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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第九章 森と魔物の異変
46. 冒険者ギルド、強襲
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警鐘は止むことを知らず鳴り響いている。
やがて、街中を調べ終わったのかアーテルさんたちが戻ってきた。
アーテルさんはミカさんと話しているけど、声はここまで届かない。
なにを話しているか気になるけど、仕方がないよね。
アーテルさんがミカさんと話し終わると、ミカさんはすぐさま別の場所へと駆け出していった。
それと同時に、アーテルさんもほかの冒険者さんたちに指示を出し、わたしたち街の住人を取り囲んだ。
この冒険者さんたちはわたしたちの守りについてくれるんだ。
アーテルさんにお礼を言いたいけれど、アーテルさんは遠く離れたところでじっと冒険者ギルドの入り口をにらんでいる。
それだけ冒険者ギルドの守りに注意を払っているんだね。
やっぱりお礼を言いたいけれど、守りについている冒険者さんたちの輪の中から出たら邪魔だよね。
落ち着いてからにしよう。
その後もずっと警鐘は鳴り響いていた。
冒険者さんたちもだけど街の人たちもピリピリしている。
スピカさんもずっと緊張していて、額に汗がにじんでいる。
こんなときはどうすればいいのかな?
わたしにはまだわかんないや。
やがて、鳴り響いていた警鐘が聞こえなくなった。
緊急事態も終わりなのかな?
冒険者さんたちも肩の力を抜いてリラックスしているよ。
でも、アーテルさんだけは違った。
むしろ、さらに緊張感の度合いを増し、冒険者さんたちに向けて怒鳴りつけた。
「お前ら、なに気を抜いている! まだ非常事態は終わってないぞ!」
「アーテルさん? でも、警鐘は鳴り止んで」
「バカを言うな! 警鐘が鳴り止むなら、鳴り止むときの合図を鳴らすことになっている! それもなしに鳴り止んだってことは、鐘楼が魔物の手に落ちたんだよ! 街の連中も含めて密集陣形を取れ!」
「は、はい!」
どうやら、警鐘には終わるときの合図もあったみたい。
それもなしにいきなり警鐘が終わったことでアーテルさんは警戒を強めたんだね。
いろいろとためになるよ。
冒険者さんたちの指示によりさらに密集されたわたしたち一般市民は、窮屈な思いをしながらもこの警戒態勢が解かれる時を待った。
子供やお年寄りは陣形の真ん中付近に押し込まれたから、わたしだと周りの様子をなにもうかがえないんだよね。
わたしだって一人前なのに!
そのまま時が経つのを待ち、しばらくすると、窓を蹴破る激しい音が複数聞こえた。
一般市民からは激しい叫び声が上がったけどなにがあったのかな?
「クソッ! 窓を破られたか!」
「正面玄関前以外は冒険者を配置する余裕がなかったんだ! 仕方がないだろう!」
冒険者さんたちの声が聞こえるけど、わたしはそんなに慌ててない。
それよりも、周りのみんなが慌てていることが気になる。
どうすれば落ち着いてくれるかな?
わたしが考えをめぐらせている間にも状況はだんだん悪くなっていく。
なにか礫みたいなものが飛んできて灯りを消していくんだ。
通路は真っ暗になっちゃったし、わたしたちが集まっているエントランスホールも暖炉の火が付いているだけで薄暗い。
街の人たちも冒険者さんたちも慌てだしたね。
「うろたえるな! いまのは魔法の礫だ! 襲ってきたのはおそらくグレムリン、想像通り妖魔族だ!」
アーテルさんの叫び声で冒険者さんたちは気を取り直した。
妖魔族って魔物の種類かな?
その間にも暗くなった廊下には、なにかが廊下をひた走る足音が響いてきていてなんだか不気味。
冒険者さんたちは取り乱していないけど、一般市民はそれだけでも恐怖して怯えてしまう。
わたしは平気なんだけど、スピカさんも怯えているし、わたしが変わっているのかな?
「グギャラエェ!」
「チッ! グレムリンだ!」
「気を付けろ! やつらは夜目が利く上に弱いものを優先的に襲う! 簡単な魔法も使うから気を抜くな!」
「はい!」
冒険者ギルド内に残っていた数人の冒険者さんたちが、グレムリンという背のちびっこい人型の魔物に応戦する。
でも、暗くてよく見えないせいで上手く戦えていないみたい。
こんなときはわたしの出番だよね!
「いくよ! 〈ライト〉!」
「グギャ!?」
「なんだ!?」
わたしが産みだした光源によって、周囲が明るく昼間のように照らされる。
でも、これのせいで、グレムリンとかいう魔物だけじゃなく、冒険者さんたちも動きが止まっちゃったね。
残念。
「これは……おそらくノヴァの支援魔法だ! グレムリンの優位もこれで潰せる! 早くグレムリンを倒してしまえ!」
「は、はい!」
「グギャギャガ!」
暗闇を明るく照らされたことに怒ったのか、グレムリンという魔物の攻撃が一層激しくなったみたい。
でも、その程度では冒険者さんたちも怯むことなく対処してグレムリンの数を減らして行ったね。
さすがは強いなぁ。
一匹、また一匹と数を減らしていくけどグレムリンは次々と廊下から飛び出してくる。
どうなっているのかな?
冒険者さんたちも疲れ始めているみたいだし、このままだとまずいかも。
「どうなっているの! グレムリンをいくら倒してもきりがないじゃない!?」
冒険者さんたちの誰かが叫び声を上げた。
でも、それに対応したのはやっぱりアーテルさんだった。
「うろたえるな! グレムリンが何匹現れようと俺たちには街を守り抜く義務がある! 冒険者が普段自由に過ごしていても、いざというときに街を守る義務があることは忘れるな!」
「う……はい」
今度は弱々しい声だったけど、冒険者さんもきちんと応えた。
冒険者さんたちって街の防衛も仕事なんだ。
意外と大変?
そのあとも襲いかかり続けるグレムリンを冒険者さんたちは倒し続け、冒険者ギルドのエントランスホールにはグレムリンの死体がかなりの数貯まってきた。
冒険者さんたちは足を取られないように戦っているけれど、かなり大変なんじゃないかな?
そうこうしてる間にも、出入り口の方が騒がしくなり、金属同士がぶつかり合う音がしたあと、扉が荒々しく吹き飛ばされた。
今度はどんな魔物がやってきたのかな?
「グレンデル……」
「寄りにもよってこいつかよ」
「こいつが今回の妖魔たちの長だな」
3メートルくらいの身長をした魔物がボスってことなのかな?
じゃあ、あれを倒せば魔物たちも逃げ出す?
どうなんだろう。
アーテルさんたちの判断を待とう。
やがて、街中を調べ終わったのかアーテルさんたちが戻ってきた。
アーテルさんはミカさんと話しているけど、声はここまで届かない。
なにを話しているか気になるけど、仕方がないよね。
アーテルさんがミカさんと話し終わると、ミカさんはすぐさま別の場所へと駆け出していった。
それと同時に、アーテルさんもほかの冒険者さんたちに指示を出し、わたしたち街の住人を取り囲んだ。
この冒険者さんたちはわたしたちの守りについてくれるんだ。
アーテルさんにお礼を言いたいけれど、アーテルさんは遠く離れたところでじっと冒険者ギルドの入り口をにらんでいる。
それだけ冒険者ギルドの守りに注意を払っているんだね。
やっぱりお礼を言いたいけれど、守りについている冒険者さんたちの輪の中から出たら邪魔だよね。
落ち着いてからにしよう。
その後もずっと警鐘は鳴り響いていた。
冒険者さんたちもだけど街の人たちもピリピリしている。
スピカさんもずっと緊張していて、額に汗がにじんでいる。
こんなときはどうすればいいのかな?
わたしにはまだわかんないや。
やがて、鳴り響いていた警鐘が聞こえなくなった。
緊急事態も終わりなのかな?
冒険者さんたちも肩の力を抜いてリラックスしているよ。
でも、アーテルさんだけは違った。
むしろ、さらに緊張感の度合いを増し、冒険者さんたちに向けて怒鳴りつけた。
「お前ら、なに気を抜いている! まだ非常事態は終わってないぞ!」
「アーテルさん? でも、警鐘は鳴り止んで」
「バカを言うな! 警鐘が鳴り止むなら、鳴り止むときの合図を鳴らすことになっている! それもなしに鳴り止んだってことは、鐘楼が魔物の手に落ちたんだよ! 街の連中も含めて密集陣形を取れ!」
「は、はい!」
どうやら、警鐘には終わるときの合図もあったみたい。
それもなしにいきなり警鐘が終わったことでアーテルさんは警戒を強めたんだね。
いろいろとためになるよ。
冒険者さんたちの指示によりさらに密集されたわたしたち一般市民は、窮屈な思いをしながらもこの警戒態勢が解かれる時を待った。
子供やお年寄りは陣形の真ん中付近に押し込まれたから、わたしだと周りの様子をなにもうかがえないんだよね。
わたしだって一人前なのに!
そのまま時が経つのを待ち、しばらくすると、窓を蹴破る激しい音が複数聞こえた。
一般市民からは激しい叫び声が上がったけどなにがあったのかな?
「クソッ! 窓を破られたか!」
「正面玄関前以外は冒険者を配置する余裕がなかったんだ! 仕方がないだろう!」
冒険者さんたちの声が聞こえるけど、わたしはそんなに慌ててない。
それよりも、周りのみんなが慌てていることが気になる。
どうすれば落ち着いてくれるかな?
わたしが考えをめぐらせている間にも状況はだんだん悪くなっていく。
なにか礫みたいなものが飛んできて灯りを消していくんだ。
通路は真っ暗になっちゃったし、わたしたちが集まっているエントランスホールも暖炉の火が付いているだけで薄暗い。
街の人たちも冒険者さんたちも慌てだしたね。
「うろたえるな! いまのは魔法の礫だ! 襲ってきたのはおそらくグレムリン、想像通り妖魔族だ!」
アーテルさんの叫び声で冒険者さんたちは気を取り直した。
妖魔族って魔物の種類かな?
その間にも暗くなった廊下には、なにかが廊下をひた走る足音が響いてきていてなんだか不気味。
冒険者さんたちは取り乱していないけど、一般市民はそれだけでも恐怖して怯えてしまう。
わたしは平気なんだけど、スピカさんも怯えているし、わたしが変わっているのかな?
「グギャラエェ!」
「チッ! グレムリンだ!」
「気を付けろ! やつらは夜目が利く上に弱いものを優先的に襲う! 簡単な魔法も使うから気を抜くな!」
「はい!」
冒険者ギルド内に残っていた数人の冒険者さんたちが、グレムリンという背のちびっこい人型の魔物に応戦する。
でも、暗くてよく見えないせいで上手く戦えていないみたい。
こんなときはわたしの出番だよね!
「いくよ! 〈ライト〉!」
「グギャ!?」
「なんだ!?」
わたしが産みだした光源によって、周囲が明るく昼間のように照らされる。
でも、これのせいで、グレムリンとかいう魔物だけじゃなく、冒険者さんたちも動きが止まっちゃったね。
残念。
「これは……おそらくノヴァの支援魔法だ! グレムリンの優位もこれで潰せる! 早くグレムリンを倒してしまえ!」
「は、はい!」
「グギャギャガ!」
暗闇を明るく照らされたことに怒ったのか、グレムリンという魔物の攻撃が一層激しくなったみたい。
でも、その程度では冒険者さんたちも怯むことなく対処してグレムリンの数を減らして行ったね。
さすがは強いなぁ。
一匹、また一匹と数を減らしていくけどグレムリンは次々と廊下から飛び出してくる。
どうなっているのかな?
冒険者さんたちも疲れ始めているみたいだし、このままだとまずいかも。
「どうなっているの! グレムリンをいくら倒してもきりがないじゃない!?」
冒険者さんたちの誰かが叫び声を上げた。
でも、それに対応したのはやっぱりアーテルさんだった。
「うろたえるな! グレムリンが何匹現れようと俺たちには街を守り抜く義務がある! 冒険者が普段自由に過ごしていても、いざというときに街を守る義務があることは忘れるな!」
「う……はい」
今度は弱々しい声だったけど、冒険者さんもきちんと応えた。
冒険者さんたちって街の防衛も仕事なんだ。
意外と大変?
そのあとも襲いかかり続けるグレムリンを冒険者さんたちは倒し続け、冒険者ギルドのエントランスホールにはグレムリンの死体がかなりの数貯まってきた。
冒険者さんたちは足を取られないように戦っているけれど、かなり大変なんじゃないかな?
そうこうしてる間にも、出入り口の方が騒がしくなり、金属同士がぶつかり合う音がしたあと、扉が荒々しく吹き飛ばされた。
今度はどんな魔物がやってきたのかな?
「グレンデル……」
「寄りにもよってこいつかよ」
「こいつが今回の妖魔たちの長だな」
3メートルくらいの身長をした魔物がボスってことなのかな?
じゃあ、あれを倒せば魔物たちも逃げ出す?
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