侍女の恋日記

エミリアの章

初デート

　いよいよサイラスとのはじめてのデート。

エミリアは、淡いブルーに白のレースの飾りのついたちょっと可愛らしいドレスを選んだ。
「…ちょっと、やりすぎ？」
しかし、可愛らしい物を身に付けると女の子なら誰だってテンションが上がるものだ！

靴はちゃんとヒールのある靴にする。ヒールはエミリアにとって女の武装だ！靴とバッグはお揃いのサテンで光沢のある白い色。
ヘアアクセは服と同素材の淡いブルーと白のレース。
黙っていれば女の子が遊ぶお人形さんのような容姿の出来上がりだ。
メイクも仕事モードより、ちょっと甘めに仕上げる。
サイラスと約束したのは、使用人棟の真ん前で、待ち合わせだ！

待ち合わせ場所に行くと、すでにサイラスが立っていた。
サイラスは、白いシャツに淡いブルーのジャケットを羽織り、ズボンは濃紺で爽やかな夏コーデ。なぜかお揃いのようになってしまってエミリアは笑った。
「お待たせ！」
エミリアをみて、サイラスも同じ事を思ったらしくて苦笑してる。
「気が合うね～」
とニヤリと笑った。
エミリアもぷっ！と吹き出して
「そうね！」
とだけ返した。

サイラスは軽く肘を曲げて、エミリアに腕をかけるよう促す仕草だ。エミリアは、ちょっと迷っていると、サイラスはエミリアをみてくいくいっと肘を動かした。

エミリアはえいっ！とサイラスの腕に手をかけた。
サイラスはとても嬉しそうでエミリアも嬉しくなった。
「今日はどこに連れていってくれるの？」
「まずは、王道に観劇でもどう？」
おや、とエミリアはサイラスを見た。 
「いいわよ？」
今王都大劇場で演じられているのは、話題のラブロマンス。それは、エセルをモデルにしたシンデレラストーリーだった。身分の低い少女が王子様と結婚するという王道なもの。

サイラスは事前にチケットを手に入れていたようで、下の方の席ではなく、ボックス席だった。
そつがないってこういうことね！と密かに感心した。

主演女優の女性は、エセルを彷彿させるスリムな女の子で主役の男性もアルベルトを彷彿させた。だけど、リアルでないその物語は身近で見てきたエミリアには、すでに別物で素直に楽しめた。

観劇のあとは、洒落たレストランでランチを食べた。そこも趣味がよくエミリアはとても居心地よく過ごせたし、その後のウィンドゥショッピングも、サイラスは程よい距離感で付き合ってくれたのだ。

はっきり言って一日楽しかったのだ！女子使用人棟の前まで一緒に帰り、別れ際
「今日はありがとう。楽しかったわ」
エミリアは素直にそう言って微笑んだ。
「俺もとても楽しかったよ！エミリア」
サイラスはそういうと、エミリアのこめかみに軽くキスをした。

エミリアは、触れた柔らかな感触に少し赤くなって
「もぅ！なにしてるの」
と軽くサイラスの胸を押した。
はははっ！と軽く笑って手を振って帰っていくのをエミリアは少し赤い顔で見送った。