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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第一章 公爵様からの緊急呼び出し
53. ユーシュリア公爵邸へ
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領都までの道程は途中の悪天候とそれに伴う道の悪化によって十二日かかった。
それでも、普通あれだけ悪天候に見舞われたら四週間くらいはかかる道程らしいので、かなり無理をして進んで来た結果だろう。
道の向こうに見えてきた領都オケストリアムは街壁がふたつあるように見える。
なんでだろう。
それをアーテルさんに聞いたらすぐに答えが返ってきた。
「オケストリアムは元々小さな国家の王都があった場所なんだよ。だから街の中心部にはお城が建っていたのさ」
「お城ですか!?」
「まあ、もう何百年も前に国が滅んで、城も使えなくなったんで放置されてたわけだが。その城跡に屋敷を建てて住むことになったのが俺の一族ってわけだ」
「そうなんですね。勉強になりました」
「そうか。ともかく、街壁がふたつあるのは外側が街を守るための街壁、内側は元城を守るための城壁の名残だ。いまでも城壁は使えるように整備されているぜ」
「城壁って役に立つんですか?」
「知らん。コソ泥除けにはなっているだろうが、オケストリアムが魔物に侵攻されたことなんて百年以上ないはずだからな。百年前となると俺の一族がこの街を治め始めた頃だし、その前がどうだったかは街の資料館にでも行かないとわからないぞ」
へぇ、そうなんだ。
古い街って歴史があるものなんだね。
フルートリオンにも調べればそういった歴史があるものなのかな?
私たちが話をしている間も馬車は走り続け、街門へとたどり着いた。
街門には審査待ちの人が列を作って順番が来るのを待っている。
でも、私たちの馬車は、その横にある門で簡単に調べられたあと、そのまま街中へと通された。
なんでも、大きな街には貴族や軍などの専用門があるらしく、いま使ったのがそれらしい。
順番待ちをしている人たちにはなんだか申し訳ないなと思いつつ、病人の元にも急がなくちゃいけないっていうジレンマがね。
街中に入ってもオケストリアムの街とフルートリオンはまったく違う。
なんて言うか、オケストリアムの方が街の建物が高い気がする。
フルートリオンだと三階建ての建物は冒険者ギルドくらいしかないのに、オケストリアムだと三階建ての建物がたくさんある。
四階建てや五階建ての建物だってあるんだから、領都ってすごいところなんだね。
私には雑貨屋があるし、錬金術のお薬が売れるのもフルートリオンの街だけだからフルートリオンを出るつもりはない。
でも、都会って刺激的かも。
馬車は街の中をさらに中心部へと向けて進んでいき、ふたつ目の街壁を抜けて街の最奥部へと到着した。
そこにあったのは大きなお屋敷。
お屋敷以外にもいろいろとあるけれど、どれくらいの人がここに住んで暮らしているんだろう?
「ノヴァ様、到着いたしました。ここがユーシュリア公爵の屋敷です」
向かいに座っているナーヒさんの言葉で我に返った。
いけない、ぼんやりお屋敷を眺めている場合じゃなかった。
私はここで病人を治療するためにやってきたんだものね。
「ありがとうございます、ナーヒさん。それで、このあとはどうすればいいのでしょう?」
「先触れの兵は既に出ております。このままアーテル殿とお屋敷にお入りください。私の役目はここまでです」
「わかりました。送っていただきありがとうございました」
「いえ。ユーシュリア公爵のご子息をよろしくお願いいたします」
私とシシ、それからアーテルさんが馬車から降りると、私たちが乗っていた馬車はそのまま走り去って行った。
私はアーテルさんの案内でお屋敷の方へと向かう。
お屋敷の前にも鎧に身を包んだ騎士の人が見張りに立っていた。
「おお、お戻りですか、アーテル様!」
「ああ。錬金術士を父さんが必要だと聞いてな。案内して帰ってきた」
「錬金術師様というのはそちらの少女ですか?」
「ああ。見た目は子供だが知識量と腕前は保証できる」
「わかりました。公爵様からの許可も出ておりますのでお通りください」
「おう。それじゃあ、行こうぜ、ノヴァ、シシ」
「はい。お仕事お疲れ様です」
「にゃうにゃ」
門を通り抜けるときれいな前庭が広がっており、そこも通り抜けると屋敷の前でひとりの青年が待ち構えていた。
誰だろう、この人?
「お待ちしておりました。ノヴァ様、シシ様、アーテル様」
「はい?」
「ああ、名乗り遅れました。私、グラシアノ坊ちゃまの執事でパブロと申します」
この人はパブロさんって言うんだ。
グラシアノ坊ちゃまって誰だろう?
「お前はパブロって言うのか。グラシアノの容態はどうなんだ?」
「はい、アーテル様。ナーヒ様におふたりを迎えに言ってもらいになっている間も一向によくなっておりません。むしろ、悪化の一途をたどっております」
「そうか……ノヴァ、グラシアノっていうのが俺の弟なんだ。治療を頼めるか?」
なるほど、グラシアノって人が病人なんだね。
よし、引き受けよう!
「わかりました。私はどうすればいいですか?」
「引き受けてくださりありがとうございます。ですが、しばらく控え室でお待ちください」
「控え室で? 早くグラシアノを治療した方がいいんじゃないのか?」
「その、申し上げにくいのですが、いま神殿の方々がグラシアノ様の治療に来ております。錬金術士と鉢合わせになるのはまずいかと」
「確かにそれはよくないな。わかった、神殿連中が帰るまで俺たちは控え室で待たせてもらう。いいな、ノヴァ?」
「わかりました。なるべく早くお願いします」
「私としてもなるべく早くグラシアノ坊ちゃまを診察していただきたいのですが、何分、神殿の方々も治療に躍起になっており。申し訳ありませんがしばしお待ちを」
神殿の人たちもそんなに心配しているんだ。
私も頑張って治療しなくっちゃ!
それでも、普通あれだけ悪天候に見舞われたら四週間くらいはかかる道程らしいので、かなり無理をして進んで来た結果だろう。
道の向こうに見えてきた領都オケストリアムは街壁がふたつあるように見える。
なんでだろう。
それをアーテルさんに聞いたらすぐに答えが返ってきた。
「オケストリアムは元々小さな国家の王都があった場所なんだよ。だから街の中心部にはお城が建っていたのさ」
「お城ですか!?」
「まあ、もう何百年も前に国が滅んで、城も使えなくなったんで放置されてたわけだが。その城跡に屋敷を建てて住むことになったのが俺の一族ってわけだ」
「そうなんですね。勉強になりました」
「そうか。ともかく、街壁がふたつあるのは外側が街を守るための街壁、内側は元城を守るための城壁の名残だ。いまでも城壁は使えるように整備されているぜ」
「城壁って役に立つんですか?」
「知らん。コソ泥除けにはなっているだろうが、オケストリアムが魔物に侵攻されたことなんて百年以上ないはずだからな。百年前となると俺の一族がこの街を治め始めた頃だし、その前がどうだったかは街の資料館にでも行かないとわからないぞ」
へぇ、そうなんだ。
古い街って歴史があるものなんだね。
フルートリオンにも調べればそういった歴史があるものなのかな?
私たちが話をしている間も馬車は走り続け、街門へとたどり着いた。
街門には審査待ちの人が列を作って順番が来るのを待っている。
でも、私たちの馬車は、その横にある門で簡単に調べられたあと、そのまま街中へと通された。
なんでも、大きな街には貴族や軍などの専用門があるらしく、いま使ったのがそれらしい。
順番待ちをしている人たちにはなんだか申し訳ないなと思いつつ、病人の元にも急がなくちゃいけないっていうジレンマがね。
街中に入ってもオケストリアムの街とフルートリオンはまったく違う。
なんて言うか、オケストリアムの方が街の建物が高い気がする。
フルートリオンだと三階建ての建物は冒険者ギルドくらいしかないのに、オケストリアムだと三階建ての建物がたくさんある。
四階建てや五階建ての建物だってあるんだから、領都ってすごいところなんだね。
私には雑貨屋があるし、錬金術のお薬が売れるのもフルートリオンの街だけだからフルートリオンを出るつもりはない。
でも、都会って刺激的かも。
馬車は街の中をさらに中心部へと向けて進んでいき、ふたつ目の街壁を抜けて街の最奥部へと到着した。
そこにあったのは大きなお屋敷。
お屋敷以外にもいろいろとあるけれど、どれくらいの人がここに住んで暮らしているんだろう?
「ノヴァ様、到着いたしました。ここがユーシュリア公爵の屋敷です」
向かいに座っているナーヒさんの言葉で我に返った。
いけない、ぼんやりお屋敷を眺めている場合じゃなかった。
私はここで病人を治療するためにやってきたんだものね。
「ありがとうございます、ナーヒさん。それで、このあとはどうすればいいのでしょう?」
「先触れの兵は既に出ております。このままアーテル殿とお屋敷にお入りください。私の役目はここまでです」
「わかりました。送っていただきありがとうございました」
「いえ。ユーシュリア公爵のご子息をよろしくお願いいたします」
私とシシ、それからアーテルさんが馬車から降りると、私たちが乗っていた馬車はそのまま走り去って行った。
私はアーテルさんの案内でお屋敷の方へと向かう。
お屋敷の前にも鎧に身を包んだ騎士の人が見張りに立っていた。
「おお、お戻りですか、アーテル様!」
「ああ。錬金術士を父さんが必要だと聞いてな。案内して帰ってきた」
「錬金術師様というのはそちらの少女ですか?」
「ああ。見た目は子供だが知識量と腕前は保証できる」
「わかりました。公爵様からの許可も出ておりますのでお通りください」
「おう。それじゃあ、行こうぜ、ノヴァ、シシ」
「はい。お仕事お疲れ様です」
「にゃうにゃ」
門を通り抜けるときれいな前庭が広がっており、そこも通り抜けると屋敷の前でひとりの青年が待ち構えていた。
誰だろう、この人?
「お待ちしておりました。ノヴァ様、シシ様、アーテル様」
「はい?」
「ああ、名乗り遅れました。私、グラシアノ坊ちゃまの執事でパブロと申します」
この人はパブロさんって言うんだ。
グラシアノ坊ちゃまって誰だろう?
「お前はパブロって言うのか。グラシアノの容態はどうなんだ?」
「はい、アーテル様。ナーヒ様におふたりを迎えに言ってもらいになっている間も一向によくなっておりません。むしろ、悪化の一途をたどっております」
「そうか……ノヴァ、グラシアノっていうのが俺の弟なんだ。治療を頼めるか?」
なるほど、グラシアノって人が病人なんだね。
よし、引き受けよう!
「わかりました。私はどうすればいいですか?」
「引き受けてくださりありがとうございます。ですが、しばらく控え室でお待ちください」
「控え室で? 早くグラシアノを治療した方がいいんじゃないのか?」
「その、申し上げにくいのですが、いま神殿の方々がグラシアノ様の治療に来ております。錬金術士と鉢合わせになるのはまずいかと」
「確かにそれはよくないな。わかった、神殿連中が帰るまで俺たちは控え室で待たせてもらう。いいな、ノヴァ?」
「わかりました。なるべく早くお願いします」
「私としてもなるべく早くグラシアノ坊ちゃまを診察していただきたいのですが、何分、神殿の方々も治療に躍起になっており。申し訳ありませんがしばしお待ちを」
神殿の人たちもそんなに心配しているんだ。
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