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第八章 戦争 編
戦争介入 35
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昼食の後、みんなを引き連れて僕が改造した島へと移動した。
「・・・広過ぎませんか?」
この島を見たシャーロットの第一声だった。広々とした平地に、森、遠くには小高い山もある。この場所に2人だけとなると広過ぎと言う印象も分からないではないが、狭いよりは良いだろうと大きくしてしまったのだ。
「わーい!凄いの!!」
アシュリーちゃんは久しぶりの外だからなのだろう、はしゃぎ回ってその辺を走っている。
「これは確かに広いですね」
「ええ、ちょっとした街が作れてしまいそうです」
「こんなに広ければ、個人個人の家を作ってもまだ余裕がありますね・・・」
メグ、フリージア、シルヴィアがこの島の感想を口にした。そう言われると、家を一つ二つポツンと建てるだけでは寂しげに見えてしまうが、街並みを作れば賑やかそうで良いかもしれないと考えた。
「じゃあいっそ、みんなの街でも作ろうか?」
「それは面白そうですね!」
「では、みなさんでどのような街並みにするか考えましょうか?」
僕の提案に、メグとフリージアが乗っかってくれた。
「私も考えるの~!」
アシュリーちゃんも走るのを止めて、みんなの輪の中に入りどんな街並みを作ろうかと言う議論に加わった。メグは紙を取り出し、本格的な街の設計図を書き始めた。みんなの意見を段々と纏めて出来上がっていく設計図を見ると、大きな公園を中心として大通りを作り、左右に建物を碁盤の目状に余裕をもって書かれている。アシュリーや僕らの家とするのは中心地に程近い場所に書かれている。
公園から少し奥に入ったところには、フリージアが切望した教会があり、なんとその隣にもう一つの教会が書かれていた。
「せっかくですから、公国式の教会もあればと思いまして」
そうメグは言うのだが、崇める神が違うのに隣に建てるのは良いのだろうかと疑問に思うと、フリージアが説明してくれた。
「どの神を崇めるのかは人々の自由です。崇める神の違いで争いが起こるなど悲しいものです。そこで、ここでは信仰は自由であることと、お互いの神を認め合いましょうという象徴も兼ねて隣に建てようと思うのです」
さすがフリージアだけあって色々な意味を込めてこうした配置にしたようだ。僕自身は無神論者なのでそう気にすることもない。それに、この島を訪れる人など居ないので、彼女達の理想通りに作る方が良いだろうと思った。
出来上がった設計図を元に地面を第三位階土魔法〈大地操作〉で道を作って、おおよその街の形を作り上げる。作る建物はさしあたってシャーロットの家だけだ。教会はまだデザインが出来上がっていないらしく、みんなの家についてはメグが職人を呼んで本格的に作りたいと言い出したので、後回しになってしまったからだ。
シャーロットの家は土魔法で部屋2つにリビング一つと簡素な作りなのだが、少しの期間棲む分には問題の無い作りだ。何せ話が盛り上がり、シャーロットの家も職人が手掛けることになったので、今は僕の応急処置的な家で勘弁してもらう。応急処置とは言っても、外観は普通の家だし、内装もきちんとしているが、みんなに言わせるとシンプル過ぎるらしい。しかも、土や石で出来ているため、冷たい印象になってしまうので。木の温かみも欲しいということで、職人を呼ぶことになったのだ。
公園についてはちょっとした池を作り、周りを緑で囲むために近くの森の木を植林して整えた。公園だけは綺麗に出来上がったと、作り終えた時には自画自賛したものだ。とりあえず、住める環境を整え終わると、シャーロットとアシュリーちゃんは深々と頭を下げてきた。
「ダリア様、皆様、本当に何からなにまで力になっていただき、ありがとうございます!」
「ありがとうなの!」
既に何度もお礼は言われて十分なのだが、ここで不要だと言っても彼女は納得しないだろうと、感謝の言葉を受け止めた。
「どういたしまして。でも、これから色々大変だと思うから、困ったことがあったら何でも言ってね。ちょこちょこここにはみんな来るだろうし、生活に困ったことがあれば改善しないと、みんなも困っちゃうだろうからね」
みんなで設計図を作っているときに、いっそこちらに拠点を移そうかという話が出たほどみんなの入れ込みには熱があった。それはきっと、街を一から自分達の手で作り上げるという、今まで経験したことの無い興奮がそこにはあったんだと思う。もちろん僕にも。だからこそ、みんなの力の入れようは別格だった。
「そうですね!みなさんが一緒に住んでも問題ないか確認しますね!」
「頑張るの!」
僕の言葉にシャーロット達は笑顔でそう言ってくれた。
それから少し日は経ち、いよいよ返事を聞くためにエリシアル帝国へと向かった。今回もみんな、帝国の【剣聖】であるジャンヌさんを気にしてか一緒にと主張したのだが、公国の王女であるメグ、王国の聖女と名高いフリージア、王国の王族の血を引くシルヴィアと、誰を連れていってもどこかの国との関係性を疑われてしまう顔ぶれに、僕の答えは揺るがず『ダメ』だった。口を尖らすみんなに理由を説明するも、渋々といった表情で引き下がるくらいだった。
帝都の城門で渡されていた短剣を見せると、少し驚いた表情をされたが、あっさりと中には入ることが出来た。門番をしていた軍人さんに案内され、馬車に乗りながら大通りを巨大な帝城方面へと進んでいく。馬車の窓から眺める帝都の中はジャンヌさんの言った通りの花の都の別名に相応しい様子だった。
(凄いな、赤・青・紫・・・色とりどりの色んな種類の花を育てているのか)
どの家も窓にプランターを取り付けて、そこで花を育てていた。沢山の花が咲き誇る街中からは、甘い香りが風と共に漂ってくる。家屋は王国や公国では見慣れない造り方をしていた。案内してくれている軍人さんに聞くと、鉄筋コンクリート製というよく分からない用語が飛び出してきたので、そうなんだと流しておいた。どの建物も5階建てや10階建ての高層で、何十組もの家族が生活しているらしい。住居に適した土地が少ない帝国ならではの光景だと説明された。
中心街に入ってくると人通りも賑やかになり、周囲には露天が多く見受けられるようになった。食べ物のいい香りが漂ってくるなか、よく見ると肉類を提供しているお店が多く、そこに筋骨粒々のおじさん達がたむろして、美味しそうに食事をしている。彼らは炭鉱夫と言うらしく、近くの鉱山で鉄鋼の採掘をしているらしい。帝国はそういった産業が発達しているためか、食事も濃い味付けのものが多いということだ。
しばらく馬車から観光案内をされつつ、帝城に着くまでの短い時間を過ごした。
そしてーーー
「よくぞ参られた『神人』殿!私がエリシエル帝国皇帝、ロウタス・フォン・エリシエルである!」
謁見の間の豪奢な椅子に座り、引き締まった肉体をしている初老の男性が僕を見据えながら名乗ってきた。
「始めまして帝国皇帝ロウタス・フォン・エリシエル皇帝陛下。私は『神人』と名乗るもの。そして、この帝国の問題を解決する手段を提供する者です」
帝国の皇帝には特に悪感情もないので、一応最低限の礼儀をとっておく。跪くことはしないが、軽く頭を下げておく。
「ふむ、聞いていた通りの姿・・・まだ子供と言うことか。それに・・・いや、力あってこそのその態度と言うことか」
皇帝は僕の一挙手一投足からも情報を読み取っているようで、鋭く僕を観察しているようだった。少しの息苦しさを感じながらも、話を先に進める。
「本日はお会いして頂くお時間をいただきまして、感謝申し上げます」
「かまわん。帝国としてもそちらがもたらしてくれた解決策は、十分検討に値するものだと【剣聖】たっての上申だったからな」
どうやらジャンヌさんは、しっかり皇帝に話を通してくれたらしい。
「それで、話を聞いていかがでしたでしょうか?」
「・・・帝国は『神人』殿の提案を全て飲むものとする」
口を開くまで僅かな時間考える素振りを見せた皇帝が、僕の提案を全面的に了承すると発言した。少しの驚きをもって感謝を告げる。
「ありがとうございます。では、具体的に農地化する場所と日時を決めていただければ、それに沿って行動しましょう」
「既に候補地は決めてあるので、日程を確認した後に決めていただいて結構だ」
皇帝がそう言うと、文官の姿をした人が長方形のお盆に乗せた書類を僕に差し出してきた。蝋封がしてあるその書類を受けとると、早速内容を確認した。
(候補日程が3つか。う~ん、一ヶ月後位が良さそうだな)
文章の全文には、今回の事の子細を帝国の主要都市の首長に伝えてから調整しなければならないので、相応の日数の後にという言葉があったので、色々と下準備が大変なのだろう。そもそも、こんな話を信じるかということもあるかもしれないが、それは頑張ってもらうしかない。
「では、一月後の日程で実施いたしましょう」
「分かった。よろしく頼む」
皇帝は鷹揚に頷き、すんなりと話が通ったことに喜びと共に少しホッとしていると、皇帝は表情を変えて僕に質問してきた。
「時に神人殿、少々聞きたいことがあるのだが?」
眉間にシワを寄せながら、身を乗り出すように皇帝は質問してきた。
「・・・広過ぎませんか?」
この島を見たシャーロットの第一声だった。広々とした平地に、森、遠くには小高い山もある。この場所に2人だけとなると広過ぎと言う印象も分からないではないが、狭いよりは良いだろうと大きくしてしまったのだ。
「わーい!凄いの!!」
アシュリーちゃんは久しぶりの外だからなのだろう、はしゃぎ回ってその辺を走っている。
「これは確かに広いですね」
「ええ、ちょっとした街が作れてしまいそうです」
「こんなに広ければ、個人個人の家を作ってもまだ余裕がありますね・・・」
メグ、フリージア、シルヴィアがこの島の感想を口にした。そう言われると、家を一つ二つポツンと建てるだけでは寂しげに見えてしまうが、街並みを作れば賑やかそうで良いかもしれないと考えた。
「じゃあいっそ、みんなの街でも作ろうか?」
「それは面白そうですね!」
「では、みなさんでどのような街並みにするか考えましょうか?」
僕の提案に、メグとフリージアが乗っかってくれた。
「私も考えるの~!」
アシュリーちゃんも走るのを止めて、みんなの輪の中に入りどんな街並みを作ろうかと言う議論に加わった。メグは紙を取り出し、本格的な街の設計図を書き始めた。みんなの意見を段々と纏めて出来上がっていく設計図を見ると、大きな公園を中心として大通りを作り、左右に建物を碁盤の目状に余裕をもって書かれている。アシュリーや僕らの家とするのは中心地に程近い場所に書かれている。
公園から少し奥に入ったところには、フリージアが切望した教会があり、なんとその隣にもう一つの教会が書かれていた。
「せっかくですから、公国式の教会もあればと思いまして」
そうメグは言うのだが、崇める神が違うのに隣に建てるのは良いのだろうかと疑問に思うと、フリージアが説明してくれた。
「どの神を崇めるのかは人々の自由です。崇める神の違いで争いが起こるなど悲しいものです。そこで、ここでは信仰は自由であることと、お互いの神を認め合いましょうという象徴も兼ねて隣に建てようと思うのです」
さすがフリージアだけあって色々な意味を込めてこうした配置にしたようだ。僕自身は無神論者なのでそう気にすることもない。それに、この島を訪れる人など居ないので、彼女達の理想通りに作る方が良いだろうと思った。
出来上がった設計図を元に地面を第三位階土魔法〈大地操作〉で道を作って、おおよその街の形を作り上げる。作る建物はさしあたってシャーロットの家だけだ。教会はまだデザインが出来上がっていないらしく、みんなの家についてはメグが職人を呼んで本格的に作りたいと言い出したので、後回しになってしまったからだ。
シャーロットの家は土魔法で部屋2つにリビング一つと簡素な作りなのだが、少しの期間棲む分には問題の無い作りだ。何せ話が盛り上がり、シャーロットの家も職人が手掛けることになったので、今は僕の応急処置的な家で勘弁してもらう。応急処置とは言っても、外観は普通の家だし、内装もきちんとしているが、みんなに言わせるとシンプル過ぎるらしい。しかも、土や石で出来ているため、冷たい印象になってしまうので。木の温かみも欲しいということで、職人を呼ぶことになったのだ。
公園についてはちょっとした池を作り、周りを緑で囲むために近くの森の木を植林して整えた。公園だけは綺麗に出来上がったと、作り終えた時には自画自賛したものだ。とりあえず、住める環境を整え終わると、シャーロットとアシュリーちゃんは深々と頭を下げてきた。
「ダリア様、皆様、本当に何からなにまで力になっていただき、ありがとうございます!」
「ありがとうなの!」
既に何度もお礼は言われて十分なのだが、ここで不要だと言っても彼女は納得しないだろうと、感謝の言葉を受け止めた。
「どういたしまして。でも、これから色々大変だと思うから、困ったことがあったら何でも言ってね。ちょこちょこここにはみんな来るだろうし、生活に困ったことがあれば改善しないと、みんなも困っちゃうだろうからね」
みんなで設計図を作っているときに、いっそこちらに拠点を移そうかという話が出たほどみんなの入れ込みには熱があった。それはきっと、街を一から自分達の手で作り上げるという、今まで経験したことの無い興奮がそこにはあったんだと思う。もちろん僕にも。だからこそ、みんなの力の入れようは別格だった。
「そうですね!みなさんが一緒に住んでも問題ないか確認しますね!」
「頑張るの!」
僕の言葉にシャーロット達は笑顔でそう言ってくれた。
それから少し日は経ち、いよいよ返事を聞くためにエリシアル帝国へと向かった。今回もみんな、帝国の【剣聖】であるジャンヌさんを気にしてか一緒にと主張したのだが、公国の王女であるメグ、王国の聖女と名高いフリージア、王国の王族の血を引くシルヴィアと、誰を連れていってもどこかの国との関係性を疑われてしまう顔ぶれに、僕の答えは揺るがず『ダメ』だった。口を尖らすみんなに理由を説明するも、渋々といった表情で引き下がるくらいだった。
帝都の城門で渡されていた短剣を見せると、少し驚いた表情をされたが、あっさりと中には入ることが出来た。門番をしていた軍人さんに案内され、馬車に乗りながら大通りを巨大な帝城方面へと進んでいく。馬車の窓から眺める帝都の中はジャンヌさんの言った通りの花の都の別名に相応しい様子だった。
(凄いな、赤・青・紫・・・色とりどりの色んな種類の花を育てているのか)
どの家も窓にプランターを取り付けて、そこで花を育てていた。沢山の花が咲き誇る街中からは、甘い香りが風と共に漂ってくる。家屋は王国や公国では見慣れない造り方をしていた。案内してくれている軍人さんに聞くと、鉄筋コンクリート製というよく分からない用語が飛び出してきたので、そうなんだと流しておいた。どの建物も5階建てや10階建ての高層で、何十組もの家族が生活しているらしい。住居に適した土地が少ない帝国ならではの光景だと説明された。
中心街に入ってくると人通りも賑やかになり、周囲には露天が多く見受けられるようになった。食べ物のいい香りが漂ってくるなか、よく見ると肉類を提供しているお店が多く、そこに筋骨粒々のおじさん達がたむろして、美味しそうに食事をしている。彼らは炭鉱夫と言うらしく、近くの鉱山で鉄鋼の採掘をしているらしい。帝国はそういった産業が発達しているためか、食事も濃い味付けのものが多いということだ。
しばらく馬車から観光案内をされつつ、帝城に着くまでの短い時間を過ごした。
そしてーーー
「よくぞ参られた『神人』殿!私がエリシエル帝国皇帝、ロウタス・フォン・エリシエルである!」
謁見の間の豪奢な椅子に座り、引き締まった肉体をしている初老の男性が僕を見据えながら名乗ってきた。
「始めまして帝国皇帝ロウタス・フォン・エリシエル皇帝陛下。私は『神人』と名乗るもの。そして、この帝国の問題を解決する手段を提供する者です」
帝国の皇帝には特に悪感情もないので、一応最低限の礼儀をとっておく。跪くことはしないが、軽く頭を下げておく。
「ふむ、聞いていた通りの姿・・・まだ子供と言うことか。それに・・・いや、力あってこそのその態度と言うことか」
皇帝は僕の一挙手一投足からも情報を読み取っているようで、鋭く僕を観察しているようだった。少しの息苦しさを感じながらも、話を先に進める。
「本日はお会いして頂くお時間をいただきまして、感謝申し上げます」
「かまわん。帝国としてもそちらがもたらしてくれた解決策は、十分検討に値するものだと【剣聖】たっての上申だったからな」
どうやらジャンヌさんは、しっかり皇帝に話を通してくれたらしい。
「それで、話を聞いていかがでしたでしょうか?」
「・・・帝国は『神人』殿の提案を全て飲むものとする」
口を開くまで僅かな時間考える素振りを見せた皇帝が、僕の提案を全面的に了承すると発言した。少しの驚きをもって感謝を告げる。
「ありがとうございます。では、具体的に農地化する場所と日時を決めていただければ、それに沿って行動しましょう」
「既に候補地は決めてあるので、日程を確認した後に決めていただいて結構だ」
皇帝がそう言うと、文官の姿をした人が長方形のお盆に乗せた書類を僕に差し出してきた。蝋封がしてあるその書類を受けとると、早速内容を確認した。
(候補日程が3つか。う~ん、一ヶ月後位が良さそうだな)
文章の全文には、今回の事の子細を帝国の主要都市の首長に伝えてから調整しなければならないので、相応の日数の後にという言葉があったので、色々と下準備が大変なのだろう。そもそも、こんな話を信じるかということもあるかもしれないが、それは頑張ってもらうしかない。
「では、一月後の日程で実施いたしましょう」
「分かった。よろしく頼む」
皇帝は鷹揚に頷き、すんなりと話が通ったことに喜びと共に少しホッとしていると、皇帝は表情を変えて僕に質問してきた。
「時に神人殿、少々聞きたいことがあるのだが?」
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