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第一章 始まりの物語
第7話 予想外の敗北
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「………嘘でしょ、負けたってこと? こんなにあっさり……私、が……?」
思わぬ敗北に、アリカ・リーズシュタットは脱力し、力無く呟く。
負けるなどとはつゆ程にも考えていなかった。オリヴァー・カイエスという荷物を背負っても己の実力ならば如何様にも覆せると。
だが結果はどうだ? 本来の実力の半分も出せず、終始ユーリ・クロイスに翻弄され続けた。
これが実戦だったなら任務は失敗ということになる。
模擬戦を前に怯えていたユーリ・クロイス……いや、怯えていたからこそ油断なく自身の魔術武装の特性を最大限活かし抗った。その結果が今ということか。
アリカ・リーズシュタットの敗因は一目瞭然。ユーリ含めこの場にいる全員を格下だと侮ったこと。味方であるオリヴァー・カイエスを荷物扱いし、苛立ちを抑えきれず、魔術武装を破壊したこと。戦犯は間違いなくアリカにある。
「いえーい!」「うーい!」
パンッと軽快な音を立てハイタッチし合うユーリ・クロイスとダニエル・ゴーンは喜びを分かち合っていた。
同じ部隊に配属されたときは臆病者の足手まといとしか見ていなかった。
トリオン基地司令であるダリル・アーキマンが、ユーリを前線に送ったのはグランドクロスだと言った言葉は嘘ではないのかもしれない。
正直実力は大したことないが、度胸と最後まで諦めない姿勢は評価に値する。
(ま、口には出さないけど、少しは認めてあげるわ)
この模擬戦を行って良かったとアリカは思う。己の未熟さも改めて知れ、ユーリたちの実力も把握できた。それに先程まで感じていた彼らに対する嫌悪感も嘘のように霧散している。
もしかすると、ユーリ・クロイスはそれを見越して模擬戦を提案したのかもしれない。考え過ぎだとは自分でも思う。でもユーリが味方なら頼もしいと思ってしまったから。
「ま、腹立つものは腹立つんだけどね」
己の内から湧き上がる悔しさをもて余し、アリカは立ち上がろうとするオリヴァー・カイエスの元へ向かい手を差し出した。
オリヴァーもまた悔しそうに歯噛みし、己の無力さを痛感している様子だ。
「気にしなくていい。私がアンタの薔薇輝械を破壊しなかったらこうはならなかったから」
ただ単に目の前をウロチョロされて邪魔だから斬ってしまったのだが、この結果が敗因を招いたのは事実だ。
だがオリヴァーはゆっくりと首を横に振り否定した。
「いや、それも含めてユーリに出し抜かれた。僕と貴様の相性の悪さを見越して、執拗に貴様の進行方向へ攻撃を仕掛けていた。
ユーリの意図を測ろうともせず、僕も自分の力を見せつけたいばかりに貴様を蔑ろにしていた。
邪魔された貴様が苛立ち、愚かな行為に走ることは考えれば分かる筈だったのに」
「ねぇ、それって私がバカって言いたいわけ?」
「それ以外に何がある?」
アリカの差し出す手を取り互いに睨み合い万力の握力で握り合う。ギシギシと骨が軋む音が聞こえ、再び険悪なムードが漂うが。
「お前ら何で最初より仲悪くなってるんだよ」
溜め息を吐きながら割り込んできたユーリによって仲裁される。
ここで駄々をこねてはみっともないと思ったのか、アリカとオリヴァーは渋々手を離した。
「ユーリ・クロイス、質問があるのだけれど、その魔術武装はどこで手に入れたの?
明らかに軍用仕様じゃないわよね?」
「それを言うならアリカもだろ? というかこの場にいる全員が特化型保有者とかめちゃくちゃ驚いたんだが……」
従来、統合軍から支給される魔術武装は既存の汎用型――主に銃火器類に限定される。ユーリたちのように個人で魔術武装を保有している例は少なく、それが特化型であるなら尚更だ。
「なるほど、つまり今回前線に配属された新兵はそれぞれ個人で魔術武装を保有している者に限られるってわけか」
と、どこか納得した様子で呟くオリヴァー。
「俺の変幻機装だけど、母さんが言うには父さんが造ったものらしいんだ」
「らしい?」
ユーリの曖昧な言い方にアリカは怪訝な顔つきで聞き返す。
「あぁ。父さんは、俺が六歳の時に事故で亡くなって……これは形見みたいなものなんだよ」
ユーリの言葉に場の空気が一変する。それまでの戦いの熱気が嘘のように消え、静かな共感が流れる。
「僕の薔薇輝械は、お祖父様が現役時代に使用していたカイエス家の秘宝だ。
僕はこの薔薇輝械を使って、戦果を上げてカイエス家の名を轟かせてみせる」
ユーリにつられてオリヴァーも自身が持つ魔術武装の由来を語っていく。再び展開しようとするが、アリカに破壊されてしまったため、形を成すことなく、微粒子となって消えていく。
「そうだった!? 貴様よくもお祖父様から授かった僕の宝物を!!」
「悪かったわよ。けれど完全に壊れたわけじゃないし、三日もあれば直るでしょ?」
祖父から受け継いだ宝物を破壊され涙目で詰め寄るオリヴァーへ、バツの悪そうにアリカは視線を逸らして謝罪の言葉を口にする。
「三日も戦えないって致命的じゃないか! ていうか明日――いや、もう深夜回ってるし正確には今日か――の訓練どうするんだよ!!」
オリヴァーの薔薇輝械を破壊したのはアリカだが、そう仕向けたのはユーリであるため罪悪感で居た堪れず話題を逸らすことにした。
「そういえば、アリカの紅鴉国光って、一切改良を施してないよな? 持ち歩くの不便じゃないか? あと、リーズシュタット流剣術だっけ? どうやったらあんな凄い技出せるんだよ」
「矢継ぎ早に質問されても困るわ。この剣に改良は必要ないの。むしろ改良しようものなら、余計な澱みを生んで色褪せるだけね。
これをあるがままに使えるからこそ、リーズシュタット流剣術は現代でも通用するのよ。
私が強いのは人生の全てを剣に捧げてきたから。強さだけが欲しい。他には何もいらない。そして強さを証明するには、見届ける者と戦うべき敵が必要。だから私は私の最強を証明するために――戦うためにトリオン基地へ来たの」
「「「………………」」」
ユーリ・クロイスが安穏と日常を送っている裏で、アリカ・リーズシュタットはひたすらに剣術を極めてきた。実力差が開くのは当然……。彼女が何故最強に拘るのか詳しく聞きたいが、素直に教えてはもらえないだろう。案の定、話は終わったと言わんばかりにアリカは口を閉ざす。
「そっか。話してくれてありがとう」
「………変な奴」
模擬戦を経たおかげか、アリカが僅かだが心を開いてくれたことに対する意味も含めてお礼を言ったのだが、変人扱いされてしまった。
「さぁーて、と! なぁ、ユーリ。無事に仲間割れは防げたんだし、こんなところでくっちゃべってないで、とっとと部屋戻って寝ようぜ。いい加減眠くて仕方ねぇや」
ダニエルの言う通りだ。立ち話に花を咲かせすぎた。いい加減撤収しないと明日からの訓練に影響してしまう。本当はダニエルのことも教えてほしかったが、話す機会はこれから沢山あるし、焦る必要はないか。
「そうだな。というか俺、明日からの訓練やってけるかな……?」
魔力の使い過ぎで正直歩くのがやっとの状態だ。オリヴァー、ダニエル、アリカの三人は模擬戦を経験した後とは思えない程ピンピンしている。
「大丈夫さ、こういうのは意外と気合いで何とかなるもんだ!」
ユーリの不安を吹き飛ばすように、ダニエルはバンッと背を叩く。
「気合い、ねぇ……」
されるがままになりながらも、ユーリは先程の模擬戦を振り返り、自身が思い込みで定めていた限界以上の魔力を引き出せていたことを思い出す。気合いで何とかなるという根性論もあながち間違いではないのかもしれない。
ユーリ、オリヴァー、アリカ、ダニエル、皆同じ部屋なので、わざわざバラバラに行く必要もない。四人一斉に訓練場を後にし、部屋へと戻っていく。
一時はどうなることかと思ったが、仲間割れによる部隊の崩壊を免れたことにホッと一息吐く。アリカとオリヴァーの仲は依然として険悪なまま目を合わせようともしておらず、無理に仲良くする必要もないかと特に何も言わずに通路を歩き続ける。すると、ユーリたちの視線の先。通路の壁側に背を預け立っていた人物がユーリたちの姿を捉えるや否や――
「――やぁ、君たち。先程の模擬戦は実に見応えがあったよ。無事に和解できたようで、安心した」
「アーキマン司令……」
フリーディア統合連盟軍基地司令のダリル・アーキマン大佐――ユーリたちを待っていたのか、こちらへ歩み寄り労いの言葉をかけてきた。
四人は軍隊式の敬礼で応じるも、ダリルは不要だと手で諌める。
「ユーリ・クロイス、オリヴァー・カイエス、アリカ・リーズシュタット、ダニエル・ゴーン。私は君たちのような若者が、この荒んだ戦場に新たな風を運んでくれることを期待している。
誰に何を言われようと、君たちは君たちの意志を貫き通したまえ。それでは、これで失礼するよ」
言いたいことを言い終えたのか、ダリルは踵を返し去っていく。取り残されたユーリたちは、お互い暫し顔を合わせると。
「なぁ、ユーリ。ひょっとして僕たち……司令に期待されてるんじゃないか!?」
オリヴァーがキラキラと目を輝かせて喜んでいる。家の名を上げるために、いの一番に出世したい彼としては、ダリル・アーキマン大佐のお眼鏡にかかっていることが嬉しくて仕方ないのだろう。
「そうか? 俺は楽観的すぎる気もするけどなぁ……」
期待されるということは、それに応えられるだけの戦果を上げなければならないということ。戦果を上げるためには、否が応でも異種族と戦わなければいけないわけで……。
「実戦……その日が来るのが楽しみだわ」
アリカは相変わらずというか、戦うことだけに意味を見出している様子。
その後、ようやく部屋に着いたユーリたちだったが、誰が一番最初にシャワーを浴びるかで一悶着あり、結局寝られたのは午前三時を回った後だった。
思わぬ敗北に、アリカ・リーズシュタットは脱力し、力無く呟く。
負けるなどとはつゆ程にも考えていなかった。オリヴァー・カイエスという荷物を背負っても己の実力ならば如何様にも覆せると。
だが結果はどうだ? 本来の実力の半分も出せず、終始ユーリ・クロイスに翻弄され続けた。
これが実戦だったなら任務は失敗ということになる。
模擬戦を前に怯えていたユーリ・クロイス……いや、怯えていたからこそ油断なく自身の魔術武装の特性を最大限活かし抗った。その結果が今ということか。
アリカ・リーズシュタットの敗因は一目瞭然。ユーリ含めこの場にいる全員を格下だと侮ったこと。味方であるオリヴァー・カイエスを荷物扱いし、苛立ちを抑えきれず、魔術武装を破壊したこと。戦犯は間違いなくアリカにある。
「いえーい!」「うーい!」
パンッと軽快な音を立てハイタッチし合うユーリ・クロイスとダニエル・ゴーンは喜びを分かち合っていた。
同じ部隊に配属されたときは臆病者の足手まといとしか見ていなかった。
トリオン基地司令であるダリル・アーキマンが、ユーリを前線に送ったのはグランドクロスだと言った言葉は嘘ではないのかもしれない。
正直実力は大したことないが、度胸と最後まで諦めない姿勢は評価に値する。
(ま、口には出さないけど、少しは認めてあげるわ)
この模擬戦を行って良かったとアリカは思う。己の未熟さも改めて知れ、ユーリたちの実力も把握できた。それに先程まで感じていた彼らに対する嫌悪感も嘘のように霧散している。
もしかすると、ユーリ・クロイスはそれを見越して模擬戦を提案したのかもしれない。考え過ぎだとは自分でも思う。でもユーリが味方なら頼もしいと思ってしまったから。
「ま、腹立つものは腹立つんだけどね」
己の内から湧き上がる悔しさをもて余し、アリカは立ち上がろうとするオリヴァー・カイエスの元へ向かい手を差し出した。
オリヴァーもまた悔しそうに歯噛みし、己の無力さを痛感している様子だ。
「気にしなくていい。私がアンタの薔薇輝械を破壊しなかったらこうはならなかったから」
ただ単に目の前をウロチョロされて邪魔だから斬ってしまったのだが、この結果が敗因を招いたのは事実だ。
だがオリヴァーはゆっくりと首を横に振り否定した。
「いや、それも含めてユーリに出し抜かれた。僕と貴様の相性の悪さを見越して、執拗に貴様の進行方向へ攻撃を仕掛けていた。
ユーリの意図を測ろうともせず、僕も自分の力を見せつけたいばかりに貴様を蔑ろにしていた。
邪魔された貴様が苛立ち、愚かな行為に走ることは考えれば分かる筈だったのに」
「ねぇ、それって私がバカって言いたいわけ?」
「それ以外に何がある?」
アリカの差し出す手を取り互いに睨み合い万力の握力で握り合う。ギシギシと骨が軋む音が聞こえ、再び険悪なムードが漂うが。
「お前ら何で最初より仲悪くなってるんだよ」
溜め息を吐きながら割り込んできたユーリによって仲裁される。
ここで駄々をこねてはみっともないと思ったのか、アリカとオリヴァーは渋々手を離した。
「ユーリ・クロイス、質問があるのだけれど、その魔術武装はどこで手に入れたの?
明らかに軍用仕様じゃないわよね?」
「それを言うならアリカもだろ? というかこの場にいる全員が特化型保有者とかめちゃくちゃ驚いたんだが……」
従来、統合軍から支給される魔術武装は既存の汎用型――主に銃火器類に限定される。ユーリたちのように個人で魔術武装を保有している例は少なく、それが特化型であるなら尚更だ。
「なるほど、つまり今回前線に配属された新兵はそれぞれ個人で魔術武装を保有している者に限られるってわけか」
と、どこか納得した様子で呟くオリヴァー。
「俺の変幻機装だけど、母さんが言うには父さんが造ったものらしいんだ」
「らしい?」
ユーリの曖昧な言い方にアリカは怪訝な顔つきで聞き返す。
「あぁ。父さんは、俺が六歳の時に事故で亡くなって……これは形見みたいなものなんだよ」
ユーリの言葉に場の空気が一変する。それまでの戦いの熱気が嘘のように消え、静かな共感が流れる。
「僕の薔薇輝械は、お祖父様が現役時代に使用していたカイエス家の秘宝だ。
僕はこの薔薇輝械を使って、戦果を上げてカイエス家の名を轟かせてみせる」
ユーリにつられてオリヴァーも自身が持つ魔術武装の由来を語っていく。再び展開しようとするが、アリカに破壊されてしまったため、形を成すことなく、微粒子となって消えていく。
「そうだった!? 貴様よくもお祖父様から授かった僕の宝物を!!」
「悪かったわよ。けれど完全に壊れたわけじゃないし、三日もあれば直るでしょ?」
祖父から受け継いだ宝物を破壊され涙目で詰め寄るオリヴァーへ、バツの悪そうにアリカは視線を逸らして謝罪の言葉を口にする。
「三日も戦えないって致命的じゃないか! ていうか明日――いや、もう深夜回ってるし正確には今日か――の訓練どうするんだよ!!」
オリヴァーの薔薇輝械を破壊したのはアリカだが、そう仕向けたのはユーリであるため罪悪感で居た堪れず話題を逸らすことにした。
「そういえば、アリカの紅鴉国光って、一切改良を施してないよな? 持ち歩くの不便じゃないか? あと、リーズシュタット流剣術だっけ? どうやったらあんな凄い技出せるんだよ」
「矢継ぎ早に質問されても困るわ。この剣に改良は必要ないの。むしろ改良しようものなら、余計な澱みを生んで色褪せるだけね。
これをあるがままに使えるからこそ、リーズシュタット流剣術は現代でも通用するのよ。
私が強いのは人生の全てを剣に捧げてきたから。強さだけが欲しい。他には何もいらない。そして強さを証明するには、見届ける者と戦うべき敵が必要。だから私は私の最強を証明するために――戦うためにトリオン基地へ来たの」
「「「………………」」」
ユーリ・クロイスが安穏と日常を送っている裏で、アリカ・リーズシュタットはひたすらに剣術を極めてきた。実力差が開くのは当然……。彼女が何故最強に拘るのか詳しく聞きたいが、素直に教えてはもらえないだろう。案の定、話は終わったと言わんばかりにアリカは口を閉ざす。
「そっか。話してくれてありがとう」
「………変な奴」
模擬戦を経たおかげか、アリカが僅かだが心を開いてくれたことに対する意味も含めてお礼を言ったのだが、変人扱いされてしまった。
「さぁーて、と! なぁ、ユーリ。無事に仲間割れは防げたんだし、こんなところでくっちゃべってないで、とっとと部屋戻って寝ようぜ。いい加減眠くて仕方ねぇや」
ダニエルの言う通りだ。立ち話に花を咲かせすぎた。いい加減撤収しないと明日からの訓練に影響してしまう。本当はダニエルのことも教えてほしかったが、話す機会はこれから沢山あるし、焦る必要はないか。
「そうだな。というか俺、明日からの訓練やってけるかな……?」
魔力の使い過ぎで正直歩くのがやっとの状態だ。オリヴァー、ダニエル、アリカの三人は模擬戦を経験した後とは思えない程ピンピンしている。
「大丈夫さ、こういうのは意外と気合いで何とかなるもんだ!」
ユーリの不安を吹き飛ばすように、ダニエルはバンッと背を叩く。
「気合い、ねぇ……」
されるがままになりながらも、ユーリは先程の模擬戦を振り返り、自身が思い込みで定めていた限界以上の魔力を引き出せていたことを思い出す。気合いで何とかなるという根性論もあながち間違いではないのかもしれない。
ユーリ、オリヴァー、アリカ、ダニエル、皆同じ部屋なので、わざわざバラバラに行く必要もない。四人一斉に訓練場を後にし、部屋へと戻っていく。
一時はどうなることかと思ったが、仲間割れによる部隊の崩壊を免れたことにホッと一息吐く。アリカとオリヴァーの仲は依然として険悪なまま目を合わせようともしておらず、無理に仲良くする必要もないかと特に何も言わずに通路を歩き続ける。すると、ユーリたちの視線の先。通路の壁側に背を預け立っていた人物がユーリたちの姿を捉えるや否や――
「――やぁ、君たち。先程の模擬戦は実に見応えがあったよ。無事に和解できたようで、安心した」
「アーキマン司令……」
フリーディア統合連盟軍基地司令のダリル・アーキマン大佐――ユーリたちを待っていたのか、こちらへ歩み寄り労いの言葉をかけてきた。
四人は軍隊式の敬礼で応じるも、ダリルは不要だと手で諌める。
「ユーリ・クロイス、オリヴァー・カイエス、アリカ・リーズシュタット、ダニエル・ゴーン。私は君たちのような若者が、この荒んだ戦場に新たな風を運んでくれることを期待している。
誰に何を言われようと、君たちは君たちの意志を貫き通したまえ。それでは、これで失礼するよ」
言いたいことを言い終えたのか、ダリルは踵を返し去っていく。取り残されたユーリたちは、お互い暫し顔を合わせると。
「なぁ、ユーリ。ひょっとして僕たち……司令に期待されてるんじゃないか!?」
オリヴァーがキラキラと目を輝かせて喜んでいる。家の名を上げるために、いの一番に出世したい彼としては、ダリル・アーキマン大佐のお眼鏡にかかっていることが嬉しくて仕方ないのだろう。
「そうか? 俺は楽観的すぎる気もするけどなぁ……」
期待されるということは、それに応えられるだけの戦果を上げなければならないということ。戦果を上げるためには、否が応でも異種族と戦わなければいけないわけで……。
「実戦……その日が来るのが楽しみだわ」
アリカは相変わらずというか、戦うことだけに意味を見出している様子。
その後、ようやく部屋に着いたユーリたちだったが、誰が一番最初にシャワーを浴びるかで一悶着あり、結局寝られたのは午前三時を回った後だった。
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