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第4部 浅はかな戦争 第1章 戦争の始まり
68. アウラ領、3年経って
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あたしがアウラ領の領主になってから3年が経過した。
その間にレイキ以外にも街は造ったし、いくつかの施策も行っている。
一番大きなものは、隣の男爵家と共同研究を行っている、鍛冶魔法の再習得かな?
あたし以外に鍛冶魔法を使える人は誰もいない。
これを通常金属くらいなら素質次第で扱えるようにするのが研究課題だ。
ヘファイストスも賛成してくれているし、あたしも鉄を精製するのに駆り出されずにすむから大助かりなんだよね。
いまのところ何人かがある程度できる程度でしかないんだけど、お隣の男爵家からすれば大きな発展らしい。
そっちの男爵家には鉄鉱石をメインとした鉱山があったんだけど、いままで冶金、つまり金属を精製してインゴットなどに変える能力が未発達だったようだ。
実際、共同研究を始める前に鍛冶場を確認させてもらったんだけど、かなり質の悪い鉄しか作れていなかったものね。
いまじゃ毎日少量とはいえど上質な鋼が生産されており、装備も充実し始めているのだとか。
その男爵家と知り合いになったのも、魔物退治の救援依頼があたしのところに来た事だったし、早く体制を整えてもらいたいところだね。
ともかく、そんなわけで領地の運営は順調。
口を出したがっている貴族はいろいろといるらしいけど、あたしの後ろ盾は女王陛下でありエリスであり王家である。
どれかひとつなら隙もできそうなところだけど、王家一丸となってあたしの味方だから隙ができないらしいんだ。
それに叙爵のきっかけとなった妖精太陽銀と妖精月銀の献上のおかげで国の中枢部からも覚えがよく、あたしの領地で栽培された美味しい野菜は王家の実験栽培場でも栽培され、国内全土に展開できないか模索中。
つまり、あたしの領地とは手を組んでいた方が美味しいって国は思っているわけなんだよね。
だからこそ、他の貴族も一枚からみたいんだろうけど、なかなか隙もない。
そんな状況がずっと続いている。
あたしとしては国に納める税と領地の安定、家のみんなの安全が確保されていれば割とどうでもいいんだけどさ。
そんな感じで叙爵から3年間はそれなりに苦労しながらも平穏無事に暮らしていた。
問題が起きたのは3年目の冬が終わろうとしたときだ。
ある日、王家からひとりの使者がやってきたんだよね。
あたしが王家に献上した高速飛行型エンシェントフレームに乗っての特急便で。
「なんですって! リードアロー王国が攻め込んできた!?」
「はい。宣戦布告もないまま国境線を越え国境警備部隊を襲撃、これを撃破して進軍中とのことです」
「それって何日前の情報?」
「およそ10日前の情報になります。現在は王配殿下、第一王子殿下が主力部隊を伴い出撃し、各地の貴族部隊を集め救援に向かっている最中です」
くっ、あの国、遂に仕掛けてきたわね。
去年あたりから戦争に備えているんじゃないかって女王陛下が警戒していたけど、本当に仕掛けてくるだなんてバカじゃないの!?
「わかったわ。あたしもすぐに出撃を……」
「お待ちください、アウラ名誉伯爵」
「なに? あたしに加勢を求めに来たんじゃないの?」
「加勢はお願いしたいのですが、その前にアウラ名誉伯爵の領地の防備を固めてから来るようにとの女王陛下からのご命令です。ミラーシア湖防衛部隊もいますが、それが守れるのは各街が手一杯でしょう」
「なるほど。この館は守り切れないだろうという判断ね」
「そういう判断だと思われます」
「わかったわ。この館を守れるような手配をしてから援軍に向かうと女王陛下に伝えてちょうだい。なるべく早く駆けつけるわ」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
あたしに伝令を終えた兵士はエンシェントフレームに乗って帰っていった。
さて、これからどうするかが問題よね。
「ねえ、ヘファイストス。自律型のエンシェントフレームって作れないの?」
『自律型? 自動思考による戦闘用機動兵か?』
「うーん、そうなるかな。作れる?」
『いや、作れない。過去の大戦でそれらを作った際、敵に支配を奪われて大きな損害が出たと記録にある。私にはそれらを作るための権限を与えられていない』
「あたしが命令しても……ダメなのよね」
『申し訳ないがそうなる』
「となると、困ったときのフェデラーとクスイ頼みか」
『あのふたりならば扱いやすいエンシェントフレームを用意することで、数日もあれば戦闘機動もできるようになるだろう。あのふたりの説得を頼む。私はエンシェントフレームの用意に取りかかる』
「そっちは任せたわ」
さて、機体の方はヘファイストスに任せておけばいいとして、フェデラーとクスイをどうやって説得しよう。
そう考えていたんだけど、ふたりを呼んで話をしたら簡単に話がまとまっちゃった。
ふたりともエンシェントフレームに乗れるんだって。
「フェデラーもクスイもエンシェントフレームに乗れたんだね……」
「申し訳ございません。話す必要もないかと思い」
「はい。アウラ家ではアウラお嬢様がご自身でマナトレーシングフレームを扱うため、私どもの出番はないものだとばかり」
「いいえ。乗れるんだったら話は早いわ。ふたりとも、ヘファイストスのところに行って好みのエンシェントフレームをオーダーしてきて。ヘファイストスならどんなエンシェントフレームだってオーダーメイドで作ってくれるから」
「ほほ。オーダーメイドのエンシェントフレームとは。そのようなものを持てるだけでも自慢の品ですな」
「ええ。ですが、それを預かるということは決死の覚悟で家を守らねばならないと言う事。油断は出来ませんよ、フェデラー」
「もちろんですよ、クスイ。お嬢様、これにて失礼させていただきます」
「ええ。ふたりとも、他にもオーダーがあったらヘファイストスに伝えておいて。可能な範囲で対応するから」
「はい。それでは」
ふたりは部屋を出ていってその足でヘファイストスの元を訪れ、それぞれの好みにあったエンシェントフレームをお願いしたようだ。
また、それとは別に汎用型のエンシェントフレームを10機用意してもらうらしい。
館に勤めている者たちの中で適性がある人を乗せて守りに当たらせるんだって。
構わないけど無茶はさせないでね。
これらの準備も2週間で完了しあたしは国の救援に向かえるようになった。
さて、礼儀知らずの国はとっちめてやろうじゃないの!
その間にレイキ以外にも街は造ったし、いくつかの施策も行っている。
一番大きなものは、隣の男爵家と共同研究を行っている、鍛冶魔法の再習得かな?
あたし以外に鍛冶魔法を使える人は誰もいない。
これを通常金属くらいなら素質次第で扱えるようにするのが研究課題だ。
ヘファイストスも賛成してくれているし、あたしも鉄を精製するのに駆り出されずにすむから大助かりなんだよね。
いまのところ何人かがある程度できる程度でしかないんだけど、お隣の男爵家からすれば大きな発展らしい。
そっちの男爵家には鉄鉱石をメインとした鉱山があったんだけど、いままで冶金、つまり金属を精製してインゴットなどに変える能力が未発達だったようだ。
実際、共同研究を始める前に鍛冶場を確認させてもらったんだけど、かなり質の悪い鉄しか作れていなかったものね。
いまじゃ毎日少量とはいえど上質な鋼が生産されており、装備も充実し始めているのだとか。
その男爵家と知り合いになったのも、魔物退治の救援依頼があたしのところに来た事だったし、早く体制を整えてもらいたいところだね。
ともかく、そんなわけで領地の運営は順調。
口を出したがっている貴族はいろいろといるらしいけど、あたしの後ろ盾は女王陛下でありエリスであり王家である。
どれかひとつなら隙もできそうなところだけど、王家一丸となってあたしの味方だから隙ができないらしいんだ。
それに叙爵のきっかけとなった妖精太陽銀と妖精月銀の献上のおかげで国の中枢部からも覚えがよく、あたしの領地で栽培された美味しい野菜は王家の実験栽培場でも栽培され、国内全土に展開できないか模索中。
つまり、あたしの領地とは手を組んでいた方が美味しいって国は思っているわけなんだよね。
だからこそ、他の貴族も一枚からみたいんだろうけど、なかなか隙もない。
そんな状況がずっと続いている。
あたしとしては国に納める税と領地の安定、家のみんなの安全が確保されていれば割とどうでもいいんだけどさ。
そんな感じで叙爵から3年間はそれなりに苦労しながらも平穏無事に暮らしていた。
問題が起きたのは3年目の冬が終わろうとしたときだ。
ある日、王家からひとりの使者がやってきたんだよね。
あたしが王家に献上した高速飛行型エンシェントフレームに乗っての特急便で。
「なんですって! リードアロー王国が攻め込んできた!?」
「はい。宣戦布告もないまま国境線を越え国境警備部隊を襲撃、これを撃破して進軍中とのことです」
「それって何日前の情報?」
「およそ10日前の情報になります。現在は王配殿下、第一王子殿下が主力部隊を伴い出撃し、各地の貴族部隊を集め救援に向かっている最中です」
くっ、あの国、遂に仕掛けてきたわね。
去年あたりから戦争に備えているんじゃないかって女王陛下が警戒していたけど、本当に仕掛けてくるだなんてバカじゃないの!?
「わかったわ。あたしもすぐに出撃を……」
「お待ちください、アウラ名誉伯爵」
「なに? あたしに加勢を求めに来たんじゃないの?」
「加勢はお願いしたいのですが、その前にアウラ名誉伯爵の領地の防備を固めてから来るようにとの女王陛下からのご命令です。ミラーシア湖防衛部隊もいますが、それが守れるのは各街が手一杯でしょう」
「なるほど。この館は守り切れないだろうという判断ね」
「そういう判断だと思われます」
「わかったわ。この館を守れるような手配をしてから援軍に向かうと女王陛下に伝えてちょうだい。なるべく早く駆けつけるわ」
「かしこまりました。よろしくお願いいたします」
あたしに伝令を終えた兵士はエンシェントフレームに乗って帰っていった。
さて、これからどうするかが問題よね。
「ねえ、ヘファイストス。自律型のエンシェントフレームって作れないの?」
『自律型? 自動思考による戦闘用機動兵か?』
「うーん、そうなるかな。作れる?」
『いや、作れない。過去の大戦でそれらを作った際、敵に支配を奪われて大きな損害が出たと記録にある。私にはそれらを作るための権限を与えられていない』
「あたしが命令しても……ダメなのよね」
『申し訳ないがそうなる』
「となると、困ったときのフェデラーとクスイ頼みか」
『あのふたりならば扱いやすいエンシェントフレームを用意することで、数日もあれば戦闘機動もできるようになるだろう。あのふたりの説得を頼む。私はエンシェントフレームの用意に取りかかる』
「そっちは任せたわ」
さて、機体の方はヘファイストスに任せておけばいいとして、フェデラーとクスイをどうやって説得しよう。
そう考えていたんだけど、ふたりを呼んで話をしたら簡単に話がまとまっちゃった。
ふたりともエンシェントフレームに乗れるんだって。
「フェデラーもクスイもエンシェントフレームに乗れたんだね……」
「申し訳ございません。話す必要もないかと思い」
「はい。アウラ家ではアウラお嬢様がご自身でマナトレーシングフレームを扱うため、私どもの出番はないものだとばかり」
「いいえ。乗れるんだったら話は早いわ。ふたりとも、ヘファイストスのところに行って好みのエンシェントフレームをオーダーしてきて。ヘファイストスならどんなエンシェントフレームだってオーダーメイドで作ってくれるから」
「ほほ。オーダーメイドのエンシェントフレームとは。そのようなものを持てるだけでも自慢の品ですな」
「ええ。ですが、それを預かるということは決死の覚悟で家を守らねばならないと言う事。油断は出来ませんよ、フェデラー」
「もちろんですよ、クスイ。お嬢様、これにて失礼させていただきます」
「ええ。ふたりとも、他にもオーダーがあったらヘファイストスに伝えておいて。可能な範囲で対応するから」
「はい。それでは」
ふたりは部屋を出ていってその足でヘファイストスの元を訪れ、それぞれの好みにあったエンシェントフレームをお願いしたようだ。
また、それとは別に汎用型のエンシェントフレームを10機用意してもらうらしい。
館に勤めている者たちの中で適性がある人を乗せて守りに当たらせるんだって。
構わないけど無茶はさせないでね。
これらの準備も2週間で完了しあたしは国の救援に向かえるようになった。
さて、礼儀知らずの国はとっちめてやろうじゃないの!
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