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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第八章 若木の精霊
87. 樹木の精霊のいる場所へ
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お母さんの用事はアストリートさんに樹木の精霊を契約させることだったみたい。
でも、どうして急にそんなことを?
「あの、樹木の精霊とは?」
『ああ、古木の精霊よ。彼が守護する精霊たちの中で、ヒト族の街で暮らしてもいいという聖霊を見つけることができたの』
「ああ、いえ、そうではなく。なぜ私と精霊様が契約を?」
『そっちね。あなたは医師を目指すんでしょう? なら草花の精霊か妖精とは契約しておくと便利かと思ったの。そういった存在に聞けば薬効も教えてくれるわ。他にも薬草を育てるとき力も貸してくれるはずだし、損はないと思うけど』
ふーん、草花の精霊や妖精ってそんなことができるんだ。
それなら契約しておいた方がいいよね。
でも、アストリートさんはちょっと悩んでいるみたい。
なんでかな?
「その、私が契約してもよろしいのでしょうか? ローレンが契約した方がなにかと都合がよいと思いますが」
『あら、私はあなたのために探してきたの。他の人が契約することなんて考えていないわ。どうする? 契約する? 断る?』
お母さんってばせっかちだなぁ。
少しくらい考えさせてあげればいいのに。
でも、ここでローレンさんが割り込むように助言をしてくれた。
「アストリート様、この誘い、受けるべきです」
「ローレン?」
「薬草を扱う者にとって草花の精霊や樹木の精霊と接することの出来る機会は好機なのです。フラッシュリンクス様のおっしゃる通り、薬草の知識と栽培方法の知識、両方が手に入りますからね。この機会を逃せば契約することは叶わないでしょう」
「なるほど。わかりました。フラッシュリンクス様、その契約を受けさせてください」
『決心がついたようで助かるわ。それでは外に出ましょう。精霊たちのいる森まで飛んでいくわ』
「飛んでいく?」
『私の背に乗ればいいのよ。さあ、行くわよ』
「あ、フラッシュリンクス様! お待ちください!」
アストリートさんってば、お母さんに乗っていくって聞いたらまた慌てだした。
聖獣の背に乗るってそんな特別な意味でもあるのかな?
とりあえず、アストリートさんは出ていってしまったし、倒れているヘレネさんのことをローレンさんに頼んで私も外に出る。
そこではお母さんの背にまたがったアストリートさんがこちらをじっと見つめていた。
なにかあったのかな?
「お母さん、精霊たちのところに行くんじゃなかったの?」
『あなた待ちよ。あなたもついてきなさい』
「私も契約するの?」
『あなたはシシとの契約があるから契約できないけれど、どのように暮らしているのかくらいは見ておいた方が勉強になるわ』
なるほど、私の勉強のためか。
じゃあ、行くしかないよね!
「わかった! 行こう、シシ!」
「にゃうん!」
私とシシはアストリートさんの前に乗り、出発を待つ。
お母さんも私たちがしっかり乗ったことを確認すると空へと舞い上がっていった。
「お母さん。樹木の精霊がいる場所って遠いの?」
『ここからだとちょっと距離があるかしら? でも、私の巣よりは近いわね』
「そっか。アストリートさんも落ちないように気を付けてね。暴れなければ落ちないらしいけど」
「は、はい!」
『話は済んだ? それじゃあ、行くわよ』
お母さんは炎をまとい、火の玉となって空を駆け始めた。
山も川も谷もびゅんびゅん後ろに飛んでいくからやっぱり面白い。
後ろを見ると、アストリートさんは目をつぶって顔を背けている。
そんなに怖がらなくてもいいのに。
お母さんがしばらく空を駆け抜けると、見渡す限りの大森林の上まで到着した。
お母さんはその中でも一番背の高い木の根元に着陸するみたい。
この木が古木の精霊さんなのかな?
『着いたわ。ここが精霊たちの住む森よ』
「ここがそうなんだ。あの一番背の高い木が古木の精霊さん?」
『そうね。あれに宿っているのが古木の精霊よ。でも、いまは眠っているみたい。古木の精霊、起きなさい!』
お母さんの咆吼が森の中に木魂した。
すると、木の中から背の高い老人の姿をしたなにかが出てきたよ。
彼が古木の精霊かな?
『騒がしいな、フラッシュリンクスよ。もう少しマシな起こし方があるじゃろう』
『これが一番早いでしょう? それよりも私の娘たちと今回契約させたい娘を連れてきたわ』
『ふむ。背の低い方がお前の娘か? 炎翼族とは変わっているのう』
『やっぱり珍しいのね。もとは人間族で、末っ子のシシと契約したら種族変化まで起こしたのだけど』
『ほう、それもまた興味深い。少し話をしてみたいが、いまは契約の方を優先しよう。お前たち、姿を見せよ』
古木の精霊がそう命じると、私たちの周りにたくさんの光る人や小さな花を頭につけた小人が現れた。
この人たちが精霊さんや妖精さんなのかな?
アストリートさんはどんな精霊さんと契約するんだろう。
ワクワクするね。
でも、どうして急にそんなことを?
「あの、樹木の精霊とは?」
『ああ、古木の精霊よ。彼が守護する精霊たちの中で、ヒト族の街で暮らしてもいいという聖霊を見つけることができたの』
「ああ、いえ、そうではなく。なぜ私と精霊様が契約を?」
『そっちね。あなたは医師を目指すんでしょう? なら草花の精霊か妖精とは契約しておくと便利かと思ったの。そういった存在に聞けば薬効も教えてくれるわ。他にも薬草を育てるとき力も貸してくれるはずだし、損はないと思うけど』
ふーん、草花の精霊や妖精ってそんなことができるんだ。
それなら契約しておいた方がいいよね。
でも、アストリートさんはちょっと悩んでいるみたい。
なんでかな?
「その、私が契約してもよろしいのでしょうか? ローレンが契約した方がなにかと都合がよいと思いますが」
『あら、私はあなたのために探してきたの。他の人が契約することなんて考えていないわ。どうする? 契約する? 断る?』
お母さんってばせっかちだなぁ。
少しくらい考えさせてあげればいいのに。
でも、ここでローレンさんが割り込むように助言をしてくれた。
「アストリート様、この誘い、受けるべきです」
「ローレン?」
「薬草を扱う者にとって草花の精霊や樹木の精霊と接することの出来る機会は好機なのです。フラッシュリンクス様のおっしゃる通り、薬草の知識と栽培方法の知識、両方が手に入りますからね。この機会を逃せば契約することは叶わないでしょう」
「なるほど。わかりました。フラッシュリンクス様、その契約を受けさせてください」
『決心がついたようで助かるわ。それでは外に出ましょう。精霊たちのいる森まで飛んでいくわ』
「飛んでいく?」
『私の背に乗ればいいのよ。さあ、行くわよ』
「あ、フラッシュリンクス様! お待ちください!」
アストリートさんってば、お母さんに乗っていくって聞いたらまた慌てだした。
聖獣の背に乗るってそんな特別な意味でもあるのかな?
とりあえず、アストリートさんは出ていってしまったし、倒れているヘレネさんのことをローレンさんに頼んで私も外に出る。
そこではお母さんの背にまたがったアストリートさんがこちらをじっと見つめていた。
なにかあったのかな?
「お母さん、精霊たちのところに行くんじゃなかったの?」
『あなた待ちよ。あなたもついてきなさい』
「私も契約するの?」
『あなたはシシとの契約があるから契約できないけれど、どのように暮らしているのかくらいは見ておいた方が勉強になるわ』
なるほど、私の勉強のためか。
じゃあ、行くしかないよね!
「わかった! 行こう、シシ!」
「にゃうん!」
私とシシはアストリートさんの前に乗り、出発を待つ。
お母さんも私たちがしっかり乗ったことを確認すると空へと舞い上がっていった。
「お母さん。樹木の精霊がいる場所って遠いの?」
『ここからだとちょっと距離があるかしら? でも、私の巣よりは近いわね』
「そっか。アストリートさんも落ちないように気を付けてね。暴れなければ落ちないらしいけど」
「は、はい!」
『話は済んだ? それじゃあ、行くわよ』
お母さんは炎をまとい、火の玉となって空を駆け始めた。
山も川も谷もびゅんびゅん後ろに飛んでいくからやっぱり面白い。
後ろを見ると、アストリートさんは目をつぶって顔を背けている。
そんなに怖がらなくてもいいのに。
お母さんがしばらく空を駆け抜けると、見渡す限りの大森林の上まで到着した。
お母さんはその中でも一番背の高い木の根元に着陸するみたい。
この木が古木の精霊さんなのかな?
『着いたわ。ここが精霊たちの住む森よ』
「ここがそうなんだ。あの一番背の高い木が古木の精霊さん?」
『そうね。あれに宿っているのが古木の精霊よ。でも、いまは眠っているみたい。古木の精霊、起きなさい!』
お母さんの咆吼が森の中に木魂した。
すると、木の中から背の高い老人の姿をしたなにかが出てきたよ。
彼が古木の精霊かな?
『騒がしいな、フラッシュリンクスよ。もう少しマシな起こし方があるじゃろう』
『これが一番早いでしょう? それよりも私の娘たちと今回契約させたい娘を連れてきたわ』
『ふむ。背の低い方がお前の娘か? 炎翼族とは変わっているのう』
『やっぱり珍しいのね。もとは人間族で、末っ子のシシと契約したら種族変化まで起こしたのだけど』
『ほう、それもまた興味深い。少し話をしてみたいが、いまは契約の方を優先しよう。お前たち、姿を見せよ』
古木の精霊がそう命じると、私たちの周りにたくさんの光る人や小さな花を頭につけた小人が現れた。
この人たちが精霊さんや妖精さんなのかな?
アストリートさんはどんな精霊さんと契約するんだろう。
ワクワクするね。
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