剣神と魔神の息子

黒蓮

文字の大きさ
上 下
134 / 244
第六章 王女の依頼

舞踏会 4

しおりを挟む
 グレスさんとの話を終え、僕に割り当てられている部屋へと戻ると、ちょうどアーメイ先輩が訪ねて来ているところだった。



「やぁ、エイダ君。今、良いかい?」


「はい、もちろんです」



先輩は客室である僕の部屋へと入り、一緒にテーブルに座ると、弾けるような笑顔で話し始めた。



「先ほどの全力の一撃は見事だったよ!」


「ありがとうございます、アーメイ先輩」


「これで我がアーメイ伯爵家に連なる人々や、魔術騎士団の中に、君を下に見るような者達は居なくなっただろう!」



先輩は終始ご機嫌な様子で、ニコニコしながら話していた。きっと、自分が評価している存在が、周りからも同じように評価されるのが嬉しいのかもしれない。



「そうですね、あの場に居た人達はみんな呆然とするように上空を見上げていましたし、あの魔術の威力も理解しているとは思います」


「ふふふ、皆のあの顔は傑作だったな!騎士団の中には、君に対して良からぬ感情を抱いている者達も居たが、これで認識を改めるだろう」



先輩の言葉に、やはり必要であれば力の誇示は必要なんだなと改めて思った。



「・・・ところでだ」



すると、急に先輩が話題を変えるように口を開いたのだが、何やらモジモジとして話しずらそうな様子だった。



「どうしたんですか?」


「あぁ、いや、なに、先ほどお父様と何か話したのだろうが、君に何かお願いをするようなことを言っていなかったか?」


「お願いですか?」



要領を得ない先輩の質問に、僕は先ほどのグレスさんとの会話を思い起こすが、具体的に何かをお願いされたような記憶はない。



(最後に「娘の事を頼む」とは言われたけど、具体的に何を頼まれたのかも分からない状態なんだけどなぁ・・・)



その為、僕は先ほどの会話の内容について、ざっくりと先輩に伝えた。



「グレスさんとの話では、僕の今後の身の振り方について尋ねられたぐらいですね・・・」


「それだけか?」


「えっと、あとは、グレスさんも何か決めたような事を言っていました。それが何なのかは話しませんでしたが、何か重要そうな感じでしたね」


「他には?」



おそらく先輩の聞きたいことではないのだろう、僕の返答に対して矢継ぎ早に先を促してきた。



「えぇと、最後に言われたんですが、その・・・正直、僕自身も具体的に何をグレスさんは言いたかったのか分からないんですけど・・・」


「な、何て言われたんだ?教えてくれ!?」



先輩は興味津々といった表情で顔を僕に近づけてきて、続く言葉を待っていた。



「その、娘の事を頼むと・・・」


「っ!!な、なるほど・・・それで、君は何と答えたんだ?」


「いや、あの、何と答えて良いのか分からなかったので、大丈夫ですと言ったんですが・・・それで良かったんですかね?」



心配して僕がそう先輩に確認すると、少し思案した表情をして、少しだけ不機嫌な様子を滲ませながら口を開いた。



「そ、そこは、任せてくださいと言っても良かったんじゃないか?」


「う~ん、それだとアーメイ先輩と妹のティナさんに対しても責任を持つような返答になってしまいませんか?」



僕が疑問を伝えると、先輩はハッとした表情になった。



「エイダ君、お父様は間違いなく『娘』と言ったんだな?私や妹の名前ではなく?」


「はい。なので僕も言葉を慎重に選んだつもりだったんですが・・・」


「・・・そうか。分かった、話を聞かせてくれてありがとう」


「いえ・・・」



先輩はグレスさんの言葉に何か察することがあったのか、納得したような表情になって感謝を伝えてきた。



 それからダンスの練習の話になり、さっそく明日から行うことになった。午前中は簡単なダンスの講義を座学で行い、女性のエスコートの仕方や、姿勢、ステップ、音楽の事などの基本的なことを学んでから、午後には実際に踊ってみるということだ。


実際の音楽の方は残念ながら演奏団の手配が間に合わないらしく、アーメイ先輩が幼い頃からダンスを教えて貰っていた教育係の方に手拍子をしてもらいながらの練習になるということだ。


年明けまであと5日、ダンスを披露する舞踏会の本番まではあと7日と迫っていたが、アーメイ先輩はヤル気満々といった様子で息巻いていた。僕も舞踏会で先輩のダンスのパートナーとして踊るのであれば、僕の恥は先輩の恥になってしまうと考え、少しでも上達できるように気合いを入れて練習に臨むつもりだ。



 そうして、翌日からダンスの猛特訓が始まった。朝食を食べてからすぐに会議室のような部屋に呼ばれ、ダンスの基本的な知識を叩き込まれる。


講師は昨日アーメイ先輩が話していた教育係の人で、青みがかった黒髪を頭頂でお団子のように丸め、吊り目が厳しい印象を抱かせる妙齢の女性だった。名前はテレサさんと言う。


午前中はずっとテレサさんが、立て板に水のような話し方で僕の頭に知識を詰め込んでくる。休憩は無く、とにかく詰め込むだけ詰め込むようなスパルタだった。雰囲気は異なるが、教え方の方向性は僕の母さんと同じものを感じて辟易してしまう。


とはいえ、それを顔に出すわけにはいかないので、僕はなんとか集中力を切らさないようにテレサさんの講義を聞いていた。アーメイ先輩はその間、何故か楽しそうな表情で僕の講義を受ける姿を見つめていた。


昼食を挟んで、午後は実践だ。アーメイ家のダンスホールに場所を移したのだが、このダンスホールが凄く豪華で広々としていた。100人は余裕で踊れそうなホールは、精彩な加工が施されている大きな柱が目を引き、さらに壁一面には色鮮やかな風景画が描かれている。



「それではこれから実際に踊っていただきます。私が手拍子をしますので、エレインお嬢様をお相手に午前中に教えたことを思い出しながら踊ってください。お嬢様は、適宜エイダ殿へ助言をしてください」


「分かりました」


「分かった。さぁ、エイダ君、手を・・・」



テレサさんの言葉に頷くと、先輩がゆっくりと右手を差し出してきた。今は練習なので、先輩の服装はドレスではなく、動きやすい私服のズボン姿だ。僕は教えられていた通りその手を下から優しく支え、ホール中央付近へと先輩をエスコートしていく。位置につくと右手を離し、先輩の腰から少し上に手を添え、左手を軽く絡ませるように握る。



「ダメです!パートナー同士がそんなに離れては踊れませんよ!もっと密着してください!」



僕としては既に精一杯密着してるつもりなのに、テレサさんからダメ出しが入ってしまった。これ以上近づくと、アーメイ先輩の柔らかな部分に触れてしまいそうだし、僕の心臓の音まで聞こえてしまうんじゃないかと躊躇ってしまう。



「エイダ君、もっと腰と腰を密着させるようにするんだ」



アーメイ先輩はさすがになれているようで、躊躇う僕に優しく助言してくれた。



「わ、分かりました・・・こう、ですか?」


「っ!い、いや、もっと互いの腰骨を合わせるようなイメージで密着してくれ・・・」



僕がそのまま正面から密着してしまったのが悪かったのか、先輩は顔を赤くして、声を上ずらせながら間違いを指摘してきた。



「す、すみません!えっと・・・こうですか?」


「う、うん、そうだ」



ようやく最初のポーズがさまになると、テレサさんが手を打ち鳴らしてリズムを刻んできた。



「はい!では、いきますよ!最初はゆっくりとしたこのリズムを意識して身体を動かしてください!ワン!・ツー!・ワン!・ツー!」



テレサさんの指導の元、僕は最初のステップを踏み出す。



「うわっ!」


「きゃっ!」



僕は密着している先輩に意識をとられ、タイミングを微妙に外してしまった。そのため、先輩と息が合わずにバランスを崩してしまった。



「す、すみません!」


「大丈夫だ。落ち着いて、手拍子のリズムをよく聞いて。ただし、リズムを取ることだけに集中せずに、ちゃんと私の動きも意識するんだぞ?」


「はい、ありがとうございます!」



先輩の助言に、僕は深呼吸して頭の中の煩悩を追いやり、ダンスに全力で集中した。



「そうそう。上手だよ、エイダ君」



たどたどしくステップを刻む僕に先輩は、笑顔で褒めはやしながらずっと練習に付き合ってくれた。



 さすがに今まで踊ったことも無いダンスが、一日やそこらで劇的に上手になることはなかったが、テレサさんの指導が上手いのか、一緒に踊ってくれている先輩のリードが上手いのか、基礎的な動きはできるようになってきた。


ただ、リズムや先輩との動きに集中するあまり、表情が強張ってしまっているらしいので、もっとダンスを楽しむ余裕を持って笑顔で踊れるようにと、テレサさんと先輩の2人から指摘されてしまった。


正直、初心者の僕にとっては難度の高過ぎる指摘なのだが、本番の舞踏会では何十人といる貴族達の前で踊ることになるので、ダンスの見映えだけでなく、踊っている人物自身の見映えも重要視されると言うことで、とにかく残り少ない時間を練習に当てるしかなかった。


そして、12の月の最終日、つまり今年最後の日となった今日、アーメイ先輩はグレスさんと共に挨拶回りがあるらしく、午後から不在となってしまうのだという。屋敷の使用人の人達も、一年の汚れを綺麗にするために大掃除をしていて忙しいので、僕のダンスの練習に付き合える人もおらず、午後の時間は手持ち無沙汰になってしまった。



「そう言えば、前にティナさんが貴族について教えてくれるって言ってたし、ちょっと聞いてみようかな?」



以前馬車で言われたことを思い出し、時間のある午後にティナさんの部屋を訪れることにした。


忙しそうなメイドさんを捕まえてティナさんの部屋を聞くと、彼女は嫌な顔一つせずに案内してくれた。先にメイドさんがティナさんの都合を確認してくれると、そのまま彼女の部屋に通された。


よく考えると、女性の部屋に入るのは初めてだったので、緊張して彼女の部屋に足を踏み入れた。


広々としたティナさんの部屋は、ピンク色を基調とした壁に、純白の天蓋付きベッドが置かれ、至るところに可愛いらしい小物が飾り付けられている、まさに女の子の部屋だった。



「何よ?そんなに部屋の中をジロジロ見て?」



僕がキョロキョロしながら部屋に入ってきたことに苛立っているのか、ピンク色のワンピースを着るティナさんは若干不機嫌そうな顔をしていた。



「あ、ごめん、不躾に色々見ちゃって・・・その、女の子の部屋に入るのは初めてだったから、物珍しくて」


「ふ~ん、そう。別にどうってことのない普通の部屋よ」


「そ、そうなんだ」



この部屋以外の女の子の部屋を見たことがない僕には普通の基準が分からないが、彼女がそう言うのならこれが女の子の普通の部屋なのだろうと納得することにした。



「で、何の用なの?」



彼女の質問に、僕は部屋に来た理由を告げる。



「実は、前に貴族について教えてくれるって言ってたから、時間が空いた今日に出来れば教えて欲しいなって思って・・・」


「あぁ、その事ね。全然来ないから、忘れられたと思ったわ」



僕の言葉に彼女は無表情で返答してきたが、何となく言葉の雰囲気は怒っていると言うよりも、いじけているような印象がした。



「いやいや、そんなわけ無いよ!ここ数日はダンスの練習が忙しくて、中々時間が取れなかっただけで、学びたい意思はちゃんとあるよ」


「ふ~ん、なら良いけど」



僕の弁明に、彼女は素っ気ない態度で呟く。すると、僕を部屋まで案内してくれたメイドさんに紅茶の準備をさせ、部屋から退出するように命じていた。そしてメイドさんが居なくなると、部屋にある丸テーブルに座るように言われ、そこに彼女は数冊の分厚い本を持ってきて積み上げた。



「平民のあんたは貴族の一般的な知識や、社交界のルールも何も知らないでしょ?基本的なことはこの本に書いてあるから、自分でもちゃんと勉強するのよ?」


「わ、分かった。ありがとう」



僕は彼女の言葉に頷いて感謝を告げると、テーブルの対面に座った彼女は感情を感じさせない表情のまま口を開いた。



「さて。じゃあ、始めるわよ?」



そうして僕は、ティナさんから貴族についての知識を学ぶ勉強会を、時間が許す限り行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

王子、婚約破棄してくださいね《完結》

アーエル
恋愛
望まぬ王子との婚約 色々と我慢してきたけどもはや限界です 「……何が理由だ。私が直せることなら」 まだやり直せると思っているのだろうか? 「王子。…………もう何もかも手遅れです」 7話完結 他社でも同時公開します

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

気の遣い方が斜め上

りこ
BL
俺には同棲している彼氏がいる。だけど、彼氏には俺以外に体の関係をもっている相手がいる。 あいつは優しいから俺に別れるとは言えない。……いや、優しさの使い方間違ってねえ? 気の遣い方が斜め上すぎんだよ!って思っている受けの話。

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。 我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。 その為事あるごとに… 「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」 「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」 隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。 そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。 そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。 生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。 一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが… HOT一位となりました! 皆様ありがとうございます!

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

処理中です...