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第2部 森と花の国『マナストリア聖華国』 第2章 華都マナストリアにて

23. 華都マナストリア

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 マナストリア聖華国に入ってからおよそ3週間後、華都マナストリアにたどり着いた。
 3週間かかったのは途中途中にあった街すべてで1泊しながら旅をしてきたためだ。
 同行者たちの疲労度を考えたためだけではなく、エリスがマナストリア聖華国へと無事に帰国したことを伝えるためらしいね。
 既にリードアロー王国がエリスたちに暗殺などを仕掛けたことは広まっているみたいで、民の間にも不安が広まっていたみたいだし、必要な時間だったのだろう。
 あたしにはよくわからないけどさ。

「お待たせいたしました、アウラ様。あそこが華都マナストリアになります」

 通信機を通してエリスの軽やかな声が響く。
 そっか、あれが華都マナストリア。
 遠目に見える今の段階でも、色とりどりの花々が咲き乱れていることがわかる。
 あと、大きな木が多いのはなぜだろう?
 ちょっと聞いてみようか。

「エリス。あの巨大な木はなに? あんなのが街の中にたくさん生えていたら困らない?」

「ああ、あれはハウスツリーと申しまして木の中に家ができているんです。耐火性にも優れ遠くから見てもわかるため目印にもなる。そのほかにも役立つことはありますが、それはまた」

「うん、わかった。華都って変わったものが多いのね」

「華都よりも西部に行けばツリーハウスは多くなりますよ。リードアロー王国方面では華都が一番近いと言うだけで」

「そういえば、マナストリア聖華国ってリードアロー王国の北西部だったっけ」

「はい。さて、迎えの者たちも出ているようです。あまり待たせてもいけませんし、進むといたしましょう」

「わかった」

 あたしたちはあらためて行進を開始し、十数分で華都の側までやってきた。
 そこではエリスの言葉通り、エンシェントフレームから人の騎士まで様々な人々がエリスの到着を待っていたみたい。
 実際、エリスの乗るティターニアが前に出ると一斉に敬礼したからね。
 派手な出迎えだけど、一国の王女ともなれば当然なのかな?

『エリクシール殿下、お待ちしておりました』

『ペネン軍務大臣、あなたが直接のお出迎えですか』

 外部音声を拾う限り、あの黄色いエンシェントフレームに乗っているのは軍務大臣なんだ。
 やっぱり、王女が狙われた暗殺事件って大事だよね。

『もちろんですとも。エリクシール殿下の無事は先に帰還した者から聞いております。ですが、その無事を実際に確かめるまでは安心などできません。女王陛下もお待ちです。さあ、早く街に入り皆に無事な姿を見せてください』

『わかりました。警護をお願いいたします。それと、そちらの紅いエンシェントフレーム。マナトレーシングフレームのヘファイストスに乗っているパイロットのアウラ様は私の友人です。誰か人を使い先に王宮へと案内してください』

『承知いたしました。すぐに人を手配します』

 軍務大臣の言葉通り、あたしはすぐに別の人が案内としてつけられて王宮へと連れて行かれた。
 詳しい話を聞くと、エリスの側に見慣れないエンシェントフレームがいると民が不安がるかもしれないからということらしい。
 そういった方面にも頭が回るんだね。

 さて、あたしとヘファイストスが案内されたのは王家のエンシェントフレームが使用するという駐機場。
 あたしたちは普通の駐機場でもよかったんだけど、エリスの友人ということでこちらに通されたみたい。
 なんだか恐縮してしまうな。
 そして、降りようとして駐機姿勢をとってコクピットから出たら、ひとりの女の子が飛んできた。
 いや、勢いよく走ってきたとかじゃなく、本当に飛んできたんだ。
 妖精の羽を使い、パタパタと。

「うわぁ! 見慣れないエンシェントフレーム! 真っ赤な装甲がかっこいい!」

「ええっと、あなたは?」

「私? 私、ユニリス! この国のお姫様なんだよ!」

 この国のお姫様……っていうことはエリスの妹かな。
 若草色の髪に緑色の瞳はエリスを幼くした感じにそっくり。
 羽根の色は水色だけど、そこは妖精族らしい個人差だろう。

「ねえ、お姉ちゃんは誰?」

「あたし? アウラって言うの。このマナトレーシングフレーム、ヘファイストスのパイロットよ」

「マナトレーシングフレーム! エリスお姉ちゃんのティターニアと一緒だ!」

『そうだな。ティターニアと一緒だな』

「喋った! ティターニアは喋れないのに!」

『ティターニアが喋れないのは発声機関の故障だろう。許可さえ出れば我が修復する』

「直せるの!?」

『おそらくは。さて、ユニリスは何をしにきたのだ?』

「窓から見慣れないエンシェントフレームがお城に向かっているのが見えたから来た! あと、ヘファイストスに乗ってみたい!」

 え、ヘファイストスに?
 どうしよう、さすがにそれはまずいんじゃ……。
 ユニリスが「乗りたい、乗りたい」と駄々をこね始めたとき、お城の方から何人かの人々がやってきた。
 この人たち、誰だろう?

「ああ、ユニリス様。やはりここでしたか」

「あ、爺! 見つかっちゃった」

「見つかったではありません。窓から外を見ていたかと思えば、窓を開けて飛び出して行くなど。まったく、もう少しお淑やかにしてくだされ」

「いいの! 私はまだ元気でいたい! それから、このエンシェントフレームにも乗ってみたい!」

「エンシェントフレーム? おや、見慣れない機体ですな。それはお嬢さんの所有物で?」

「はい。あたしのエンシェントフレームでマナトレーシングフレームのヘファイストスと言います」

「マナトレーシングフレーム。ティターニア様と一緒ですね」

 ああ、やっぱりこの国の人たちにとってティターニアって特別な存在なんだ。
 話せるように修理できないかな。

「それにしても立派なエンシェントフレームですな。脚部が少し大きすぎるようにも見えますが」

『脚部は全身の重さを受け止めるため、あえて巨大に設計してある。移動や倒れたときは各部に備え付けてあるバーニアを使っての作業だ』

「おお! 本当に喋られるのですな!」

「ふふーん。すごいでしょ」

「すごいのはわかりましたが、ユニリス様のものではございません」

 このユニリスっていう子、そんなにエンシェントフレームが好きなのかな。
 どうしたものか。

「爺! 私はこのエンシェントフレームに乗ってみたいの。あなたも一緒に頼んで!」

「またユニリス様は極端なことを言う。城にエンシェントフレームを持った客人が来るたびに言っている言葉ですよ?」

「それはそうだけど、今度こそ乗ってみたいの! エリスお姉様の知り合いだって言うしいいでしょう?」

「おや、エリクシール殿下の。本当ですかな?」

「はい。エリクシール殿下に連れられてこの国……というか、このお城まで来ました。まあ、きな臭くなったリードアロー王国から脱出できただけでも儲けものだったのですが……」

「案内してきたのは……お前か。いまの話は事実か?」

「事実です。アウラ様の左耳にはエリクシール殿下のイヤリングも輝いております」

「エリクシール殿下の……おお、これは大変失礼いたしました! 申し訳ありませんが、少しだけ駐機場の中を案内してあげてください。ユニリス様、くれぐれもほかの王族たちのエンシェントフレームがある区域には近づかないように」

「うん!」

 なんだかよくわからないうちにこの子を連れて駐機場を巡り歩くことになった。
 ユリニスが言うにはエリス以外にも王子や王女が5人いてエリスが2番目らしい。
 それから、自分以外は専用のエンシェントフレームを持っているのに自分だけエンシェントフレームがないのは悔しいとも。
 だからヘファイストスに乗りたかったんだね。
 こう言うところは王女もほかの子供と変わらないのかも。
 かわいい、かわいい。
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