BloodyHeart

真代 衣織

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レッドムーン

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 私も強くなりたいな。
 風呂を出て、リリア王女は自室に戻った。
 白いワンピースのナイトウェアを着ている。
 リリア王女の部屋は、とても広々としていて、家具は女の子らしくお姫様らしい部屋だ。
 アクセサリーを仕舞っているショーケースに目がいく。
 一番上の透明で目立つ部分に、志保から貰った髪飾りと、羽月から貰ったネックレスは飾るように仕舞ってある。
 ショーケースを開け、笑みを漏らしながら髪飾りを撫でた。ケースを開けてネックレスを手に取る。
 途端に、羽月が浮かび思わず赤面してしまう。
 ネックレスをショーケースに仕舞い、火照った顔を冷やそうとバルコニーに出た。
 ——顔を冷やす夜風が、巡る巡った記憶を運んでくる。
 魔人も人間も同じ人だよ。命の重さは皆同じ筈なのに……。
 同じなのに……。
 何で、殺し合わなきゃいけないの?
 どうして、同じ人間を差別するの?
 何故、仲間の命を軽視出来る?
『道徳心など、狂気の前では何の役にも立たない』
 以前、サファイアに言われた言葉が蘇った。
 言われた当時は、理解に苦しんだが、今は痛々しく理解出来てしまう。
『間違い続ける、良心を見失った世界で、正しくありたいなら戦って勝つしかない』
 戦火なら、人を殺す事は正しいのか……?
 この問いに、サファイアが返した答えだ。
『狡さも含めて、強く賢くなりなさい。先ずは知る事だ——』
 知らなきゃ何も出来ない。
 駆け巡った記憶が、最後に女王である母との会話を引き出し、未だ頼りない背中を押した。
 羽月さん達は建前を言わなかった。事実を事実として突き付けてくれた。
 ——リリア王女の決意は固まった。
 魔界の月は赤や紫に光る事がある。今夜の月は鮮血の様に紅く煌々と輝いている。
 何れ王になる幼き王女の決意を導く月光か……?
 それとも、未だ子供である王女に、危険を知らせる警告の紅なのだろうか……?
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