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第1部 鍛冶の炎、目覚める 第1章 アウラとヘファイストス
6. 王都に向けて
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さて、エンシェントフレームの所有者登録は終わったわけだけど……このあとすることがない。
元々、あたしって気ままなひとり旅だったからなぁ。
おっきな連れが増えたからといってなにかが変わるわけでもないんだよね。
この先のことを考えていたとき、ルインハンターズギルドのギルドマスターバレルさんから話しかけられた。
「アウラ、君はこれからどうするのかね?」
「どうしましょう? この街を前に訪れたのは半年以上前です。特にやるべきこともないですし、お金稼ぎを目的としてやってきたんですよね。ヘファイストスって連れができた以上、細々とした方法でお金稼ぎもできませんし、どうしたものか」
「そうか。それならば王都に向かってみるのはどうかな?」
「王都に?」
「うむ。あそこならばエンシェントフレーム持ちの者向けに依頼が出ているだろう。それでなくとも、いろいろと依頼があるはずだ」
王都か……。
一度も行ったことがないし、物見遊山がてら行ってみるのもいいかも。
「わかりました。地図とかって売ってます?」
「売っている。1階の販売所に寄っていくといい」
「はい、そうします。用件は終わりですか?」
「ああ、いや。これを持っていってくれ。ルインハンターズギルドがエンシェントフレームの所有を正式に認めたという証拠のエンブレムだ」
あたしはバレルさんからエンブレムを受け取り部屋を出た。
そのまま1階に戻って販売所で王都までの地図を買うと、表に出る。
するとそこでは大騒ぎになっていたんだよね……。
「おい! あのエンシェントフレームは俺のだって言っているだろう!」
「馬鹿言え! 俺のだ!!」
「俺のもんだ! さっさと通せ、防衛隊!!」
……ルインハンターってどうしてこう頭の悪いバカが混じっているんだろう。
騒ぎ立てて権利を主張すれば自分の物になると思っている連中がそれなりに混じっている。
しかも、そう言う連中ほど手癖が悪く暴力的とくるからたまらない。
「警備隊さん、お疲れさまです」
「ああ、アウラさん。終わりましたか」
「はい。それにしてもバカが現れましたか……」
「想像通り現れました。アウラさんはあれらを無視してヘファイストスに搭乗を。そうすれば騒ぎも収まるでしょう。それでも収まらなければ、私たちの出番ですよ」
「防衛隊には手間をおかけします」
「なに。一部のルインハンターが暴れるなど日常ですから」
「……本当に申し訳ありません」
あいつら、ヘファイストスに乗ったら実力行使で追い払おうかな?
ともかく、空へと舞い上がりヘファイストスの搭乗口からコクピットへと滑り込む。
内部は……うん、空気が澄んでいるね。
いままで不思議に思ってこなかったけど、なにか仕掛けがあるんだろうか?
「ただいま、ヘファイストス」
『お帰り、アウラ。下で騒いでいる連中はどうする?』
「うーん。防衛隊が取り押さえ始めたし放置で。あたしたちが手出しする必要はないでしょ」
『承知した。それで、このあとは?』
「この国の王都を目指すことにしたよ。そこでならいいお仕事があるかもしれないから」
『仕事か。そうだ、忘れていた。私の力の一部をアウラに託さねば』
「え?」
ヘファイストスがそう言った途端、私の左手の甲が輝きだし、星の中に炎が揺らめくようなエンブレムが出現した。
これってなんだろう?
『これでアウラも私の力の一部、《鍛冶》と《再生》、《解体》が使えるようになった。《鍛冶》は魔法で金属を変形、融合させて望むままの物を作り出す技術。《再生》は生物でも無機物でも元の姿に修復する技術。《解体》は非生物を素材ごとに分解する技術だ』
なにそれすっごい。
ひょっとして、あたしの服とかもヘファイストスが《鍛冶》で作ったのかな?
というか、それしか考えられない。
『練習はあとでやってみるといい。いまはこの街を離れるとしよう。飛んで出てもいいのか?』
「ダメに決まってるでしょう!? ちゃんと門から出るの!」
『そうか。面倒だな……』
「面倒でもそれが決まり! 緊急時以外は門から出るの!」
『わかった。では、門へ行くことにしよう』
とんでもないことを言いだしたヘファイストスをなだめながら門へと向かう。
途中なにかのモニュメントみたいな物の横を通り過ぎたんだけど、それにヘファイストスが反応した。
『あれは私たちが使っていた認知外危険生物……今の時代ではモンスターと呼ぶのだったな、あれを追い払う効果のある装置だ』
「そうなんだ」
『効果は微弱になっているがまだ生きている。また、私が外に出るための転移装置が目標地点を定める際のビーコンの役目を担っていた』
「ビーコン?」
『まあ、難しいことは考えず目標地点にある目印と覚えておけ。ともかく、モンスター除けの効果がある装置の周りに街ができたか。不思議ではないな』
「そう言われるとそうかも。さて、そろそろ門だね。出街手続きをしてくるよ」
『わかった』
エンシェントフレームに乗っていると街を出るだけでも手続きが必要だから大変なのよ。
登録証明のエンブレムを見せたらすぐに終わったけどね。
さて、目指すはこの国の王都。
そこではどんなお仕事があるんだろう。
ちょっとだけわくわくしちゃうな。
元々、あたしって気ままなひとり旅だったからなぁ。
おっきな連れが増えたからといってなにかが変わるわけでもないんだよね。
この先のことを考えていたとき、ルインハンターズギルドのギルドマスターバレルさんから話しかけられた。
「アウラ、君はこれからどうするのかね?」
「どうしましょう? この街を前に訪れたのは半年以上前です。特にやるべきこともないですし、お金稼ぎを目的としてやってきたんですよね。ヘファイストスって連れができた以上、細々とした方法でお金稼ぎもできませんし、どうしたものか」
「そうか。それならば王都に向かってみるのはどうかな?」
「王都に?」
「うむ。あそこならばエンシェントフレーム持ちの者向けに依頼が出ているだろう。それでなくとも、いろいろと依頼があるはずだ」
王都か……。
一度も行ったことがないし、物見遊山がてら行ってみるのもいいかも。
「わかりました。地図とかって売ってます?」
「売っている。1階の販売所に寄っていくといい」
「はい、そうします。用件は終わりですか?」
「ああ、いや。これを持っていってくれ。ルインハンターズギルドがエンシェントフレームの所有を正式に認めたという証拠のエンブレムだ」
あたしはバレルさんからエンブレムを受け取り部屋を出た。
そのまま1階に戻って販売所で王都までの地図を買うと、表に出る。
するとそこでは大騒ぎになっていたんだよね……。
「おい! あのエンシェントフレームは俺のだって言っているだろう!」
「馬鹿言え! 俺のだ!!」
「俺のもんだ! さっさと通せ、防衛隊!!」
……ルインハンターってどうしてこう頭の悪いバカが混じっているんだろう。
騒ぎ立てて権利を主張すれば自分の物になると思っている連中がそれなりに混じっている。
しかも、そう言う連中ほど手癖が悪く暴力的とくるからたまらない。
「警備隊さん、お疲れさまです」
「ああ、アウラさん。終わりましたか」
「はい。それにしてもバカが現れましたか……」
「想像通り現れました。アウラさんはあれらを無視してヘファイストスに搭乗を。そうすれば騒ぎも収まるでしょう。それでも収まらなければ、私たちの出番ですよ」
「防衛隊には手間をおかけします」
「なに。一部のルインハンターが暴れるなど日常ですから」
「……本当に申し訳ありません」
あいつら、ヘファイストスに乗ったら実力行使で追い払おうかな?
ともかく、空へと舞い上がりヘファイストスの搭乗口からコクピットへと滑り込む。
内部は……うん、空気が澄んでいるね。
いままで不思議に思ってこなかったけど、なにか仕掛けがあるんだろうか?
「ただいま、ヘファイストス」
『お帰り、アウラ。下で騒いでいる連中はどうする?』
「うーん。防衛隊が取り押さえ始めたし放置で。あたしたちが手出しする必要はないでしょ」
『承知した。それで、このあとは?』
「この国の王都を目指すことにしたよ。そこでならいいお仕事があるかもしれないから」
『仕事か。そうだ、忘れていた。私の力の一部をアウラに託さねば』
「え?」
ヘファイストスがそう言った途端、私の左手の甲が輝きだし、星の中に炎が揺らめくようなエンブレムが出現した。
これってなんだろう?
『これでアウラも私の力の一部、《鍛冶》と《再生》、《解体》が使えるようになった。《鍛冶》は魔法で金属を変形、融合させて望むままの物を作り出す技術。《再生》は生物でも無機物でも元の姿に修復する技術。《解体》は非生物を素材ごとに分解する技術だ』
なにそれすっごい。
ひょっとして、あたしの服とかもヘファイストスが《鍛冶》で作ったのかな?
というか、それしか考えられない。
『練習はあとでやってみるといい。いまはこの街を離れるとしよう。飛んで出てもいいのか?』
「ダメに決まってるでしょう!? ちゃんと門から出るの!」
『そうか。面倒だな……』
「面倒でもそれが決まり! 緊急時以外は門から出るの!」
『わかった。では、門へ行くことにしよう』
とんでもないことを言いだしたヘファイストスをなだめながら門へと向かう。
途中なにかのモニュメントみたいな物の横を通り過ぎたんだけど、それにヘファイストスが反応した。
『あれは私たちが使っていた認知外危険生物……今の時代ではモンスターと呼ぶのだったな、あれを追い払う効果のある装置だ』
「そうなんだ」
『効果は微弱になっているがまだ生きている。また、私が外に出るための転移装置が目標地点を定める際のビーコンの役目を担っていた』
「ビーコン?」
『まあ、難しいことは考えず目標地点にある目印と覚えておけ。ともかく、モンスター除けの効果がある装置の周りに街ができたか。不思議ではないな』
「そう言われるとそうかも。さて、そろそろ門だね。出街手続きをしてくるよ」
『わかった』
エンシェントフレームに乗っていると街を出るだけでも手続きが必要だから大変なのよ。
登録証明のエンブレムを見せたらすぐに終わったけどね。
さて、目指すはこの国の王都。
そこではどんなお仕事があるんだろう。
ちょっとだけわくわくしちゃうな。
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