BloodyHeart

真代 衣織

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絶望

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「人間っ! 隠れても無駄だぁ——」
 人型で自動扉を開け、蝙蝠の群れになる。さっきよりも大群だ。
 直後、スプリンクラーが作動する。
 上から真っ赤な雨が蝙蝠に降り注ぐ。
 蝙蝠は散る。
 羽月はビニール紐を、スプリンクラーに設置したジッポとタンクに結んでいた。扉が開いたと同時に、真っ赤な雨が降る仕掛けをしていたのだ。
 棚奥からゴッドスターで羽月は狙いを定める。
 一匹の蝙蝠を撃った。
 しかし、当たらない。他の蝙蝠に遮られた。
「っそこかぁ!」
 羽月に蝙蝠と刃が襲い掛かる。
 狙われた羽月は棚奥から中央に飛び出す。
 蝙蝠が迫る。
 刃が羽月の脇腹を切った。
『シールド!」
 危機一髪、リリアが蝙蝠の襲来に間に合う。
 リリアは上から飛んで入って来た。
 クロスした両腕を振り、リリアは大量の刃を放つ。
 尻尾からシールドを出し、羽月の上に覆い被さる。
「羽月さん! ごめんなさいっ。待ってろって言われましたので……」
「騎乗位で従順ぶんなよっ」
「えっ⁉︎ えっ……」
 さすがに、その過激な言動にリリアは赤面する。
 リリアに覆い被されながら、羽月はゴッドスターの弾丸を再装填させる。
「遊撃シールド維持させながら、出来るだけ多く刃放て」
「出来ません! そんな事っ」
 試すどころか、想像すらした事ない戦法だ。
「一秒でいい。やれ!」
「で、でも……」
 蝙蝠と刃は、シールドに容赦無く攻撃していた。
 出来ないよっ、そんな事っ……。
 失敗したら、その時はっ……。
 最悪の事態が頭を過る。
「バージンがっ! 男の上で終わりてぇのかっ⁉︎」
 又しても過激な言動を浴びせられた。
「やっ、やっだぁい!」
 揺さ振られる。
 ドラキュラを倒すより、何よりも羽月さんを護りたい。
「ハハハっ……。実に無様だな。人間と尻尾も取れないガキがっ」
 何処からか、ドラキュラの嘲笑う声が聞こえてきた。
「寄り添い合い、何も出来ずに弱者はくたばる。実に滑稽で惨めったらしい最期だ」
 ドラキュラが声高らかに言い放つ。心底馬鹿にしている様だ。
「何ですって……」
 怒りが漏れる。
 未来ちゃんと美穂さんの事言ってるの?
 苦しい思いしながらも、お母さんを労っていたのに……。
 辛い思いしながらも、娘の為に笑っていたんだ。
 リリアの頭は、怒りに完全に支配された。
「絶対に私が護ります! 羽月さんっ、殺って下さい!」
 叫ぶ様にリリアは言う。初めて殺しを命じた。
 下にいる羽月は覚悟を見る。
「あぁ、了解だ!」
 何故か羽月は楽しそうだ。
 リリアが両腕を振るう。
 大量の刃がシールドの外に放たれた。
 ゴッドスターを構える羽月は、リリアの背に片腕を回す。
 蝙蝠が散り散りになる。
 最初に動き、遠い方向を向く一匹に羽月は気付いた。
 間違いない本体だ。唯一インクが付いていない。
 一秒経過する。
 遊撃シールドは維持されている。
 二秒——。
 弾丸が本体の蝙蝠を撃ち抜いた。
 遊撃シールドが消える。
 ほぼ同時に、他の蝙蝠は消えていく。
 人型に戻ったドラキュラが胸から血を流している。
 苦しさに悶え、ドラキュラは膝を突く。
 まだ生きている。
「即死出来ないよう避けた」
 起き上がり、羽月はドラキュラに歩み寄る。
「て、てめぇ……」
 ドラキュラは絶望に凄んでいる。
「だが、二十分は保たねぇ」
 告げると、羽月は容赦無く血を流す胸を踏み付けた。
 痛みを叫ぶ事も出来ずに、ドラキュラは身悶えている。
「高みしか見えなかった、猿山思想にはお似合いの末路だ。寄り添う友もいないまま、惨めったらしくくたばりなっ」
 冷酷に羽月は吐き捨てた。
 ドラキュラの命は絶望に絶えて逝く。
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