お江戸あやかしグチ処~うちは甘味処です!~

かりえばし

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狐の章 11

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ゴン助は、凛の皮肉のこもった丁寧な言葉遣いを気にすることなく、ヘラヘラと笑みを浮かべていた。

「お凛ちゃん、久しぶりだね、どうやらしばらくの間でさらに美しくなったみたいだ。俺と遊びたくなったら、いつでも声をかけてくれると嬉しいな」

三之助は、妻が妊娠中であるにもかかわらず、凜に対しても軽々しく振る舞うゴン助の姿に驚愕した。

凜はゴン助を睨みつけ、彼との会話はもう必要ないとばかりに先を急いだ。

しかし、ゴン助は凛に無視されても怯むことなく、八兵衛の部屋に向かう凛の背後を追いかけながら、一方的に話を続けた。

「照れ隠しなの? 可愛いじゃないか。俺、ついに噂の美姫ともお近づきになったんだよ。白妙は気位が高くて親しくなるのは大変だったけど、だからこそ落としがいがあるっていうか」

凛はゴン助の存在を視界から追い出し、黙々と歩いていた。
しかし、ゴン助が口を開くたびに凜のまとう空気は冷たくなっていく。

三之助は、凛とゴン助の間に身を置いて、凛を守ろうと身体を張ったが、ゴン助は三之助を押しのけて、凛のとなりに立とうとした。

その都度、三之助も立ち位置を変え、凛とゴン助の間に立ちふさがろうとした。
滑稽なイタチごっこが続く中、三人はやっと八兵衛の部屋の前までたどり着いた。

凛と三之助は精神的に疲れ切っていたが、ゴン助だけはのんびりとしていた。


三之助がアクビをしているゴン助を視線で示しながら、凛に耳打ちした。

「お嬢、お紺さんがいるのにいいんですかね?」

凛はふっと口角をあげた。

「毛づくろいで本来の美しさを取り戻したお紺さんなら、心配ないさ。後悔する羽目になるのはゴン助殿だ」
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