115 / 133
朗報
しおりを挟む「今日は飲まなきゃやってらんねぇと思ったけど、合コンきたーっ!」
アイスボックスの入ったレモンサワーを飲み、伊吹は浮かれ上がった。
「伊吹さん、志保さんいるでしょ? アンタは誘っていません」
横から旭が言葉を刺す。
「合コン行くぐれぇ、志保は文句言わないって。なっちーも行こうよ? 女は好きじゃなくっても酒は好きだろ?」
悪びれずに伊吹は言葉を返す。那智に問い掛けた。
「はい、行きますよ」
五人で居酒屋に来た為、那智は伊吹の隣、上座位置に座っている。和やかに即答し、那智は参加を決めた。
「大丈夫? そしたらなっちーに全部持ってかれちゃわない?」
旭の向かいに座る三宅豊が口を挟む。サラダを食べ、中ジョッキに注がれた生ビールを美味しそうに飲んだ。
「若林君も行こうよ?」
向かいに座る若林も伊吹は誘う。
若林は捜査会議に参加していた一番若い警察官だ。
『今日は飲まなきゃやってられないでしょ?』
そう声を掛け、伊吹が居酒屋に誘っていた。
「私は同性愛者ですから、その心配は要りませんよ」
三宅豊の心配を那智は打ち消す。
「なっちーがそうでも相手が惚れそう。慶応出だし、優男風イケメンで、世の女が一番結婚したいタイプだし……。あぁ結婚したい」
嘆くように三宅豊は願望を言う。
「えっ、同性愛者なんですか?」
初耳にも関わらず、平然とする三宅豊に反し、若林は驚いている。
「はい。にいや君も東工大じゃないですか?」
笑みを崩さずに那智は認め、三宅豊の方を向く。コップに注がれた焼酎を飲む。
「偏差値の割りに知名度イマイチなんだよ。あの大学は……」
軽く自嘲し、三宅豊はサラダを食べる。
「えっ、外部入隊なんですか? 体格良いのに……」
又しても若林には驚く情報だった。
「ずっとサッカーやってたからね」
三宅豊は少し物哀しそうに言った。
若林よりも三宅豊は二センチ身長が高い、百七十七センチだ。身体つきは筋肉質で引き締まっている。
対イーブル軍の非戦闘部隊は外部からも人員を募集している。
だが、戦闘を想定した訓練があり、相応な体力が必要になる為、外部入隊希望者は少ない。
「——御注文、下げるお皿等は御座いますか?」
接客ロボットが五人の座敷前に来た。
伊吹が対応する。
那智が端に寄せていたグラスと皿をロボットの腹に入れる。
「えっと、レモンサワーと……。旭はジーマ? コーラ?」
「まだ酔いたくないから、コーラ」
「俺、生っ」
旭に続いて三宅豊も注文を言う。
「なっちーは焼酎大ジョッキ?」
「注文出来ないでしょう。同じストレートで」
ふざけた伊吹に笑って那智は注文をする。
「若林君は?」
「すみません。同じウーロン茶で」
遠慮を表に若林は注文を頼んだ。
「同い年なんだからさ、敬語はいいよ」
適当に食事を注文し、ロボットを見送った後、伊吹は振り向いて若林を気遣った。
「そうそう、俺も歳近いし」
三宅豊も気遣う。隣にいる若林の肩を叩く。
「にいや、今年三十三だろっ?」
近くないと旭は指摘している。
「近いって事にしといてよ」
三宅豊は若く見られたかった。
「えっ? 三宅部長、若く見えますね」
年齢を聞き、若林は更に遠慮を見せる。
「にいやでいいよ。部長って言われると照れる」
言いながら、三宅豊はトングで手羽先を取る。若林の取り皿と自身の取り皿に置いた。
「すみません。三宅部長、お名前は?」
「豊」
「何でにいやなんですか?」
「にいやっぽいから」
自覚している印象を三宅豊は自ら口にする。
「兄貴ってガラじゃないし。イメージにぴったりじゃん」
部署の違う旭も認めている。
5
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
押入れのダメ神さま ~頼むから出て行ってください~
飴盛ガイ
キャラ文芸
「出て行ってもらえませんか」
如何わしいリサイクルショップで働く塩留瑞雄の押入れに現れたのは、自称神を名乗る女ダルメトールだった。だが神らしいことをするわけでもなく、ひたすら押入れに閉じこもるダルメトールは、時には瑞雄のプライベートと食費を圧迫して、時には生活改善の訴えをしてくる。これはそんなダメ神様と平凡な生活を望むサラリーマンの、ハードストレスフル物語。
消えてしまった記憶、君の忘れられない事
桜月 翠恋
キャラ文芸
目を覚ますと記憶が少しずつかけていく
椛 ワスレ
ある日、今までは少しずつだった記憶が一気にかけてしまった
どうしようかと考えながら学校へ向かい、屋上に足を運ぶと
ワスレの腕を誰かがつかんだ
それは担任の想野 カスミだった
ワスレの一番近くにいたと言いはるカスミ
これはワスレのなくした記憶を探す物語
不平等で不公平
レン
キャラ文芸
富んでいる者と貧しい者。
力ある者と力なき者。
持つ者と持たざる者。
愛を受けた者と受けざる者。
公平と平等。世界中の誰もがそれを求めている。
差のなき世界を・・・。
そんな世界などありはしないと分かっているはずなのに・・・。
月華後宮伝
織部ソマリ
キャラ文芸
【10月中旬】5巻発売です!どうぞよろしくー!
◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――?
◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます!
◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~
純喫茶カッパーロ
藤 実花
キャラ文芸
ここは浅川村の浅川池。
この池の畔にある「純喫茶カッパーロ」
それは、浅川池の伝説の妖怪「カッパ」にちなんだ名前だ。
カッパーロの店主が亡くなり、その後を継ぐことになった娘のサユリの元に、ある日、カッパの着ぐるみ?を着た子供?が訪ねてきた。
彼らの名は又吉一之丞、次郎太、三左。
サユリの先祖、石原仁左衛門が交わした約束(又吉一族の面倒をみること)を果たせと言ってきたのだ。
断れば呪うと言われ、サユリは彼らを店に置くことにし、4人の馬鹿馬鹿しくも騒がしい共同生活が始まった。
だが、カッパ三兄弟にはある秘密があり……。
カッパ三兄弟×アラサー独身女サユリの終始ゆるーいギャグコメディです。
☆2020.02.21本編完結しました☆
本日、訳あり軍人の彼と結婚します~ド貧乏な軍人伯爵さまと結婚したら、何故か甘く愛されています~
扇 レンナ
キャラ文芸
政略結婚でド貧乏な伯爵家、桐ケ谷《きりがや》家の当主である律哉《りつや》の元に嫁ぐことになった真白《ましろ》は大きな事業を展開している商家の四女。片方はお金を得るため。もう片方は華族という地位を得るため。ありきたりな政略結婚。だから、真白は律哉の邪魔にならない程度に存在していようと思った。どうせ愛されないのだから――と思っていたのに。どうしてか、律哉が真白を見る目には、徐々に甘さがこもっていく。
(雇う余裕はないので)使用人はゼロ。(時間がないので)邸宅は埃まみれ。
そんな場所で始まる新婚生活。苦労人の伯爵さま(軍人)と不遇な娘の政略結婚から始まるとろける和風ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
※エブリスタさんにて先行公開しております。ある程度ストックはあります。
もしも魔法少女5人が全員オタクだったら
ニカイドン
キャラ文芸
アニメ大好きヒーロー大好き!男勝りで熱苦しい少女―紅咲みずきは、ある日窓の外から部屋に飛び込んで来た謎の生物―ニューンと出会い、魔法少女としての力を手に入れる。彼女に課せられた使命は、強大な力を持つ”闇の使者”からこの世界を守ること……そして、総勢5人の魔法少女を集結させることにあった。
が、しかし、運命に導かれた5人の少女達は、みずきを含め全員が超のつくほどのオタク集団だった。
大切なものを守るために……
向かいくる敵も、運命も、全て捻じ伏せる!!熱く、激しく……少女よ、その拳を刻み込め!!
※肉弾戦主体。流血など一部過激な表現が含まれています。あらかじめご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる