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第1部 『神樹の里』 第4章 反転攻勢
22.〝王都〟襲撃準備
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影の軍勢の力添えにより幻獣たちへの被害が出なくなってしばらく。
季節は秋から冬へと変わりました。
この国は冬、雪が降るのですがそんなことはお構いなしに〝狩り〟は実施されています。
これらの話はすでに幻獣や精霊、妖精などの間でも広まっており、影の軍勢の誰かが説明に行けば僕たちが出向かなくても神樹の里を目指すようになってくれました。
遠い場合は僕とリンが出向いて《ディメンション・ゲート》を使い招き入れますが、近くの場合は自分たちで来る方が早いらしいです。
あと、〝狩り〟の対象も森や草原、山、湖などだけではなく岩山や海なども狙い始めました。
そういう場所に住んでいた皆さんにも避難して頂きましたが、やはり平原と湖しかない神樹の里では過ごしにくいらしく、僕の創造魔法で岩山や海も造り上げそこに住んでもらいます。
田舎の森に会った辺境暮らしの僕では〝岩山〟や〝海〟をうまく再現できず、現地を何度も訪れてどのような場所かを調べながら何日もかけて造り上げたのですが、合格点はいただけましたし不満などがあればできる範囲で対応するとも伝えてあるので大丈夫でしょう。
そんな冬の生活も2カ月目に突入したある日、〝王都〟を調べていたオニキスから信じられないような報せが届きました。
「幻獣や精霊、妖精たちを売りに出す!?」
『どうもそうらしい。時期もつかんできた。我ら影の軍勢が見張っているので多少日時が前後しても影響は出ないだろう』
「影響は出ないって……オニキス、幻獣たちはそれに従うんですか?」
『……従わされる。強制従属の首輪をはめられているのを確認してしまった。あれでは人間どもに反抗できない』
「強制従属の首輪?」
『……メイヤ様』
『そうね。ここまで来てしまったら隠し立てするのも厳しくなってくるわね』
「メイヤ?」
「メイヤ様、なにかご存じなのでしょうか?」
『強制従属の首輪はね、創造魔法で作れるのよ』
「創造魔法で……」
『逆をいうと創造魔法でしか作れない。それをはめられればいくら強い幻獣でも反抗できなくなるわ』
「創造魔法とはそこまで凶悪な魔法だったのですか?」
『それは……』
メイヤが口ごもるなんて珍しい。
僕は便利な物作り魔法程度にしか考えていませんでしたが、幻獣などにはそこまで危険な魔法だったとは……。
『メイヤ様、シントなら悪いようには使わんじゃろ。すべてを話しちまうのはどうじゃい』
「ヴォルケーノボム? それにほかの五大精霊のみんなも」
声がしたほうを見ればヴォルケーノボムを初めとした五大精霊たちが勢揃いしていました。
すべてを話すとは一体?
『……そうね。シントなら悪いようには扱わないでしょう。よく聞きなさい』
「はい。なにか大事な話なんですね」
『ええ。〝創造魔法〟なんだけど、それはヒト族がつけた名前なのよ。聖霊の書に浮かび上がるからね。正式な名称は〝神霊魔法〟、極めれば〝聖霊〟の力の片鱗さえ扱える魔法なの』
「〝神霊魔法〟……それって昔、ホーリーフェンリルのハクガが言っていたような?」
『あれも相当長く生きているはずだから〝神霊魔法〟のことは気がついているはずよ。ここまでが前提知識。付いてくることができている?』
「はい、大丈夫です」
『では、〝神霊魔法〟でできることを説明するわ。第一に〝創造魔法〟と呼ばれているような様々な物作り。これは必要に応じてシントもやってきているのだから理解できるわよね?』
「もちろん。わかります」
『第二は〝聖霊の創造物の変換〟よ。あなたが錬金術だと考えてやっていた私の木の実を使ったポーション作り、あれは〝錬金術〟ではなく〝神霊魔法〟だったの』
「そうなんですか? ひょっとして〝錬金術〟では……」
『私の木の実から回復薬なんて作れはしないわ。あなたは何気なしにやっていたのでしょうけど、すべて〝神霊魔法〟を使っていたのよ』
……知らない間にすごいことをしていたんですね。
ただの薬作りだとばかり思っていました。
『3番目、ここからが大切になってくるのだけど〝神霊魔法〟を使えば幻獣や精霊、妖精などの傷を直接回復することもできるわ。かなり魔力消耗が激しいから、私の実でできた回復薬を使った方が効率はいいのだけどね』
「……それってすごいことでは?」
『すごいことね。問題は4番目よ。〝神霊魔法〟を使えば幻獣たちの意思を無視して操れるようになるの。かなり魔力が必要になるけれど、いまのシントなら多少はできるわ』
「……それ、まずいのでは?」
『だから黙ってきたのよ。ほかにも私のような神樹などに力を与えて成長させるなどの能力もあるけれど省くわ。ともかく、〝神霊魔法〟とは幻獣や精霊、妖精にとって非常に助かるものであると同時に危険なものでもあるのよ。理解できたかしら?』
「嫌というほどに。説明しなかったのは僕がその〝強制従属の首輪〟などを作って悪用しないためですか?」
『それもあるけれど〝神霊魔法〟の存在は契約者だろうと守護者だろうと可能な限り秘密にしたかったのよ。あなたには私の生産物があるわけだし、単なる〝創造魔法〟として使ってくれていれば問題なかったのだから』
なるほど、確かに知る必要はありませんでした。
みんなの傷を癒すための治療薬はメイヤからもらった木の実で大量に作ってありますし、それが〝錬金術〟で作られているのか〝神霊魔法〟で作られているのかは些細な違い。
そう考えると僕やリンが〝神霊魔法〟の存在を知る意味などありませんからね。
ですが五大精霊たちまで出てきてその存在を明かしたのです。
必ず意味があるはず。
それを聞かなくては。
『とりあえず〝神霊魔法〟については理解してもらえたわね?』
「はい。理解できました」
「私もです、メイヤ様」
『ここからがさっきの〝強制従属の首輪〟に繋がってくるのだけれど……〝強制従属の首輪〟って〝神霊魔法〟による幻獣などへの強制支配能力の一部を首輪の形にして創造したものなのよ。つまり、〝王都〟には強制支配能力があるほどの〝神霊魔法〟使いがいると言うことになるわね』
「〝王都〟にそれほどの〝神霊魔法〟使いが?」
『もちろん、ヒト族が〝神霊魔法〟を知っているとは考えられない。でも、現実問題として〝強制従属の首輪〟は作られてしまっている。そこまで考えれば〝王都〟が行っている〝狩り〟の理由も見えてくるわ』
「幻獣などを支配することですか」
『そうね。でも、どうして急に今年になってから幻獣狩りまで始めたのかしら?』
『それについても調べが済んでいる』
「オニキス?」
『今年になってから幻獣に効果のある〝強制従属の首輪〟を作ることが可能な創造魔法使いが誕生したようだ。それに、金に目が眩んで対抗装備を作るエルフやドワーフも多数揃えているようだった。契約者や守護者はあまり好まないだろうが、その創造魔法使いを始末しない限り〝狩り〟は続くだろう』
「では、その創造魔法使いとやらは確実に殺さなければならないんですね?」
『ああ、そうなる。それから、〝王都〟で育てられている創造魔法使いたち。あれらも放置すれば同じような被害を生み出す存在になりかねないぞ?』
そう言えば昔に「創造魔法を覚えた子供たちは王都で一生を過ごすことになる」とかメイヤが言ってましたよね。
これが〝王都〟で創造魔法使いを集めていた真実……。
「ねえ、オニキス。その人たちを助けることはできない?」
『難しいな、リン。その者たちも子供の頃から〝強制従属の首輪〟を作るように教育されているのだ。放置すればいずれ同じことが繰り返される可能性がある以上、この機会に始末してしまった方がいい』
「そっか。あとは、対抗装備を作っているエルフやドワーフだね」
『俺に言わせればそれらも抹殺対象だ。幻獣や五大精霊にまで通用するような対抗装備を作れるヒト族の職人など我らからすれば害悪以外のなにものでもない。可能な範囲で始末してしまい、対抗装備に関する資料などがあればすべて廃棄する。ここまですれば、今後しばらくは安泰だろう』
「……だよね。私も神域の守護者なんだからヒト族よりの考え方は捨てなくちゃだめだよね」
『そこまでする必要もないのだが……今回ばかりは大掃除してしまうべきだろう。絶対目標は〝強制従属の首輪〟を作れる創造魔法使いの抹殺。ほかの創造魔法使いや対抗装備の生産者は可能な範囲で始末するべきと言うのが俺の考えだ』
『オニキスは物騒じゃけん。じゃが、儂も賛成じゃ。今回は〝王都〟のヒト族がやり過ぎちまっとる。幻獣や精霊を怒らせるとどうなるかを知らしめねばならん』
『私も賛成です。人殺しは好みませんが、今回ばかりは見過ごせない。場合によっては〝王都〟そのものを崩壊させることも考えるべきでしょう』
『私もその意見に賛成。関係ない人間たちを巻き込むのは気が引けるけど、ここまで来てしまったらもう無理。申し訳ないけれど嵐の中で死んでもらう』
『3人とも物騒じゃ。だが反対できぬな。ここまで幻獣や精霊、妖精に犠牲を出し、無理矢理従属させ、住処を使用できないように破壊しておる。大地の怒りも知ってもらうべき時だ』
『GIK』
『トルマリンも賛成だそうよ。あとはシントとリン、あなたたちの決断次第。それでこの神樹の里の全戦力が〝王都〟を襲撃するわ』
「……穏便に済ませる道などありませんね、メイヤ」
『私としても〝王都〟は潰すべきだと進言するわね。〝強制従属の首輪〟に〝対抗装備〟の存在は歴史から消してしまいたいもの。可能な限り、できる範囲で滅ぼすべきよ』
「わかりました。捕まっている者たちを可能な限り助けられる日を見つけ出し、その日に〝王都〟を襲います。リンも異存ありませんね?」
「もちろん! シントの護衛は守護者の私に任せてね!」
『決定ね。決行日はどれくらい先になるのかしら?』
『影の軍勢を総動員して情報を集めている。おそらく2週間ほど先だ』
『2週間、あまり余裕があるとも言い難いわ。シントやリンと契約している者たちはすぐに召喚できるけれど、そうじゃない者たちは移動に時間がかかるもの。もうすでに移動を開始してもらうべきね。協力してくれる者たちには』
『それがいい。ただし、気付かれないようにもしてもらわなければいけないがな』
『一時的にでもシントかリンと契約をしてもらう方がいいのかしら?』
『できればその方が望ましいだろう。話に応じてもらえれば一気に大軍団で〝王都〟を攻めることができる』
『そうね。シント、リン。これから避難してもらっているみんなに話を通して回るわよ。その上で一時的にでも契約を受け入れてもらえるなら契約しましょう。そして、当日〝王都〟の近辺か〝王都〟の中でみんなを召喚するの。そうすれば〝王都〟が混乱して捕まっている者たちを助けやすくなるわ。混乱に乗じてあなた方は〝強制従属の首輪〟を破壊して回りなさい。マインなら破壊用の道具も作れるわよね?』
『当然じゃ。作るのはふたり分か? 首輪は〝神霊魔法〟でできているに過ぎぬ。同じ〝神霊魔法〟の使い手であるシントならばいらぬのでは?』
『シントの魔力消費が心配よ。それに私たちが想定している以上にあちらの封印力が強かったら首輪の解除に時間がかかってしまうわ』
『わかった。破壊用の道具はふたつ……いや、予備も合わせて6つ用意しておく。儂が作っておくべきものは?』
『シントとリンが着て歩く鎧などを。フルプレートのような動きにくくなるようなものはだめ。急所だけを確実に防げる装備を用意して』
『承知した。ドワーフたちの力も借りて全力でことに備えよう。儂への望みは以上か?』
『ええ。すぐにでも取りかかり始めて』
『そうさせて頂こう。決行日までには立派な防具を仕上げてみせる。リンには新しい魔剣も用意しよう』
『そうね、リンには近接戦用の武器もあった方がいいかもね。よろしくお願いするわ』
『任された。では失礼する』
マインがこの場を立ち去り、オニキスは再び〝王都〟へと情報収集へ向かいました。
僕とリンはメイヤと一緒に戦える幻獣や精霊への呼びかけに。
どの幻獣も精霊も快く応じてくれ、一時的ならばと契約も受け入れてくれました。
あとは、僕たちの心構えと訓練のみ、失敗は許されません。
確実に襲撃を成功させなくては。
季節は秋から冬へと変わりました。
この国は冬、雪が降るのですがそんなことはお構いなしに〝狩り〟は実施されています。
これらの話はすでに幻獣や精霊、妖精などの間でも広まっており、影の軍勢の誰かが説明に行けば僕たちが出向かなくても神樹の里を目指すようになってくれました。
遠い場合は僕とリンが出向いて《ディメンション・ゲート》を使い招き入れますが、近くの場合は自分たちで来る方が早いらしいです。
あと、〝狩り〟の対象も森や草原、山、湖などだけではなく岩山や海なども狙い始めました。
そういう場所に住んでいた皆さんにも避難して頂きましたが、やはり平原と湖しかない神樹の里では過ごしにくいらしく、僕の創造魔法で岩山や海も造り上げそこに住んでもらいます。
田舎の森に会った辺境暮らしの僕では〝岩山〟や〝海〟をうまく再現できず、現地を何度も訪れてどのような場所かを調べながら何日もかけて造り上げたのですが、合格点はいただけましたし不満などがあればできる範囲で対応するとも伝えてあるので大丈夫でしょう。
そんな冬の生活も2カ月目に突入したある日、〝王都〟を調べていたオニキスから信じられないような報せが届きました。
「幻獣や精霊、妖精たちを売りに出す!?」
『どうもそうらしい。時期もつかんできた。我ら影の軍勢が見張っているので多少日時が前後しても影響は出ないだろう』
「影響は出ないって……オニキス、幻獣たちはそれに従うんですか?」
『……従わされる。強制従属の首輪をはめられているのを確認してしまった。あれでは人間どもに反抗できない』
「強制従属の首輪?」
『……メイヤ様』
『そうね。ここまで来てしまったら隠し立てするのも厳しくなってくるわね』
「メイヤ?」
「メイヤ様、なにかご存じなのでしょうか?」
『強制従属の首輪はね、創造魔法で作れるのよ』
「創造魔法で……」
『逆をいうと創造魔法でしか作れない。それをはめられればいくら強い幻獣でも反抗できなくなるわ』
「創造魔法とはそこまで凶悪な魔法だったのですか?」
『それは……』
メイヤが口ごもるなんて珍しい。
僕は便利な物作り魔法程度にしか考えていませんでしたが、幻獣などにはそこまで危険な魔法だったとは……。
『メイヤ様、シントなら悪いようには使わんじゃろ。すべてを話しちまうのはどうじゃい』
「ヴォルケーノボム? それにほかの五大精霊のみんなも」
声がしたほうを見ればヴォルケーノボムを初めとした五大精霊たちが勢揃いしていました。
すべてを話すとは一体?
『……そうね。シントなら悪いようには扱わないでしょう。よく聞きなさい』
「はい。なにか大事な話なんですね」
『ええ。〝創造魔法〟なんだけど、それはヒト族がつけた名前なのよ。聖霊の書に浮かび上がるからね。正式な名称は〝神霊魔法〟、極めれば〝聖霊〟の力の片鱗さえ扱える魔法なの』
「〝神霊魔法〟……それって昔、ホーリーフェンリルのハクガが言っていたような?」
『あれも相当長く生きているはずだから〝神霊魔法〟のことは気がついているはずよ。ここまでが前提知識。付いてくることができている?』
「はい、大丈夫です」
『では、〝神霊魔法〟でできることを説明するわ。第一に〝創造魔法〟と呼ばれているような様々な物作り。これは必要に応じてシントもやってきているのだから理解できるわよね?』
「もちろん。わかります」
『第二は〝聖霊の創造物の変換〟よ。あなたが錬金術だと考えてやっていた私の木の実を使ったポーション作り、あれは〝錬金術〟ではなく〝神霊魔法〟だったの』
「そうなんですか? ひょっとして〝錬金術〟では……」
『私の木の実から回復薬なんて作れはしないわ。あなたは何気なしにやっていたのでしょうけど、すべて〝神霊魔法〟を使っていたのよ』
……知らない間にすごいことをしていたんですね。
ただの薬作りだとばかり思っていました。
『3番目、ここからが大切になってくるのだけど〝神霊魔法〟を使えば幻獣や精霊、妖精などの傷を直接回復することもできるわ。かなり魔力消耗が激しいから、私の実でできた回復薬を使った方が効率はいいのだけどね』
「……それってすごいことでは?」
『すごいことね。問題は4番目よ。〝神霊魔法〟を使えば幻獣たちの意思を無視して操れるようになるの。かなり魔力が必要になるけれど、いまのシントなら多少はできるわ』
「……それ、まずいのでは?」
『だから黙ってきたのよ。ほかにも私のような神樹などに力を与えて成長させるなどの能力もあるけれど省くわ。ともかく、〝神霊魔法〟とは幻獣や精霊、妖精にとって非常に助かるものであると同時に危険なものでもあるのよ。理解できたかしら?』
「嫌というほどに。説明しなかったのは僕がその〝強制従属の首輪〟などを作って悪用しないためですか?」
『それもあるけれど〝神霊魔法〟の存在は契約者だろうと守護者だろうと可能な限り秘密にしたかったのよ。あなたには私の生産物があるわけだし、単なる〝創造魔法〟として使ってくれていれば問題なかったのだから』
なるほど、確かに知る必要はありませんでした。
みんなの傷を癒すための治療薬はメイヤからもらった木の実で大量に作ってありますし、それが〝錬金術〟で作られているのか〝神霊魔法〟で作られているのかは些細な違い。
そう考えると僕やリンが〝神霊魔法〟の存在を知る意味などありませんからね。
ですが五大精霊たちまで出てきてその存在を明かしたのです。
必ず意味があるはず。
それを聞かなくては。
『とりあえず〝神霊魔法〟については理解してもらえたわね?』
「はい。理解できました」
「私もです、メイヤ様」
『ここからがさっきの〝強制従属の首輪〟に繋がってくるのだけれど……〝強制従属の首輪〟って〝神霊魔法〟による幻獣などへの強制支配能力の一部を首輪の形にして創造したものなのよ。つまり、〝王都〟には強制支配能力があるほどの〝神霊魔法〟使いがいると言うことになるわね』
「〝王都〟にそれほどの〝神霊魔法〟使いが?」
『もちろん、ヒト族が〝神霊魔法〟を知っているとは考えられない。でも、現実問題として〝強制従属の首輪〟は作られてしまっている。そこまで考えれば〝王都〟が行っている〝狩り〟の理由も見えてくるわ』
「幻獣などを支配することですか」
『そうね。でも、どうして急に今年になってから幻獣狩りまで始めたのかしら?』
『それについても調べが済んでいる』
「オニキス?」
『今年になってから幻獣に効果のある〝強制従属の首輪〟を作ることが可能な創造魔法使いが誕生したようだ。それに、金に目が眩んで対抗装備を作るエルフやドワーフも多数揃えているようだった。契約者や守護者はあまり好まないだろうが、その創造魔法使いを始末しない限り〝狩り〟は続くだろう』
「では、その創造魔法使いとやらは確実に殺さなければならないんですね?」
『ああ、そうなる。それから、〝王都〟で育てられている創造魔法使いたち。あれらも放置すれば同じような被害を生み出す存在になりかねないぞ?』
そう言えば昔に「創造魔法を覚えた子供たちは王都で一生を過ごすことになる」とかメイヤが言ってましたよね。
これが〝王都〟で創造魔法使いを集めていた真実……。
「ねえ、オニキス。その人たちを助けることはできない?」
『難しいな、リン。その者たちも子供の頃から〝強制従属の首輪〟を作るように教育されているのだ。放置すればいずれ同じことが繰り返される可能性がある以上、この機会に始末してしまった方がいい』
「そっか。あとは、対抗装備を作っているエルフやドワーフだね」
『俺に言わせればそれらも抹殺対象だ。幻獣や五大精霊にまで通用するような対抗装備を作れるヒト族の職人など我らからすれば害悪以外のなにものでもない。可能な範囲で始末してしまい、対抗装備に関する資料などがあればすべて廃棄する。ここまですれば、今後しばらくは安泰だろう』
「……だよね。私も神域の守護者なんだからヒト族よりの考え方は捨てなくちゃだめだよね」
『そこまでする必要もないのだが……今回ばかりは大掃除してしまうべきだろう。絶対目標は〝強制従属の首輪〟を作れる創造魔法使いの抹殺。ほかの創造魔法使いや対抗装備の生産者は可能な範囲で始末するべきと言うのが俺の考えだ』
『オニキスは物騒じゃけん。じゃが、儂も賛成じゃ。今回は〝王都〟のヒト族がやり過ぎちまっとる。幻獣や精霊を怒らせるとどうなるかを知らしめねばならん』
『私も賛成です。人殺しは好みませんが、今回ばかりは見過ごせない。場合によっては〝王都〟そのものを崩壊させることも考えるべきでしょう』
『私もその意見に賛成。関係ない人間たちを巻き込むのは気が引けるけど、ここまで来てしまったらもう無理。申し訳ないけれど嵐の中で死んでもらう』
『3人とも物騒じゃ。だが反対できぬな。ここまで幻獣や精霊、妖精に犠牲を出し、無理矢理従属させ、住処を使用できないように破壊しておる。大地の怒りも知ってもらうべき時だ』
『GIK』
『トルマリンも賛成だそうよ。あとはシントとリン、あなたたちの決断次第。それでこの神樹の里の全戦力が〝王都〟を襲撃するわ』
「……穏便に済ませる道などありませんね、メイヤ」
『私としても〝王都〟は潰すべきだと進言するわね。〝強制従属の首輪〟に〝対抗装備〟の存在は歴史から消してしまいたいもの。可能な限り、できる範囲で滅ぼすべきよ』
「わかりました。捕まっている者たちを可能な限り助けられる日を見つけ出し、その日に〝王都〟を襲います。リンも異存ありませんね?」
「もちろん! シントの護衛は守護者の私に任せてね!」
『決定ね。決行日はどれくらい先になるのかしら?』
『影の軍勢を総動員して情報を集めている。おそらく2週間ほど先だ』
『2週間、あまり余裕があるとも言い難いわ。シントやリンと契約している者たちはすぐに召喚できるけれど、そうじゃない者たちは移動に時間がかかるもの。もうすでに移動を開始してもらうべきね。協力してくれる者たちには』
『それがいい。ただし、気付かれないようにもしてもらわなければいけないがな』
『一時的にでもシントかリンと契約をしてもらう方がいいのかしら?』
『できればその方が望ましいだろう。話に応じてもらえれば一気に大軍団で〝王都〟を攻めることができる』
『そうね。シント、リン。これから避難してもらっているみんなに話を通して回るわよ。その上で一時的にでも契約を受け入れてもらえるなら契約しましょう。そして、当日〝王都〟の近辺か〝王都〟の中でみんなを召喚するの。そうすれば〝王都〟が混乱して捕まっている者たちを助けやすくなるわ。混乱に乗じてあなた方は〝強制従属の首輪〟を破壊して回りなさい。マインなら破壊用の道具も作れるわよね?』
『当然じゃ。作るのはふたり分か? 首輪は〝神霊魔法〟でできているに過ぎぬ。同じ〝神霊魔法〟の使い手であるシントならばいらぬのでは?』
『シントの魔力消費が心配よ。それに私たちが想定している以上にあちらの封印力が強かったら首輪の解除に時間がかかってしまうわ』
『わかった。破壊用の道具はふたつ……いや、予備も合わせて6つ用意しておく。儂が作っておくべきものは?』
『シントとリンが着て歩く鎧などを。フルプレートのような動きにくくなるようなものはだめ。急所だけを確実に防げる装備を用意して』
『承知した。ドワーフたちの力も借りて全力でことに備えよう。儂への望みは以上か?』
『ええ。すぐにでも取りかかり始めて』
『そうさせて頂こう。決行日までには立派な防具を仕上げてみせる。リンには新しい魔剣も用意しよう』
『そうね、リンには近接戦用の武器もあった方がいいかもね。よろしくお願いするわ』
『任された。では失礼する』
マインがこの場を立ち去り、オニキスは再び〝王都〟へと情報収集へ向かいました。
僕とリンはメイヤと一緒に戦える幻獣や精霊への呼びかけに。
どの幻獣も精霊も快く応じてくれ、一時的ならばと契約も受け入れてくれました。
あとは、僕たちの心構えと訓練のみ、失敗は許されません。
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そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
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