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生み堕とされたクリーチャー
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ロシア、モスクワ市内、科学研究所——。
四方を強化ガラスで覆われた四畳程のスペースに、囚人服を着た男が入れられている。厳重に拘束具を付けられ椅子に繋がれた、完全な自由無き姿だ。
「これからお見せするのは、我が国だけが持つ研究成果です」
初老の男が自国の功績を強調している。ドラキュラ帝国の軍人に得意気な顔を向けた。
男は、ロシア軍上層部の制服を着た政府要人だ。隣に側近の若い男を連れている。
「そうか——。成果によっては考慮しよう」
ドラキュラ軍人は無愛想に言葉を並べる。隣にいる、同じ黒い軍服を着た軍人も無愛想だ。
「——始めてくれ」
一瞬、ドラキュラ軍人の言葉にニヤけ、軍部の政府要人は指示を出した。
厳重な防護服に身を包んだ研究所の職員がボタンを押す。
強化ガラスの中に、灰色のガスが噴射される。
強化ガラスの周りにいる職員四人が観察する中、椅子に繋がれた死刑囚は痛烈な悲鳴を上げた。
悶え苦しみ、死刑囚は大量の血を吐き出す。
職員の二人が持っているタブレットには、死刑囚のバイタルが表示されている。
全ての数値が噴射直後に通常の三倍に上昇し、エラー表示が出る。その直後、停止を示す表示に変わった。
だが、ゆっくりと反応を始める。数値が上昇する。全ての数値は正常値の三倍まで上昇した。
強化ガラス内の換気が始まり、灰色のガスに覆われていた死刑囚の容姿が変貌していく。
全ての体毛が抜け、肌の色が赤紫色に変化した。
血を流す開けた目は真っ赤に、吐血していた口からは鋭く長い犬歯が生えている。
男は拘束を裂いた。
爪がドラキュラの様に強靭になり、十倍は長くなっている。
言葉とは思えない呻き声を上げ、強化ガラスを破り、男はドラキュラの前に突進していく。
男の理性は完全に失われている。まるで荒れ狂う獣だ。
「これで、血を与えればいいんだな」
「はいっ」
ドラキュラ軍人の問いに、上層部の軍人は興奮しながら答えた。
左手首を爪で切る。ドラキュラ軍人は、自身の前に跪いた死刑囚の口に、滴る血を流し入れた。
血を飲み込むと死刑囚の息が整う。バイタルが正常値に変わる。
「——御命令を下さい。マイマスター」
落ち着きを取り戻し、死刑囚は言葉を発した。
「核弾頭とあなた方ドラキュラの血から製造しました。ヒューマロイドより頑丈な忠実な僕です」
にこりと上層部の軍人が言う。
「処分したい時は?」
「心臓を貫けば終わりです。それ以外の損傷は再生出来ます」
興味を持ったと思い、上層部の軍人は嬉々としてドラキュラ軍人の質問に答えた。
全てを観察している研究所の職員達は、寡黙に淡々と課せられた職務を行なっている。
防護服の上からは表情が分からない。分からないが、起きている事に何も感じない、鋼鉄の仮面を想像させた。
有識者である研究所の職員は、意思を持たない仕組まれたアンドロイドの様だった。
「命令を下す——。この男を殺れ」
「えっ⁉︎」
ドラキュラ軍人の命令に、上層部の軍人は驚愕する。
驚愕した瞬間に、死刑囚の男は強靭な爪で腹を大きく貫いた。上層部の軍人は絶命した。
もう一人のドラキュラ軍人が手に剣を現す。背中から死刑囚の心臓を刺した。
死刑囚の身体は粉々の骨に変わる。
「こんな化け物など駒にする価値もない」
怯えている側近に、心臓を刺したドラキュラ軍人は言い放つ。
「ましてや腐蝕した人間など、得ても誰も食わない」
ドラキュラ軍人は更に追い込む。剣を側近の首に突き付けた。
「私は、命令に従ってるだけですっ! 只の駒使いですっ」
手を前にし、側近の男は命を乞う。
「ならば駒使いらしく伝えろっ! 又しても横槍を入れるようなら、旧政権と同じく、貴様等は皆殺しの末路だと——」
ドラキュラ軍人は鋭く言い放ち、剣を消した。
ドラキュラ軍人の二人は背を向け、その場から去って行く。
上層部の軍人が殺されても、防護服の職員は冷徹だった。
だが先程までと違い、心があるように見えるのは何故なのだろうか——。
四方を強化ガラスで覆われた四畳程のスペースに、囚人服を着た男が入れられている。厳重に拘束具を付けられ椅子に繋がれた、完全な自由無き姿だ。
「これからお見せするのは、我が国だけが持つ研究成果です」
初老の男が自国の功績を強調している。ドラキュラ帝国の軍人に得意気な顔を向けた。
男は、ロシア軍上層部の制服を着た政府要人だ。隣に側近の若い男を連れている。
「そうか——。成果によっては考慮しよう」
ドラキュラ軍人は無愛想に言葉を並べる。隣にいる、同じ黒い軍服を着た軍人も無愛想だ。
「——始めてくれ」
一瞬、ドラキュラ軍人の言葉にニヤけ、軍部の政府要人は指示を出した。
厳重な防護服に身を包んだ研究所の職員がボタンを押す。
強化ガラスの中に、灰色のガスが噴射される。
強化ガラスの周りにいる職員四人が観察する中、椅子に繋がれた死刑囚は痛烈な悲鳴を上げた。
悶え苦しみ、死刑囚は大量の血を吐き出す。
職員の二人が持っているタブレットには、死刑囚のバイタルが表示されている。
全ての数値が噴射直後に通常の三倍に上昇し、エラー表示が出る。その直後、停止を示す表示に変わった。
だが、ゆっくりと反応を始める。数値が上昇する。全ての数値は正常値の三倍まで上昇した。
強化ガラス内の換気が始まり、灰色のガスに覆われていた死刑囚の容姿が変貌していく。
全ての体毛が抜け、肌の色が赤紫色に変化した。
血を流す開けた目は真っ赤に、吐血していた口からは鋭く長い犬歯が生えている。
男は拘束を裂いた。
爪がドラキュラの様に強靭になり、十倍は長くなっている。
言葉とは思えない呻き声を上げ、強化ガラスを破り、男はドラキュラの前に突進していく。
男の理性は完全に失われている。まるで荒れ狂う獣だ。
「これで、血を与えればいいんだな」
「はいっ」
ドラキュラ軍人の問いに、上層部の軍人は興奮しながら答えた。
左手首を爪で切る。ドラキュラ軍人は、自身の前に跪いた死刑囚の口に、滴る血を流し入れた。
血を飲み込むと死刑囚の息が整う。バイタルが正常値に変わる。
「——御命令を下さい。マイマスター」
落ち着きを取り戻し、死刑囚は言葉を発した。
「核弾頭とあなた方ドラキュラの血から製造しました。ヒューマロイドより頑丈な忠実な僕です」
にこりと上層部の軍人が言う。
「処分したい時は?」
「心臓を貫けば終わりです。それ以外の損傷は再生出来ます」
興味を持ったと思い、上層部の軍人は嬉々としてドラキュラ軍人の質問に答えた。
全てを観察している研究所の職員達は、寡黙に淡々と課せられた職務を行なっている。
防護服の上からは表情が分からない。分からないが、起きている事に何も感じない、鋼鉄の仮面を想像させた。
有識者である研究所の職員は、意思を持たない仕組まれたアンドロイドの様だった。
「命令を下す——。この男を殺れ」
「えっ⁉︎」
ドラキュラ軍人の命令に、上層部の軍人は驚愕する。
驚愕した瞬間に、死刑囚の男は強靭な爪で腹を大きく貫いた。上層部の軍人は絶命した。
もう一人のドラキュラ軍人が手に剣を現す。背中から死刑囚の心臓を刺した。
死刑囚の身体は粉々の骨に変わる。
「こんな化け物など駒にする価値もない」
怯えている側近に、心臓を刺したドラキュラ軍人は言い放つ。
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ドラキュラ軍人は更に追い込む。剣を側近の首に突き付けた。
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手を前にし、側近の男は命を乞う。
「ならば駒使いらしく伝えろっ! 又しても横槍を入れるようなら、旧政権と同じく、貴様等は皆殺しの末路だと——」
ドラキュラ軍人は鋭く言い放ち、剣を消した。
ドラキュラ軍人の二人は背を向け、その場から去って行く。
上層部の軍人が殺されても、防護服の職員は冷徹だった。
だが先程までと違い、心があるように見えるのは何故なのだろうか——。
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