私の本当の気持ち、彼は知らない

私の本当の気持ち、彼は知らない

エレベーターで、嘉神さんの部屋のある7階まで上がり、二つ目の部屋に入った。
入ってすぐのリビングのソファーに座って、
「ちょっと待っててね」
嘉神さんはキッチンに行って、冷蔵庫から缶ビールを持ってきた。
「飲もう」
ソファーに並んで座った。
少し飲んでから、
「多賀野」
抱き寄せられ、
「泣いていいよ」
と言った。
「別に泣きたくない」
「何で？」
「何でって言われても・・・」
そう言いながらも、抱きしめられてるのが心地よかった。
「もういいや」
嘉神さんは、私の両肩に手を当て、じっと見つめながら、
「多賀野、俺でいいじゃん」
「ん？」
「俺は、多賀野のことずっと好きだったよ」
私も、とは言えなかった。
私は、入社して、配属先で最初に声をかけてくれたのが嘉神さんだった。
優しくて、すぐにときめいた。
でも、４人で食事に行くようになって、流れで澤樹さんと仲良くなり、気持ちが変わっていった。
それでも、思いがよみがえる。
私は目を閉じた。
嘉神さんはキスをした。

その夜、2人は抱き合った。