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ロレンツォパーティー
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だらだらと決めきれずに時間だけが過ぎ、昼食も食べ終え、遂に12時半……。俺は決めきれないままに家を出た。遠くを見たまま考える。
よし、決めた!
と言っても自分で決めた訳ではない。自分で決められないなら他の人に任せようと思っただけだ。レオは俺の事を心配してくれている。身を案じてくれている友人がいるんだ。今回は断ろう。命を賭して戦う必要があるのは愛する人が出来てからだ。今では無い。優柔不断のせいでロレンツォさんのパーティーには迷惑をかけるけどしょうがない。
俺がキャンセルの決断をした時、掲示板近くに3人のグループがいた。恐らくロレンツォさんのパーティーだろう。
まず目につくのは、顔を包帯でぐるぐる巻きにしている異様な見た目の中肉中背の男性。1人だけ剣を持っているので、ロレンツォさんだろう。二刀流なのだろうか? 右腰に長めの剣を差し、左腰に少し短めの剣を差している。この島1のイケメンって話なのに包帯で顔が見えない。前回の戦闘で傷を負ったのだろうか?
次に、少し背が高めの高齢の男性。杖を持っているので魔法系の後衛だろう。装備からヒーラーのように見える。
そして、若い女性。こちらも杖を持っているので魔法系の後衛だろう。装備から魔法使いのように見える。俺は包帯の人物に声を掛けた。
「こんにちは。ロレンツォさんですか?」
「そうです。ブラッドさんですね。この度はありがとうございます」
「えっと……あの……」
俺は気まずいながらも、今回の件をお断りしなければと思った時、女性の顔が目に入った。
えっ?!
俺は体に電流が走るような衝撃を受けた。……美人。とにかく美人。俺と同じで20歳前後ぐらいに見えるけど、もしかするともう少し年上かも知れない。中肉中背で色白の肌。艶のある黒髪を後ろで束ね、少し吊り上がった大きな目にスッと通った鼻筋で薄い唇。姿勢が良く、上品な佇まい。こんな美女にニコッと微笑まれたら、一瞬で恋に落ちてしまうだろう。と言うか、もう既に恋に落ちているような気もする。この子の為なら命を賭けられる。
俺は先程の考えから180度変わって、呪いの魔女討伐へ行く気満々になっていた。
「こんな弱そうな人と一緒に行くの嫌よ!」
えっ?! 今何て?
するとロレンツォさんが俺に近付いて小声で言う。
「すみません。キツめの冗談なんです」
あ、なるほど。ブラックジョークね。こういう場合は相手に乗るのがベストだ。中途半端に乗ったり、照れたりして引いたらダメなんだ。
「姫、若輩者ですが、命に代えて御守りさせて頂きます」
俺は片膝をつき、頭を下げ、右手を左胸に当て、家来がお姫様を扱うように振る舞った。
「余計な事言わずに早く装備を身に付けなさい! その格好で行くつもり?!」
「はいっ! 直ちに!」
ロレンツォさんは顔を包帯でぐるぐる巻きにしているので表情が読み取れないし、高齢の男性は無口でノーリアクションだから、俺の彼女への対応がスベっているのか、それとも正解なのかがよく分からない。
ロレンツォさんは準備してきた装備を持ってきて俺に言う。
「すみません。こちらを装備してください。カーボンの鎧と槍と盾です」
何だって?! 俺は耳を疑った。100万ゴールド相当の防具に加えて、カーボンの槍までセットだとは……。初対面の人に貸すレベルの装備では無い。
「そちらは参加して頂いた御礼に差し上げます」
「えー! 良いんですか?!」
「もちろん勝利報酬は別ですので」
信じられない事続きで、さすがに大きな声が出てしまった。
「ロレンツォ! 早くしなさい!」
「はっ! 申し訳ありません!」
俺のせいでロレンツォさんが怒られるのは申し訳無いと思い、急いで装備する。ロレンツォさんは女性に謝った後、俺に話す。
「一応説明させて頂きます。装備しながらお聞きください。私、ロレンツォは剣士です。護って頂かなくて構いません。あちらは魔法使いのカテリーナお嬢様です。そして、あちらがヒーラーのジョヴァンニ様です。あちらの2人へは攻撃を漏らさないようお願いします」
「分かりました」
そうだった。ロレンツォさんはビジュー家に雇われている剣士。カテリーナさんはビジュー家の令嬢だから偉そうにしているんだろう。ジョヴァンニさんは無口だから分からないけど、ロレンツォさんの対応からビジュー家の人っぽい。
俺はカーボン装備を終えた。格好良い。格好良すぎと言って良いだろう。鏡を見てみたい。写真を撮っておきたい。こんなのを貰えるなんて夢のようだ。
「早くしなさいよ! 置いていくわよ!」
「はいっ!」
カテリーナさんは一喝するとスタスタと移動を始めた。
「すみません、行きましょう」
ロレンツォさんはそう言って早足でカテリーナさんを追いかける。俺も駆け足でロレンツォさんを追いかける。ガチャガチャと鎧の音が鳴る。軽い。こんなに堅そうなのに革の鎧と変わらない重さ。素早さは落ちずに防御力が跳ね上がっている。普通の物理攻撃を行なう敵なら負ける筈が無い。
よし、決めた!
と言っても自分で決めた訳ではない。自分で決められないなら他の人に任せようと思っただけだ。レオは俺の事を心配してくれている。身を案じてくれている友人がいるんだ。今回は断ろう。命を賭して戦う必要があるのは愛する人が出来てからだ。今では無い。優柔不断のせいでロレンツォさんのパーティーには迷惑をかけるけどしょうがない。
俺がキャンセルの決断をした時、掲示板近くに3人のグループがいた。恐らくロレンツォさんのパーティーだろう。
まず目につくのは、顔を包帯でぐるぐる巻きにしている異様な見た目の中肉中背の男性。1人だけ剣を持っているので、ロレンツォさんだろう。二刀流なのだろうか? 右腰に長めの剣を差し、左腰に少し短めの剣を差している。この島1のイケメンって話なのに包帯で顔が見えない。前回の戦闘で傷を負ったのだろうか?
次に、少し背が高めの高齢の男性。杖を持っているので魔法系の後衛だろう。装備からヒーラーのように見える。
そして、若い女性。こちらも杖を持っているので魔法系の後衛だろう。装備から魔法使いのように見える。俺は包帯の人物に声を掛けた。
「こんにちは。ロレンツォさんですか?」
「そうです。ブラッドさんですね。この度はありがとうございます」
「えっと……あの……」
俺は気まずいながらも、今回の件をお断りしなければと思った時、女性の顔が目に入った。
えっ?!
俺は体に電流が走るような衝撃を受けた。……美人。とにかく美人。俺と同じで20歳前後ぐらいに見えるけど、もしかするともう少し年上かも知れない。中肉中背で色白の肌。艶のある黒髪を後ろで束ね、少し吊り上がった大きな目にスッと通った鼻筋で薄い唇。姿勢が良く、上品な佇まい。こんな美女にニコッと微笑まれたら、一瞬で恋に落ちてしまうだろう。と言うか、もう既に恋に落ちているような気もする。この子の為なら命を賭けられる。
俺は先程の考えから180度変わって、呪いの魔女討伐へ行く気満々になっていた。
「こんな弱そうな人と一緒に行くの嫌よ!」
えっ?! 今何て?
するとロレンツォさんが俺に近付いて小声で言う。
「すみません。キツめの冗談なんです」
あ、なるほど。ブラックジョークね。こういう場合は相手に乗るのがベストだ。中途半端に乗ったり、照れたりして引いたらダメなんだ。
「姫、若輩者ですが、命に代えて御守りさせて頂きます」
俺は片膝をつき、頭を下げ、右手を左胸に当て、家来がお姫様を扱うように振る舞った。
「余計な事言わずに早く装備を身に付けなさい! その格好で行くつもり?!」
「はいっ! 直ちに!」
ロレンツォさんは顔を包帯でぐるぐる巻きにしているので表情が読み取れないし、高齢の男性は無口でノーリアクションだから、俺の彼女への対応がスベっているのか、それとも正解なのかがよく分からない。
ロレンツォさんは準備してきた装備を持ってきて俺に言う。
「すみません。こちらを装備してください。カーボンの鎧と槍と盾です」
何だって?! 俺は耳を疑った。100万ゴールド相当の防具に加えて、カーボンの槍までセットだとは……。初対面の人に貸すレベルの装備では無い。
「そちらは参加して頂いた御礼に差し上げます」
「えー! 良いんですか?!」
「もちろん勝利報酬は別ですので」
信じられない事続きで、さすがに大きな声が出てしまった。
「ロレンツォ! 早くしなさい!」
「はっ! 申し訳ありません!」
俺のせいでロレンツォさんが怒られるのは申し訳無いと思い、急いで装備する。ロレンツォさんは女性に謝った後、俺に話す。
「一応説明させて頂きます。装備しながらお聞きください。私、ロレンツォは剣士です。護って頂かなくて構いません。あちらは魔法使いのカテリーナお嬢様です。そして、あちらがヒーラーのジョヴァンニ様です。あちらの2人へは攻撃を漏らさないようお願いします」
「分かりました」
そうだった。ロレンツォさんはビジュー家に雇われている剣士。カテリーナさんはビジュー家の令嬢だから偉そうにしているんだろう。ジョヴァンニさんは無口だから分からないけど、ロレンツォさんの対応からビジュー家の人っぽい。
俺はカーボン装備を終えた。格好良い。格好良すぎと言って良いだろう。鏡を見てみたい。写真を撮っておきたい。こんなのを貰えるなんて夢のようだ。
「早くしなさいよ! 置いていくわよ!」
「はいっ!」
カテリーナさんは一喝するとスタスタと移動を始めた。
「すみません、行きましょう」
ロレンツォさんはそう言って早足でカテリーナさんを追いかける。俺も駆け足でロレンツォさんを追いかける。ガチャガチャと鎧の音が鳴る。軽い。こんなに堅そうなのに革の鎧と変わらない重さ。素早さは落ちずに防御力が跳ね上がっている。普通の物理攻撃を行なう敵なら負ける筈が無い。
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