HEAD.HUNTER

佐々木鴻

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Trash Land

  the last battle V

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「巻き添え喰らいたくなかったら、じっとしてろよぉ」

 DBはポケットから両手を出し、リエを見詰めて笑いながら弾んでいる『まぁぶる』の頭を撫で、そしてその両腕を大きく開き――そして歌い出した。

「Sure you said.The feeling of dreaming doesn't work here.Without change, honesty is everything」

 その広げられた両手の指先全てから、白色に輝く触手が伸びる。

「Flock where there is good fortune.This is the right person in the right place and peace.Go with seven changes according to the addictive puzzle」

それがDBとリエ達を包み、周囲で跳ね回るレーザーをことごとく吸収して行く。

「What you think is there is an illusion.Where is paradise.Even if I do something I don't want to do, the clock keeps turning」

そして更に、その触手に触れた鏡が蒸発した。

「Give me damage, give me dancing malice.The endless loop of today spins――はい、お終い」

 そう言い、触手を消して再びポケットに手を突っ込む。

 その出来事は余りに静かで、そして幻想的だった。

 それだけに、なにが起きたのか理解出来たものはいないが。

 女達は、その出来事を目の当たりにして暫く呆然としていたが、すぐに立ち直ると持っている銃を捨てた。
 そして腰に差してあるナイフを抜くと、二人同時に突進してくる。

 自分達の身体には絶縁処理が施されており、彼の〝エレクトロキネシス〟は通用しない。

 そしてDBは〝サイ・デッカー〟。戦闘用〝サイバー〟である自分達が、負ける筈がない。

 そう思っていた。だが――

「命は粗末にするモンじゃないよ」

 そう言うと、ポケットから手を出して中指を突き付ける。

「Shock you」

 突進して来る女の一人を、その指先で触れる。

 それだけで、その女の身体が発火した。

「何だと!?」

 突進を中断して素早く離れた残る一人を一瞥する。サングラスがずれ落ち、その爬虫類の様な瞳孔が向けられた。

 その鋭い双眸は、先程の惚けた口調と表情から懸け離れている。

 そして発火した女の身体は蒼白い炎を上げて燃え尽き、灰すら残っていない。

 これほどの短時間で燃え尽きるということは、その炎は十万度を超える熱を発していたということになる。

「どうだい、極限すら超えた〝エレクトロキネシス〟の味は? 電撃ビリビリは所詮極限までしか研ぎ澄ませなかった、二流のヤツらがする事なんよ。これを俺様や兄弟達は勝手に〝パイロキネシス〟って呼んでいるがね」

 そう言うDBを見詰め、そして続けてリエ達を見た。

 目的は果たせなかったが、DBの〝能力〟の詳細という手土産もある。

 此処は一旦退いて体制を立て直すのが常套手段だ。

 そう判断し、その女性は後退を始め――だがその動きが、唐突に止まった。

 リエの影が不自然に延び、その女性の足下に達している。

『リエを……狙ったな』

 影が蠢き浮き上がり、そう呟く。その声に、リエは聞き覚えがあった。

『闇に還れ』

 影が再びそう呟き、刹那、女は蠢く影に喰われるように飲み込まれてその場から消滅した。

 そしてその影はリエの傍らに戻り、実体化する。

 その姿を見て、リエは確信した。

「護っていてくれたんだ。ありがとう、ファル」

 優しく微笑むその影――ファウル・ウェザーにそう言う。

 だがそれはすぐに消えてしまった。

 そして、周囲に静寂が戻る。

 リエは抱きかかえているミリアムを見た。出血は酷いが傷自体は大したことはないらしい。
 それにこの程度の傷だったら、ファウル・ウェザー病院に連れて行けば跡形もなく消えるだろう。

 そう思い、安堵の溜息を吐く。そして続けてDBを見上げ、

「助けてくれて有り難う。そのついでと言ってはなんだけど、レスキュー呼んでくれない?」
「OKOK、お安い御用だ

 その言葉に首を傾げたが、もう一つ気になることがあるために訊き返すのを止めた。その気になることとは、彼女にとっては非常に重要なことだった。死活問題だと言っても良い。

「もう一つ」

 先程よりも更に真剣な表情になり、リエは真っ直ぐにDBを見詰めて一言、
「この寒冷地仕様『まぁぶる』、頂戴」

 自分に懐いて頬擦りをする『まぁぶる』を抱き締め、そんなことを言う。

 リエとミリアムが先程までいたカフェ[セフィロート]の出入り口が乱暴に開き、数人のスーツ姿の男達がフィンヴァラによって外に放り出される様を遠目に見つつ、「流石ファウルが選んだ女性だ」などと妙な感慨に耽ってしまうDBだった。
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