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第一章 運命
魔力浸透
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続いては、僕がリーアに剣技を教えるのだが、まずはその前提となる身体強化を確認することにした。
「リーアは身体強化出来るよね?」
「当然できるわ!ただ、それほど強い強化はできないの。だから私は魔法に特化した鍛練をしてきたから、剣技の方はあまり得意ではないのよ」
彼女の言葉になるほどと頷き、先ずはどの程度の身体強化が出来るのか見せてもらうことにした。
「じゃあ、やるわよ?・・・ふっ!!」
「・・・・・・」
彼女は魔力を身体に循環させるように流して、身体強化を発動した。
ただ、所々で魔力の流れが悪く、十分に強化できていないことは明らかだった。
「・・・ど、どう?何かやり方が間違っているとか、改善点が分かるなら教えて欲しいんだけど?」
自信が無さそうに聞いてくるリーアに、僕は逆に問い返した。
「リーアは身体強化するときに、どんな感じで魔力を使ってる?」
「ど、どんなって、身体を巡る血液のように体内を循環させてるわよ?それが普通でしょ?」
彼女の返答は、僕が村のおじさんから習った方法と同じだった。
「そうだね。僕も最初は同じように教えてもらったよ。でも、もっと効率的に身体強化できるやり方があるんだ!」
「・・・うそ?そんな方法があるなんて、聞いたことないわよ?」
「だよね。そのやり方は僕が自分で見つけたものだから、知らなくて当然だよ」
「はぇ?自分で見つけた?」
「そうだよ?見ててね?」
そう言って、僕はリーアの目の前で身体強化をして見せた。
「・・・は?え?これ、どうなってるの?」
リーアは目を丸くしながら僕の様子を凝視しているが、何がどうなっているのかという細かいことまでは分かっていないようだった。
「体内に循環させた魔力を、そのまま肉体に浸透させるんだ」
「えぇ?いやいや浸透させるって・・・どうやって?」
「こう、ぐっと押し込んで溶かし込むみたいな感じかな?」
「・・・いや、そんな説明じゃ意味分かんないわよ?」
僕の説明に、彼女は理解不能とばかりに肩を窄めた。
「う~ん、リーアもそうか・・・村の人達に教えた時も同じ反応だったしなぁ。でも、こればっかりは感覚的なものだし・・・そうだ!」
僕はどうしたものかと頭を悩ませると、ある方法を思い付いた。
「なに?何か良い方法でも思い浮かんだの?」
「うん。リーア、ちょっと手を出してくれる?」
「手を?いったいどうするの?」
「まぁ、まぁ、良いから、良いから」
「・・・・・・」
彼女は僕の提案に怪訝な表情を浮かべながらも、そっと手を差し出してくれた。僕はその手を優しく握ると、意識を集中して彼女に僕の魔力を纏わせた。
「っ!!こ、これって、あなたの魔力?」
「うん。この状態からリーアの肉体に魔力を浸透させることが出来ないかやってみるから、魔力の流れを意識しててね?」
「嘘でしょ?そんな事出来るわけ・・・」
驚く彼女を余所に、僕は目を閉じて更に集中を高めた。彼女の手を通して、彼女の身体を強く意識して、自分にしているのと同じように魔力を浸透できないかを試す。
「・・・くっ」
やはり自分の肉体ではないので、反発するような抵抗感があった。それでも調整を繰り返して、魔力の浸透が出来ないか何度でも試した。
そんな事を十数分も続けていると、カチリと何かが嵌まるような感覚と共に、彼女の肉体に魔力を浸透させることができた。
「凄い・・・これが魔力を浸透させる感覚・・・こんな緻密に魔力を制御するなんて・・・力が溢れてくるみたい・・・」
「魔力を循環させるのとは違って、一度浸透させてしまえば、浸透した分の魔力量が消えるまで身体強化が維持されるんだ。だから行動中に魔力の制御に意識が削がれないよ?」
「確かにそれはありがたいわね。でも、普通の身体強化と比べて、かなり力が向上してる気がするんだけど、それは何故?」
「さ、さぁ?僕は出来るからやっているだけで、細かい理由までは分からないよ?」
彼女の疑問の答えを、僕は持ち合わせていなかった。そもそもこの方法は、より力が増し、効率的に出来るからやっているのであって、そこに理由を考えたことがなかったのだ。
「そう・・・とにかく、私も今の感覚を覚えて自分で出来るように頑張ってみるわ!」
彼女は疑問が解けないことに残念そうな表情をしていたが、すぐに意識を切り替えたのか、笑顔でやる気を見せてきた。
といっても、この身体強化は剣技を扱う為の前提条件なだけで、本当に覚えなければならないのはその先にあるのだが、今は彼女のやる気に水を差さないように、その笑顔を見守ることにした。
「リーアは身体強化出来るよね?」
「当然できるわ!ただ、それほど強い強化はできないの。だから私は魔法に特化した鍛練をしてきたから、剣技の方はあまり得意ではないのよ」
彼女の言葉になるほどと頷き、先ずはどの程度の身体強化が出来るのか見せてもらうことにした。
「じゃあ、やるわよ?・・・ふっ!!」
「・・・・・・」
彼女は魔力を身体に循環させるように流して、身体強化を発動した。
ただ、所々で魔力の流れが悪く、十分に強化できていないことは明らかだった。
「・・・ど、どう?何かやり方が間違っているとか、改善点が分かるなら教えて欲しいんだけど?」
自信が無さそうに聞いてくるリーアに、僕は逆に問い返した。
「リーアは身体強化するときに、どんな感じで魔力を使ってる?」
「ど、どんなって、身体を巡る血液のように体内を循環させてるわよ?それが普通でしょ?」
彼女の返答は、僕が村のおじさんから習った方法と同じだった。
「そうだね。僕も最初は同じように教えてもらったよ。でも、もっと効率的に身体強化できるやり方があるんだ!」
「・・・うそ?そんな方法があるなんて、聞いたことないわよ?」
「だよね。そのやり方は僕が自分で見つけたものだから、知らなくて当然だよ」
「はぇ?自分で見つけた?」
「そうだよ?見ててね?」
そう言って、僕はリーアの目の前で身体強化をして見せた。
「・・・は?え?これ、どうなってるの?」
リーアは目を丸くしながら僕の様子を凝視しているが、何がどうなっているのかという細かいことまでは分かっていないようだった。
「体内に循環させた魔力を、そのまま肉体に浸透させるんだ」
「えぇ?いやいや浸透させるって・・・どうやって?」
「こう、ぐっと押し込んで溶かし込むみたいな感じかな?」
「・・・いや、そんな説明じゃ意味分かんないわよ?」
僕の説明に、彼女は理解不能とばかりに肩を窄めた。
「う~ん、リーアもそうか・・・村の人達に教えた時も同じ反応だったしなぁ。でも、こればっかりは感覚的なものだし・・・そうだ!」
僕はどうしたものかと頭を悩ませると、ある方法を思い付いた。
「なに?何か良い方法でも思い浮かんだの?」
「うん。リーア、ちょっと手を出してくれる?」
「手を?いったいどうするの?」
「まぁ、まぁ、良いから、良いから」
「・・・・・・」
彼女は僕の提案に怪訝な表情を浮かべながらも、そっと手を差し出してくれた。僕はその手を優しく握ると、意識を集中して彼女に僕の魔力を纏わせた。
「っ!!こ、これって、あなたの魔力?」
「うん。この状態からリーアの肉体に魔力を浸透させることが出来ないかやってみるから、魔力の流れを意識しててね?」
「嘘でしょ?そんな事出来るわけ・・・」
驚く彼女を余所に、僕は目を閉じて更に集中を高めた。彼女の手を通して、彼女の身体を強く意識して、自分にしているのと同じように魔力を浸透できないかを試す。
「・・・くっ」
やはり自分の肉体ではないので、反発するような抵抗感があった。それでも調整を繰り返して、魔力の浸透が出来ないか何度でも試した。
そんな事を十数分も続けていると、カチリと何かが嵌まるような感覚と共に、彼女の肉体に魔力を浸透させることができた。
「凄い・・・これが魔力を浸透させる感覚・・・こんな緻密に魔力を制御するなんて・・・力が溢れてくるみたい・・・」
「魔力を循環させるのとは違って、一度浸透させてしまえば、浸透した分の魔力量が消えるまで身体強化が維持されるんだ。だから行動中に魔力の制御に意識が削がれないよ?」
「確かにそれはありがたいわね。でも、普通の身体強化と比べて、かなり力が向上してる気がするんだけど、それは何故?」
「さ、さぁ?僕は出来るからやっているだけで、細かい理由までは分からないよ?」
彼女の疑問の答えを、僕は持ち合わせていなかった。そもそもこの方法は、より力が増し、効率的に出来るからやっているのであって、そこに理由を考えたことがなかったのだ。
「そう・・・とにかく、私も今の感覚を覚えて自分で出来るように頑張ってみるわ!」
彼女は疑問が解けないことに残念そうな表情をしていたが、すぐに意識を切り替えたのか、笑顔でやる気を見せてきた。
といっても、この身体強化は剣技を扱う為の前提条件なだけで、本当に覚えなければならないのはその先にあるのだが、今は彼女のやる気に水を差さないように、その笑顔を見守ることにした。
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