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あの日 あの瞬間(とき) あの場所で・・・

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兄の手を握っていると、握り返してきて、目を開けた。
「お兄ちゃん」
声は聞こえない。でも、口の動きが、
「彩萌、ありがとう」
と言ってるように見えた。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
そう言うと、頷いた。
そのまま寝てしまい、目を開かなくなった。
お医者さんは、1日に何度も、回診に来てくれた。
3日が経った朝方、兄は・・・・・。
最期は苦しまなかった。
優しい顔をしている。
笑顔さえ漏れそうな、優しい顔だ。
泣きたいのを、必死で堪えた。
今は、泣いてはいけない。
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