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第三章 国立魔道武術学園生活 編
学園生活 18
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◆
side ツヴァイ
私は『調』という店で働く店員だ。幼少期、戦争孤児だった私達をローガンと名乗った若い青年が引き取ってくれた。その時は何故こんな若い人が10人以上も、しかも子供である私達を拾ってくれたのかは分からなかった。戸惑う私達は引き取られた先の広い屋敷で、読み書きから算術までの基本的な勉学や、個人の【才能】にあった教育を受けさせてもらった。
ローガンと言う青年は、先見の明を持つ異彩の商人だった。表と裏の顔を使い分け、利益にならない相手は例え貴族の客であっても、こちらに被害が出ないように損切りをしていく。もちろん相手から反撃を受けないように周到な根回しをしてから実行していく。押さえるべき所はきちんと押さえ、いつしか情報を扱う商人としては不動の地位を築いていたようだった。
私達は【才能】に合わせて表か裏の商売に配属するよう伝えられた。それは私達が10才になる頃に皆に伝えられていた。私と姉さんは武術系統の才能があり、隠密などの情報収集や暗殺などを主な仕事とするための鍛練が始まった。たった2つの才能、【拳闘士】と【遠視】が私の人生を決めてしまった。いや、この世界は才能が全て、なるべくしてなったのだろう。
成人後、裏の仕事に就いた私達は順調に任務を遂行し、この商会でもある程度の発言権のある地位へとなっていた。そして今回の任務、ダリアと言う名の少年の監視と弱点の確認だった。依頼人は暗殺を希望していたが、ローガン様の判断で依頼人は損切りの対象となっていた。と言うのも別の依頼人から彼の実家の没落へ向けた情報収集を依頼されていたので、先が無いと分かっていたのだ。何せその依頼人が依頼人だ、間違いなくあの貴族家は終わりだろう。
しかし、監視を開始したあの少年はありえない存在だった。パッと見は女の子のような可愛らしい見た目なのに、その力はダイヤランクと言われても納得できるものだった。ローガン様に言ったように絶対に敵対したくない。自分より一回りも下の歳の子にこれ程恐怖を感じるとは思ってもいなかった。でもあの子は素直過ぎる。値切りもせずに私の言い値でお金を渡してきた時には、本当に警戒すべき人物なのかと驚いた程だ。これが母性本能か分からないが、その時不覚にも私が守ってあげないといけないと思ってしまった。
そんな事を回想していたのは目の前にいる憐れな貴族の坊やがこちらに、もはや意味の無い暴言を先程から喚いているせいだろう。
「ふざけるなよ!!失敗しただと!?」
彼は先程から自分の小飼の傭兵と、商会の代表として来た私と姉さんにテーブルを叩きながら唾を飛ばす勢いで怒鳴り声をあげている。
「どういうことだ!!高い金払ってこの様だと!?私はバスクード伯爵の嫡男だぞ!貴様らがどうなろうが、私から言われた事は死んでもやり遂げるのが当たり前だろう!」
「も、申し訳ありません!奴は聞いていた以上に強くて・・・いや、化け物なんです!」
私が捕まえておいた傭兵が平身低頭に貴族の坊やに謝罪している。その隣で私は申し訳なさそうな表情の演技をしているだけだ。
「言い訳なぞ知らん!俺があいつを殺せと言ったらどんな手を使っても殺せば良いんだ!お前らの代わりなぞいくらでも居る!次はもっと腕のたつ者を引き連れていけ!料金はもう預けてあるんだ、出来るまでやってこい!!」
どうもこの貴族の坊やは一昔前の価値観に縛られたままのようだ。王国の聖女様と名高いフリージア様が取り入れに尽力した『犯した罪に身分の貴賤無し』ということで、今は貴族であっても証拠さえあれば捕縛されてしまうというのに。防諜設備が不明な部屋で殺せ殺せと叫ぶとは正気を疑う行為だ。
(まぁ、こんな子供だから親も親なんだろうけど)
既に坊やの親である辺境伯の失脚に足る証拠や証人も押さえているので、不用意な発言をした坊やにはそろそろ退場してもらい、茶番を終わらして欲しい。そんな私の願いが届いたのかは分からないが、廊下から数人の足音が聞こえてきた。
「失礼!!・・・エリック・バスクードだな?」
部屋に突入してきたのは私達の商会の息が掛かった、予め手配して隣の部屋に待機していた衛兵達だった。
「な、なんだ貴様たちは?私を呼び捨てにして良いと思って———」
「エリック・バスクード、お前を暗殺未遂の罪で捕縛する!」
「なっ、ぶ、無礼だぞ!私は上級貴族だぞ!貴様のような平民である衛兵の分際で———」
「我々衛兵の全員が貴様の先程の言葉を聞いている。これは新たに制定された王国の法に則り証拠として採用される。よって、現時刻をもって捕縛する!」
「ふ、ふざけるなよ!!平民ごときが私に触れるな!!」
怒声を上げながら坊やは火魔法を発動しようとするが、当然そうなると予想していた私の敵ではない。私は即座に動き出し当て身を喰らわせると、坊やは吹き飛ばされてそのまま気絶したようだ。発動途中の魔法は霧散し消えてしまった。
「ご協力に感謝します!!さぁ、そいつを捕縛しろ!魔法媒体を外すのを忘れるなよ!」
「ご苦労様」
貴族の坊やを締め上げて連行する衛兵達の背中に向けて労いの言葉を口にする。日頃の恨みでもあるのか、必要以上にキツく縛り、引きずるように連れて行った。
(いや、貴族に恨みがない平民なんていないか・・・)
「ツヴァイ、後処理をするわよ」
「分かったわ姉さん。そっちはよろしく」
静かになったところで、ダミー商会の閉店作業を姉さんに任して、私は私の仕事に取りかかる。
「さて、こいつの口は封じておかないと・・・」
全ての作業を済ませ、私達は帰路に着いた。
◇
用事を済ませた僕は、14時近くになり、シルヴィアとの待ち合せのため学園の正門へと向かっていた。時間としては少し早い位だと思っていたのだが、既にシルヴィアはそこで待っていた。
「ゴメン!待たせちゃったかな?」
「ううん、私も今来たところだよ!」
昨日の実地訓練帰りの彼女の表情が記憶にあり、少し気にしていたのだが、満面の笑みで応えてくれた事にホッとした。今日の服装は前回のような大胆な装いではなく、丈の長めな水色のワンピースにゆったりとした白の上着を着ていた。
「今日の私服も素敵だね!」
「えへへ、ありがとう!」
「じゃあ、行こうか!」
「うん!・・・でも本当に良いの?」
「大丈夫だよ、僕も行ってみたい所だったから」
今日は僕が巻き込んでしまったお詫びの意味も込めて、下級貴族街にあるお店でケーキを食べに行こうと言っていた。そのお店は学園の女生徒が行ってみたいと噂していた店で、なんでも果物をふんだんに使ったケーキが有名な店らしい。ただ、中々の料金らしく、平民が大半の学園の生徒では手が出せないと嘆いていた姿が印象的だった。
目的の店に着くと、やはり貴族街だけあってオシャレな外観をしていた。看板には果物が乗ったケーキの絵が掲げられており、お店は『クロスタータ』と言う名前らしい。
「いらっしゃいませ、ようこそクロスタータへ」
店内へ入ると落ち着いた声で執事服の様な店員が出迎えてくれた。平民街の活気ある店とはまた違う印象だ。店内は外観同様薄い水色を基調とした明るくオシャレな内装だった。テーブルへ案内されると、メニュー表を渡されて本日のオススメであるという、季節のフルーツタルトの説明をして店員の男性は奥に下がって行った。
「シルヴィアは何が良い?」
「えっ!?わ、私は・・・ど、どうしよう、何が良いのか分からないよ・・・」
助けを求めるような表情をされたが、僕にも全く分からなかったので、とりあえず店員さんが言ってくれたオススメにしてみようと伝えた。
「わ、私もそうしようかな・・・あっ、待って!(同じ物だとお互いのケーキを食べ合いっこ出来ない・・・)やっぱり、一番人気のイチゴのタルトにします!」
「わ、分かった」
随分と悩んでいたようだったので、たくさんケーキの種類があるからきっとどれにするか決めかねていたのだろう。
(そんなに色々食べたかったなら僕のを少し分けてあげれば良いか)
注文が決まったので店員さんを呼び、2種類のタルトとセットで紅茶をお願いして、銀貨6枚を渡した。
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
やっぱり良い店だけあるのか、店員の動作は無駄がなく流れるようにスムーズだ。平民街のお店では料金分しか払わないのが普通だが、貴族街のお店では料金に1割ほど上乗せしてチップというものを渡すらしい。彼が当然のようにお金を受け取っていたので、間違っていなかったようだ。
少しすると注文したタルトと紅茶が運ばれてきたので、さっそく噂のケーキをシルヴィアと味わった。
「お、美味しい!ダリア君、凄く美味しいよ!」
「本当だね!タルト生地は少し甘いけど、フルーツの酸味が丁度良くて、いくらでも食べられそうだね!」
「ありがとう!ダリア君!」
「いいよ、僕が巻き込んじゃったことのお詫びだから。そうだ、僕のも食べてみる?」
「えっ、あ、あの、良いの?」
少し顔を赤らめてシルヴィアが尋ねてきた。
「もちろん!さっきは悩んでいたようだし、いろんな種類を食べたかったんでしょ?」
「・・・そ、そうだね。ありがとう」
(あれ?僕なにかおかしな事いったかな?)
急に表情が曇りだしたシルヴィアに焦りを覚える。さっきまではとびきりの笑顔が何だか今はぎこちない。何故だろうと悩んでいると、後ろから声をかけられた。
「ふふふ、ダリア君。女の子をそんな食いしん坊みたいに言うのはダメですよ!」
「ん、ダリアは女の子の気持ちが分かってない」
「そういう所はダリア殿も普通の男の子なんですね」
後ろを振り返ればフリージア様とマーガレット様、ティアの3人がそこに居た。
side ツヴァイ
私は『調』という店で働く店員だ。幼少期、戦争孤児だった私達をローガンと名乗った若い青年が引き取ってくれた。その時は何故こんな若い人が10人以上も、しかも子供である私達を拾ってくれたのかは分からなかった。戸惑う私達は引き取られた先の広い屋敷で、読み書きから算術までの基本的な勉学や、個人の【才能】にあった教育を受けさせてもらった。
ローガンと言う青年は、先見の明を持つ異彩の商人だった。表と裏の顔を使い分け、利益にならない相手は例え貴族の客であっても、こちらに被害が出ないように損切りをしていく。もちろん相手から反撃を受けないように周到な根回しをしてから実行していく。押さえるべき所はきちんと押さえ、いつしか情報を扱う商人としては不動の地位を築いていたようだった。
私達は【才能】に合わせて表か裏の商売に配属するよう伝えられた。それは私達が10才になる頃に皆に伝えられていた。私と姉さんは武術系統の才能があり、隠密などの情報収集や暗殺などを主な仕事とするための鍛練が始まった。たった2つの才能、【拳闘士】と【遠視】が私の人生を決めてしまった。いや、この世界は才能が全て、なるべくしてなったのだろう。
成人後、裏の仕事に就いた私達は順調に任務を遂行し、この商会でもある程度の発言権のある地位へとなっていた。そして今回の任務、ダリアと言う名の少年の監視と弱点の確認だった。依頼人は暗殺を希望していたが、ローガン様の判断で依頼人は損切りの対象となっていた。と言うのも別の依頼人から彼の実家の没落へ向けた情報収集を依頼されていたので、先が無いと分かっていたのだ。何せその依頼人が依頼人だ、間違いなくあの貴族家は終わりだろう。
しかし、監視を開始したあの少年はありえない存在だった。パッと見は女の子のような可愛らしい見た目なのに、その力はダイヤランクと言われても納得できるものだった。ローガン様に言ったように絶対に敵対したくない。自分より一回りも下の歳の子にこれ程恐怖を感じるとは思ってもいなかった。でもあの子は素直過ぎる。値切りもせずに私の言い値でお金を渡してきた時には、本当に警戒すべき人物なのかと驚いた程だ。これが母性本能か分からないが、その時不覚にも私が守ってあげないといけないと思ってしまった。
そんな事を回想していたのは目の前にいる憐れな貴族の坊やがこちらに、もはや意味の無い暴言を先程から喚いているせいだろう。
「ふざけるなよ!!失敗しただと!?」
彼は先程から自分の小飼の傭兵と、商会の代表として来た私と姉さんにテーブルを叩きながら唾を飛ばす勢いで怒鳴り声をあげている。
「どういうことだ!!高い金払ってこの様だと!?私はバスクード伯爵の嫡男だぞ!貴様らがどうなろうが、私から言われた事は死んでもやり遂げるのが当たり前だろう!」
「も、申し訳ありません!奴は聞いていた以上に強くて・・・いや、化け物なんです!」
私が捕まえておいた傭兵が平身低頭に貴族の坊やに謝罪している。その隣で私は申し訳なさそうな表情の演技をしているだけだ。
「言い訳なぞ知らん!俺があいつを殺せと言ったらどんな手を使っても殺せば良いんだ!お前らの代わりなぞいくらでも居る!次はもっと腕のたつ者を引き連れていけ!料金はもう預けてあるんだ、出来るまでやってこい!!」
どうもこの貴族の坊やは一昔前の価値観に縛られたままのようだ。王国の聖女様と名高いフリージア様が取り入れに尽力した『犯した罪に身分の貴賤無し』ということで、今は貴族であっても証拠さえあれば捕縛されてしまうというのに。防諜設備が不明な部屋で殺せ殺せと叫ぶとは正気を疑う行為だ。
(まぁ、こんな子供だから親も親なんだろうけど)
既に坊やの親である辺境伯の失脚に足る証拠や証人も押さえているので、不用意な発言をした坊やにはそろそろ退場してもらい、茶番を終わらして欲しい。そんな私の願いが届いたのかは分からないが、廊下から数人の足音が聞こえてきた。
「失礼!!・・・エリック・バスクードだな?」
部屋に突入してきたのは私達の商会の息が掛かった、予め手配して隣の部屋に待機していた衛兵達だった。
「な、なんだ貴様たちは?私を呼び捨てにして良いと思って———」
「エリック・バスクード、お前を暗殺未遂の罪で捕縛する!」
「なっ、ぶ、無礼だぞ!私は上級貴族だぞ!貴様のような平民である衛兵の分際で———」
「我々衛兵の全員が貴様の先程の言葉を聞いている。これは新たに制定された王国の法に則り証拠として採用される。よって、現時刻をもって捕縛する!」
「ふ、ふざけるなよ!!平民ごときが私に触れるな!!」
怒声を上げながら坊やは火魔法を発動しようとするが、当然そうなると予想していた私の敵ではない。私は即座に動き出し当て身を喰らわせると、坊やは吹き飛ばされてそのまま気絶したようだ。発動途中の魔法は霧散し消えてしまった。
「ご協力に感謝します!!さぁ、そいつを捕縛しろ!魔法媒体を外すのを忘れるなよ!」
「ご苦労様」
貴族の坊やを締め上げて連行する衛兵達の背中に向けて労いの言葉を口にする。日頃の恨みでもあるのか、必要以上にキツく縛り、引きずるように連れて行った。
(いや、貴族に恨みがない平民なんていないか・・・)
「ツヴァイ、後処理をするわよ」
「分かったわ姉さん。そっちはよろしく」
静かになったところで、ダミー商会の閉店作業を姉さんに任して、私は私の仕事に取りかかる。
「さて、こいつの口は封じておかないと・・・」
全ての作業を済ませ、私達は帰路に着いた。
◇
用事を済ませた僕は、14時近くになり、シルヴィアとの待ち合せのため学園の正門へと向かっていた。時間としては少し早い位だと思っていたのだが、既にシルヴィアはそこで待っていた。
「ゴメン!待たせちゃったかな?」
「ううん、私も今来たところだよ!」
昨日の実地訓練帰りの彼女の表情が記憶にあり、少し気にしていたのだが、満面の笑みで応えてくれた事にホッとした。今日の服装は前回のような大胆な装いではなく、丈の長めな水色のワンピースにゆったりとした白の上着を着ていた。
「今日の私服も素敵だね!」
「えへへ、ありがとう!」
「じゃあ、行こうか!」
「うん!・・・でも本当に良いの?」
「大丈夫だよ、僕も行ってみたい所だったから」
今日は僕が巻き込んでしまったお詫びの意味も込めて、下級貴族街にあるお店でケーキを食べに行こうと言っていた。そのお店は学園の女生徒が行ってみたいと噂していた店で、なんでも果物をふんだんに使ったケーキが有名な店らしい。ただ、中々の料金らしく、平民が大半の学園の生徒では手が出せないと嘆いていた姿が印象的だった。
目的の店に着くと、やはり貴族街だけあってオシャレな外観をしていた。看板には果物が乗ったケーキの絵が掲げられており、お店は『クロスタータ』と言う名前らしい。
「いらっしゃいませ、ようこそクロスタータへ」
店内へ入ると落ち着いた声で執事服の様な店員が出迎えてくれた。平民街の活気ある店とはまた違う印象だ。店内は外観同様薄い水色を基調とした明るくオシャレな内装だった。テーブルへ案内されると、メニュー表を渡されて本日のオススメであるという、季節のフルーツタルトの説明をして店員の男性は奥に下がって行った。
「シルヴィアは何が良い?」
「えっ!?わ、私は・・・ど、どうしよう、何が良いのか分からないよ・・・」
助けを求めるような表情をされたが、僕にも全く分からなかったので、とりあえず店員さんが言ってくれたオススメにしてみようと伝えた。
「わ、私もそうしようかな・・・あっ、待って!(同じ物だとお互いのケーキを食べ合いっこ出来ない・・・)やっぱり、一番人気のイチゴのタルトにします!」
「わ、分かった」
随分と悩んでいたようだったので、たくさんケーキの種類があるからきっとどれにするか決めかねていたのだろう。
(そんなに色々食べたかったなら僕のを少し分けてあげれば良いか)
注文が決まったので店員さんを呼び、2種類のタルトとセットで紅茶をお願いして、銀貨6枚を渡した。
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
やっぱり良い店だけあるのか、店員の動作は無駄がなく流れるようにスムーズだ。平民街のお店では料金分しか払わないのが普通だが、貴族街のお店では料金に1割ほど上乗せしてチップというものを渡すらしい。彼が当然のようにお金を受け取っていたので、間違っていなかったようだ。
少しすると注文したタルトと紅茶が運ばれてきたので、さっそく噂のケーキをシルヴィアと味わった。
「お、美味しい!ダリア君、凄く美味しいよ!」
「本当だね!タルト生地は少し甘いけど、フルーツの酸味が丁度良くて、いくらでも食べられそうだね!」
「ありがとう!ダリア君!」
「いいよ、僕が巻き込んじゃったことのお詫びだから。そうだ、僕のも食べてみる?」
「えっ、あ、あの、良いの?」
少し顔を赤らめてシルヴィアが尋ねてきた。
「もちろん!さっきは悩んでいたようだし、いろんな種類を食べたかったんでしょ?」
「・・・そ、そうだね。ありがとう」
(あれ?僕なにかおかしな事いったかな?)
急に表情が曇りだしたシルヴィアに焦りを覚える。さっきまではとびきりの笑顔が何だか今はぎこちない。何故だろうと悩んでいると、後ろから声をかけられた。
「ふふふ、ダリア君。女の子をそんな食いしん坊みたいに言うのはダメですよ!」
「ん、ダリアは女の子の気持ちが分かってない」
「そういう所はダリア殿も普通の男の子なんですね」
後ろを振り返ればフリージア様とマーガレット様、ティアの3人がそこに居た。
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