147 / 213
第八章 戦争 編
戦争介入 25
しおりを挟む
「お帰りなさいダリア!上手くいったようですね!」
「お帰り、ダリア君!」
「お帰りなさいダリア君!・・・その子が?」
屋敷のリビングに直接移動すると、みんなもう驚くこと無く出迎えてくれた。
「うん、シャーロットの妹さんだよ。孤児院は平民街の方で当たっていたよ」
シャーロット達に視線を向けながら、救出が上手くいったことを伝えた。2人はきつく抱き合っていたが、シャーロットが妹の身体を離し、みんなに挨拶するように促していた。彼女は涙でグチャグチャになった顔をハンカチで拭いながら、大きく息を吸い込んでスカートの裾を摘まんで淑女の挨拶をした。
「皆様、初めましてなの!マリーゴールド侯爵家次女のアシュリー・マリーゴールドなの!この度は私やお姉さまを救っていただきとても感謝しているの!ありがとうなの!」
アシュリーちゃんは5歳とは思えないほどしっかりとした挨拶が出来ていた。きっと侯爵家としての教育の賜物なのだろう。
「皆様、本当にありがとうございます!」
アシュリーちゃんに続いてシャーロットも、彼女の隣で深々と頭を下げてきた。
「そんなに気にしなくて良いよ!妹さんが無事で良かったね!」
それから簡単にみんなの自己紹介をしつつ、最初よりも幾分落ち着いたアシュリーちゃんを交えて談笑した。
話も一段落ついたところで、難しい顔をしたメグがシャーロット達のこれからについて確認してきた。
「現状シャーロットさんとアシュリーちゃんは死んだことになっています。となると、王国で生活していくことは難しいかもしれません。このまま公国で亡命者として生活出来ないことは無いと思いますが、それにも色々と問題はあります」
「確かに、もし彼女達が生きて公国に居ると王国に発覚すれば、両国の新たな火種になりますね・・・」
メグの言わんとしていることが分かった様子で、フリージアが問題点を指摘する。各国とも他国には情報収集の為の間者を放っているようなので、どこから情報が流出するかは分からない。となれば・・・
「えぇ、そのリスクを負ってまで公国が亡命を認めるかは、正直かなり厳しいと思います」
「私としても、そこまで公国やマーガレット殿下にご迷惑を掛けるわけには参りませんので、その際はどこかで身を隠しながら生活しようと思います。2人だけであれば何とか生きていけます」
自分達が迷惑になるならばと、シャーロットはここから出て、アシュリーちゃんと隠れ住むと言う。ただそうなると、一生怯えて暮らしていかなくてはならないだろう。シャーロット程の魔法の才能があれば、魔獣を討伐したりして生計を立てることは難しいことでは無いと思うが、常に周りの目を気にして自分達の正体がバレないようにするのは普通であればかなり神経をすり減らすだろう。いくら姉妹一緒に生活出来るからといって、とてもそんな生活は幸せとは思えない。
「彼女達の事は今は一旦保留にしよう。確かにこのまま公国でと言うわけにはいかないだろうけど、正体を気にしながら隠れて住むと言うのも、とても大変なことだと思うし、何か良い方法がないか僕も検討してみるから!」
そんな感じで、離しは一旦置いておく事になったのだが、深刻な表情でみんなが話していたために、アシュリーちゃんが不安になったのか、涙目でみんなに聞いてきた。
「・・・アシュリー達は邪魔なの?何処にも居場所がないの?」
小さな子の悲痛な言葉に胸が締め付けられる。彼女の両親は既に処刑されているらしく、身寄りとなるのは既にシャーロットしかいない。そんなシャーロットも、今は安定した身の上かと言えばそうではない。彼女達には安心して暮らせる場所が現状無いのだ。
「大丈夫だよアシュリーちゃん!僕がなんとかしてあげるよ!」
今にも泣き出しそうにしている不安げな彼女に視線を合わせるようにしゃがみこみ、頭を優しく撫でながら安心させるようにそう伝えた。
「うん!ありがとうなの!ダリアお姉ちゃん!!」
僕の言葉にパッと明るい表情になった彼女だったが、未だに僕のことを女の子だと思っている。
(そういえば、名前を言っただけで僕が男だって訂正してなかったな・・・)
みんなで自己紹介をした時は、名前を伝えただけで性別までは言っていなかった。自分の事を僕と表現しているので、分かるものかと思っていたのだが、まだ幼い彼女には伝わっていなかったようだ。心の中で盛大にため息をつきながら、彼女の勘違いを訂正する。
「あのね、僕は男だからね。」
「・・・嘘なの。どう見ても女の子なの」
「いや、ほんとよくそう言われるけどね・・・本当に男なんだよ?」
「・・・ホントにホントなの?」
「本当に本当!」
「・・・凄いの!こんなに可愛い男の子が実在したの!」
彼女の言葉は誉めているのか、貶しているのか・・・。その真っ直ぐな瞳を見れば、決して嫌みや悪口で言ったのではないと分かるのだが、そうはいっても腑に落ちない。あのキラキラとした瞳はどんな感情によるものなのか、僕には判断できなかった。
「も、申し訳ありません!アシュリーは昔から物語を読むのが好きでして。きっと読んだ物語にダリア様を重ねているのです・・・」
申し訳なさそうにシャーロットが言ってきた。その話を聞いたフリージアがそっとアシュリーちゃんに近より、ちょいちょいと手招きして、何やらこそこそ話している。
「・・・そうなの!その本なの!・・・えっ、皆さんもなの!?」
フリージアの声は聞こえなかったが、アシュリーちゃんの反応する声が大きいのと、フリージアのワクワクしているような顔を見ると、何となくどんな話をしているのか分かってしまった。
(またフリージアの同胞が増えてしまったようだ・・・)
ともあれ、今は彼女が喜びそうな話をして、悲しみに沈んでしまわないようにする方が良いだろう。そう思ってフリージアも彼女と話しているのかもしれないが、端から見ていると2人の話は凄く弾んでいるので、彼女を励ますと言う真意を疑ってしまうが、一先ず心配は無さそうだった。
そんな様子を見つめている僕に、シルヴィアが心配そうな声を掛けてきた。
「でもダリア君、あんなこと言って大丈夫なの?」
「あんなこと?」
「その・・・2人の居場所・・・」
シルヴィアはアシュリーちゃんに聞こえないように、小声で話してきた。少し思案するが、手が無いわけでもない。王国の廃村を住める状況にして、第五位階の土魔法でぐるりと壁を作ってしまえば、物理的に侵入できないように出来る。ただ、ずっと2人っきりの生活は寂しいと思うので、そこはどうしたものかと考えてしまう。
もしかしたら、もっと良い方法があるかもしれないので、もう少し検討していこうと考えている。
「実際なんとか出来ると思うんだけど、みんなの意見も聞いてみてもっと良い方法があったらそうしようと考えているから、心配しなくても大丈夫だよ」
「ふぁ~、さすがダリア君。よく考えているんだね」
彼女の尊敬の眼差しが眩しいが、そんなに大した考えがあっての事でもない。ただ、自分の知り合った人が不幸になることが何となく嫌なだけで、それほど労力でなければ手助けしたいと考えているだけだ。
そんな僕を真っ直ぐに見つめてくるシルヴィアの目を見ていると、昔と比べ、少し考え方が変わってきているのかもしれないと気づいた。
(以前だったら、自分以外の人はどうでも良いと言うか、そう深く関わりたくないと、表面的に付き合っていただけだったけど、今の僕は何だかんだと積極的に関わっている気がする・・・これは良いことなんだろうか?)
父親とのことから以降、自分の幸せについてよく考えるようになった。その中で、一人で生きていくと言う選択肢は僕の考えになかった。親に捨てられてから師匠に育てられた為に、友人と呼べる存在もいない。しかも、サバイバル等でほとんど一人で過ごしてきた僕にとっては、人の温もりというものに飢えていたのかもしれない。
いや、人の温もりを知ってしまったが為に求めるようになってしまったのかもしれない。それが良いことか悪いことかは分からないが、少なくともこうして僕の周りにいる人達が笑顔だったり幸せだったりするのは、僕にとっても嬉しかった。
「・・・どうしたの?ダリア君?」
自分の想いに少し気づき、微笑みながらみんなの事を見ていると、そんな僕の様子にシルヴィアが不思議がって聞いてきた。
「何でもないよ!それより、明日のジャンヌさんとの話し合いについて少し確認しよう!」
少しの気恥ずかしさを感じて、そんな自分の想いを何でもないと隠してしまった。
「・・・そういえば、ダリア君?」
「ん?どうしたの?」
急に深刻そうな表情になったシルヴィアが、僕に詰め寄ってきた。
「帝国の美人な【剣聖】さんから求婚されたって言ってたけど、詳しく教えてくれる?」
「っ!!」
シルヴィアのその一言に、周りのみんなの視線が一斉に僕に集中したのを感じた。
「そういえばそんなこと言っていましたね。ダリア君、私も聞かせてもらって良いですか?」
今までアシュリーちゃんと楽しげに会話していたフリージアも、急に詰め寄ってきた。
「そうそう、私もその事を聞きたいと思っていたんですよ?」
メグも同様に、笑っていない笑顔でズイっと詰め寄ってきた。
「・・・ええと、それはね・・・」
彼女達の迫力に圧倒されて、上手く言葉が出てこないが、彼女達を怒らすような後ろめたいようなことは何もない。
(あれ、何で僕はあの時他の女性と仲良くなるのはダメだろうと思ったんだろう?)
不意に、ジャンヌさんに断りを入れた時の感情が蘇る。何となく彼女達以外の女性と親しげにするのは不味いだろうと思ったのだ。
(もしかして僕も少し女心が分かってきたのかな?)
みんなに詰め寄られているこんな状況で、そんな楽観的なことを考えていると、みんなからさらに詰め寄られてしまった。
「もしかしてダリア、言えないようなことがあるんですか?」
「ダリア君は年上が良いのですか?」
「ダリア君・・・信じてるよ?」
そうして僕は、彼女達が納得するまで多大な時間を要して説明をさせられるはめになってしまったのだった。そんな中、アシュリーちゃんだけは事態が飲み込めずにいた。
「・・・皆さん急にどうしたの?」
「アシュリー、あなたも大きくなれば分かるわ」
「はぁ、大人の問題なの」
アシュリーちゃんに説明するシャーロットの表情は、少し楽しげだった。
「お帰り、ダリア君!」
「お帰りなさいダリア君!・・・その子が?」
屋敷のリビングに直接移動すると、みんなもう驚くこと無く出迎えてくれた。
「うん、シャーロットの妹さんだよ。孤児院は平民街の方で当たっていたよ」
シャーロット達に視線を向けながら、救出が上手くいったことを伝えた。2人はきつく抱き合っていたが、シャーロットが妹の身体を離し、みんなに挨拶するように促していた。彼女は涙でグチャグチャになった顔をハンカチで拭いながら、大きく息を吸い込んでスカートの裾を摘まんで淑女の挨拶をした。
「皆様、初めましてなの!マリーゴールド侯爵家次女のアシュリー・マリーゴールドなの!この度は私やお姉さまを救っていただきとても感謝しているの!ありがとうなの!」
アシュリーちゃんは5歳とは思えないほどしっかりとした挨拶が出来ていた。きっと侯爵家としての教育の賜物なのだろう。
「皆様、本当にありがとうございます!」
アシュリーちゃんに続いてシャーロットも、彼女の隣で深々と頭を下げてきた。
「そんなに気にしなくて良いよ!妹さんが無事で良かったね!」
それから簡単にみんなの自己紹介をしつつ、最初よりも幾分落ち着いたアシュリーちゃんを交えて談笑した。
話も一段落ついたところで、難しい顔をしたメグがシャーロット達のこれからについて確認してきた。
「現状シャーロットさんとアシュリーちゃんは死んだことになっています。となると、王国で生活していくことは難しいかもしれません。このまま公国で亡命者として生活出来ないことは無いと思いますが、それにも色々と問題はあります」
「確かに、もし彼女達が生きて公国に居ると王国に発覚すれば、両国の新たな火種になりますね・・・」
メグの言わんとしていることが分かった様子で、フリージアが問題点を指摘する。各国とも他国には情報収集の為の間者を放っているようなので、どこから情報が流出するかは分からない。となれば・・・
「えぇ、そのリスクを負ってまで公国が亡命を認めるかは、正直かなり厳しいと思います」
「私としても、そこまで公国やマーガレット殿下にご迷惑を掛けるわけには参りませんので、その際はどこかで身を隠しながら生活しようと思います。2人だけであれば何とか生きていけます」
自分達が迷惑になるならばと、シャーロットはここから出て、アシュリーちゃんと隠れ住むと言う。ただそうなると、一生怯えて暮らしていかなくてはならないだろう。シャーロット程の魔法の才能があれば、魔獣を討伐したりして生計を立てることは難しいことでは無いと思うが、常に周りの目を気にして自分達の正体がバレないようにするのは普通であればかなり神経をすり減らすだろう。いくら姉妹一緒に生活出来るからといって、とてもそんな生活は幸せとは思えない。
「彼女達の事は今は一旦保留にしよう。確かにこのまま公国でと言うわけにはいかないだろうけど、正体を気にしながら隠れて住むと言うのも、とても大変なことだと思うし、何か良い方法がないか僕も検討してみるから!」
そんな感じで、離しは一旦置いておく事になったのだが、深刻な表情でみんなが話していたために、アシュリーちゃんが不安になったのか、涙目でみんなに聞いてきた。
「・・・アシュリー達は邪魔なの?何処にも居場所がないの?」
小さな子の悲痛な言葉に胸が締め付けられる。彼女の両親は既に処刑されているらしく、身寄りとなるのは既にシャーロットしかいない。そんなシャーロットも、今は安定した身の上かと言えばそうではない。彼女達には安心して暮らせる場所が現状無いのだ。
「大丈夫だよアシュリーちゃん!僕がなんとかしてあげるよ!」
今にも泣き出しそうにしている不安げな彼女に視線を合わせるようにしゃがみこみ、頭を優しく撫でながら安心させるようにそう伝えた。
「うん!ありがとうなの!ダリアお姉ちゃん!!」
僕の言葉にパッと明るい表情になった彼女だったが、未だに僕のことを女の子だと思っている。
(そういえば、名前を言っただけで僕が男だって訂正してなかったな・・・)
みんなで自己紹介をした時は、名前を伝えただけで性別までは言っていなかった。自分の事を僕と表現しているので、分かるものかと思っていたのだが、まだ幼い彼女には伝わっていなかったようだ。心の中で盛大にため息をつきながら、彼女の勘違いを訂正する。
「あのね、僕は男だからね。」
「・・・嘘なの。どう見ても女の子なの」
「いや、ほんとよくそう言われるけどね・・・本当に男なんだよ?」
「・・・ホントにホントなの?」
「本当に本当!」
「・・・凄いの!こんなに可愛い男の子が実在したの!」
彼女の言葉は誉めているのか、貶しているのか・・・。その真っ直ぐな瞳を見れば、決して嫌みや悪口で言ったのではないと分かるのだが、そうはいっても腑に落ちない。あのキラキラとした瞳はどんな感情によるものなのか、僕には判断できなかった。
「も、申し訳ありません!アシュリーは昔から物語を読むのが好きでして。きっと読んだ物語にダリア様を重ねているのです・・・」
申し訳なさそうにシャーロットが言ってきた。その話を聞いたフリージアがそっとアシュリーちゃんに近より、ちょいちょいと手招きして、何やらこそこそ話している。
「・・・そうなの!その本なの!・・・えっ、皆さんもなの!?」
フリージアの声は聞こえなかったが、アシュリーちゃんの反応する声が大きいのと、フリージアのワクワクしているような顔を見ると、何となくどんな話をしているのか分かってしまった。
(またフリージアの同胞が増えてしまったようだ・・・)
ともあれ、今は彼女が喜びそうな話をして、悲しみに沈んでしまわないようにする方が良いだろう。そう思ってフリージアも彼女と話しているのかもしれないが、端から見ていると2人の話は凄く弾んでいるので、彼女を励ますと言う真意を疑ってしまうが、一先ず心配は無さそうだった。
そんな様子を見つめている僕に、シルヴィアが心配そうな声を掛けてきた。
「でもダリア君、あんなこと言って大丈夫なの?」
「あんなこと?」
「その・・・2人の居場所・・・」
シルヴィアはアシュリーちゃんに聞こえないように、小声で話してきた。少し思案するが、手が無いわけでもない。王国の廃村を住める状況にして、第五位階の土魔法でぐるりと壁を作ってしまえば、物理的に侵入できないように出来る。ただ、ずっと2人っきりの生活は寂しいと思うので、そこはどうしたものかと考えてしまう。
もしかしたら、もっと良い方法があるかもしれないので、もう少し検討していこうと考えている。
「実際なんとか出来ると思うんだけど、みんなの意見も聞いてみてもっと良い方法があったらそうしようと考えているから、心配しなくても大丈夫だよ」
「ふぁ~、さすがダリア君。よく考えているんだね」
彼女の尊敬の眼差しが眩しいが、そんなに大した考えがあっての事でもない。ただ、自分の知り合った人が不幸になることが何となく嫌なだけで、それほど労力でなければ手助けしたいと考えているだけだ。
そんな僕を真っ直ぐに見つめてくるシルヴィアの目を見ていると、昔と比べ、少し考え方が変わってきているのかもしれないと気づいた。
(以前だったら、自分以外の人はどうでも良いと言うか、そう深く関わりたくないと、表面的に付き合っていただけだったけど、今の僕は何だかんだと積極的に関わっている気がする・・・これは良いことなんだろうか?)
父親とのことから以降、自分の幸せについてよく考えるようになった。その中で、一人で生きていくと言う選択肢は僕の考えになかった。親に捨てられてから師匠に育てられた為に、友人と呼べる存在もいない。しかも、サバイバル等でほとんど一人で過ごしてきた僕にとっては、人の温もりというものに飢えていたのかもしれない。
いや、人の温もりを知ってしまったが為に求めるようになってしまったのかもしれない。それが良いことか悪いことかは分からないが、少なくともこうして僕の周りにいる人達が笑顔だったり幸せだったりするのは、僕にとっても嬉しかった。
「・・・どうしたの?ダリア君?」
自分の想いに少し気づき、微笑みながらみんなの事を見ていると、そんな僕の様子にシルヴィアが不思議がって聞いてきた。
「何でもないよ!それより、明日のジャンヌさんとの話し合いについて少し確認しよう!」
少しの気恥ずかしさを感じて、そんな自分の想いを何でもないと隠してしまった。
「・・・そういえば、ダリア君?」
「ん?どうしたの?」
急に深刻そうな表情になったシルヴィアが、僕に詰め寄ってきた。
「帝国の美人な【剣聖】さんから求婚されたって言ってたけど、詳しく教えてくれる?」
「っ!!」
シルヴィアのその一言に、周りのみんなの視線が一斉に僕に集中したのを感じた。
「そういえばそんなこと言っていましたね。ダリア君、私も聞かせてもらって良いですか?」
今までアシュリーちゃんと楽しげに会話していたフリージアも、急に詰め寄ってきた。
「そうそう、私もその事を聞きたいと思っていたんですよ?」
メグも同様に、笑っていない笑顔でズイっと詰め寄ってきた。
「・・・ええと、それはね・・・」
彼女達の迫力に圧倒されて、上手く言葉が出てこないが、彼女達を怒らすような後ろめたいようなことは何もない。
(あれ、何で僕はあの時他の女性と仲良くなるのはダメだろうと思ったんだろう?)
不意に、ジャンヌさんに断りを入れた時の感情が蘇る。何となく彼女達以外の女性と親しげにするのは不味いだろうと思ったのだ。
(もしかして僕も少し女心が分かってきたのかな?)
みんなに詰め寄られているこんな状況で、そんな楽観的なことを考えていると、みんなからさらに詰め寄られてしまった。
「もしかしてダリア、言えないようなことがあるんですか?」
「ダリア君は年上が良いのですか?」
「ダリア君・・・信じてるよ?」
そうして僕は、彼女達が納得するまで多大な時間を要して説明をさせられるはめになってしまったのだった。そんな中、アシュリーちゃんだけは事態が飲み込めずにいた。
「・・・皆さん急にどうしたの?」
「アシュリー、あなたも大きくなれば分かるわ」
「はぁ、大人の問題なの」
アシュリーちゃんに説明するシャーロットの表情は、少し楽しげだった。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
トレントなどに転生して申し訳ありません燃やさないでアッ…。
兎屋亀吉
ファンタジー
確かに転生したい転生したいとは常日頃から思っていましたよ。
なんていうかこの世界って僕には向いてないっていうか。
できれば剣とか魔法とかある世界に転生して、金髪碧眼巨乳美人のお母さんから母乳を与えられてみたいと思うのが成人男子の当然の願望だと思うのですがね。
周りを見回してみても巨乳のお母さんもいないですし、そもそも人がいないですしお寿司。
右には巨木。お父さんかな。
左には大木。お母さんっぽいな。
そして僕も木です。トレントです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる