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第3部 アウラ領、開発中 第2章 ミラーシア湖観光と新しい街

61. 2週間経って

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 新しい領民を迎え入れて2週間後、あたしはあらためてレイキの街を訪れた。
 そこの耕作地エリアに行けば、農民たちがせっせと収穫作業に勤しんでいる。
 ていうか、育つの早すぎじゃない?

「おお、領主様。よく来てくれました」

 やってきたわたしを見つけた農家のおじさんが話しかけてきてくれた。
 せっかくだから現在の状況を聞いてみよう。

「ええ、様子を見に来たわ。来たんだけど、もう収穫?」

「はい。水龍様のおかげで3度目の収穫を迎えることができました」

 水龍……。
 あなた、湖の守護者なんだからホイホイ姿を現すんじゃないわよ。
 神秘性が薄れるでしょう?
 あたしにはどうでもいい話だけど。

「そ、そう。それで、作物の育ち具合は?」

「まずまずです。まだ土が完全にできあがっていないので、お納めするには早いかと。ですが、前にいたアグリーノの野菜よりも美味しくできとります」

「それならよかったわ。不足している物はない? 不足しているものがあれば取り寄せるわ」

「不足している物など。種も農作業に必要な道具も肥料までそろっとります。あえて言うなら、人不足で畑全面を使えないのが残念ですが……」

 農家のおじさんと一緒に畑を見渡すと、使用されているのは全体の5分の1にも満たない程度。
 それだっていま収穫している分以外の作物が育っているという事は、また明日か明後日には収穫を迎えるのだろう。
 つまり、これ以上の畑を広げるのは無理だという事だ。

「領主様がせっかく作っていただいた麦刈り機も使う機会がございません。麦畑を作る余裕がないもんで」

「あれは将来的な投資も考えて作っているから気にしないでいいわ。それにしても、人員不足はここまで深刻か……」

「はい。この畑をすべて機能させようと思ったらいまの10倍以上の人数は必要かと」

「10倍以上。200人くらい?」

「そうですな。そんくらいは最低でも必要かと」

「最低ねぇ。じゃあ、もっと余裕を見た方がいいわけだ」

「そうなります。ここの農作業は楽しくていけないですが、やっぱり収穫と種蒔きのペースが早いせいで身体に負担がちょっと」

 ああ、そっちの心配もあるわけか。
 そうなると200人だけじゃ聞かないわよね。
 でも、畑の全体面積は……広げればまだ広がるか。
 女王陛下に相談かなぁ。
 手土産は麦刈り機と畑耕し機でいいよね。

「状況報告ありがとう。また何かあったら教えてね」

「ありがとうございますだ。一日でも早く美味しい野菜を納められますように頑張ります」

「期待しているわよ。わたしだけじゃなくて女王陛下も」

「女王陛下!?」

 あ、農民のおじさん、仲間の元に飛んで行っちゃった。
 そして、仲間に何かを伝えてみんな慌てだしたし、さすがに女王陛下が期待しているって言うのは伝えるべきじゃなかったかな?
 でも、遅かれ早かれ知ることになるんだしいまから知っていても……いいわけないか。
 ちょっと反省。
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