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第三章 国立魔道武術学園生活 編
学園生活 2
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講堂に入ると既に多くの新入生たちが整然と並べられた椅子に着席していた。先に座っているほとんどはテストの無い生産系統コースを選択した人達で、魔法コースを選択してテストの結果コース変更を余儀なくされていた人も見受けられた。チラチラと周りからの視線が刺さってくるが、学園長の話が始まったところで講堂は静まり返った。
「皆さん国立魔道武術学園への入学おめでとうございます!私は当学園の学園長をしているゾイラ・クレメントです。この学園では3年間勉学や鍛練に励んでいただき、自らの成長を促す場となっております。皆さんの中には与えられた才能によっては将来が見い出せない人もいるかもしれませんが、この学園はそういった者達にも生きていく術を教えています。安心して勉学に励んでください。また、今年からオーガンド王国とフロストル公国の和平の象徴となる様に交換留学制度が始まりました。その最初の人物として、かの公国の王女殿下がお越し頂いております。皆さま、王国の一員として恥ずかしくない行動を心掛けるように!では、殿下からご挨拶を頂きます」
檀上の学園長がそう言うと、袖からエルフのマーガレットが堂々とした歩みで檀上の中央へと歩んで行く。そんな彼女を見ながら、公国の王女である彼女には今後それなりの対応をしないと不敬罪になりそうなので気を付けなければならないなと考えていた。いつ着替えたのか、彼女は王女らしい薄緑色のドレスに身を包み、裾を摘まんで軽くお辞儀をした。
「私はフロストル公国第一王女マーガレット・フロストルです。この度貴国との休戦協定を受け、さらなる和平への道を探るために、これからの王国を担う学園の皆様と交流することで、両国にとって平和の架け橋が築けるようにと第一王女である私が最初の留学生として参りました。種族は違いますが、言葉を交わし理解し合える同じ時代を生きる存在としてどうか受け入れていただければ幸いです」
彼女の挨拶が終わりお辞儀をすると、講堂からは温かい拍手が鳴り響いた。周りを見れば、彼女の美少女然とした容姿の事もあってか、壇上の彼女を凝視しながら全力で拍手をしている者達もいた。
(エルフのイメージ戦略としては良さそうな手だな)
エルフは寿命の圧倒的な違いから、化け物のような見方をする人が多いという。しかし、その見た目は種族特性なのか美形が多く、戦乱期には多くのエルフが奴隷となって高額で売れたのだと師匠が言っていた。ここ数年は大きな戦争は起こっていないので、まだ争いを知らない子供にエルフの良いイメージを植え付けるのは和平に向けては有効な手段だと感じた。
講堂での入学式はその後も国王陛下からの祝辞なども披露され、2時間ほどでようやく終了となった。クラス発表は入学式の後にそのまま講堂にボードが運び込まれて、そこにクラスと名前が載っていた。遠目からボードを見ると、結局今年の新入生の内訳は7割位が生産系統コースで、2割位が剣術・武術コース、1割が魔法コースという人数の割合だった。
(魔法の才能を持つ者はこう見ると圧倒的に少数なんだな・・・ドラゴンの討伐の時にも魔法師の割合は1対3で少なかったから、魔法という才能は貴重なのかも)
順番にボードを確認していくように案内されると、最初に確認していたエルフ王女のマーガレット様とフリージア様が教師に詰め寄ってなにかを問いただしている声が聞こえてきた。
(なんだ?僕には関係の無い騒ぎであってほしいんだけど・・・)
「なぜ彼がBクラスなのですか?テストで放った火魔法を見ていなかったのですか?あの素晴らしい魔力制御はエルフである我々でも見習いたい程です」
「マーガレット殿下落ち着いて下さい。それは私もそう思います。どなたが決められたのですか?」
「いや、あのですね、これは様々な観点から公平に決められておりまして・・・」
「はっ?公平でって、あなた本気ですか?」
どうやら嫌な予感違わず、僕の話の気がしてならない。気配を消してクラスの確認だけしてこようかとも思ったが、その前にマーガレット様に見つかってしまった。
「ダリア!あなたもキチンと抗議した方が良いですよ!実力を正当に評価されないというのは私は如何と思いますし、この国の印象もそう見えてしまいます」
「マーガレット殿下、これには様々な・・・この国ならではの事情もありましてですね・・・」
「その事情とはなんですか?」
僕は何も言わずにマーガレット様と教師のやり取りを見ていると、学園長が近寄ってきた。近くで見ると肩にかかる黒髪の似合う綺麗に歳を重ねた熟年の女性だった。
「どうかされましたか?」
「あっ、学園長。いえ、マーガレット殿下から少々ご質問を頂きまして・・・」
「そうですか、ではちょうど良いですし、あちらで説明しましょう。ダリア君もどうぞ」
「よろしいのですか、学園長?」
学園長はそう言い、講堂にある会議室のような所に案内された。横長の大きなテーブルに相対して座る。何故か僕の側にフリージア様とマーガレット様、さらにその護衛のような取り巻きが居るという良く分からない状況になってしまった。
「さて、聞こえ聞いた限りでは、ダリア君のクラス分けについてでしたか?」
「ええ、彼の実力はこの目で見ていますし、同年の方達を見ても魔法・武術では段違いの実力のはずです!それをSクラスどころか、Bクラスになっている事は理解に苦しみます」
彼女はあの森で僕が無手でオーガ・ジェネラルを討伐した様子を見ているし、さっきは魔法も見ているので、余計僕への評価が高いのだろう。公国はある程度実力によって評価する国なのだろう。ただ、ほとんどの国は血筋と才能が全てで評価されている。
「フロストル公国では人物評価をその者の様々な能力を多くの角度から評価すると聞いていますが、大抵の国では血統や才能なのです。彼は平民で才能は1つということを鑑みると、順当な評価になるのです」
学園長の言葉にマーガレット様は目を丸くして驚く。
「えっ!?才能がたった1つ?あり得ません!だって彼はあの森で魔獣を武術で・・・それに魔法だってさっき・・・」
彼女はおそらく今まで見た僕の能力について思い返しているのか、その驚き様に僕の方が何だか居心地悪くなってしまう。
「マーガレット殿下、これは彼を守るための処置でもあるのです」
「・・・どういう事ですか?」
「枢機卿から彼の事については聞いています。思春期の貴族の子弟にとっては受け入れられない可能性も考えての事です。彼らは貴族という身分なだけで、勉学も力も全て上回っていなければ気が済まない子も居ますから」
「つまり学園長は余計な軋轢が生じないように、貴族の居ないBクラスにしたということですね?」
事の推移を見ていたフリージア様が学園長に確認をする。
「そうです。そういった事情もあってこのようなクラス分けとなっています。どうかマーガレット殿下にはご理解頂けませんか?」
「・・・事情は分かりました。精神的に大人になっていない者も居るというのは理解できます。ただ、あなたは良いんですか?」
ここまで何も喋っていない僕にマーガレット様が聞いてきた。
「正直私は面倒がなければそれで良いので構いません」
「諦めているというか、執着が無いというか。あれだけの力があれば武の面での栄達は思いのままでしょうに」
「まだ成人もしてませんから」
「ふふふ、ダリア君はそういうとこ頓着無いんですね」
何となくクラス分けの話はこれで終わったと思うので、割り振られた教室へ行きたいと伝えるとーーー
「ダリア殿!あなたには伝えたいこともあります。また後で会いましょう!」
マーガレット様はそう言って取り巻きを引き連れて会議室を後にした。
「マーガレット殿下はダリア君にご執心なのかもしれませんね。では私も失礼します」
会議室に学園長と残された僕に向かって、少し厳しい目をしながら学園長が話しかけてきた。
「まさかフロストル公国の第一王女とあなたが面識が有ったとは・・・頼みますから面倒を起こさないようにして下さいよ?」
「それは僕が言いたいのですが・・・僕としては何も騒動を起こす気は無いですよ」
「はぁ、そうでしょうけど・・・極力貴族に近付かないようになさい。問題が起こりそうなら直ぐに教師か私に連絡すること。良いわね?」
「分かりました」
入学早々から前途多難な状況になってしまったことに溜め息を吐く気分で僕も教室へと向かった。
「皆さん国立魔道武術学園への入学おめでとうございます!私は当学園の学園長をしているゾイラ・クレメントです。この学園では3年間勉学や鍛練に励んでいただき、自らの成長を促す場となっております。皆さんの中には与えられた才能によっては将来が見い出せない人もいるかもしれませんが、この学園はそういった者達にも生きていく術を教えています。安心して勉学に励んでください。また、今年からオーガンド王国とフロストル公国の和平の象徴となる様に交換留学制度が始まりました。その最初の人物として、かの公国の王女殿下がお越し頂いております。皆さま、王国の一員として恥ずかしくない行動を心掛けるように!では、殿下からご挨拶を頂きます」
檀上の学園長がそう言うと、袖からエルフのマーガレットが堂々とした歩みで檀上の中央へと歩んで行く。そんな彼女を見ながら、公国の王女である彼女には今後それなりの対応をしないと不敬罪になりそうなので気を付けなければならないなと考えていた。いつ着替えたのか、彼女は王女らしい薄緑色のドレスに身を包み、裾を摘まんで軽くお辞儀をした。
「私はフロストル公国第一王女マーガレット・フロストルです。この度貴国との休戦協定を受け、さらなる和平への道を探るために、これからの王国を担う学園の皆様と交流することで、両国にとって平和の架け橋が築けるようにと第一王女である私が最初の留学生として参りました。種族は違いますが、言葉を交わし理解し合える同じ時代を生きる存在としてどうか受け入れていただければ幸いです」
彼女の挨拶が終わりお辞儀をすると、講堂からは温かい拍手が鳴り響いた。周りを見れば、彼女の美少女然とした容姿の事もあってか、壇上の彼女を凝視しながら全力で拍手をしている者達もいた。
(エルフのイメージ戦略としては良さそうな手だな)
エルフは寿命の圧倒的な違いから、化け物のような見方をする人が多いという。しかし、その見た目は種族特性なのか美形が多く、戦乱期には多くのエルフが奴隷となって高額で売れたのだと師匠が言っていた。ここ数年は大きな戦争は起こっていないので、まだ争いを知らない子供にエルフの良いイメージを植え付けるのは和平に向けては有効な手段だと感じた。
講堂での入学式はその後も国王陛下からの祝辞なども披露され、2時間ほどでようやく終了となった。クラス発表は入学式の後にそのまま講堂にボードが運び込まれて、そこにクラスと名前が載っていた。遠目からボードを見ると、結局今年の新入生の内訳は7割位が生産系統コースで、2割位が剣術・武術コース、1割が魔法コースという人数の割合だった。
(魔法の才能を持つ者はこう見ると圧倒的に少数なんだな・・・ドラゴンの討伐の時にも魔法師の割合は1対3で少なかったから、魔法という才能は貴重なのかも)
順番にボードを確認していくように案内されると、最初に確認していたエルフ王女のマーガレット様とフリージア様が教師に詰め寄ってなにかを問いただしている声が聞こえてきた。
(なんだ?僕には関係の無い騒ぎであってほしいんだけど・・・)
「なぜ彼がBクラスなのですか?テストで放った火魔法を見ていなかったのですか?あの素晴らしい魔力制御はエルフである我々でも見習いたい程です」
「マーガレット殿下落ち着いて下さい。それは私もそう思います。どなたが決められたのですか?」
「いや、あのですね、これは様々な観点から公平に決められておりまして・・・」
「はっ?公平でって、あなた本気ですか?」
どうやら嫌な予感違わず、僕の話の気がしてならない。気配を消してクラスの確認だけしてこようかとも思ったが、その前にマーガレット様に見つかってしまった。
「ダリア!あなたもキチンと抗議した方が良いですよ!実力を正当に評価されないというのは私は如何と思いますし、この国の印象もそう見えてしまいます」
「マーガレット殿下、これには様々な・・・この国ならではの事情もありましてですね・・・」
「その事情とはなんですか?」
僕は何も言わずにマーガレット様と教師のやり取りを見ていると、学園長が近寄ってきた。近くで見ると肩にかかる黒髪の似合う綺麗に歳を重ねた熟年の女性だった。
「どうかされましたか?」
「あっ、学園長。いえ、マーガレット殿下から少々ご質問を頂きまして・・・」
「そうですか、ではちょうど良いですし、あちらで説明しましょう。ダリア君もどうぞ」
「よろしいのですか、学園長?」
学園長はそう言い、講堂にある会議室のような所に案内された。横長の大きなテーブルに相対して座る。何故か僕の側にフリージア様とマーガレット様、さらにその護衛のような取り巻きが居るという良く分からない状況になってしまった。
「さて、聞こえ聞いた限りでは、ダリア君のクラス分けについてでしたか?」
「ええ、彼の実力はこの目で見ていますし、同年の方達を見ても魔法・武術では段違いの実力のはずです!それをSクラスどころか、Bクラスになっている事は理解に苦しみます」
彼女はあの森で僕が無手でオーガ・ジェネラルを討伐した様子を見ているし、さっきは魔法も見ているので、余計僕への評価が高いのだろう。公国はある程度実力によって評価する国なのだろう。ただ、ほとんどの国は血筋と才能が全てで評価されている。
「フロストル公国では人物評価をその者の様々な能力を多くの角度から評価すると聞いていますが、大抵の国では血統や才能なのです。彼は平民で才能は1つということを鑑みると、順当な評価になるのです」
学園長の言葉にマーガレット様は目を丸くして驚く。
「えっ!?才能がたった1つ?あり得ません!だって彼はあの森で魔獣を武術で・・・それに魔法だってさっき・・・」
彼女はおそらく今まで見た僕の能力について思い返しているのか、その驚き様に僕の方が何だか居心地悪くなってしまう。
「マーガレット殿下、これは彼を守るための処置でもあるのです」
「・・・どういう事ですか?」
「枢機卿から彼の事については聞いています。思春期の貴族の子弟にとっては受け入れられない可能性も考えての事です。彼らは貴族という身分なだけで、勉学も力も全て上回っていなければ気が済まない子も居ますから」
「つまり学園長は余計な軋轢が生じないように、貴族の居ないBクラスにしたということですね?」
事の推移を見ていたフリージア様が学園長に確認をする。
「そうです。そういった事情もあってこのようなクラス分けとなっています。どうかマーガレット殿下にはご理解頂けませんか?」
「・・・事情は分かりました。精神的に大人になっていない者も居るというのは理解できます。ただ、あなたは良いんですか?」
ここまで何も喋っていない僕にマーガレット様が聞いてきた。
「正直私は面倒がなければそれで良いので構いません」
「諦めているというか、執着が無いというか。あれだけの力があれば武の面での栄達は思いのままでしょうに」
「まだ成人もしてませんから」
「ふふふ、ダリア君はそういうとこ頓着無いんですね」
何となくクラス分けの話はこれで終わったと思うので、割り振られた教室へ行きたいと伝えるとーーー
「ダリア殿!あなたには伝えたいこともあります。また後で会いましょう!」
マーガレット様はそう言って取り巻きを引き連れて会議室を後にした。
「マーガレット殿下はダリア君にご執心なのかもしれませんね。では私も失礼します」
会議室に学園長と残された僕に向かって、少し厳しい目をしながら学園長が話しかけてきた。
「まさかフロストル公国の第一王女とあなたが面識が有ったとは・・・頼みますから面倒を起こさないようにして下さいよ?」
「それは僕が言いたいのですが・・・僕としては何も騒動を起こす気は無いですよ」
「はぁ、そうでしょうけど・・・極力貴族に近付かないようになさい。問題が起こりそうなら直ぐに教師か私に連絡すること。良いわね?」
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