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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第八章 春のフルートリオンには商隊が来ます
41. 魔法のペンも錬金術にお任せあれ
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アーテルさんと一緒に採取用ナイフを買ったわたしは、残りのお店も見て回ることにした。
どのお店もフルートリオンでは見かけない物でいっぱい。
見ているだけで楽しくなっちゃう。
あれ?
あれはなんだろう?
「アーテルさん、あれは何ですか?」
「ああ、顔料だな。絵を描くときに用いる道具だ」
「絵を描くときに。あんな粉で絵を描くんですか?」
「あの顔料に何かを混ぜて色を布や壁に定着できるようにするそうだ。俺も詳しくは知らん」
へえ、なんだか面白そう。
ちょっと話を聞いてみようかな。
店主さんに質問だ。
「すみません。この顔料ってどうやって使えばいいんですか?」
「ああ、それかい。一般的には油で壁に練りつけられるようにするんだ。普通は画家が自分で細かく砕いて作っているらしいが、うちではそれを私らでやって売っているのさ」
「そうなんですね。顔料ってどんな物から作るんですか?」
「主な物は石材だね。岩や宝石を細かく砕いて作るんだよ」
宝石!
宝石を砕いて作るなんて贅沢!
「例えば……そこに見せている青色なんかは宝石を砕いて作ったものさ。ほかにも宝石や毒性のある岩なんかで作った顔料は高めだね」
毒のある岩からも色を作るんだ。
画家さんって大変そう。
わたしにはよくわからない世界だね。
「それでお嬢ちゃん。なにかご用かい?」
「あ、そうでした。その顔料を売ってください」
「おや? 子供の扱えるものじゃないよ? フルートリオンでも一応並べてはいるが、この街に画家はいなかったはずだけどね」
「ちょっと試してみたいことがあるんです。お金ならありますから売ってください」
「ふむ、困ったね。顔料は子供が扱うには危険な物なんだが……」
あ、そっか。
さっき毒物もあるって言ってたもんね。
それでなくても、岩や石を細かく砕いた物を吸い込んだら体に悪いか。
どうやって説得しよう。
「店主。悪いがそいつを少し売ってはくれないか?」
「アーテルさん」
わたしがどうやって売ってもらおうか悩んでいたらアーテルさんが間に入ってくれた。
これで買えるかな?
「いいのかい? 結構危ない物だよ?」
「こいつは危険物の扱いにも慣れている。使い間違えたりはしないさ」
「そうなのかね。じゃあ、売ってあげようか。どの色がいい?」
「えっと、売っている色全部ほしいです。ダメですか?」
「ダメじゃあないが、宝石を砕いた物も含まれるから結構お高いよ? 本当に大丈夫かい?」
「大丈夫です!」
「じゃあ、用意してあげようかね。その前にお代をいただこうか」
店主さんに顔料の代金を支払ったら驚いた顔をされた。
わたしみたいな子供が大金を持ち歩いていること自体、信じられなかった様子だね。
ここでもアーテルさんが間に入ってくれたから何事もなく買えたけど、そんなにわたしって信用できないのかなぁ?
これでも一人前の錬金術士なのに。
「毎度。顔料を扱うときは気を付けるんだよ。あと、火に焼べたりしてもいけないからね」
「わかりました。ありがとうございます」
顔料を買い終わったわたしは、残りのお店も見て回る。
そこでは可愛らしいティーポットを売っていたからそれも買ってみた。
これを錬金術の素材にして何か作れないかな?
「ノヴァ、顔料なんて買って何を作るつもりだ?」
「うーん。いろいろな色を出すことが出来るペン、みたいな?」
「曖昧だな。俺にも作るところを見せてくれ」
「いいですよ。使うものはもう想像できていますから」
うん、あとは試すだけなんだよね。
使うものも揃っているし、問題なし!
雑貨店に戻って仕入れてきた物をスピカさんに渡したら早速錬金術開始だ!
「ええと、顔料は少しずつ全部の色を入れて。あと、香りのいい木材と金属を少し」
「木材と金属なんて何に使うんだよ」
「えっと、ペンの軸とペン先? みたいな?」
「やっぱり曖昧だな。ともかく試してみてくれ」
「はい。材料ぽいぽい、元気になーれ、ふっふのふ~ん♪」
「みゃっみゃみゃみゃみゃ~ん♪」
「作る物が薬じゃなくても『元気になーれ』なんだな」
アーテルさんがなにか言っているけど気にしない。
わたしの錬金術は全部一緒で完成したものを使って元気になってもらうためなんだから。
そんなことは気にせず、釜もかき混ぜ終わってひとつの光が飛び出してきた。
うん、わたしの想像通りの物が出来上がってる!
「うん? ノヴァ、それはペンか?」
「はい。ペンです。名付けて『レインボーペン』ですね」
「『レインボーペン』どんなことが出来る?」
「魔力を通しながら文字などを書くことで好きな色の線を引けます」
「は?」
「だから、好きな色で文字なんかを書けるんですって」
「それって魔導具だよな?」
「魔導具というか魔法の道具ですね」
「錬金術って魔導具を簡単に作れるもんなんだな」
「こういう物でしたら作れます。作り方がわからないものは作れません」
「なんでも作られたら困るよ。どれ、試しに使わせてくれ」
「はい。紙もありますので試してみてください」
「この紙もやたらとなめらかだな。これも錬金術で作ったのか?」
「はい。そうですよ」
「万能だな、錬金術」
アーテルさんはそう言うけれど、錬金術だってなんでも作れるわけじゃないのに。
作れない物は作れません。
それで、アーテルさんはレインボーペンでいろいろ試し書きをしたあと、なぜか冒険者ギルドに行き、ミカさんを連れてきた。
そして、ミカさんにも試し書きをさせてなぜかミカさんがこのレインボーペンを買い取ることとなってしまう。
その数日後には冒険者ギルドからまとめて納品してほしいって依頼が来るし、素材の顔料が足りないって言ったらすぐに顔料も届けてくれた。
そんなにレインボーペンがほしかったのかな?
冒険者ギルドってよくわからない。
どのお店もフルートリオンでは見かけない物でいっぱい。
見ているだけで楽しくなっちゃう。
あれ?
あれはなんだろう?
「アーテルさん、あれは何ですか?」
「ああ、顔料だな。絵を描くときに用いる道具だ」
「絵を描くときに。あんな粉で絵を描くんですか?」
「あの顔料に何かを混ぜて色を布や壁に定着できるようにするそうだ。俺も詳しくは知らん」
へえ、なんだか面白そう。
ちょっと話を聞いてみようかな。
店主さんに質問だ。
「すみません。この顔料ってどうやって使えばいいんですか?」
「ああ、それかい。一般的には油で壁に練りつけられるようにするんだ。普通は画家が自分で細かく砕いて作っているらしいが、うちではそれを私らでやって売っているのさ」
「そうなんですね。顔料ってどんな物から作るんですか?」
「主な物は石材だね。岩や宝石を細かく砕いて作るんだよ」
宝石!
宝石を砕いて作るなんて贅沢!
「例えば……そこに見せている青色なんかは宝石を砕いて作ったものさ。ほかにも宝石や毒性のある岩なんかで作った顔料は高めだね」
毒のある岩からも色を作るんだ。
画家さんって大変そう。
わたしにはよくわからない世界だね。
「それでお嬢ちゃん。なにかご用かい?」
「あ、そうでした。その顔料を売ってください」
「おや? 子供の扱えるものじゃないよ? フルートリオンでも一応並べてはいるが、この街に画家はいなかったはずだけどね」
「ちょっと試してみたいことがあるんです。お金ならありますから売ってください」
「ふむ、困ったね。顔料は子供が扱うには危険な物なんだが……」
あ、そっか。
さっき毒物もあるって言ってたもんね。
それでなくても、岩や石を細かく砕いた物を吸い込んだら体に悪いか。
どうやって説得しよう。
「店主。悪いがそいつを少し売ってはくれないか?」
「アーテルさん」
わたしがどうやって売ってもらおうか悩んでいたらアーテルさんが間に入ってくれた。
これで買えるかな?
「いいのかい? 結構危ない物だよ?」
「こいつは危険物の扱いにも慣れている。使い間違えたりはしないさ」
「そうなのかね。じゃあ、売ってあげようか。どの色がいい?」
「えっと、売っている色全部ほしいです。ダメですか?」
「ダメじゃあないが、宝石を砕いた物も含まれるから結構お高いよ? 本当に大丈夫かい?」
「大丈夫です!」
「じゃあ、用意してあげようかね。その前にお代をいただこうか」
店主さんに顔料の代金を支払ったら驚いた顔をされた。
わたしみたいな子供が大金を持ち歩いていること自体、信じられなかった様子だね。
ここでもアーテルさんが間に入ってくれたから何事もなく買えたけど、そんなにわたしって信用できないのかなぁ?
これでも一人前の錬金術士なのに。
「毎度。顔料を扱うときは気を付けるんだよ。あと、火に焼べたりしてもいけないからね」
「わかりました。ありがとうございます」
顔料を買い終わったわたしは、残りのお店も見て回る。
そこでは可愛らしいティーポットを売っていたからそれも買ってみた。
これを錬金術の素材にして何か作れないかな?
「ノヴァ、顔料なんて買って何を作るつもりだ?」
「うーん。いろいろな色を出すことが出来るペン、みたいな?」
「曖昧だな。俺にも作るところを見せてくれ」
「いいですよ。使うものはもう想像できていますから」
うん、あとは試すだけなんだよね。
使うものも揃っているし、問題なし!
雑貨店に戻って仕入れてきた物をスピカさんに渡したら早速錬金術開始だ!
「ええと、顔料は少しずつ全部の色を入れて。あと、香りのいい木材と金属を少し」
「木材と金属なんて何に使うんだよ」
「えっと、ペンの軸とペン先? みたいな?」
「やっぱり曖昧だな。ともかく試してみてくれ」
「はい。材料ぽいぽい、元気になーれ、ふっふのふ~ん♪」
「みゃっみゃみゃみゃみゃ~ん♪」
「作る物が薬じゃなくても『元気になーれ』なんだな」
アーテルさんがなにか言っているけど気にしない。
わたしの錬金術は全部一緒で完成したものを使って元気になってもらうためなんだから。
そんなことは気にせず、釜もかき混ぜ終わってひとつの光が飛び出してきた。
うん、わたしの想像通りの物が出来上がってる!
「うん? ノヴァ、それはペンか?」
「はい。ペンです。名付けて『レインボーペン』ですね」
「『レインボーペン』どんなことが出来る?」
「魔力を通しながら文字などを書くことで好きな色の線を引けます」
「は?」
「だから、好きな色で文字なんかを書けるんですって」
「それって魔導具だよな?」
「魔導具というか魔法の道具ですね」
「錬金術って魔導具を簡単に作れるもんなんだな」
「こういう物でしたら作れます。作り方がわからないものは作れません」
「なんでも作られたら困るよ。どれ、試しに使わせてくれ」
「はい。紙もありますので試してみてください」
「この紙もやたらとなめらかだな。これも錬金術で作ったのか?」
「はい。そうですよ」
「万能だな、錬金術」
アーテルさんはそう言うけれど、錬金術だってなんでも作れるわけじゃないのに。
作れない物は作れません。
それで、アーテルさんはレインボーペンでいろいろ試し書きをしたあと、なぜか冒険者ギルドに行き、ミカさんを連れてきた。
そして、ミカさんにも試し書きをさせてなぜかミカさんがこのレインボーペンを買い取ることとなってしまう。
その数日後には冒険者ギルドからまとめて納品してほしいって依頼が来るし、素材の顔料が足りないって言ったらすぐに顔料も届けてくれた。
そんなにレインボーペンがほしかったのかな?
冒険者ギルドってよくわからない。
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