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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第十章 村の病を治療せよ

95. 村に流行った奇病

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 私とローレンさんが席に着くと参加者はこれで出そろったみたい。
 冒険者ギルドマスターが代表して進行を始めたよ。

「集まっていただき感謝する。今日の議題だが、『近隣の村から寄せられた依頼について』だ」

「村からの依頼……それって私たちに関係があるんですか?」

「まあ、待ってくれ、ノヴァ。これから詳しい内容を話す」

「わかりました」

 うーん、冒険者ギルドに持ち込まれた依頼なら冒険者さんたちが解決するはずなんだけど、どういうことだろう?
 とりあえず、話の続きを聞いてみよう。

「ノヴァとローレンは初めてだから詳しく経緯を話す。この依頼がもたらされたのは一カ月。依頼主はこの街から徒歩で半日ほど離れた村の村長だ」

 ふむ。
 魔物退治でも依頼してきたのかな?
 でも、それだと私とローレンさんは関係ないような。

「依頼内容はこうだ。『村で流行っている奇病の治療を頼みたい』と」

「奇病の治療?」

「ああ、そうだ。はっきり言って依頼額と危険度が見合わない依頼だったから普通は受けない。ただ、奇病となると村から街へ持ち込まれる可能性もある。それを考慮して受けることとなった」

「なるほど。その時はどうだったんですか?」

「街の医師を連れて冒険者たちが向かったときには、ほとんどの村人が衰弱して食事さえままならない状態だったそうだ。医師も懸命に手を尽くしたがその村は全滅。子供ひとり救えなかった」

 ひどい、そこまでの病気が流行っているだなんて。
 ん?
 流行病?

「あの、その病ってその時の冒険者さんや医師さんからこの街に持ち込まれていませんか?」

「その可能性を考慮して彼らには街の外で二週間過ごしてもらった。だが、健康状態に問題なし。徹底して魔法で消毒を行いこの街の中へと戻っている」

「それならよかった。だけど、私たちが呼ばれた理由ってその病の原因を探ることですか?」

「そう慌てないでくれ。冒険者たちが街の中に戻った三日後くらいだったか、今度は別の村から奇病の解決依頼が持ち込まれた。そして、今回も冒険者や医師が派遣されたが間に合わず村が壊滅する事態となったのだ」

 村がふたつも壊滅。
 それって由々しき事態だよね。
 なにか糸口はないのかな?

「ギルドマスター様、発言の許可を」

「なんだ、ローレン」

「そのふたつの村で起きていた奇病は同じ物だったのでしょうか?」

「症状はそっくりだったと医師から報告を受けている。高熱と吐き気、頭痛、めまい、食欲不振、些細なことでの出血。村から助けを呼びに来たものは症状を発症する前の者だ」

「その方々はそのあと症状を発症しましたか?」

「いや、発症していない。それがなにか?」

「いえ、それでしたら原因は食事にあるのかと考えまして」

「食事……食料か水が汚染されている可能性か。医師や冒険者たちは現地の水や食料には手をつけないように厳命してあったからな。その可能性が大きいか」

「はい。ですが、そうなると、なぜ別々の村でそれらの病が流行ったかの理由に見当がつきません」

「ううむ……」

 さすがはローレンさん、経験豊富だ。
 病気の原因を考えついちゃうんだもん。
 でも、どうしてふたつの村で同じ病気が流行っちゃったのかな?

「ギルドマスター様、それらの村はこの街へと近づいてくる気配なのですか?」

「いや。むしろ遠ざかっている。……まさか!?」

「はい。私は魔物の仕業ではないかと考えております。そうなると魔物の進行方向で同じ病が発生していることでしょう。先手を打って治療部隊を出しておけば村が壊滅することを防げるかも知れません」

 魔物って病気を流行らせる相手もいるんだ。
 またひとつ勉強になった。
 いまはそれどころじゃないけどね。
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