僕の愛した先生

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　キツく縛り過ぎたでしょうか？腕、痛みますか？先生を痛みつけたい訳ではないのです。事が済みましたら縄を解きますから。
　…そんなに怯えた顔をしないでください。大丈夫ですよ、一瞬で終わります。先生が悪いんですよ？本当は先生に痛い思いなんてして欲しくないのです。指で引き抜くつもりだったのですが。
　こんな数日で太ってもいないでしょう、こんなに指輪という物は抜けないものなのですか？それとも、抜けないように相手の方に細工でもされましたか？
　まぁ…考えたところで仕方がないですよね。
　先生、ちゃんと見てください。何のために前で腕を縛ったと思っているんですか？
　怖いですよね、すみません。でも、許してください。全て、貴女のためなんです。元凶を切り落とさなくては。そして、その瞬間を先生に見てもらわなければ、この行為に意味はないのです。

　ほら、先生、指に刃が入りますよ。そんなに叫んでも、もう辞めることは出来ませんからね。骨に当たって、痛い思いが長くならないようにひと思いにやりますので、安心してください。あ、目を閉じることは許しませんよ？やったら…そうだな、目を取り出してしまいましょうか。
　




　…あぁ、痛いでしょう。血が止まりませんね。今、止血しますから。
　…ふふ、先生。見てください。貴女の指。銀色の指輪が貴女の血で真っ赤になってしまっていますよ。血というのは、時間が経つと黒くなってしまうものですが、素晴らしいですよね、先生の色です。
　時間をかけていけば、先生だって…元の先生に戻る事が出来るんです。
　ですが、それは先生、貴女1人ですることです。
　僕も本当は、先生が黒に染まっていく姿を見届けたいのですが、それは叶うことはないでしょう。僕が出来るのは、ここまでです。
　僕はもう、立派な犯罪者です。兄たちには、これからのことで犯罪者の弟がいた、という重荷を背負わせないように色々済ませてきました。隠蔽工作ってやつですね。
　先生、僕が今からすること、分かりますか？



　先生の血が付いたナイフで、なんて、僕は幸せ者でしょうか。

　一緒に死のうなんて、そんなこと言いませんから安心してください。
　
　




　




　長々と話してしまってごめんなさい。
　もう少ししたら、僕の友人がここに来ます。僕は縄を解くことは出来ませんが、友人が必ず解いてくれますので、安心してください。友人が何か言ってきましたら、行方不明事件の犯人に捕まったと、言ってください。
　上手くいくようにしてありますので。

　…最期の人が、貴女で良かった。


　　　　　『理解することに努めなさい』


　先生、


　僕は先生のことを、愛していました