あの日のこと

①

あの日のこと

病室は個室で、昇矢くんは夜もソファーに寝泊まりしていた。
退院の日も、ずっと着いてくれていた。
部屋に入ってから、
「車に荷物取ってくる」
荷物？って思いながら待っていると、ボストンバックを持って入ってきた。
「俺も、今日からここで生活する」
「え？」
「家、出てきた」
「え、何で？私のせい？」
「まぁ、そうだな」
「ごめん」
「いや、俺が決めたから」
「でも・・・」
「実はさ、俺たち結婚って言っても、籍入ってなくて、いわゆる内縁関係ってゆうの？あの家も、元々、彼女が住んでた家に転がり込んだ感じだし。司も俺の子じゃないし」
「そうなの？」
「里桜の事は、ただのきっかけで、いずれこうなっていたかもしれない」
「好きだったんでしょ？慶子さんのこと」
「好きだったよ。だから、一緒に住んでた。でもな、言われたんだよ。“私には出来ない”って。命かけるようなこと、って」
「命って・・・」
「ベランダから飛び降りて、死のうとしたんだろ？」
「死ねないよ、あの高さじゃ」
「だったら、俺も大丈夫だな」
「え？あ・・・」
「俺が死んだと思った？」
「え、わかんないけど、どうしたらいいかわかんなくなって」
「死にたかった？」
「うん」
「そうゆう行為を見てたら、敵わないって思ったって」
「ごめん、やっぱ、私のせいだね」
「ううん。いいんだ。俺が全部悪い。俺が、ちゃんとしないから、みんなを傷つけた。だからさ、里桜は責任感じなくていいから」
「ううん、私が悪い。私が、昇矢くんに無理なお願いして」
「それは、俺が断ればいい話だし。あの時、隠して里桜とエッチした。その後、言っても、もう遅いよな。ってかさ、俺自身、揺らいでたんだと思う。里桜じゃなかったら、やってない。里桜が好きだから続けてきた。今回の事で、余計にな。別れようと思ったのに、どうしようもなく、苦しい思いになって」
「苦しいって？」
「里桜がいなくなったら嫌だなって。もうさ、離れられないんだよ、俺たち」
「昇矢くん」
「だからさ、里桜は責任感じなくていいんだよ。何が何でも、俺が守るって決めたから」
「頼もしいなぁ」
「だろ？」