行の話を聞いたんだ。昔の友人から連絡があったと言っていた。二十歳前後の人を集めて、ちょっとしたゲームをしたいからと、俺を無料で招待してくれるって訳。無人島と言っても日本の島で、本州の最寄り駅からボートで10分程度という距離らしい。家からはかなり遠いけど、新幹線を使えば2時間強。しかも、往復の交通費は出してくれるという。それが明日からの2泊3日なのだ。同年代の知らない人達が5人ぐらい来ると聞いている。そんなメンバーと真夏の2泊3日無人島旅行なんてテンションが上がる。実は、明日の為に1年前から筋トレを始めた。美少女が来るかもしれないので、海に入るなら身体を鍛えるのは必須だろう。自分で言うのもなんだけど、俺はソコソコハンサムだと思っている。全くモテなかったという訳でも無いけど、彼女は出来た事が無い。1番の原因はガリガリの体型じゃないかと思う。ただ、1年間の筋トレのおかげで、標準以上の身体に仕上がった。自分に自信が持てるようになったせいか、良い出会いがありそうな気がする。
俺は明日に備えて、珍しく早く寝る事にした。
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