BloodyHeart

真代 衣織

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エゴの世界

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「弱体化は当然の国だな——。核を使って手に入るのは、焦土と汚染された遺伝子だ。そんな物を入手して何の利益があるんだ」
 近衛隊長が呆れを口にした。
 現在のロシアは領土だった国が次々に独立し、国際社会への影響力を失っている。
 ドラキュラ帝国の目的は人間であり領土ではない。そこに着目したロシアは、ドラキュラ帝国に領土権を求め幾度となく交渉に出た。
 すると、ドラキュラ帝国は軍事作戦への邪魔立てと判断する。旧政権幹部を皆殺しにしてしまう。
 これで、国際社会に大きな影響力を持つ国はなくなった。
 影響力を持っているのは、当然、魔界のドラキュラ帝国とサキュバス王国だ。
「だが——。物は使いようだな」
 切り出した帝王は、不穏に目を光らせ、意味深に薄ら笑う。
「どういう意味ですか?」
 怪訝に驚き、近衛隊長は問い掛ける。
「良い使い方がある——」
 明確な構想を帝王は描いていた。
「ですが——」
「お前は俺の物だろっ! 口答えせず、俺の言う通りにしろっ! 甲斐性無しの前帝王と違い、俺には十分な器があるんだ」
 器があると言いつつ、帝王は近衛隊長に意見させない。
 元々、相手が誰でも聞き入れる人ではない。常に自分が正しいと妄信し、疑いはしないから。
「人選は、どうなさいますか?」
 横で見ている側近が尋ねた。
 従順な側近の態度に笑みを零し、帝王は意気揚々と策力を語り始めた。
 ロシアが易く実験に使い提供する程、現在の核兵器に需要はない。
 ドラキュラ帝国侵攻後、核兵器は必要が無くなり、核軍縮は一気に進んだ。
 同じく必要がなくなった、生物兵器と化学兵器の生産も中止されている。
 国連の取り組みであった核なき世界の実現は、皮肉な事に魔人に敗北し、平和を失った世界が実現へと向かわせた。
 大国が弱体化し、世界のリーダーが魔人に置き換わる。想像が出来なかったシナリオ——。国際社会は、これから先に何を平和と掲げるのだろうか。
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